インタビュー

シャープの2014年夏モデル NTTドコモ編

シャープの2014年夏モデル NTTドコモ編

「EDGEST」がいよいよドコモへ、大画面でも使いやすく

 シャープによるドコモ向け2014年夏モデルは、フラッグシップモデルの「AQUOS ZETA SH-04F」、「AQUOS PAD SH-06F」、フィーチャーフォンの「SH-07F」と幅広いラインアップだ。中でも大きなトピックは「EDGEST」端末が投入された点だろう。3キャリアの中で最後発ともなれば、その世界観がどのように磨かれてきたのか気になるところ。また、ブランド名が「AQUOS PHONE」から「AQUOS」に変更された点も見逃せない。

AQUOS ZETA SH-04FとAQUOS PAD SH-06F

 この夏の3機種は、それぞれどんな点に注目すればいいのか。開発を担当された通信システム事業本部 グローバル商品企画センター 第一商品企画部 部長 高木健次氏、主事 西郷光輝氏、林里奈氏、三枝卓矢氏、デザインセンター 副参事 水野理史氏にお集まりいただき、各端末の進化点や魅力について伺った。

2014年夏モデル全体のコンセプト

高木健次氏

――NTTドコモ向けの2014年夏モデルは、全体に共通するテーマやコンセプトなどがあったら教えてください。

高木氏
 2014年夏ですが、フラッグシップモデルとしてのAQUOS ZETA SH-04F、軽量タブレットのAQUOS PAD SH-06Fのラインナップになります。

 これらの共通するテーマは「可能性」ですね。特にフラッグシップモデルのZETAとAQUOS PADには三辺狭額縁のEDGESTモデルです。EDGESTはスクリーンの中から外へ、外から中へと働きかけるということで、お客様に新しい体験をしてもらおう、そういう世界観をもっています。ですので、ただ液晶が広がったと言うだけではなくて、可能性を広げる。そういったコンセプトになります。スマートフォンも広く普及して、いろんな方が普通に使えるようになってきましたが、我々は、その中にあっても、ワクワクする感動を届けていきたいと考えています。

――他社製モデルに続いて、いよいよドコモのZETAとAQUOS PADがEDGESTモデルになったわけですが、今後しばらくこのデザイン路線でいくということでしょうか。

高木氏
 今、店頭に並んだいろんなモデルの中から、ひと目でシャープの端末だとわかる違いや新しさが必要だと思っています。そこで、ドコモ向けについても今回の夏モデルでEDGESTを採用することで、シャープとしての統一した記号性を出していこうと考えました。それによってブランドとしての認知を上げていこうといった狙いがあります。

――今回ブランドをAQUOS PHONEから、AQUOSに変えています。「AQUOS=液晶テレビ」というイメージが定着していると思いますが、どういう意図があるのでしょうか。

高木氏
 我々の商品企画の思いとしては、PHONEの枠を超えて、“スクリーン”を通じて新しい体験をユーザーに届けたいという思いがあります。そこで、今回シャープとしてはブランドイメージの高い「AQUOS」のブランドを再定義し、液晶テレビのブランドから、「先進の映像・情報群」に対するブランドとしました。

――なるほど。「AQUOS」のブランドそのものの意味が広がっているんですね。

AQUOS ZETA SH-04F

――では、そのフラッグシップモデルであるSH-04Fの特徴を教えてください。実際目の前にあったら、どんなところを見ればいいでしょうか?

三枝氏
 SH-04Fのセールスポイントは、大きく4つあります。1つは、EDGESTでIGZOを採用した5.4インチの大画面。2つめは失敗しないで美しくプロっぽく撮れるカメラ、3つめは持ったり触ったりした瞬間に何かできる「グリップマジック」の進化、そして4つめは3日間以上使えるバッテリーです。

 まず画面ですが、前モデルのSH-01Fが約5.0インチで画面占有率が約73%だったのに対して、今回は約81%にまで向上しています。EDGESTでギリギリまで画面を広げ、大きく綺麗になったのに、女性でも持ちやすく、しかも片手で操作できる仕組みを取り入れているのがポイントです。

AQUOS ZETA SH-04F
三枝卓矢氏

――EDGESTの影響もあると思いますが、見た目がかなり薄くなった印象があります。

三枝氏
 それは今回取り入れたデザイン「ヘキサグリップシェイプ」の効果ですね。今回、大画面という利点をいかしながら、持ちやすく小回りが利くという点もかなり考えてデザインしているのですが、その結果たどり着いたのが、断面で見ると六角形みたいになっている「ヘキサグリップシェイプ」です。前から見たときに手前を落とすことで大画面に見せつつ、下を削ることで、薄く見せています。しかも、持ったときに六角形の状態になっているので、そこにちょうど手がフィットしやすい状態になっています。

――つまり、少しでも中で容積を稼ぎつつ、デザイン的にはEDGESTを強調したいということですか。

ヘキザグリップシェイプ

三枝氏
 まさにその通りですね。大画面をパッと見せるために手前や裏を削っています。でも、電池容量には影響がありません。しかも、持ったときにフィットする箇所に今回グリップセンサーを配置しています。色はオレンジ、ホワイト、ブラックの3色を用意していますが、オレンジとブラックは色と艶、ホワイトは艶の仕上げをそれぞれの側面と背面で分けることで、「ヘキザグリップシェイプ」を際立たせ、デザイン性と機能性を両立させています。

――IGZO液晶は省電力を実現するブランドとしてすっかり有名になりました。

三枝氏
 IGZOはSH-02Eから搭載していて、省電力のイメージが浸透しました。大変ご好評いただいて嬉しいのですが、やはり“液晶のシャープ”としては、「表示の美しさ」も訴求したい部分で、そこで今回は色味も向上できないかと検討し、今回から新開発のバックライト「PureLED(ピュアレッド)」と、それにあわせたカラーフィルターを搭載しました。従来よりも赤がとても綺麗に見える液晶になり、人肌や料理などが豊かに表現できるようになりました。

――「PureLED」とはLEDと赤のREDをかけてるわけですね。どういう仕組みになっているのでしょうか。

三枝氏
 今までの液晶バックライト技術では、青色発光体と黄色蛍光体で構成していました。「PureLED」では、黄色蛍光体に代わって緑色と赤色の独立した蛍光体で構成しています。これにより、三原色を際立たせるような特性になっています。液晶そのものの向上ですので、静止画だけでなく動画も対応していますので、いつでもきれいに見えます。

PureLED

――省電力の部分で進化はありますか。

三枝氏
 もちろん省電力のところも捨ててはいません。電池は3300mAhを積んでいます。現在最終測定中ではありますが、弊社の調べでは前モデルが98.9時間だったのに対して、このモデルは100時間を超えています。新しい機能を取り入れつつ、少しでも電流がアップしていればとことんつぶしていくという地道な作業を繰り返して、性能は上げつつ、前モデル以上の動作時間を実現しました。3日間は安心してご利用いただける端末です。

――続いてカメラの進化点について教えてください。

三枝氏
 2013年夏モデルではF値1.9の明るいレンズを採用することで、暗い場所でもブレやノイズの少ない綺麗な写真が撮れるようになりました。冬モデルでは「NightCatch」といって、夜景も綺麗に撮れるよう進化させました。今回は、撮った写真を誰かに見てもらって「面白いね」とか、「これ、おいしそうだね」と言ってもらえる、一緒に楽しんでもらえる、そういった形での“失敗しないカメラ”を目指しています。

 中でも、夜景とその前にいる人物の両方を綺麗に撮れる「NightCatch II」や、逆光により強い「リアルタイムHDR」、きれいな構図で撮れる「フレーミングアドバイザー」、360度パノラマ撮影が可能な「全天球撮影」、英語のメニューも見たまま翻訳してくれる「翻訳ファインダー」、なぞるだけで検索できる「検索ファインダー」がおすすめ機能です。このほかにも、ダウンロードしたモードやアプリを追加できるカメラプラグイン機能も備えています。

――それぞれの機能の特徴を具体的に教えてください。

三枝氏
 「NightCatch II」では、背景を明るく撮ったあと、最後に1枚人物にフラッシュを当てて、それぞれを合成することで背景も手前の人物も明るく見える写真にしています。

 「リアルタイムHDR」とは、今回1枚撮るだけでHDR写真になる機能で、今回CMOSセンサーが新しくなったため実現しました。従来のHDRというと複数枚を合成していたので時間もかかっていましたし、被写体が動くと合成ズレが発生して、ブレたり欠けたりといったことがありました。「リアルタイムHDR」だと、1枚の画像の中で、画素単位で異なる2つの露出条件で露光し、それをHDR化しているので、1回の撮影で済みます。このため連写も可能になりました。

 「フレーミングアドバイザー」とは、もっと上手に撮りたいと思っている方向けの機能で、構図をアシストするというものです。たとえば目の前の料理写真を撮ったとき、自分は美味しそうなつもりでも、他人が見るとそうでもないということがあります。そのような場面で、美味しそうに見えるコツが自然と押さえられるガイド線を表示し、その線に合わせて撮るだけで、美味しそうに見えるようになる、というものです。実際にお皿を用意してやってみるとわかるんですが、お皿の形を認識して、緑色の輪が表示されます。お皿がその輪に重なるよう寄って撮るといいんです。

フレーミングアドバイザー

――なるほど。確かに普通のカメラでも斜め上から寄って切るというのは王道ですが、それを知らなくても線に合わせるだけでできてるというわけですね。お皿の形は丸以外でもいいんですか?

三枝氏
 斜めから、ちょうど料理がはみ出るくらいに撮るのが美味しく撮るコツなんですが、それをオートでアシストします。オートでアシストするのは丸いお皿のときで、四角いお皿の場合は、「SELECT」にある「料理2」というフレームをご利用いただければと思います。

 実際構図は難しくて、実はお客様みんな自分が一番いい構図だと思って撮ってるわけですから、それはそれでいいんですが、撮った後、例えばSNSなどにアップロードしたときに、「これ、おいしそうだね」と言ってもらいたい、ネタになりやすくしたい、そういったことをこのカメラでやりたいなと思いました。

――面白そうですね。料理以外でも可能なのでしょうか。

三枝氏
 人物や風景用のガイドも用意しています。その構図にあった人物の配置で撮れます。しかも、いろんな構図があるんですが、マニュアルでも構図変えられるんです。

EDGESTの世界観を体感できる「全天球撮影」機能

――「全天球撮影」とは、足もとから空まで全部カバーできるのでしょうか。

三枝氏
 その通りです。SHカメラから「全天球撮影」を選択してGoogleのカメラ機能の一部である「Photo Sphere」という機能を起動させています。ガイドに従って撮るだけで、自分を取り囲む世界全体を記録できます。ビューアーは、指でスクロールすることなく、端末を持ったまま、上下左右に動かすだけでその角度で撮影された視界が、あたかも目の前に広がっているかのように見ることができます。画面の広さやEDGESTが生きていてかなり感動的なので、ぜひ見ていただきたいです。

検索ファインダー

――「翻訳ファインダー」と「検索ファインダー」についても教えてください。

三枝氏
 「翻訳ファインダー」とは、カメラをかざすだけで、そこに書かれた英語を日本語にリアルタイムに翻訳してくれる機能です。デモでもよくやりますが、英語の看板やメニューにかざすと、その上に日本語訳がでてきます。入力しなくてもいいところがメリットですね。海外旅行などで便利だと思います。

 「検索ファインダー」もカメラをかざして検索する機能ですが、こちらはカメラのファインダー内に映している文字をなぞると、Google検索して関連する言葉や写真をARっぽく周りに表示するというものです。フレームの中と外を繋いでいるというところがポイントで、EDGESTのコンセプトを取り入れた、遊び心のある検索機能です。

「グリップマジック」が進化し、「着信時簡易シークレット」などの新機能が登場

――続いて「グリップマジック」の進化点を教えてください。

三枝氏
 「グリップマジック」とは、本体側面にグリップセンサーを配置して、持った瞬間に何かをできるようにするというものです。画面が大きくなった分、電源ボタンなどに指が届きにくくなったということもあるので、より簡単に操作できるようにと搭載された機能ですね。前回2013年冬モデルで搭載したときは、握っただけで画面がオンになって時間が確認できたり、顔認証と組み合わせることで、そのままロック画面が解除できたり、着信時に音量をダウンしたり、就寝前に電子書籍を読んだりWebチェックする際など、寝転がっていても余計な画面回転を抑えることができました。

 今回は持つだけじゃなくて、離すといった操作でもグリップマジックを活用しています。たとえば、着信時に持ったときだけ誰からかがわかる「着信時簡易シークレット」、通話中に資料を探したいときなど、机の上に置いたら保留やミュートになる、メディアの視聴中に置くと、あらかじめ設定しておいた音量まで自動的にアップする「メディア視聴中音量アップ」、ポケットに入れっぱなしでも、そのまま握るとバイブで通知がわかる「バイブでお知らせ」といった機能を追加しました。

――たとえば電源ボタンを押して画面を消してから、サイドを持ってポケットにしまうことってあると思うんですが、触りなおした時に再び画面がオンになったりしないのでしょうか?

三枝氏
 実は消したあとは2秒くらいは画面オンさせない仕様になっています。

――ポケットにしまうまでの時間が2秒くらいということですか?

三枝氏
 そうですね。グリップセンサーに触れて画面が点灯して、その後電源キーを押して画面がオフになりますね。その状態から再び触っても、誤操作を考えてすぐ点灯しないようになってるんです。それが2秒。社内で検討した結果、今はそれくらいになっています。

――保留やミュートは自分で選択できるんでしょうか。スピーカーホンにできると置いたまま話せて便利そうですが。

三枝氏
 はい。設定画面で指定できますし、スピーカーホンも可能です。

――音量アップするシーンというのは?

三枝氏
 動画を見ているとき、ずっと手に持っていると疲れてしまいますから、置いた状態で見たいですよね。そのとき、ポンと置くだけで聞きやすい音量にできるということですね。通常は持っているときよりはアップさせると思いますので。

――なるほど。これは設定次第ではかなり便利になりそうですね。

三枝氏
 大画面は見やすいのはいいけれど、操作しにくいかもしれない、というネガティブなイメージを持たれている方も多いはずなので、大画面でも使いやすいんだということを訴求したいと考えてます。

画面縮小モード

 その流れで、今回新たに「ワンハンドアシスト」機能として「画面縮小モード」を搭載しました。これは、片手操作したい方向けの機能なんですが、画面の下をなぞると表示されるボタンで、画面全体を4インチ相当のサイズに縮小しながら左右どちらかに寄せられるというものです。Webページやコンテンツを見るときは大画面で、画面操作や文字入力は片手でやりたい、という方におすすめです。

――本当に画面が小さくなるんですね。これも含め、「グリップマジック」や「画面縮小モード」などは、やはり実際に触ってみて初めてわかるわけですが、店頭でも試せるのでしょうか。

三枝氏
 「体験しよう!」というアプリを新たに用意しています。グリップマジックや画面縮小モードのほか、新しいFeel UXやカメラ機能、翻訳ファインダー、検索ファインダー、全天球撮影といった機能の紹介動画を確認したり、画面を見ながら実際に体験できます。

――そのほかに変わった点があったらご紹介ください。

三枝氏
 通知パネルがカスタマイズできるようになったほか、最低限のメニューに絞ったシンプルメニューも用意しました。動画も4K2Kに対応し、視聴中に見たい箇所を指先で拡大できるようにもなっています。静止画で拡大できるんだから、動画でもやったらいいじゃないか、ということです。映画では登場人物の表情など、もっとよく見たいというときに便利な機能だと思います。

AQUOS PAD SH-06F

AQUOS PAD SH-06F

――2013年夏モデルから約1年ぶりのAQUOS PADです。どんなところが変わったのか気になります。

西郷氏
 現在も発売は継続しておりますが、昨年のSH-08Eはご好評いただきまして、今回のSH-06Fはその後継機種となります。モノを作るときって何でもそうなんですが、第2弾が非常に難しいですよね。今回は正統進化ということで、ご評価いただいている部分を徹底分析しまして、そこを伸ばす進化にしています。おすすめポイントは3つありまして、1つはさらに薄く軽くなったサイズ感、2つめはフルセグのデータ放送対応、3つめは持って話せる電話機能です。

 まずサイズ感ですが、薄型化というところと、軽量化というところをフィーチャーした形になっております。見ていただいたらわかるように、ジャスト新書サイズになりました。昨年のモデルは厚さ9.9mm、最厚部で10mm。当時はサイズ的には優位にあったと思っていたんですが、世の中いろいろ出てきました。今回は8.4mm、最厚部も8.7mmといったサイズを実現しています。重さは前のモデルが288gだったのに対して、今回240gを割り込みまして233g。持った瞬間、ほんと軽いですよね。7インチLTE内蔵タブレットとしては、もしかしたら世界最軽量といううたい方ができるのではないか、というくらいです。

 背広の内ポケットにも、全然違和感なくいれていただけるこのサイズが、このモデルの一番の肝になるのかなと考えています。

西郷光輝氏

――軽量化できた理由はなんでしょうか。

西郷氏
 いろいろ部品を細かく見直しています。カメラの例をとっても、8メガと前衛機に準じたスペックなのですが、今回のカメラは新作で、薄く軽くしたカメラを改めて開発しています。電池も専用ですし、そういった積み重ねとEDGEST効果ですね。

――電池容量はどれくらいですか。

西郷氏
 電池容量は前モデルと同じく4200mAhを確保しています。動作時間につきましては調査・調整中ですが、当然同等以上を目指しています。

――これはサイズもさることながら、液晶の縦横比も自然な印象です。SH-08Eは個人的に所有していますが、縦に長いという感じがありますね。他の同サイズのタブレットもみな縦長なので、特にこれがおかしいというのではないですが、読書するには何か違うと思っていました。

西郷氏
 SH-06FはEDGEST効果ですね。本の比率に近いんですよね。特にコミック系などは本をめくっていただく感覚でお使いいただけるのではないかなと思います。

――このサイズですと、タブレットとファブレット、どちらになるのでしょう。通話できるものはファブレットという言い方をする場合もありますが。

西郷氏
 SH-06Fは片手で持てるタブレットという位置づけです。

――普通に手に持って電話できるようになったというのも驚きです。

西郷氏
 SH-08Eはスピーカーホン、またはイヤホンマイクでの通話でしたね。電話できるということで喜ばれたところもあるようですが、周りの方に通話が聞こえてしまうという難点も声としては拾い上げることができましたし、今回女性の方でも比較的手が回り込みやすく、きっちり握っていただけるくらいのサイズにできました。じゃあいっそ、電話していただこうかなということで、大口径のレシーバーを搭載しました。EDGESTを損なわないように配置には気をつけまして、今回はこれ1台で電話も使えます。

――フルセグ対応も前モデルで大いに歓迎された機能だと思いますが、データ放送対応はやはりニーズでしょうか。

西郷氏
 SH-08Eのユーザー調査では、やはりフルセグはかなり評価をいただいておりました。最近、朝の番組でデータ放送を使ったクイズやじゃんけんなど、視聴者参加型のコーナーが人気のようで、目にする機会が増えてきたなという感覚があったのと、今回、同じフルセグで進化がないのも能がない話だな、というわけで、だったらせっかくのフルセグですから、データ放送にも対応させようということになりました。

――どうやって操作するのでしょうか。

西郷氏
 画面をロングタップしていただくと4色のボタンを出せますから、フリック感覚でタッチできます。

フルセグまわりも機能強化

――このサイズでフルセグですとセカンドテレビにもなりそうですが、SH-08Eはやはりフルセグ目当ての方が多かったのでしょうか。

西郷氏
 我々はビジネスユーザーを想定して売り出したんですが、聞き取りさせていただいたときに、シニアの方が非常に多くご購入いただいてるというお話を聞きました。世の中これだけスマートフォン、スマートフォンと言っているから使ってみたいんだけど、電話まで置き換えるのはちょっと不安だよね、というフィーチャーフォンをお持ちのシニアの方にお買い求めいただいてるようなんです。店頭で売られている価格をお聞きになりますと、「あ~、ポータブルテレビ買う値段だ」ということで、あまり抵抗感なく2台目の端末としてご購入いただいてるようです。もちろん画面が大きいので、ちょっと視力に不安がある方にはちょうどいいサイズというところもあると思います。

――確かにポータブルテレビを買ったつもりで、さらにあれこれできるとすればかなりお買い得かもしれません。もともとのターゲットであるビジネスマン向けの機能でおすすめはありますか?

西郷氏
 このサイズですと、やはりドキュメントをメールで受け取って開くということが多いはずですが、これまで編集はできませんでした。ですので、Office文書の編集機能をプリインストールする方向で開発をしています。

――ビジネス系といえば、メモ機能も欠かせないと思いますが、今回専用のペンが見あたりません。

西郷氏
 確かに前のモデルではペン入力もご好評いただいてましたが、このサイズで専用ペンを内蔵させるとなると、ペン自体が非常に細くなってしまいます。であれば、市販のペンを活用していただこうということで、今回感度の切り替えを可能にしています。初期設定では指操作モード、市販のペンを使うときは専用のモードでお使いいただけます。

 どの画面からでも押せばすぐメモがとれる「書メモ」という機能もさらに進化させてますので、普通にメモをとっていただけますし、従来通りメールに添付して送信していただくこともできます。そういったところがビジネス用途への進化点ですね。

――専用のケースなどを出される予定はないですか。

西郷氏
 実は今、高級ブランドで有名なアシュフォードさんと一緒にオリジナルのシステム手帳を企画中です。システム手帳の中にSH-06Fを入れて持ち運べるようになるかもしれません。9月頃に市販する前提でご相談を進めているところです。

――手帳に手帳を収納するような感じですが(笑)。

西郷氏
 デジタルとアナログの融合ですね。紙は書いて頭の中を整理するのに向いていますし、デジタルは記録して積み上げられるところがメリットです。あくまでも予定ですが、両方のいいところをうまく使っていただけたら、と考えています。

EDGESTとヘキサグリップシェイプを共通の記号に

水野理史氏

――AQUOS ZETA SH-04Fも、AQUOS PAD SH-06Fも、EDGESTでヘキサグリップシェイプという共通点があります。これには何か目的があるのでしょうか。

水野氏
 冒頭で高木も申し上げましたが、EDGESTを強調できる“記号”を、シャープ全体のスマートフォンでテーマにしたいと考えました。これまでのシャープ製端末は、機種毎にまったく違うデザインでした。それによってブランド力、シャープのデザイン力が記憶として残らない。ブランディングがどんどん弱くなって、市場の競争力がなくなっていくことに危機感を感じました。その競争力をつけるために、記憶に残すような方策を採っていこうということで、機種毎に変えるのではなく、統一したデザインテーマを持って進めていこうというのが今回です。

 スマートフォンはほとんど画面なので、デザインできる部分が限られてきます。どうしても同じに見えてしまうわけです。目をつむって触ってその違いが明らかにわかるような形状で、シンメトリーで、なおかつEDGESTという狭額が表現できる形状は何かというところで、行きついたのがヘキサグリップシェイプのフォルムです。

AQUOS ZETA SH-04Fのフレーム

――フィーチャーフォン時代、AQUOSケータイといえば「サイクロイド」とか、これがシャープのケータイですよ、みたいな訴求があったと思うんですが、それと同じことをスマートフォンやタブレットでも実現しようとしているわけですね。

水野氏
 そうですね。時代やトレンドとともに進化しながら、その記号をなるべく残していくようにしたいと考えています。たとえばBMWはフロントに絶対八の字があるんですが、デザインは大きく変えてもBMWとわかるようなことをしている。それと同じことをするということですね。

――それはキャリアをまたいでも実現されるということでしょうか。

高木氏
 EDGESTはキャリアを横断しての話ですが、ヘキサフォルムはドコモ向け端末での話です。

――キャリアの壁を越えなければ統一した認識は得にくいと思うのですが。

水野氏
 確かにこれからの大きな課題であると認識しています。ただ、キャリアごとにユーザーさんの特質もちょっと変わっているんですね。キャリアごとに好まれるテイストっていうのがちょっと違いがありまして、たとえばドコモのユーザーはちょっとゴージャス系を好まれる傾向にあります。各キャリアのユーザー層が反映されてきますので、それをウォッチしながら、どうしていくか考えることになると思います。

SH-07F

――最後に、フィーチャーフォンのSH-07Fについて伺います。フィーチャーフォンはまだまだ根強い人気がありますが、どんな点を意識して開発されていますか。

SH-07F

林氏
 今回3.3インチの液晶を搭載しつつも、幅49mmを実現しており、ポイントはズバリ持ちやすさですね。ビジネスユーザー、50代の方、小学校低学年の方など、いろんな世代の方が使われますので、持ちやすさを重視して開発させていただいております。

林里奈氏

 デザイン面では、表面のパネルにアルミを使いまして、他のフィーチャーフォンにはない高級感をしっかり演出しつつ、持ちやすさとの両立を図っています。今回からキーの文字も大きくして、クッキリ操作キーといった形で訴求させていただいております。また、カラーごとにアクセントカラーもつけまして、見やすさと押しやすさ、キーの押し感も重視しています。

 標準機能になりますが、おサイフケータイとかワンセグ、防水もきちんと対応させていただいておりますので、1台でも、タブレットなどとの2台持ちでも安心してお使いいただけるようになっています。

――確かに手のひらにすっぽりと包み込める感覚がいいですね。先ほどのお話では、想定されているユーザー層が、ビジネスユーザー、50代の方、小学校低学年と非常に幅広いというかバラバラな気もするのですが、色の決め方も昔に比べて変わってきているのでしょうか。

水野氏
 もともとフィーチャーフォンって20代から50代までをカバーしていたわけですが、スマートフォンの登場によって、間の20代、30代がごそっといなくなって、小学生か、50代以上というような両極端の市場になってるんです。そこで両方にあうような端末を提供しようということで、こういう色展開になっています。

――フィーチャーフォンをお使いの方は1台を長く使うイメージがありますが、これは何年くらい使われることを想定していますか。

林氏
 4~5年以上ですね。みなさん大事に使ってらっしゃるようで。ショップでお話をお伺いしたのですが、やっぱり無くなると困るよね、という方が買いに来られるようですね。中には901iシリーズを大事に使われていて、買ったときみたいなきれいな状態の方もいらっしゃいました。逆に塗装がはげて、色が何色かわからない状態になってしまっている方もいらっしゃいますが。

水野氏
 今までのフィーチャーフォンは蒸着で処理していたので、どうしても使っているうちに塗装がはげてしまっていたんですね。それでも1年サイクルでどんどん買い換えていく時代なら気にならなかったんですが、今は3~4年、電池が使えなくなるまで使うんですね。そのときに、買ったときの状態がなるべくキープできるような素材感を実現したかったんです。つまり、塗装がはげないためにはどうしたらいいかというわけで、今回はアルミを使っています。コストはかかってますが、それは価値があるものだと思ってます。

――ドコモが6月からカケホーダイなど音声寄りのプランに変えてきましたね。フィーチャーフォンのニーズというのは、またもう一回来る可能性があるのか、御社としてはどうお考えですか。

高木氏
 そうですね。スマートフォンが増えたとはいっても、まだ半分という見方もできます。これからもフィーチャーフォンという方に使っていただけたらと思いますし、やっぱり通話はフィーチャーフォンという方には、このSH-07FとAQUOS PADをセットでというような提案はできていくのかなと思っています。

――最後に読者に一言お願いします。

高木氏
 大きなところでは、今回からAQUOS PHONEからAQUOSにブランドが統一されました。端末もEDGESTとヘキサグリップシェイプの採用で統一したデザインにすることで、ひと目でわかるシャープらしさと、可能性の訴求という取り組みも進めています。各端末では、それぞれに見やすさ、使いやすさ、使う楽しさを磨き上げています。

 これが新しいシャープの端末であるということを、ぜひ店頭で手にとって確認していただけたらと思います。

――本日はどうもありがとうございました。

すずまり