「biblio」開発者インタビュー

スマートフォンと携帯の中間を狙う電子ブック携帯


東芝 米畑氏

 auの夏モデルとして、KDDIからスライド型の東芝製CDMA 1X WIN端末「biblio」が発売された。タッチパネルや無線LAN対応、7GBデータフォルダと、まるでスマートフォンのようなスペックだが、biblioでは充実した電子書籍関連の機能が特徴付けられている。今回、そんなbiblioについて東芝の担当者に話を聞いた。

――まず、biblioの概要について教えてください。

東芝 モバイルコミュニケーション社
商品統括部 商品戦略企画部 米畑里美氏(以下、米畑氏)

 今回、KDDIさんからブックサービスに注力するというお話があり、biblioはブック関連の機能を強化した特徴的なモデルとして企画がスタートしました。電子書籍をまとめて大人買いができることも想定し無線LANに対応したほか、電子書籍などのコンテンツをすべて保存できるように大容量の約7GBのデータフォルダを用意する等、ブックサービスを意識して企画しました。

 メインディスプレイについても、電子書籍が読みやすいように約3.5インチの大型の液晶ディスプレイを採用したほか、端末を閉じたままでも本が読めるようにタッチパネルをつけました。細かい機能ではありますが、メインディスプレイにはのぞき見防止機能もあるため、電車内でも周囲に気兼ねすることなくお使いいただけます。

 さらに、弊社独自のブックサービスを打ち出せる部分を検討した結果、充実した電子辞書機能を用意しました。携帯電話では最大数となる合計19の電子辞書コンテンツがプリセットされています。また、電子辞書が使いやすいように、端末を横にしても使える縦横切り替え可能なキーを搭載しています。

――ターゲットユーザーについてうかがいます。年齢、性別、ライフスタイル等どんな想定をされていますか。

米畑氏
 メインのターゲットは、20~30代の女性で、本をたくさん読んで自分磨きに力を入れているような方、サブターゲットは、30代~40代の男性で、やはりこちらも読書が好きな方を想定しました。

 20~30代の女性をメインに据えた理由は、調査の結果、年代性別的にこの層がもっとも電子書籍に興味を持っている方々だったからです。マーケティングの本や日経新聞を読んだり、英語の勉強をしたりと、キャリアアップにつながるようなことをしている女性をターゲットと考え、一般の方にも手を出しやすいスマートフォンと携帯電話の中間の存在の機種を狙いました。

 サブターゲットの30~40代の男性は本屋さんによく足を運ばれる世代で、電子書籍は未経験といったユーザー層を想定しております。



――今回、auのブックプレーヤーというアプリケーションが新搭載されています。

米畑氏
 はい、新しいブックプレーヤーはこれまでのビューアーとは異なり、検索ポータル機能により書籍の検索やオススメのチェックができるようになったほか、本の続きを読みたい場合にすぐに次のコンテンツがダウンロードできたり、スクラップ機能で画面を保存したりと利便性が向上しています。ブックプレーヤーはau夏モデルでは、「biblio」と東芝製「T002」の2機種のみに搭載されています。

――電子辞書に豊富なコンテンツを用意されましたね、コンテンツはプリセットだけでなくダウンロードも可能ですか?

米畑氏
 一般に売られている電子辞書でもっとも売れ行きが好調な普及モデルは、だいたい20コンテンツ前後が収録されています。「biblio」では、これら電子辞書の普及モデルに対抗できるコンテンツ数を目指しました。

 コンテンツの追加は、東芝のメーカーサイト「ToshibaUserClubSite」からダウンロードいただけます。現在のところ、コンテンツはパケット通信料のみで無料でダウンロードできます。

――biblioはauのWi-Fi WINに唯一対応したモデルとなっていますが、ひとくちに無線LANといっても何ができるのでしょうか?

米畑氏
 Wi-Fi WIN限定コンテンツやLismo Videoのコンテンツがダウンロードできたり、PCサイトビューアー上でYouTubeなどの動画が楽しめます。biblioではブラウザ認証が必要な公衆無線LANサービスはサポートしていませんが、FREESPOTでの利用が可能です。無線LANのかんたん登録方式としては、AOSSやらくらく無線スタート、WPSに対応しています。

――タッチパネルについて教えてください。

米畑氏
 biblioのタッチパネルは、閉じた状態でも開いた状態でも利用できます。開いた状態でもタッチが可能であるため、両手で縦持ちした場合にメインディスプレイが縦横キーの代わりにもなります。

東芝 前野氏

東芝 モバイルコミュニケーション社
モバイル機器設計統括第一部 モバイル機器設計第一部
機器設計第一担当 主務 前野信之氏(以下、前野氏)

 タッチパネルは静電容量タイプのものを採用しており、指で操作することを想定して設計しております。タッチパネルの誤操作の防止のため、メインディスプレイ面に近接センサーも搭載しており、対象物に当たった赤外線の反射を検出することで物体の近接を検知できます。これにより、着信のかかったbiblioをかばんやズボンのポケットから取り出す際にに手で誤操作したり、通話中に耳やほほでタッチパネルが誤操作されないよう防止しております。

――縦横でキー部分が切り替わるなど、新たなチャレンジがうかがえます。

前野氏
 biblioには青く発光する特徴的なキーを搭載しております。光部分に無機ELを使用しており、加速度センサー(縦横センサー)でbiblioの角度を検出して、QWERTYキー表示と10キー表示を切り替える仕組みとなっています。今回採用したキーモジュールは、携帯電話として日本国内初採用のモジュールです。操作感をそこなわないよう、押下感を出すことにも注意して設計しており、開発には苦労しました。

 キーの表示を縦横に切り替える今回の仕様は商品企画当初より決まっており、われわれ設計開発陣にその解決手段が求められました。様々な実現手段を検討しましたが、最終的に視認性が良く、文字を認識し易い今回のような方法をとることになりました。

 キー部分をご覧いただくとわかりやすいかと思いますが、これだけ無駄なく広範囲に文字を配置して、なおかつ文字を発光させるということは非常に困難です。多くの携帯電話のキー部分にはLEDを使用したバックライトを搭載していますが、これらのような既存の方法では、キー部分にbiblioのような広い面積はとれなかったと思います。

米畑氏
 そのほか、キー部分には特別な処理を施しており、太陽光下でも文字がはっきり視認できるようになっています。これから日差しがますます強くなるので、使い勝手よく感じていただけると思います。

――縦持ちで利用した場合、右手で持つことになるのでしょうか?

前野氏
 そうですね、biblioでは縦持ちのときは右手で持つことを想定しています。

米畑氏
 縦持ちのときに左手でもキーを利用できるようにすることも検討しておりましたが、逆に使い勝手が悪くなる点が目立ち、最終的に左手での利用は対応しない仕様としました。

――電子書籍関連ですと、最近では公式サイトでもきわどい内容のものが配信されています。その一方で、文学作品などの名作と言われるものはあまり目立っていません。biblioにはどういったコンテンツがプリセットされているのでしょうか。コンテンツの幅を広げるような取組について教えてください。

米畑氏
 そうですね、電子ブックサービスについてはKDDIさんとして注力されているものですが、たとえばbiblioでは宮部みゆきの「火車」など、読み応えのある作品なども用意されています。今後のコンテンツの広がりには我々も期待したいところです。なお、電子コミックもプリセットされておりますので、こちらもお試しいただきたいと考えております。

 biblioは、電子書籍が読みやすい端末なのはもちろんのこと、電子辞書機能も充実しています。無線LANでYoutTubeやインターネットもサクサク利用できるなど、たくさんの魅力がつまった端末だと思います。ぜひ一度手にとって使っていただきたいです。

――ありがとうございました。

 



(津田 啓夢)

2009/7/31 16:25