「001SH」~「005SH」開発者インタビュー

スマートフォン投入で充実のラインナップ


シャープのソフトバンク向け冬春モデル

 シャープはこの2010年冬・春商戦に向け、ソフトバンク向けにはスマートフォン2機種と従来型のフィーチャーフォン3機種を投入する。シャープがソフトバンク向けにスマートフォンを提供するのは今回が初めてとなるが、3D液晶やAndroid 2.2搭載で、注目が集まるところだ。一方のフィーチャーフォンも、3機種と数こそ少なめだが、ハイエンドなAQUOS SHOT、女性ユーザーを意識したPREMIUMシリーズ、機能強化しつつも最廉価ゾーンを狙うPANTONEと、死角のないラインナップを構成している。

 今回はこれら5機種について、開発を担当したシャープの通信システム事業本部 パーソナル通信第二事業部の吉高泰浩氏と奥田計氏、吉田周太氏に聞いた。

シャープ初のソフトバンク向けスマートフォン

――まず今冬のラインナップの概要をご説明お願いします。

シャープの吉高氏

吉高氏
 シャープは今冬のソフトバンクモバイル様向けとして、スマートフォン2機種とフィーチャーフォン3機種を提供します。ソフトバンクモバイル様向けスマートフォンの商品化は、シャープとしては初めてになります。一方でまだまだフィーチャーフォンのニーズもあるので、フィーチャーフォンも手を抜いていません。フィーチャーフォンはラインナップ数としては多くありませんが、今回は、AQUOS SHOTやPANTONE等、主力モデルの新製品を投入してラインナップを強化しています。

奥田氏
 最初に「GALAPAGOS 003SH」からご紹介します。こちらはソフトバンクモバイル様向けのシャープ製スマートフォンの第1号機になります。大きく分けて「メガネ不要の3Dテクノロジー」、「Android 2.2への対応」、「TapFlow UI」、「日本仕様へのカスタマイズ」の4つの特徴があります。

GALAPAGOS 003SH

 まず今回、3.8型の視差バリア式3D液晶を搭載しました。画面が縦向きでも横向きでも3Dになります。この3D液晶を搭載するにあたり、3Dが楽しめる動画、静止画、ゲームなどコンテンツも豊富に準備しています。こうした3Dのコンテンツをたくさん用意し、今回はその一部をプリインストールしています。ゲームについても、バイオハザード・ディージェネレーションやモバイル・パワフルプロ野球3D、ロックマン、魔界村騎士列伝などの3D対応アプリをプリインストールしています。

 また、UIも3D化しています。ホーム画面で3Dのボタンを押すと、アイコンが浮いてくるように表示されます。壁紙は2Dのものも立体的に見えますが、3Dの静止画壁紙を使えば、壁紙自体も奥行きを持って表示されます。

――壁紙に使う3D画像データは自分でも作れるのでしょうか。

奥田氏
 3D静止画MPO形式ファイルであれば利用できます。また、003SHで撮影した3D写真も利用できます。この3D写真撮影機能では、003SH自体を横に動かしながら撮影することで、左目と右目の映像をそれぞれ撮影するというものです。このほかにも、普通に撮影した2Dの写真を3Dに変換する機能も搭載しています。動画も3Dに変換する機能を搭載しています。

――Androidのバージョンは2.2を搭載されていますね。

奥田氏
 Android 2.2を搭載することで、Flash対応やアプリの動作速度改善などが図られています。また、対応しているアプリであれば、microSDカードにアプリを保存できるようになっています。

――TapFlow UIというのは?

カメラのサブメニュー

奥田氏
 カメラとピクチャー、電話帳の3つのアプリについて、いままでのケータイの使いやすさを活かしつつ、スマートフォンならではのタッチ操作や、つながりやすさ、新しさを楽しんでもらえるようなUIを作りました。

 たとえば003SHのカメラは、CCDを採用しており、連写や高感度をセールスポイントとしている部分もありますが、そういった多彩な機能を使いこなしやすいように、UIを作り上げています。カメラ画面でメニューボタンを押すと、メニュー項目がふわっと降るように表示されます。このタイル状に並べられた項目は、使用頻度などに応じて大きさが変わり、よく使う機能にスピーディにアクセスできるようになっています。このほかにも、たとえば夜にカメラを立ち上げると、夜景のシーン撮影機能がオススメされるといった、要素を取り入れました。

 ピクチャー表示でも、同じようにTapFlowのメニューが使えます。たとえば写真をよくメールで送信するならば、送る相手も学習していきます。写真を並べて表示する画面でも、写真を大小のタイルに自動加工して表示させるモードを用意しています。こちらは被写体が人物と認識すると、大きめにレイアウトされるようになっています。また従来のケータイ同様に、写っている人物の顔を識別して写真を分類する機能も搭載しています。

 電話帳機能では、従来のケータイと同じように、タブの切替やインクリメンタルサーチなどにも対応しています。新機能としては、電話帳に生年月日が入っていると、直近の誕生日を表示させる誕生日順表示モードも搭載しました。女性にはニーズの高い機能となっています。また、人物ごとにメールや発着信履歴のやりとりや、SNSとも連携し、mixiやTwitterのつぶやき、などを見ることができます。

――ホーム画面などの基本的な部分も、シャープ独自要素があるのでしょうか。

サムネイルを見ながら画面を切り替えられるインジケーターバー

奥田氏
 ホーム画面では3D壁紙対応に加えて、それぞれのシートをサムネイル表示し、切り替えたり並びかえたりできるシート一覧表示やや指でなぞる事でシートをすばやく切り替えられるインジケーターバーも用意しています。

 アプリのアイコンが並ぶランチャー画面も、同様にシート一覧表示やインジケーターバーを用意しています。Android 2.2はメモリカードに対応アプリを保存できるようになり、このランチャー画面の枚数が増える可能性があったので、ランチャー画面のシート枚数は、最大で100枚まで増やせるようにしました。このランチャー画面内でもアイコンの並べ替えが可能になっていて、さらにそれぞれのシートに名前を付けられるようになっています。

 細かいところですが、ホーム画面には標準のAndroid同様にフォルダ機能があるのですが、そのフォルダのアイコンも半透明にして、中に入ったアプリアイコンが見えるようにしました。

――おサイフケータイなどの日本仕様に対応されているのも特徴ですね。

奥田氏
 おサイフケータイやワンセグ、歩数計、初回起動時のスタートアップウィザード、赤外線通信機能、シャープケータイの特徴でもある名刺読み取り機能も引き続き搭載しています。

――ワンセグは録画などの機能もありますか?

奥田氏
 対応しています。予約録画や番組表といった機能に対応しています。AQUOSブルーレイで録画した動画を転送して003SHで視聴することも可能です。

――日本独自と言えば、メールまわりはどうなっているのでしょうか。

絵文字の入力画面

奥田氏
 ソフトバンクモバイル様ともお話をしながら、弊社独自のメールアプリを開発しました。とくにこだわったのが、デコレメールです。マイ絵文字やソフトバンク絵文字、顔文字、記号、テンプレートを使った装飾など多彩な機能を搭載しています。

 フォルダを隠すシークレット機能もあります。グローバルのスマートフォンにはなかなかこういった思想がないところなのですが、日本のケータイでは従来から搭載しているので、003SHでも搭載しました。シークレットフォルダは自動振り分けも可能で、シークレット設定すればフォルダの存在自体を隠せます。

 文字入力については、iWnnを搭載しました。フリック入力やワイルドカード入力、入力ミス補正などにも対応しています。

――このほかの特徴となる機能は?

奥田氏
 もちろんWi-Fiにも対応していて、DLNAサーバー機能も搭載しています。カメラについては先ほどもご紹介しましたが、9.6メガCCDを搭載し、個人検出やコンティニュアスAF、HD動画撮影にも対応しています。HDMIケーブルにも対応しているので、撮影した動画をAQUOSに映し出したり、3Dコンテンツは3D対応AQUOSで表示させることも可能です。

――デザイン的には、ホワイトやレッドがスマートフォンらしくなくて良いですね。

オプション販売される背面カバー

奥田氏
 これまでのスマートフォンというと、「ビジネス用途でブラック」みたいな感じでしたが、今回はミラノレッド、ホワイト、ブラックの3色を用意しています。ホワイトも女性に好評なパールが入ったもので、ブラックは少しブルーのニュアンスのかかった黒となっています。

 あとは背面のカバーについては取り替えが可能で、標準以外にも10種類のデザインのカバーが販売される予定です。

フルキーボード搭載のAndroid端末

――続いてキーボード付きの「GALAPAGOS 005SH」のご紹介をお願いします。

GALAPAGOS 005SH

奥田氏
 005SHは、発売が来年2月中旬以降ということでまだ開発中のモデルになりますが、CPUやOSなどは003SHと同じものを搭載しています。外観をごらんいただければわかりますが、005SHはQWERTY配列のフルキーボードを搭載しているのが特徴になっています。

 このキーボードの配置にも工夫を凝らしていまして、たとえばスペースキーとエンターキーを大きめにすることで、日本語入力で重要な変換や決定と言った操作をしやすくしています。絵文字ボタンや記号ボタン、かなモード切替ボタンを搭載したことで、日本人のメール文化に最適化された操作が可能になっています。

――カーソルキーが左側というのは、スマートフォンでも珍しいと思います。

シャープの奥田氏

奥田氏
 通常、いままでのスマートフォンなどでのQWERTYキーボード搭載端末だと、パソコンに準拠し、カーソルキーは右側に搭載されることが多かったのですが、今回はあえて左側に搭載しました。

 スマートフォンと同じく両手で握って使うゲーム機のコントローラーでも、カーソルキーに相当する十字キーは通常、左側に配置されています。左側に配置することで、ゲーム世代にも操作しやすくなっています。実はカーソルキーを右側に置くと、アルファベットのキーが全体に左側に偏りますが、それに対して左側に置くと、アルファベットのキーが中央に寄り、両手の指で押しやすくなるメリットもあります。

――フルキーボード搭載ですが、あまりガジェットっぽさのないデザインですね。

奥田氏
 フルキーボード搭載端末というと、どうしてもビジネス向けに角張ったデザインになりがちですが、今回はキーボードをしまったフルタッチスタイルでも使いやすいように、ラウンドフォルムに仕上げました。

 デザイン面でいうと、従来のスマートフォンでは本体カラーに寄らず、ディスプレイ周辺は黒くする仕様が多かったと思いますが、今回はホワイトのモデルではディスプレイ面もホワイトにしています。

 スライドも片手で開閉しやすいように、スライド部の左右に歯車をかませ、左右を軸で繋ぐことで、スライドが斜めに開いて突っかかったりしないようにしています。

高機能な002SH、004SHと低価格帯を狙う001SH

――次はスマートフォンではない、従来型のフィーチャーフォンのご紹介をお願いします。

002SH

吉田氏
 まずは「AQUOS SHOT 002SH」からご紹介します。こちらは、2010年冬モデルでのシャープ製ソフトバンク様向けフィーチャーフォンとしては、もっともハイスペックなモデルになります。

 前モデルの「AQUOS SHOT 945SH」に比べると、デザイン的にもがらっと変わり、丸味を帯びた、ツヤと透明感のあるデザインになっています。重さも945SHが140gだったのにたいし、002SHは134gへと軽量化しました。これは表面素材を変えたり、内部機構に工夫を重ねることで、薄型コンパクト化と軽量化に成功しています。また、防水防塵などの基本性能は引き続き搭載しています。

――AQUOS SHOTということで、カメラが強化されているのでしょうか。

14メガCCDカメラを搭載する

吉田氏
 945SHよりも高画素化し、今回は1410万画素のCCDを搭載しています。ほとんどデジカメ並です。高画素カメラを搭載すると、カメラ機能の起動が遅くなることがありますが、002SHでは「ON速起動」として、最短で0.5秒で起動するようになっています。ケータイのカメラは常に持ち歩くものなので、撮りたいと思った瞬間に逃さず撮れるように、高速起動を訴求ポイントとしています。

 カメラの機能として、基本的に945SHでも搭載している機能は引き続き搭載しているのですが、今回は顔検出機能と似た機能として、ペットの検出にも対応しました。また、連写機能も強化されて、フルHDの解像度であればスピード連写に対応しています。連写の中からブレや顔の向き、目の瞬きを見て最適な写真を選ぶベストセレクトフォト機能も搭載しています。機能としては、魚眼レンズ風に撮影したり、ミニチュア風に撮影するモードも搭載しています。

――HD動画にも対応されているのでしょうか。

シャープの吉田氏

吉田氏
 引き続き対応しています。HD解像度の動画をHDMIでテレビに出力しても楽しめます。HDMI端子では、カメラのファインダー画面をHDMI出力する、ファインダスルー機能にも対応しました。プレゼンテーションで手元にあるものを大写しにするときなど、使い方の幅を広げていただけるかと思います。

 また、今回も高速マルチメディアエンジンを搭載しています。これにより、文字入力などあらゆる操作でレスポンスや処理速度が向上しています。これは945SHでも搭載していたのですが、操作レスポンスの良さについてユーザーからの評価が高かったので、今回は大きくプッシュしています。

――続いて004SHの紹介をお願いします。

004SH

吉田氏
 「THE PREMIUM7 WATERPROOF 004SH」は、女性に好評なPREMIUMシリーズの最新モデルで、そうした従来のPREMIUMシリーズのユーザーからの声を取り入れました。今回はラウンドフォルムデザインで防水を実現しています。デザインテイストとしては、女性が持ち歩く化粧品をイメージして、ツヤのあるみずみずしい透明感を持ち、プレミアム感のあるデザインに仕上げました。

 カラーバリエーションは標準の5色に加え、PAUL & JOEとのコラボレーションモデルも用意しています。

――機能面で言うと、CCDカメラなど比較的上位モデルに近い機能を搭載されていますね。

吉田氏
 ハードウェア以外は共通の部分が多く、魚眼カメラなど、002SHで搭載している機能は、こちらでも搭載しています。また、スイベルではない折りたたみデザインでは初めて、ディスプレイにタッチパネルを採用しました。

――二軸でない純粋な折りたたみでタッチパネル、というのは珍しいですが、いったいどういった意図があるのでしょうか。

吉田氏
 折りたたみ端末でもタッチの直感操作とカーソルキー操作を両立させることを狙いました。スマートフォン志向の人向けというわけではなく、スマートフォンの普及によって一般的になった「タッチによる直感操作」を取り入れ、さらに使いやすくしよう、と考えました。

――タッチではどのような操作ができるのでしょうか。

吉田氏
 キーでできることは一通りタッチでも操作できます。スイベルデザインの002SHのような、タッチだけで操作できる端末と同じタッチUIを搭載しています。ただし、文字入力はキーでできるので、タッチでの文字入力には対応していません。

 あとはカメラ機能において、画面をタッチするだけでフォーカスあわせからシャッターまでを行ってくれる「ワンタッチシャッター」という機能を設けています。この機能、実は002SHでも搭載しているのですが、そちらでは初期設定ではOFFになっています。対して004SHでは、初期設定でワンタッチシャッターがONになっています。AQUOS SHOTを買うようなユーザーは、コンティニュアスAFなどで撮影するかも知れませんが、004SHのユーザーは、「タッチした被写体にフォーカスを合わせて撮影する」という直感操作が便利なので、004SHだけ初期設定ONとしました。

――最後にPANTONEの新機種のご紹介をお願いします。

001SH

吉田氏
 「PANTONE3 001SH」は、PANTONEケータイ第3弾になります。前モデルの「NEW PANTONE 830SH」に比べると、画面が大きくなり、ワンセグも新たに搭載しました。低価格での販売も視野に入れた廉価モデルでありながら、ワンセグを載せ、なおかつ重量は95.8gと軽量化しています。コンパクトでありながら高機能で、さらにカラーバリエーションの豊富さでも訴求していく端末になります。

――デザインテイストが従来のPANTONEシリーズを踏襲していますね。

吉高氏
 PANTONEシリーズのイメージがすでに構築されているので、それに合わせています。さまざまな端末が登場していますが、このサイズ感はPANTONE以外になかったので、あえて再びPANTONEケータイを登場させました。このPANTONEのデザインイメージを踏襲しつつも、一方ではいままでのPANTONEよりもさらにお求めやすい価格帯を狙っています。

――ソフトバンクモバイルのCMキャラクターである「お父さん」のケータイになっていますが。

吉田氏
 初回出荷限定でストラップが付属するほか、メニュー画面や待受画面などもお父さんデザインのものがプリインストールされます。アラーム音としてお父さんの声を収録しています。

――本日はお忙しいところ、ありがとうございました。



(白根 雅彦)

2010/11/29 12:11