「SH-07B」「LYNX SH-10B」開発者インタビュー

フルHD対応のAQUOS SHOTとシャープ初のAndroid端末


SH-07BとSH-10B

 シャープは今夏、ドコモ向けには4機種を投入する。その中でもPRIMEシリーズの「SH-07B」は、フルHD動画撮影に対応するなど注目するべき点が多い。また、シャープ初のドコモ向けAndroid端末となる「LYNX SH-10B」も、QWERTYキーボードを搭載した独特な形状とシャープならではのAndroidへの味付けなど興味深い端末だ。

 今回は主にこの2機種について、シャープの通信システム事業本部 パーソナル通信第一事業部 商品企画部の木戸貴之氏と田中陽平氏にお話を伺った。

――まず今シーズンのラインナップの概要をご紹介お願いします。

木戸氏
 今夏、シャープはドコモ向けにSH-07BからLYNX SH-10Bまでの4モデルを提供します。4月にSH-06Bが発売されているので、今シーズンは全5モデルとなります。今シーズンも幅広いお客様に商品を提案するべく、SMARTシリーズとスマートフォンにも初めて展開しています。

シャープの木戸氏

 PRIMEシリーズはSH-07Bです。昨冬モデルと同じ1200万画素ですが、カメラ機能を強化し、フルHDムービー撮影に対応しました。それもただフルHD動画を撮る、というだけでなく、動画を撮った後に大画面で楽しめるよう、HDMIにも対応しています。ビデオカメラを持っていなくても手軽に動画の撮影ができます。HDMIではビデオ以外にもフルブラウザなどの映像も出力でき、「AQUOSとケータイ」をつなぐことによって大画面でのブラウジングまで快適にできることを提案していきたいと思っています。

 STYLEシリーズのSH-08Bは、これまでとはちょっとテイストを変えました。折りたたみデザインですが、表も裏もフラットなデザインになっています。カメラ部分が膨らんでいるといったことはありません。今回はEMILIO PUCCIとのコラボレーションをしていますが、外観デザインだけでなく内蔵コンテンツでEMILIO PUCCIの世界観を表現しています。外観デザインとしては、カラーや柄について監修してもらいました。

 当社として初めてのSMARTシリーズとなるSH-09Bは、薄型化に注力しています。今回、ディスプレイ側を4mmに抑えました。ビジネスパーソン向けのモデルとして、実用系の機能にも注力しています。具体的には電子辞書の強化などがあります。カメラで読み取った漢字や英単語を辞書で検索する「ラクラク瞬漢/瞬英ルーペ」などの機能を搭載しました。

 スマートフォンのLYNX SH-10Bは、シャープがドコモ向けに提供する初めてのスマートフォンになります。フルキーボードを搭載するAndroid端末となっています。

SH-08BSH-09B

SH-07B

――相変わらず豪華で豊富なラインナップですね。とりわけ、PRIMEシリーズのSH-07Bと、スマートフォンのLYNX SH-10Bの2機種が気になります。SH-07Bからご紹介をお願いします。

SH-07B

田中氏
 SH-07BはAQUOS SHOTの3代目の機種になり、カメラに特化したハイエンドモデルになっています。今回は静止画だけでなく、動画にも重きを置いて開発しました。また、シャープ製のPRIMEシリーズとしては初の防水対応となっています。

 デザイン面で言うと、外装に指紋が付きにくい表面加工を施しています。また、キーバックライトは今回初めて、7色に光るようになっています。赤のボディーカラーは角度で見える色が変わるような塗装になっています。

木戸氏
 今回もデザインはカメラ側を強調しています。従来機種ではピクチャライトとレンズの位置がずれて配置されていましたが、今回は同じ中心軸線上に配置されています。

――とくに動画機能が今回の目玉ですね。

田中氏
 センサの画素数は変わっていませんが、新たにフルHD動画の撮影に対応しました。また、今回は動画対応の強化と言うことで、バックマイクも搭載しています。

木戸氏
 CCDセンサー自体は変わっていませんが、フルHD動画に対応するために、処理系にはかなり手を加えています。

――SH-07Bには従来と同じくCCDセンサーが採用されています。CCDセンサーは一般的にHD動画に弱いと言われていますが、実際、どうなのでしょうか?

木戸氏
 そう言われているだけに一度チャレンジしたいと考えていました。フルHD(1080p)でも映画と同じ24fpsを実現しています。

田中氏
 フルHDではなく、720pのHD解像度なら30fpsの撮影画可能です。また、動画撮影中にも手ぶれ補正や顔認識フォーカスなどの機能が使えるようになりました。

 動画だけでなく静止画撮影も強化されていまして、たとえば撮影設定を2セット記録しておける「マイカメラ」という機能を搭載しました。

――撮影したフルHD動画はどのように見られるのでしょうか。

microDタイプのHDMI端子

田中氏
 液晶解像度はフルワイドVGAですが、やはりフルHD動画は大画面でご覧いただくのが良いと考え、HDMI端子の小型規格、microDタイプを搭載しました。テレビにあるHDMI端子と接続し、大画面で動画をお楽しみいただけます。

木戸氏
 ちょっと前に一時期、アナログのビデオ出力機能を搭載したモデルをやっていましたが、今回はデジタルの小型端子が規格化されたので、このタイミングで商品に採用しています。

――HDMIはメニューから切り替えて出力するのですね。

木戸氏
 常時HDMI信号の出力待機をさせていると、電池を消費してしまいます。ACアダプターを繋いでいないときはメニューから手動でHDMIに切り替えるようになっています。卓上ホルダなどで給電しているときは、HDMIを挿すだけで出力が切り替わります。

メインメニューもHDMI出力される

――動画だけでなくメニューなどもHDMI出力されるのですね。逆にHDMIだとできないことはあるのでしょうか?

木戸氏
 ワンセグはあえて出力しないようにしています。ケータイで録画したものを大画面で見たい、というニーズもあるかも知れませんが、大画面で見るとQVGAのワンセグの映像を拡大表示することになり、高画質のままご覧いただくのが難しいため、あえてご覧いただけないようにしています。

 ちなみに、元々は動画のためにHDMI端子を搭載しましたが、フルブラウザやゲームでも便利にお使いいただけます。縦画面で使うゲームも、AQUOSとの組み合わせだと「ファミリンク」機能で自動回転します。

――AQUOSとHDMI接続すると、AQUOS側のリモコンから操作できるのですね。

木戸氏
 ファミリンクII対応のAQUOSであれば、リモコン操作が可能です。AQUOSでなくても、メール着信の通知をオーバーレイ表示などには対応します。

――AQUOSとの連携機能が強化されていますね。無線LANとDLNAに対応する可能性は?

木戸氏

フルブラウザもテレビで利用できる

 AQUOSとの連携も強化していきたいと考えています。今後、DLNAが普及すれば、無線LANにも対応したいと考えていますが、当面はHDMIと無線LANは使い分けられていくと考えています。

 また、今後、アナログ放送終了に向けて、個人の部屋も薄型HDテレビに置き換わっていくはずです。そうなれば、携帯電話とAQUOSとの連携機能はますますご活用いただくシーンが拡がると考えています。

――このほかの新機能は?

田中氏
 ちょっと変わったところで、「スイングトーク」という機能を搭載しています。これは背面の8連イルミネーションLEDと加速度センサーを使った機能で、横に大きく振ると光の残像で文字を表示できるというものです。

 メール機能も細かいところで改善しています。たとえばメールを返信するとき、返信元のメールをタッチパネル操作でスクロールさせながら表示できるようになりました。

 また、日本語入力エンジンがケータイ ShoinからiWnnに変更され、操作方法なども若干変更されました。ワイルドカード予測変換やクイック定型文入力など新しい機能も搭載しています。

木戸氏
 セキュリティ・プライバシー機能としても、電話帳と連携し、シークレット登録した連絡先からの着信などを隠せるなど、細かい設定が可能になりました。

――シャープというと待受画面で押した数字をカレンダーに直接登録するなど、クイック機能が充実していますが、今回も搭載されているのでしょうか。

田中氏
 クイック機能を強化し、上級者向けの機能として「クイックマルチランチャ」という機能を新たに追加しました。これは使いたい機能名を1文字1キーの短縮入力で呼び出すというものです。たとえば「328」と入力すると、「す」の行、「か」の行、「や」の行で始まる「スキャン機能」や「セキュリティ設定」などの機能が検索されます。

――スペック表を見ると、電話帳の登録可能件数が2000件になっていますね。

田中氏
 1件あたり5番号5アドレスまで登録できるようになりました。これで一部のメーカーの電話帳登録件数が多い端末からも引き継ぎが簡単にできるようになります。

LYNX SH-10B

――続いてLYNXについてもご紹介をお願いします。

SH-10B
紅白のカラーバリエーションが用意される

田中氏
 形状が特徴となっています。タッチパネル対応の5インチのワイド液晶とパンタグラフ構造のQWERTYフルキーボードを搭載しています。この独特な形状を活かすアプリも搭載し、2台目端末のニーズを狙っています。

木戸氏
 ターゲットユーザーのイメージとしては、インターネットやメールはもちろん、ブログやmixi、Twitterを使いこなす女性に設定しました。新しいジャンルのコミュニケーションツールとして提案しています。

 スマートフォンというと、カラーはブラックかシルバーばかりですが、そことは一線を画す紅白のモデルを用意することで、「新しい商品ジャンルです」という思いを表現しました。

 新しいジャンルのスマートフォンとは言っても、携帯電話で慣れ親しんだ機能の多くを搭載しています。ワンセグ搭載ということで、日本独自仕様とも言われていますが、そういったところが重要ではなく、いままで普通のケータイを使っていた人がスムーズに違和感なく移行できるように、電話帳やちょっとしたUIの作法の部分にも力を入れています。

田中氏
 国内のケータイメーカーである強みを活かし、従来のケータイの使い方を踏襲した作り込みをしました。

――従来のケータイを踏襲したポイントとは?

赤外線通信ポートは背面にある

田中氏
 ひとつには、赤外線通信機能があります。普通のケータイとも電話帳データなどを簡単にやりとりできます。また、IrSimpleにも対応していますので、AQUOSへの画像の高速転送も可能です。

 カメラに関しては5.3メガですが、名刺リーダーや情報リーダー、QRコードリーダー機能といった従来の携帯電話でのおなじみ機能も搭載しています。

 そのほか、ソフトウェア面でもシャープオリジナルのアプリを搭載しています。

――どのようなアプリを搭載されているのでしょうか。

シャープの田中氏

田中氏
 通常のAndroidとの差分としては、標準のPOPメーラーの代わりに搭載しているオリジナルのメールアプリがあります。3ペイン表示に対応するなど、パソコンのメーラーを意識して作りました。宛先のインクリメンタルサーチによる入力なども可能です。

 さらに、Androidの使い勝手の部分にも手を入れています。通常のAndroidではアプリからデスクトップに戻るとき、ホームボタンを使いますが、その場合、アプリはバックグラウンドで動作し続けます。これはパソコンや従来のスマートフォンなどでは当たり前の概念ですが、普通のケータイではその都度アプリを終了させる、という使い方が一般的です。そこで、LYNXでは終話ボタンを押すことで、アプリを終了してからホーム画面に戻るようにしました。もちろん、通常のAndroidと同様にホームボタンも使えます。

木戸氏
 アドレス帳もFOMAからの移行を想定しているので、オリジナルになっています。メディアプレイヤーもオリジナルになっていまして、音楽も動画も、Windows Media Player 11のDRMにも対応しています。Blu-rayレコーダー連携機能も搭載しています。さらにDLNAサーバー機能も搭載し、LYNXで撮影した静止画や取り込んだ音楽をほかの機器から再生できます。

 いま考え得る機能で実現できるものは、可能な限り搭載しています。
――AndroidでDLNA対応というのは面白いですね。

木戸氏
 差別化要素のひとつとして搭載しています。シャープにはAQUOSがあるので、連携機能を強化して、お客様の楽しみ方や利便性を高めていきたいです。

――こうやって見てみると、LYNXはスマートフォンながら仕事向けというよりパーソナル向けになっていますね。

木戸氏
 パーソナル向けに機能を強化しています。今回は初めてのAndroidということでアプリ面の開発も頑張りましたが、それが本筋ではありません。アプリは市場に任せれば良いというお声もあります。メーカーはUIなどを頑張るべきで、どう使いやすくするか、ということに注力することで差別化を図らないといけません。

 もちろん、液晶やカメラモジュールなども手掛けるシャープにとって、そうしたデバイスも武器になります。

――さすがにこのデザインだと卓上ホルダは対応しないのですね。

木戸氏
 今後、検討はしていきたいと思います。

――横画面やフルキーボードなど独特な端末ですが、アプリ開発者へのサポートは?

木戸氏
 Androidの互換性には配慮して設計をしています。
また、今回、開発者向けの専用端末を先行発売し、開発者サイトも開設しているなど、アプリ開発者の方々への取り組みも行っています。開発者サイトでは、赤外線データ転送やサブカメラなどシャープが独自で開発したAPIも公開も行っています。

――本日はお忙しいところありがとうございました。



(白根 雅彦)

2010/7/6 06:00