「MOTOROLA RAZR IS12M」開発者インタビュー

スリムなのにハード、パワフル、クレバーな新生RAZR


MOTOROLA RAZR IS12M

 auは春モデルとして、「MOTOROLA RAZR IS12M」を発売した。世界的なヒット商品となり、NTTドコモからも発売された、薄型携帯電話「RAZR」シリーズのスマートフォン版だ。RAZRの名前を受け継ぐだけに、従来のRAZRシリーズよりもさらに薄くなった7.1mmのボディは、まさにカミソリのような鋭さを持ったデザインになっている。

 薄いという以外でも、鋭さを持った作りとなっている。ワンセグなどの日本仕様は搭載しないが、4.3インチの有機ELディスプレイや1.2GHzのデュアルコアCPUを搭載し、Webtopなどのユニークなモトローラ独自機能など、薄型ボディならがスペック・機能面は充実している。

 今回はこの新生RAZRについて、モトローラ・モビリティ・ジャパンのモバイルデバイス事業部 営業統括本部長兼CP事業統括部長の高橋博氏と同事業部 シニアプロダクトマーケティングマネージャーの宮川典昌氏にお話を伺った。

「スリムなのにハード、パワフル、クレバー」

非常にスリムなデザインを実現している

――まず、MOTOROLA RAZRの製品コンセプトからご紹介をお願いします。

宮川氏
 「スリムなのにハード」、「スリムなのにパワフル」、「スリムなのにクレバー」という3つのコンセプトがあります。

 まず「スリムなのにハード」ですが、このRAZRは7.1mmという薄さでありながら、強度の高いボディを実現しています。ディスプレイ側はスマートフォンでおなじみのゴリラガラスで、背面側は樹脂繊維のケブラーを使っています。ケブラーは防弾チョッキなどにも用いられる素材で、同じ重さの鋼鉄に比べると5倍の強度があると言われています。

 さらにフレームにも金属を使っています。これにより、傷がつきにくいだけでなく、ひねりにも強くなっています。また、防水ではないのですが、内部の基板などを含め、全体に撥水コーティングが施されており、ちょっと水がついた程度では壊れにくくなっています。

 「スリムなのにパワフル」のところですが、今回は1.2GHzのデュアルコアプロセッサーを採用しました。このレベルのプロセッサー自体は、いまどき珍しくありませんが、この薄さで実現しているのが特徴になります。システムメモリは1GBを搭載し、ディスプレイは省エネ性能が向上した4.3インチのSuper AMOLED Advancedで、カメラは800万画素を搭載してフルHDの動画撮影にも対応しています。

 最後に「スリムなのにクレバー」です。自動的にパフォーマンスとバッテリー消費を最適化する「SmartActions」、パソコン内のファイルをインターネット経由でストリーミング再生できる「MotoCast」、テレビなどに接続してパソコンのように使える「Webtop」といった機能に対応しています。

ケブラー製のバックパネルは取り外しできない

――バッテリー容量は1780mAhと大きめですが、バックパネルは固定式で、バッテリーも交換できないのですね。

宮川氏
 薄型化に有利なビルトイン式でデザインしました。バッテリーの交換などの保守サービスも検討しています。

――モトローラ独自のユニークな機能が多いようですが、まず「SmartActions」とはどのような機能なのでしょうか。

宮川氏
 「バッテリーの持ちを最大30%伸ばす」としてご紹介していますが、結果的に省電力にもなるというだけで、実際にはいろいろな場面で役に立つ機能となっています。具体的には、「トリガー」と「アクション」を組み合わせたルールで、さまざまな操作を自動化できるという機能になっています。

SmartActionsの設定画面

 トリガーには「何時から何時まで」、「自宅に到達する」、「バッテリー残量が○○%以下になる」、「充電中」、「ヘッドホンを接続する」、「モーションセンサーの反応がなくなる」、「カレンダーに予定が入っている時間帯」、「不在着信」などの種類があり、これらを複数、組み合わせることができます。

 アクションには「着信音の変更」、「壁紙の変更」、「テキストメッセージの送信」、「アプリケーション起動」、「ウェブサイト表示」などがあります。

 たとえば、夜間、ディスプレイがオフになっていて、充電中で、モーションセンサーに反応がないとき、つまり就寝中に自動で着信音をオフにしたり、会議中に不在着信があったときに自動でテキストメッセージを送信する、といったルールを設定できます。ルールにはサンプルも用意されていますが、ユーザーの利用パターンを学習し、自動構成したルールを提案するという機能もあります。

SmartActionsのトリガー例SmartActionsのアクション例

――「MotoCast」はどういった機能なのでしょうか。

モトローラの宮川氏

宮川氏
 パソコン上で専用のサーバーソフトウェアを起動させておくことで、RAZRからインターネット経由でパソコン内のファイルにアクセスできるというものです。RAZRにプリインストールされているファイルマネージャーを見ると、MotoCastコンピュータという項目が見えるので、こちらからパソコン上で共有設定されているフォルダが見える、という仕組みです。

 パソコンが起動している必要がありますが、モトローラのサーバー経由を経由することで、Wi-Fiはもちろん、3G経由でも利用できます。動画や音楽のストリーミング再生にも対応しています。

――これはファイルマネージャーからしかアクセスできないのですか?

宮川氏
 プリインストールされているアプリのうち、アイコンに印がついているものは、MotoCast経由でパソコン上のファイルに直接アクセスできます。もちろん、ファイルマネージャーでファイルをRAZRにコピーすれば、どのアプリからも利用できるようになります。

HDステーションでテレビに接続。マウスとキーボードは、USBあるいはBluetoothで接続

――最後に「Webtop」のご紹介をお願いします。

宮川氏
 Webtopの機能は、「HDステーション」などの専用ドック経由でテレビとマウス、キーボードをつなぐことで、パソコンのように使えるというものです。前モデルである「MOTOROLA PHOTON ISW11M」と同じ機能になります。

 実際に画面を見ていただければ、おわかりいただけるかと思いますが、左側にRAZRの画面、右側にFirefox(ブラウザ)が表示され、パソコンのように扱うことができます。

――これは全部、RAZR内で処理しているのですか? ドック内にプロセッサーなどが入っているのでしょうか?

宮川氏
 すべてRAZR内で動かしています。ドックにはWebtopを起動するトリガーとなるデバイスIDが内蔵されているだけです。海外ではケーブルタイプのWebtop用アダプターも商品化されています。

 ちなみにこのデバイスIDを利用して、ドックの個体ごとに異なるデスクトップを記録しておくことができます。たとえば、会社のHDステーションにつなぐと、仕事用のデスクトップを表示させ、自宅のHDステーションにつなぐと、プライベート用のデスクトップを表示させる、といったことができます。

――Webtop画面の左側のウィンドウは、起動中のアプリがタブで表示される以外は、RAZRの画面そのものですね。

Webtopの画面

宮川氏
 RAZRのメールや通話といった機能も、Webtopから操作できます。横画面で全画面表示も可能ですし、RAZRにインストールされているAndroidアプリのショートカットをWebtop画面下のトレイに置いておくこともできます。

――Firefoxが搭載されているとなると、Webアプリケーションはたいてい動かせそうですが、Firefox以外のネイティブアプリは搭載されていないのでしょうか。

宮川氏
 ファイルマネージャーだけが独自のアプリとして搭載されています。

――RAZR側でパソコン並みのブラウザを処理しつつ、Androidプラットフォームを使うというのは、なかなか処理能力が必要になりそうですね。

宮川氏
 デュアルコアプロセッサならでは、ですね。

――このWebtopのドックは、PHOTONと同じものが使えるのですか?

宮川氏
 HDステーションはPHOTON、RAZRとで異なります。

海外で製品化されているLapdock。バッテリーを内蔵し、RAZRにも電源を供給できる

――先般、開催された製品説明会では、Webtop用製品として海外で販売されているノートパソコン型の「Lapdock」なども紹介されていましたが、それらの国内展開は?

高橋氏
 Webtopのソリューションとしては、まずはHDステーションから展開して広げていきたいと考えています。HDステーションは、卓上ホルダのイメージに近いので、日本のユーザーにとっても取っつきやすい製品になっています。そのほかの製品については検討中です。

――今回はグローバルモデルをベースとし、ワンセグや赤外線通信、おサイフケータイなどはありませんでした。今後、そういった日本独自に仕様をサポートされるのでしょうか? もしくはNFCは?

モトローラの高橋氏

高橋氏
 大前提として、モトローラが日本でビジネスを展開する上でベースとしている着眼点は、「日本のユーザーがモトローラに何を望むかをしっかり見極めること」です。日本のケータイ市場は、どちらかというとキャリア誘導型になっています。新サービスや新機能は、キャリアがドライブをかけることでニーズが作られ、普及していく、という面があると思います。そういった市場の中で、モトローラはどうするべきなのだろう、と。

 10年以上前であればともかく、現在、コンシューマのあいだではモトローラは認知度が低い状態です。率直に言って、モトローラに対する具体的な欲求がないと言わざるを得ません。モトローラはその部分から作っていく必要があり、いまは模索している状態です。モトローラはどのようにユーザーに認知して頂くべきなのか、このような部分を、まずは商品を出すことで培っていかなければならない段階にあると考えています。

 商品ポートフォリオの観点から見ると、日本にはワンセグ・おサイフケータイ・赤外線通信の3つの独自仕様があり、このうち、FeliCaはNFCとのワンチップ化することも技術的に見えています。製品説明会などでは、「前向きに検討」とお話しさせていただいていますが、ここが本当に求められているのか、見極めが必要なところでもあります。

日本では白と黒の2種類のカラーバリエーションで展開する

――海外と日本の違いを見ると、コンテンツのDRM(著作権管理)というところで、たとえばDTCP-IPなど、日本はかなり厳しいと思います。そのあたりはどのようにお考えでしょうか。

高橋氏
 ユーザー視点でいうと、今のDRMコントロールはパーフェクトではないと思います。グローバルモデルを日本に持ち込んだとき、ビデオも音楽も楽しめない、という状態になるのは良くないので、バランスが重要だと思います。しかし、現段階では、スマートフォンにおいてDRM関連には強い要望がありません。フルサポートしないと商品性がそぎ落とされる、という状態ではありません。やるかやらないかではなく、今はもっと広く見極めていきたいと思っています。もちろんネガティブな意味ではなく、ポジティブに、いろいろな視点で見ていきたいと思っています。このあたりは、FeliCaなどと同じですね。

――モトローラというと、分社化がありましたが、STBなどさまざまな機器を手がけてらっしゃいます。そういったモバイルデバイス以外の製品との連携はどのように取り組まれるのでしょうか。

高橋氏
 分社化によって、モバイルデバイス部門とSTBなどのホーム部門がモトローラ・モビリティになりました。これら2つの事業部門が独立で展開しているわけではなく、将来性について、いろいろな観点で健闘しています。たとえばAndroidプラットフォームでのソリューションの融合など、ビジネス全体で訴求力の強い連携ができるようにしよう、ということが目的で、今回の分社再編がありました。

 AndroidをベースにしたSTB、ケーブルモデムを利用した連携ソリューション、NFCやワイヤレスHD、Google TVとの連携など、さまざまな分野に興味を持ち、水面下で研究開発を行っています。まだ具体的なお話はできませんが、今後にご期待いただければと思います。

――本日はお忙しいところ、ありがとうございました。




(白根 雅彦)

2012/3/2 10:00