「Sportio water beat」「SH002」開発者インタビュー

「スポーツ」+「防水」のコンセプトから生まれた2モデル


Sportio water beat(右)とSH002(左)

 シャープはau向け夏モデルとして、テンキー無しのタッチケータイ「Sportio water beat」と、初のソーラー発電ケータイ「SH002」という個性的な2モデルを投入した。今回は気になるこの2機種について、シャープの通信システム事業本部 パーソナル通信第三事業部 商品企画部の中田尋経氏に話を聞いた。

コンパクトサイズを絶対の条件とした「Sportio water beat」

――まずはSportio water beatの開発の経緯を教えてください。

Sportio water beat

中田氏
 シャープではauの夏モデルとして2つの新機種を提供しますが、そのうちの一つがSportio water beatになります。このモデルはもともと「スポーツ特化端末」として企画しています。

 まず製品企画の大前提としてアームバンドで腕につけても邪魔にならない「コンパクトサイズ」を絶対条件とし、長さ98mmの制限で商品企画を進めました。今回のSportio water beatでは、「ボディいっぱいの大きな画面を搭載しよう」ということを考え、テンキーを廃し、3インチのタッチパネル液晶を搭載しました。タッチパネルを採用することで、全体のサイズと画面表示の大きさ、入力のしやすさの3点でバランスを取った形です。

 画面上のアイコンをタッチするような、いわゆるダイレクトタッチの操作は、網羅できていない部分もありますが、従来のKCP+の仕様を活かしつつ、いままでのケータイの感覚で、タッチパネルによる操作ができるように仕上げています。

――タッチパネルUIの操作はどのようになっているのでしょうか。

シャープの中田氏

中田氏
 基本的にすべての操作がタッチパネルで行えるようになっています。まず待受画面をタップすると、専用のメニューが表示されます。電話、アドレス帳、Eメール、Cメール、EZweb、アプリなど、通常の端末ではハードウェアキーが用意されているような基本機能は、こちらから起動できます。通常のメインメニューはこの専用メニューから呼び出すか、あるいは待受状態で側面のカーソルキーを押すことで呼び出せます。

 メインメニューなどはダイレクトタッチ操作が可能ですが、ダイレクトタッチ操作に対応していない機能もあります。たとえばカレンダー機能は、数字が細かく指では触れないので、ダイレクトタッチには対応していません。ダイレクトタッチ非対応アプリでは、画面をフリック(すばやく払うようになぞる)することでカーソルキー操作が可能です。フリック&ホールドでカーソルキーを押しっぱなしと同じようになります。

 画面上をタップすると、ソフトキーパッドが表示されるので、こちらで操作もできます。さらに側面にはスティック型のカーソル/決定キーと終話キー、クリアキーがあり、一通りの操作は側面のキーでも行えます。クリアキーについてはフォーカスロック付きシャッターキーとしても使えるよう、半押しにも対応しています。

 文字入力については、ソフトキーパッドになります。基本的な設計思想として、なるべく普通のケータイのように入力できるようにしました。例えば、「は」を長押しすると「はひふへほ はびぶべぼ ぱぴぷぺぽ」が一気に表示されるようになっているので、これにより少ないタッチでの文字入力が可能です。

ダイレクトタッチ対応のメインメニューソフトキーパッド文字入力用のソフトキーパッド
右側面にキー類が集中する

――右側面にキーが集中していますが、これは左右どちらの手で持つことを想定されているのでしょうか。

中田氏
 基本的にはどちらの手でも使いやすいように、キーをボディの上半分に集中させるように配置しました。ただ、今回はカメラとして横にして使うとき右側面にシャッターキーがあった方が構え直しやすいことからなどから、右側面にキーを配置しています。

 キーの位置についてはさまざま議論を重ね、長さ98mmというターゲットサイズの中で、一番使いやすいと思う位置に決めました。正面が無理なら背面では、という話もありましたが、背面はカメラやスピーカー、電池があり、入れる場所がありませんでした。

 またハードウェアキー以外の操作としては、アドレス帳やサブメニューなど、画面右にスクロールバーが表示される場面では、スクロールバーをフリックすることで画面のページスクロールが可能です。ここは実は画面左端部でも同様にスクロールできるようになっていて、右手でも左手でも使えるようになっています。

 こういった機能はマニュアルだけでは伝えにくいところなので、公式サイトなどで裏技的に公開したいと考えています。

――誤操作防止のロックはどうなっていますか?

中田氏
 ほかの機種では、ロックキーやスライドスイッチを搭載していることもありますが、Sportio water beatはサイズの関係でキーを増やせませんでした。そこで、画面を手で覆うように押さえてロックをかける「手のひらロック」という機能を搭載しています。慣れてくると、ワイシャツくらいだったら胸側に画面を向けてポケットの中に入れるだけでロックがかけられます。なお、ロックを解除するには側面の決定キーを2回押します

これまでの歩数に加え、現時点での運動強度を表示できる歩数計アプリ

――スポーツ関連の機能はどのようなものが搭載されているのでしょうか。

中田氏
 ハードウェア面だけでなくソフトウェア面もスポーツ向けにするということで、メインメニューではそういったアプリを並べています。まず歩数計アプリは性別や年齢、身長などを登録すると、歩数だけでなく歩行距離やMETs、Exの単位で測定できます。ここで登録したデータは、KDDIの「Karada Manager」のサーバーにアップロードし、有料サービス登録をすれば体作りのサポートを受けられます。さらにTANITAのBluetooth対応体組成計のデータをKarada Managerに連携させることもできます。

 歩数計については、かなり正確です。実際に市販の歩数計とSportio water beatを一緒に持って歩いたりしましたが、ほとんど誤差が出ませんでした。ポケットに入れていても正確な歩数が測れます。

 スポーツを支援するアプリとしては、「GPSゴルフナビ」を搭載しています。これはGPS情報を使いゴルフ場データを表示するという機能です。グリーンまでの残ヤード表示や、各打点を登録すれば飛距離も計測できます。こちら、有料サービスですが、初回だけは無料でお使いいただけます。現状で全国約2300コースのデータに対応し、ゴルフ場データは随時追加・更新していく予定です。

――タッチに対応したアプリがサードパーティのコンテンツプロバイダーから登場する可能性はあるのでしょうか?

中田氏
 タッチを利用したアプリについては、今後増強されていく予定です。既存のゲームは、キーがないので操作しにくい面がありますが、逆にタッチならではの遊びの要素も増えると思うので、ここは積極的に取り組みます。加速度センサーについてはすでに対応ゲームをプリセットしていますが、こちらも増やしていけたらと思います。

ソーラー・防水以外も堅実に作られている「SH002」

SH002
多層膜採用によりソーラーパネルの見え方もカラーごとに異なる

――続いてSH002の開発コンセプトについて教えてください。

中田氏
 ソーラー発電パネルが注目されますが、コンセプトとしてはSportio同様に「スポーツ」を中心として商品企画をしています。Sportio water beatの方はスポーツに特化し、アスリート向けに作っていますが、SH002の方は「普段の生活にスポーツを取り入れる」というように考えました。まず防水で回転2軸、という部分から検討し、それに追加でシャープならではのポイントとして「ソーラー」を組み合わせて企画しました。

――やはりソーラー発電が気になるのですが、これはどういったものなのでしょうか?

中田氏
 ソーラー発電パネルにはいくつかの種類があります。電卓などに使われている室内の蛍光灯でも発電できるものや住宅の屋根の上に設置するような高出力なものなどです。室内照明で発電できるものは発電量が少なく、そもそも室内ではコンセントがあるのでソーラー充電の重要性が低いと考えました。それよりもコンセントの無い屋外で充電できることを優先し、住宅用の発電量の多い高出力なものを搭載したい、ということで住宅用の高出力と同じ高効率パネルを採用しました。

 効率としては、目安として30分の充電で2分間の通話ができる性能を実現しています。通話できないくらい電池が減った状態からでも、条件の良い太陽光をパネルに直角に当てることで10分の充電で1分の通話ができる効率を目指しています。

 ソーラーパネルを搭載すると、どうしてもパネルが見えてしまいます。いくら機能・性能が良くても見た目が良くないと魅力が落ちてしまうので、多層膜加工のパネルを採用しました。斜めから見ていただければわかりますが、見る角度によって色がキレイに変わっていきます。ただ多層膜もやり過ぎると透過率が下がるので、発電効率を落とさずに外観を美しくする、このバランスを取りました。多層膜は各色で異なる仕上がりになっています。ソーラー充電パネルは樹脂で固めることで強度も高めています。

背面側に大きなソーラーパネルが内蔵されている

――室内照明で充電できるタイプのパネルは採用が難しいのでしょうか?

中田氏
 ソーラーの種類によって性能は異なり、SH002に搭載したソーラーパネルでは蛍光灯ではほとんど充電ができません。効率化については今後の課題となります。

――光に垂直に当てると効率が良いということですが、画面を開いている状態や半開きでも充電できますか?

中田氏
 できます。途中で止まるようにすると面白いところですが、ヒンジ内部の機構が増えるので断念しました。

――リアルタイムで発電量がわかるのは実用性もありますが、ちょっと面白いですね。

中田氏
 ケータイアレンジの中に充電量に応じて太陽や動物などのアニメが変化するといったコンテンツを用意しています。ただし、更新が5分に1回なので実用性よりも遊びの機能になります。Sportio water beatでは消費カロリーに連動したコンテンツを用意していますが、それのソーラー版です。

電源オフでも、電池残量や発電状況(写真では光量不足・残量十分で発電していない)が表示される

――ソーラー発電パネルの下にサブディスプレイが搭載されていますね。

中田氏
 サブディスプレイは電子ペーパーになっていて、電池が切れていても表示が可能です。なぜ電子ペーパーを採用したかというと、電池がなくても表示できるからです。電源が切れてから充電するという状況で、発電できているのか、どれだけ充電できたかがわからないと意味がないからです。充電量は最大5個の「□」(1個あたり1分の通話)で表示し、発電量も太陽型のソーラーインジケータで表示します。光の強さに応じて発電量が変わり、満充電のときは充電が行われないので、そういったことがアイコンでわかるようになっています。

 安全面から過充電を防ぐため、電池残量が80%を超えているときは、充電しないような設計になっています。また、温度が一定以上になると安全のために充電を止めるようになっています。

 メインディスプレイでの電池残量の表示は、パーセント表示が可能になっています。これは端末を標準では開いて3秒だけパーセント表示させるような設定になっていますが、ユーザーが設定で切り替えられます。また、待受画面で「1」キーを長押しすると、バッテリーメーターが表示され、電池残量を大きく表示させられます。

パーセント表示のバッテリーメーター

――ソーラー以外の特徴機能は?

中田氏
 Sportio water beatと同じくスポーツ向けモデルと言うことで、アプリはSportio water beatと同じもの、GPSゴルフナビや歩数計などを搭載しています。

 独自の機能としては、これまでのKCP+端末ではなかった機能として、アドレス帳ではインクリメンタルサーチ(1文字ずつ入力しながら検索・絞り込む機能)に対応しました。こちらの機能、実はSportio water beatの方にも入っています。

 あとは「ダイレクトキー」というキーをテンキー下に追加しました。こちら、ワンセグや辞書、EZナビなどの機能から好きな機能を登録しておける、いわばショートカット機能の一種なのですが、ほかのショートカット機能と違い、他のアプリを使っている途中でも起動できます。マルチタスクキーから呼び出すよりも素早い操作で済むのが特徴です。

 基本中の基本機能として、「ノイズキャンセラー」と「スロートーク」、「ボイスクリア」という通話補助機能も搭載しています。こちらもSportio water beatと共有の機能です。

 防水やソーラー発電の機能もありますが、基本スペックや機能として、大きさも通常通りでインクリメンタルサーチなどの機能も用意しているので、使いやすい端末を求めている一般のお客さまに安心してお使いいただける端末に仕上がっています。

――本日はお忙しいところありがとうございました。




(白根 雅彦)

2009/7/1 14:01