「N-08A My Select Model」開発者インタビュー
贈り物としても喜ばれ、長く愛されるケータイ
NTTドコモが7月13日~10月12日の期間限定で販売中の「N-08A My Select Model」は、好きなパネルを選べて、イルミネーションにワンポイントのイニシャルまたは記号を入れられるというN-08Aのいわばオーダーメイド版。ドコモオンラインショップでしか購入できない珍しいモデルで、連日発売開始と同時に売り切れるという驚異的なセールスを記録している。
なぜこのようなモデルを考えたのか、その背景やコンセプトについて、NEC モバイルターミナル事業部 商品企画部のマネージャー 有田行男氏、同じく商品企画部の後藤充宏氏に伺った。
■「My Select Model」は連日即完売
――7月13日から受付を開始されていますが、現在までの反響はいかがでしょうか。
後藤氏
おかげさまでかなりの反響をいただいております。詳しいデータの分析はこれからなのですが、ターゲットを絞りこんでいることもあり、女性の方からの問い合わせがかなり多いようです。
――なかなか買えないという話もあるようです。オーダーメイド品に近いので、生産できる台数が限られてくると思いますが、現状1日でどの程度販売されているのでしょうか。
後藤氏
販売台数についてはお話しすることはできないのですが、できるだけお求めいただけるよう調整する予定です。
有田氏
実は、正直言ってここまで反響があるとは想像していなかったんです。もしかしたら誰も買ってくれないかもと心配していました。派手に宣伝したわけでもないので、みなさん結構知っていらしたということにもかなり驚いています。
――今オーダーしてから届くまでにどれくらいかかるのでしょう。
後藤氏
お住まいの場所によっては物流でかかる時間もありますので多少前後しますが、だいたいご注文いただいてから3週間程度になりますね。
■開発コンセプト
有田行男氏 |
――それでは改めて「My Select Model」の開発コンセプトを教えてください。
有田氏
新しい発売方式になって、ケータイを使い続けていただく期間がどんどん長くなってきてますよね。長くなってきているということは、次のモデルに置き換えるきっかけとしては、それまで以上に何か大きな動機付けがないと厳しいと思うんですね。
とはいえ、ケータイの機能はある程度出そろってしまいました。カメラついて、ワンセグがついて、画面が大きくなって、早くなって……というところで、今後さらにワンステップ、ツーステップのジャンプアップってなかなか難しい。もちろんそういったものも弊社としては考えていきたいと思っていますが、もう少し自分のそばに寄り添って、ずっと使っていられるものとか、愛着をもってもらえそうなものはないかという視点で、こういうモデルを提供してみたいと考えたのがきっかけです。
後藤氏
世の中にはシャツやスーツを始めとしたオーダーメイドって結構ありますよね。例えばスーツなら、まず形をどうしようかとか、ボタンは何にしようかとか、裏地は何にしようか、ということでかなり選べます。
後藤充宏氏 |
では電気製品におけるオーダーメイド品にはどういうものがあるかというと、まずパソコンのBTO(Build to Order)を連想されるのではないでしょうか。BTOの場合、デザインというよりは、性能を選びますよね。CPU、メモリ、ハードディスクはどうするという、かなり専門的なスペックに偏ったカスタマイズになります。
そこでケータイはどうかと考えると、お財布は忘れるけど、ケータイは取りに帰りますという話からも分かるように、電気製品の範疇ではありますが、いつも身につけているという意味で洋服に近いものかと思いました。かなりファッションに近いんです。パソコンのBTOのようにスペック的なものを選べるようにしたらどうかと考えてみると、ここまで機能が増えていますので、お客様が完全に機能を理解されて選べるほど、主体的に選べるでしょうか? 必ずしもそうじゃないですよね。
パソコンにしても、すごく詳しい方は細かく指定して選べると思うんですが、実際は細かい部分までどれがいいか分からない。結局パッケージにして、量販店などで販売員の解説付きで販売する例もありますよね。そう考えると、必ずしもスペックが選べるというよりは、外面的な部分を選べる楽しさを味わっていただくほうが先ではないかと考えました。
――外観を変えるという意味では、これまでも着せ替えケータイのようなものがありました。そうしなかったというのは何か理由があるんでしょうか。
後藤氏
もちろん着せ替えという話は出てくると思うんですけど、そうするとどうしてもバリエーションという方向に行ってしまうというのと、外せる仕組みを入れなければならないため、ちょっと語弊がありますが、外せるがゆえに完成度としてもう一つなところが生じてしまうんですね。弊社でも着せ替えはやったことありますが、外すことありきでデザインしなくてはいけないという制約もありました。
組み合わせパターンが豊富でも、色の組み合わせがチグハグになってしまったり、豊富すぎてむしろ失敗してしまうなど、ある種選ぶ苦しさみたいなものを味わうのは違うかなとも思いましたので、やはりメーカーならではの完成度で、どなたにも失敗なく選んでいただけるよう意識し、「My Select Model」ではあえて組んだ物をお出しするということにこだわりました。
――なるほど。通常のN-08Aとベースの部分で変えている部分はありますか?
後藤氏
機能は同じです。
■長く愛され、プレゼントとしてもご利用いただけるケータイを
――では「My Select Model」の特徴となる部分教えてください。
後藤氏
ターゲットを女性向けに絞るということもありまして、ベースモデルとなっているN-08Aの4色のカラーバリエーションから、「Airy White」と「Perfume Pink」という2色を採用しました。それに対してクリアパネルとイルミネーションの2つについて、自分の好みにあったものを選んでいただけるというのが「My Select Model」です。
お選びいただけるパネルのデザインは、「Airy White」と「Perfume Pink」ともに「フラワー柄」「ハート柄」「千鳥柄」の3種類です。マイセレクト特別仕様ということでラメも入っておりますのでかなりキラキラします。千鳥柄は割と大人しいので、男性でもご利用いただけるのではないかと思っています。
N-08Aはサブ液晶の横で光るワンポイントイルミも千鳥ですが、マイセレクト仕様のパネルの場合、ここを26種類のアルファベットと、ハートなどを含めた5種類のマークから選べます。つまり、指定したイニシャル1文字が、電話の着信やメールの受信時にふわっと浮かび上がるわけで、これが最大の特徴と言えるかもしれません。
外見的にはパネルとワンポイントイルミのカスタマイズですが、コンテンツとしては「My Select Model」独自の仕様として、待受画面に365日毎日変わるハート柄をご用意致しました。お正月、七夕、ハロウィン、クリスマスなど、中でもイベントに関しては専用のものを用意しておりますので、季節感や1日1日の移り変わりを感じていただけるようになっています。
今回、店頭販売は行わず、ドコモのオンラインショップのみになります。お客様にインターネットで注文していただき、それがドコモさん経由で直接自宅に届きます。そこでマイセレクト専用のキット箱もご用意しました。パネルを引き立てる形で台紙を入れまして、ある種おもてなしといいますか、プレゼントとしても使えるようにしています。
――パネルのパターンですが、現在かなり人気のようですし、もっと違ったものが欲しいという要望も出てくるのではと思うんですが、そういう要望に対してはどうお考えですか。
後藤氏
今回のモデルは、ベースモデルであるN-08Aの千鳥格子柄の世界観を崩さない範囲で、どこまで広げられるかというところからスタートしました。例えばストライプが入ってもいいのでは、とか、他の柄ではどうかなど試作もかなりたくさん作ったんですが、世界観を崩さず、なおかつ女性向けに振ったものというコンセプトの結果、落ち着いたのがハートであり、フラワーだったんですね。ですので、今回はこちらが最適ではないかなと考えています。
――現状、一番人気はどれでしょう。
後藤氏
かなり均衡していますが、やはりベースモデルにない柄が人気でしょうか。最初社内では白のフラワーがダントツ人気だったんです。でも聞けば聞くほどバラバラで、たまに男性社員がやってきて別の柄を指して「いや、おれはこれがいい!」なんて言い出しますし(笑)。2色×3種類でも十分に好みにあわせて選べる楽しさを味わっていただけているのではないかと思います。
■イニシャルでケータイに愛着を
――ワンポイントイルミのイニシャル部分ですが、選ばれる文字に差はあるんですか? 「X」を使う方はいらっしゃるんでしょうか?
後藤氏
さすがに現時点ではまだ「X」はいらっしゃらないようですね(笑)。せっかく買いたいと思ったのに私のがありませんというのではいけませんから、どんなパターンでも選んでいただくという意味で、アルファベットに関してはAからZまで全部ご用意してますが、すべて同じだけ数を用意するわけにはいきません。そこでNECの社員約3万人程のイニシャルの情報を集め、ランキング化し、そのランキングに従ってある程度重み付けをして準備しています。
だいたい10種類くらいでその3万人の9割以上を占めるというデータがあるんですが、実際に注文が入るとだいたい同じ傾向になっているとうのは面白いですね。「M」「Y」「S」なども多いです。実際にオーダーされた方のブログなどを拝見していると、旦那さんのイニシャルや、お子さんのイニシャル入れている例もあるようです。
――名字と名前の2文字ではなく1文字にしたのは、選びやすくするためですか?
後藤氏
そうですね。イニシャルといったときに、世の中のアクセサリ関係を見ると、ファーストネーム1文字のものが圧倒的に多いですね。さらに、先ほども触れましたが、裏のコンセプトとしてプレゼント的な使われ方を想定してましたので、さりげなく入れたかったんです。関係にもよるでしょうが、フルネームにしてしまうともらう方がちょっと重たく感じてしまう可能性も高いですし。もともと着信があったときなどにさりげなく光るという感じですので、さりげなさというときに、ファーストネームの1文字などがいいのではないかと思います。
――工場のラインに流れる端末も個人仕様なんですよね。普段目にすることはないですが、もし見たときに「あれは自分のかも?」と思えるのは面白いですね。
後藤氏
大量生産のモデルですと何十万個のうちのどれか1個ですが、「My Select Model」に関しては本当にお客様の注文時点から、常にその1個が意識されて続け、出荷までがその1個なんですね。
だからイニシャル等が入るとか、自分の好きなもの、好きなデザインが選べるということで、機能的により便利になったというのとはちょっと違った愛着ですとか、ケータイが今までよりももっと身近になるというか、ケータイを人に近づけるアプローチというところも、あるんじゃないかなと思います。
――今後も同じような取り組みを継続される計画はあるんでしょうか。
有田氏
どういったモデルにするかによって、バリエーションの考え方はさまざまな可能性が考えられると思うんですが、ある程度継続的にやっていきたいとは思っています。
――それでは最後に一言お願いします。
有田氏
今回はこの「My Select Model」のために工場も変わっています。NECとして新しいチャレンジをしたいなという思いがありますので、工場のメンバーともどもかなり気合いが入っています。
身につけてもらって、長く使ってもらえるプレゼントってケータイ以外にはないかなと思えるほどです。贈り物を考えている方には最高のプレゼントになると思いますので、ぜひ宜しくお願い致します。
――本日はありがとうございました。
2009/8/4 14:44