「DIGNO S KYL21」開発者インタビュー

大容量バッテリーと「すぐ」にこだわった操作性


 スマートフォンのバッテリーは持たない――そう言われて久しい。長持ちさせるために、バッテリーの大容量化と省電力化の両面から対策が施されているが、未だユーザーが十分満足できるレベルに達しているとは言い難いだろう。そんな中、京セラから2520mAhというバッテリー容量をもつ「DIGNO S」(KYL21)が登場した。

 ディスプレイサイズ5インチ以下のスマートフォンでは、国内最大容量だという(2012年10月11日現在)。加えて、充電率が30分で50%という急速充電が可能な卓上ホルダの同梱や、「すぐごえ」など京セラオリジナルのユニークな機能の搭載、人気機能や基本性能のブラッシュアップなどで利便性も追求し、オリジナリティ溢れるスマートフォンに仕上がっている。

 この「DIGNO S」の開発の背景やこだわりについて、京セラの通信機器関連事業本部 マーケティング部 国内第1マーケティング部 商品企画1課 PM2係責任者 辻岡正典氏、同事業部 マーケティング部 デザインセンター デザイン3課 デザイン係 光永直喜氏にお話を伺った。

au 4G LTEに対応してさらに進化した「DIGNO S」

辻岡正典氏

――「DIGNO S」は、現在国内の5インチ以下のスマートフォンでは最大のバッテリー容量だということで注目しています。まずは製品の概要について教えてください。

辻岡氏
 au向けスマートフォンとしては、京セラとして国内初のスマートフォン「DIGNO ISW11K」と、URBANOシリーズ初のスマートフォンの「URBANO PROGRESSO」がありますが、3台目としてau 4G LTEに対応して進化したのが今回の「DIGNO S」です。色はブラック、ホワイト、ピンクの3色をご用意しました。フィーチャーフォンから初めてスマートフォンに機種変更される方、スマートフォンユーザーで電池持ちを重視される方にお買い求めいただきたいと思っています。

――「DIGNO S」の「S」とはどういう意味なのでしょうか。

辻岡氏
 2520mAhという5インチ以下のスマートフォンで国内最大容量バッテリーの“スタミナ”、急速充電の“スピード”、ディスプレイ部が振動することでクリアに音を伝える京セラ独自機能の“スマートソニックレシーバー”。この3つの特長を表す頭文字「S」という意味です。社内では、「すごい」のSとも言っていますが、そのすごさを形作るものとして、今回は特に「電池」と「電話」と「便利機能」の3つに力を注ぎました。ちなみに、プロモーションキャラクターには「S」のマークでお馴染みのスーパーマンを起用しています。

2520mAという大容量バッテリーを搭載し、電池持ちへ配慮

DIGNO S(左)とDIGNO ISW11Kのバッテリー

――バッテリーが2520mAhとはまた思い切りましたね。

辻岡氏
 まだフィーチャーフォンからスマートフォンに変えていない方の不満点に「使いこなせそうもない」というのがありますが、それともう1つ「電池持ちが悪そう」というネガティブなイメージも持たれています。実際にご利用中の方にアンケートをとっても、不満の第1位が電池持ちです。そこで、新製品ではこの解決策を提示しようという考えから2520mAhのバッテリーを搭載しました。「DIGNO ISW11K」の2個分以上のバッテリー容量が今回の「DIGNO S」の一番の特長です。

――2520mAhというのは、実際の使用ではどれくらい持つのでしょうか。

辻岡氏
 「DIGNO S」は、連続待受時間は3G使用の場合ですと約720時間、LTEの場合でも約580時間持ちます。連続通話も、約1110分可能です。連続通話時間(分)が4桁というのは、国内スマートフォン初ではないでしょうか。

 最近話題のテザリングの場合ですと約7時間半も使えます。ちょうどタイミングよく最近新しいタブレット端末が相次いで発表されました。Wi-Fiモデルを購入して、スマートフォンでテザリングする機会が非常に増えると思っていますが、そういう使い方をしたい方に「DIGNO S」は最適なモデルではないでしょうか。

――約7時間半という計測は、ずっと断続的にデータを送受信した結果でしょうか。

辻岡氏
 はい。連続通信して約7時間半です。また、2520mAhもあれば、auから提供されているビデオパスやうたパスといったサービスもしっかり使えます。ビデオパスで2時間の映画をストリーミングで続けて2本見ても電池の心配はいりません。

――急速充電対応とのことですが、どのような方法で行うのでしょうか。

辻岡氏
 セットで同梱している、最大2.7Aの専用ACアダプタを使った卓上ホルダを使用します。最大2.7A流すことで、30分で2520mAhの約50%、60分で約80%まで充電できます。フル充電までの所要時間は約120分ですね。これまで通りmicroUSBでの充電も可能ですが、microUSBの端子だとそこまで急速な充電はできません。

――この卓上ホルダはオプションでも購入できるのでしょうか。

辻岡氏
 はい、購入できます。また、2012年12月16日までに「DIGNO S」購入宣言キャンペーンサイトから購入宣言をしていただき、実際に2012年12月20日までに購入して簡単なクイズに答えて応募いただくと、この卓上ホルダとACアダプタをもう1組プレゼントいたしますので、ぜひご利用いただきたいです。もう1組あれば、自宅とオフィスの両方で急速充電が可能になります。

「スマートソニックレシーバー」でより聞きやすく

――次に、電話機能へのこだわりについて教えてください。

辻岡氏
 「URBANO PROGRESSO」に搭載していた、京セラの独自機能である「スマートソニックレシーバー」を引き続き搭載しています。ディスプレイ部が振動し、クリアに音を伝える機能であるため、騒がしい場所でも聞こえやすい、受話口がないことで耳を当てる位置を気にしなくていいという点が大変好評いただいておりまして、実際弊社のユーザーアンケートでも87%の方に満足、という回答をいただいております。ネットの価格情報サイトでも通話音質満足度1位をいただいた、京セラオリジナルの機能です。

――「URBANO PROGRESSO」から改良した部分はありますか。

辻岡氏
 新開発のセラミック圧電素子を搭載することで、より自然でナチュラルな音になりました。今回は若い方から年配の方まで幅広い方にお使いいただくために、より若い人でもよりナチュラルに聞き取れるように、低音域の音圧を高め、まろやかにしました。年齢とか聴覚に個人差は出てしまいますが、幅広く聞きやすくした、ということですね。

――このようなパネルレシーバーは、最近は他社さんも対応し始めていますが、技術的な違いなどはあるのでしょうか。

辻岡氏
 まだ他社さんの製品を確認していないので、なんとも言い難いところがありますが、我々は“スマーソニックレシーバー”を「URBANO PROGRESSO」、「簡単ケータイK012」で採用し、これが3機種目になりますので、音出しのノウハウは同等以上のものは持っているという自負はあります。あとはディスプレイを振動させますので、この大きなディスプレイを振動させ、かつ、端末サイズもこのサイズに収めていくと言うところに、弊社のノウハウがあると思っております。

音声でアプリを起動できる「すぐごえ」を搭載。「すぐ文字」は履歴に対応

――3つめの便利機能について詳しく教えてください。

辻岡氏
 フィーチャーフォンの頃から好評の「すぐ文字」をベースに、新たに「すぐごえ」というオリジナルの機能を追加しました。「すぐ文字」とは、アプリを起動してから文字入力するのではなく、まず文字を入力してから連携アプリを選ぶと、文字が引き渡されるという便利な機能ですが、スマートフォンになって、文字入力が面倒だから音声で入力できたらいいのに、という声を社内外からいただくようになりました。そこで、音声対応した機能が「すぐごえ」というわけです。ただ、単に手入力から音声に変更したのではなく、独自の設計思想のもとに、新しいアプリとして切り出しました。

 最近は音声入力機能が増えていますが、「すぐごえ」は、アプリの注力している部分、優先的に考えている部分が違います。「すぐ」というのは、「すぐ使える」というのと、「すぐ目的のことができる」という2つの意味があります。

――最近の音声機能では、わりと自由に話しかけて答えさせるというスタイルだと思いますが、「すぐごえ」はどういう部分が違うのでしょうか。

辻岡氏
 スマートフォンでダウンロードアプリが増えると、ランチャーが整理できず、目的のアプリが見つけづらくなります。たまにしか使わないアプリを探すのは特に大変です。自分でホーム画面にアプリのアイコンを並べて整理すればいいのですが、手間がかかって結構面倒です。そこで、起動したいアプリのアイコン探しに時間をかけず、音声でもっと簡単に起動できないか、というのが「すぐごえ」の発想の原点です。

 ですので、「すぐごえ」はアプリの「単純起動」と「連携起動」および「イベント応答」の3つの機能に絞っています。フリートークには対応していませんが、機能を絞り込むことで、操作の手数を減らし、アプリの素早い利用が可能になっているのが大きな特徴です。

――具体的にはどのようにして使うのでしょうか。

辻岡氏
 ステータスパネルやスリープ時の画面からもすぐ起動できますが、たとえば電卓を使いたいときは、「すぐごえ」を起動して、マイクのアイコンが表示されたら、「電卓」というアプリ名を言っていただくだけで電卓が起動します。これが「単純起動」です。

 「連携起動」は、話した内容に応じてアプリが起動するというものです。たとえば「日本対ブラジルの動画」というと、YouTubeが起動して、日本対ブラジルの検索結果を表示します。「の」が助詞なので、助詞を除いた「日本対ブラジル」を検索キーワードにしているわけです。また、「渋谷から六本木まで乗り換え」というと、これも助詞の部分を除いた固有名詞で出発駅「渋谷」、目的地「六本木」の駅名が設定された「乗換ナビ」が起動しますので、検索をタップすれば簡単に調べられます。

 電話も同様で、「吉田さんに電話」というと、「吉田**さんに電話しますか?」と聞かれるので、「はい」と返事をすれば発信しますし、メールでも「岡田さんにメール」「件名を教えてください」「明日の待ち合わせ」「本文を教えてください」といったやりとりでメールを作成し、送信できます。もちろん途中で手入力もできるよう、手と言葉と両方使えるUIにしています。

 「イベント応答」は、読み上げ機能ですね。ステータスパネルから読み上げ設定のオン・オフが可能なので、オンにしておくと、SMSを受信したときなどに自動的に「すぐごえ」が起動して、「SMSを受信しました」と知らせてくれます。そこで「読んでください」というと、非常になめらかな音声で読み上げてくれます。読み上げはCメールとEメール(キャリアメール)に対応しています。電話の不在着信時は、着信を知らせてくれるので音声でかけ直しの指示ができます。

――お天気や地図にも対応していますか?

辻岡氏
 たとえば「東京タワーまで歩いていきたい」というと、Googleマップが起動して、現在地から東京タワーまでのルートを表示してくれます。これを実際に手動で調べようとすると、駅を出て、地図を起動して、現在地を確認した上で、目的地を入力して、移動方法を指定して、とかなりの操作が必要になります。それが「東京タワーまで歩いていきたい」の一言で、現在地から東京タワーまで徒歩で移動する場合の表示をしてくれるわけです。駅を降りてすぐに目的地までのルートを知りたい方にはお勧めです。

 お天気の場合、お天気アプリをプリセットしていないのでアプリとの連携はできないのですが、「すぐごえ」を起動して「天気」というと、「調べたい地域を教えてください」と応答するので、地名を言えば調べられます。「横浜の天気を検索」といっても調べられます。

――起動するアプリは、あらかじめ決められているということでしょうか。どの程度まで対応してくれるのか知りたいときはどうしたらいいのでしょうか。

辻岡氏
 「動画」ならYouTube、「乗り換え」は乗換ナビ、「レシピ」ならCOOKPAD、「~を検索」というとGoogle検索といったように、対応アプリはあらかじめ決められています。「すぐごえ」ヘルプを開いていただくと、何ができるか分かるのですが、例文があるので、その通りしゃべっていただく仕組みです。そこのキーワードで次のアクションをどうするかというのを決めています。例文通りにしゃべらなければ動作できないのですが、今回は、まずはシンプルに作り、「すぐごえ」の処理の速さを優先しました。

 YouTubeを利用する方なら「動画」、レシピ使う方は「レシピ」というキーワードだけ覚えてもらえば結構です。「すぐごえ」のヘルプにある例文の中で自分が使いたいシーンに応じて、いくつかキーワードを覚えていただければ、すばやい反応で便利に使っていただくことができます。最初のうちはヘルプから、例文をご覧いただき、ちょっと練習をしていただければと思っています。

――単純起動で、アプリの名前が思い出せないものなどもありそうな気がします。

辻岡氏
 確かにダウンロードしたアプリの名前が英語表記だったり、長かったりして、呼び出しにくいこともありますよね。そんなときは設定で、呼び方を変えて登録することで、ショートカットのような使い方もできます。起動時に迷いそうだなと思ったらお使いください。

――これは端末側に音声認識エンジンを持っているのでしょうか。

辻岡氏
 音声認識エンジンは端末側では持っておらず、Googleを使っています。そこから先は端末の中で処理をしています。文字で返ってきたものに対して何をするかという判断と、アプリの実行までを端末の中でやっています。

――音声認識がGoogleということは、オフラインだと使えないということでしょうか。

辻岡氏
 その通りです。ただオフラインの場所はどこかといったら、地下鉄のトンネル内とか、そもそもしゃべりにくい環境ですので、さほど影響はないと考えています。

――イントネーション含め、音声読み上げがとてもなめらかで驚かされたのですが、これは特別な技術ですか?

辻岡氏
 音声読み上げのエンジンは外部のメーカーのものを使っていますが、最近は特に高い品質になっていると感じます。ちなみに、音声に関しては男性と女性を切り替えることができます。

――ロックをかけていた場合はどうなるのでしょうか。声紋認証への対応なども考えられますが。

辻岡氏
 パターンロックなどをかけていた場合はセキュリティを優先してロック画面から使えないようにしています。声紋認証への対応は今後の課題だと思います。実はその辺も視野にいれて端末の開発を行いましたが、声紋認証技術自体が、セキュリティとすぐごえの特長である速さを両立するにはまだ不十分だと判断しました。

――話して、といわれても、何をどう話しかけていいのかわからないこともあるので、アプリに絞り込んでいるというのはいいかもしれないですね。

辻岡氏
 全部音声で使ってくださいというつもりは全くなく、自分がこれだったら音声入力って確かに便利だなというシーンだけ使っていただければいいかなと思います。特に「電話帳」「電話」「動画」などは速いですし、キーボード入力では、入力しづらい文字列もあります。Google側の辞書が優秀なので、入力が面倒なフレーズの検索もスピーディにできると思います。

――連携起動できるアプリはプリセットのみのようですが、今後必要に応じて拡張して行く予定はありますか。

辻岡氏
 はい。今後検討していきたいと思っています。

――一方で、元祖「すぐ文字」のほうはいかがですか。

辻岡氏
 こちらも実用性重視で進化させています。具体的には履歴に対応しました。

――履歴に対応するとどのようなメリットが生まれるのですか?

辻岡氏
 履歴の利用シーンで一番想定したのは乗換検索です。同じ区間、たとえば弊社の横浜事業所のある東京田園都市線の市が尾駅から、弊社の原宿事業所がある明治神宮前に行く場合。そのたびに駅名を入力して乗換検索してというのが非常に煩わしいなと感じたのがきっかけです。一度入力して乗換検索を使うと、次は履歴から選ぶだけで出発駅と到着駅がセットされた状態で乗換アプリが起動します。もともと「すぐ文字」自体がスピーディですが、頻繁に同じ単語や数値を入力する場合は、さらに便利に使えるようになると思います。

ステータスパネルにアプリのショートカットを配置

――先ほどからチラチラ見えているステータスパネルが、他社のものとはだいぶ違うようです。カレンダーやアプリのアイコンが見えるのですが、特別なカスタマイズを施しているのでしょうか。

辻岡氏
 ウィジェットが貼れるわけではありませんが、ウィジェット調になっています。実はステータスパネルの中に、アプリのショートカットが最大10個配置できます。初期状態ではすぐごえ、すぐ文字、電話帳、アラームの4つが入っていますが、よく使う物を最大10個まで選べます。他社でも設定やWi-Fiのオンオフといったスタンダードなメニューの出し入れは可能になってきていますが、カレンダーを貼り付けたり、ショートカットを入れるといったカスタマイズは初めてかもしれません。

――どこまでカスタマイズできるのですか?

辻岡氏
 ON/OFF設定、お知らせ、アプリのショートカット、簡単SNS投稿、付箋メモ、月間カレンダー、週間カレンダーといったブロックがありまして、順番を入れ替えたり、表示/非表示を切り替えることもできます。アプリへのアクセスを重視する場合は、アプリのショートカットを一番上にもってくるといったことも可能です。ステータスパネルからアプリを直接起動することで、ホーム画面に戻らなくても、アプリの切り替えが簡単にできるようになります。

――そのほかに工夫されているところはありますか。

辻岡氏
 電話、メール、SNSなどの着信通知がロック画面上で確認できたり、電話帳のタブを大きめにして、切り替えが簡単にできるようにしたりしています。

 電話アプリにも手を加えました。スマートフォンを初めて触った方は電話の取り方が分かりにくいと思います。着信はしているけれど、どこを触っていいかわからない。そこで、着信したら表示される受話器の絵を右にスライドさせるだけのシンプルなインターフェイスにしました。さらにボタンに日本語の表示を入れたり、発信履歴と着信履歴を別々に表示できるようにするなど、細かい配慮をしています。

 フィーチャーフォンのスライドモデルでやっていた着信の非表示も引き継いでいます。スマートフォンは画面が大きくむき出しになっているので、誰から電話かかってきたか周りの人にすぐ分かってしまいます。ですから、着信時は隠しておいて、タッチしてから確認できるようにしました。

 他には、ランチャーのカテゴリの切り替えが素早くできるようにしたり、URBANOで好評いただいたシンプルメニューにも対応しています。

大容量バッテリーを積みながらまとめ上げたデザインへのこだわり

光永直喜氏

――今回のデザインはどんな点に注力されたのか教えてください。

光永氏
 「DIGNO S」は、高性能端末ですので、そういった機能や性能のよさをデザイン面からも表現できたらと考えました。あえてラウンドの造形を徹底的に用いて、高性能感を凝縮したようなイメージで、全体的に非常にシンプルに見せているというのが注力ポイントです。

 その中でもこだわったのが、サイズ、特に幅ですね。ディスプレイが4.7インチにまで大きくなると、横幅が広がって、だんだん手に持つのが辛くなってくるだろうなと思いました。しかも、今回は2520mAhもの大きなバッテリーを積んでいるため、それを感じさせず、違和感なく使っていただくために、背面のR(丸み)をしっかり取りながら、幅は徹底的に狭め、66mmという片手でも持ちやすいサイズに収めることができました。1世代前に比べると、額縁の太さが半分くらいになっています。細かいところでは、非常によく触る電源キーも、アルミを使って、質感と耐久性を両立させています。

――黒だけ背面の質感がワイルドな感じですね。

光永氏
 今回、白・黒・ピンクと定番カラーを投入していますが、シンプルなカラーだからこそ、それぞれにこだわった色になっています。中でも一番こだわったのが、黒です。黒は指紋がつきだすと手に負えないくらい目立ってしまうので、まずはそういった指紋対策を含めて、ちょっと差別化をしていきたいなと思いました。黒は人気がありますので、他社でも定番化していて、どうしてもスマートフォンのラインナップ全体が黒ばかりになってきます。そこで機能性も備えつつ差別化させるために、凹凸感のあるザラっとした質感を取り入れています。この質感はどこでもできるわけではないので、非常に苦労しながら作り上げました。

 白は最近かなり人気が出てきている色だと思いますが、カラーバリエーションの調査をすると埋もれてしまうところがあります。また、店頭でも同じような感じでまとまってしまいがちです。そこで、少し今までと違うことをやろうということで、あえて定番の蒸着処理には頼らずに、サイドパーツの色に明るいシルバーを持ってくるなど、色と質感を工夫して、ニュートラルな白でありながら、質感もしっかり担保できるような配色に仕上げています。

 ピンクについては、スマートフォンはサイズが大きくなってくると、淡いピンクは安っぽく見えてしまいがちですが、かといって濃いピンクですと他社との差別化が難しくなります。そこで、上品な、落ち着いたピンクを目指して、あえてオールドローズみたいな、淡いピンクでも、濃いビビッドなピンクでもない、でもパール感もあり、輝度もかなりあるけれど、少し今までとは違う深みのあるピンクに仕上げています。

――バッテリーの容量が大きくなったことで影響を受けたところはありますか。

光永氏
 やはり一番は厚みですね。下半分以上がほぼ電池というくらい大きく、残りの半分以下の中にいろいろな部品が入っていますから。電池の種類も変えながら、このサイズ感、デザインに収まる工夫を随所に施しました。

辻岡氏
 上半分は、技術者がだいぶ苦労して狭いスペースに部品を入れ込みました。アンテナもいっぱいありますから。

――背面に並んでいる5つの穴はなんですか?

光永氏
 充電用の端子です。これももう開発当初はデザインが良くなかったです。端子がむき出しで、クマの爪にでもやられのたのか? というくらい大きくて、このまま製品化したら耐えられないくらいでした。これは何とかしなくてはいけないということで、だいぶ技術者と仕様の打合せをしました。

――最後に読者にひとことお願いします。

辻岡氏
 仕事などで長時間テザリングしても大丈夫というくらいの超大容量バッテリー、急速充電、便利機能を中心に、細かい部分の使い勝手にもこだわった京セラらしい端末に仕上がっていると思います。性能も使いやすさも大事という方にお勧めです。店頭のデモ機には、「すぐごえ」と「スマートソニックレシーバー」の体験アプリが入っているので、こんなことができるんだ、というのをぜひ実際にお試しください。

光永氏
 2520mAhものバッテリーを搭載しながら、これだけコンパクトで自然に仕上げた自信作です。ぜひ手にとってみてください。持っていただくと、そんなに大きくないことに気づいていただけると思います。

――本日はどうもありがとうございました。




(すずまり)

2012/11/13 10:00