【CES 2017】

FREETELはキャリア事業とSIMフリーの2本柱でシェア1位を目指す~プラスワン幹部が語る海外戦略

 プラスワン・マーケティングは、ベンチャー企業でありながら、海外展開に力を入れている日本メーカーの1社だ。同社はFREETELブランドのスマートフォンを南米やアジアなどで発売しており、すでに13カ国以上でビジネスを行っている。2017年の販売目標台数は国外だけで300~400万台。代表取締役社長の増田薫氏は、2025年までに世界1位を目指すと野望も大きい。

 そんなFREETELの幹部も、CESに参加している。報道陣向けの併催イベントで端末を披露した昨年とは異なり、ブースの出展は見送られているが、最新技術の調査や商談は行っているという。そのプラスワン・マーケティングで、海外事業を統括する、取締役の吉岡ユージン氏に、プラスワン・マーケティングのグローバル戦略を聞いた。

プラスワン・マーケティングで海外事業を統括する吉岡氏

――最初に、CESに来ている狙いを教えてください。

吉岡氏
 主に2つの理由があります。CESは、世界的なイベントのなかでも、特に新しいテクノロジーの展示が多い展示会です。そういったテクノロジーを取り入れ、商品力を上げたい。これが1つです。これだけ大きなイベントなので、(海外の)パートナーさんがやってきています。その方々と商談するのも、目的の1つです。

――現状、グローバル展開はどの程度進捗しているのでしょうか。

吉岡氏
 合計13カ国以上に展開しました。大きく分けると、アメリカ大陸はキャリアビジネス(キャリアへの端末納入)で広げていて、アジア、中東、アフリカはオープンマーケットを狙う戦略に基づいて進めています。(南米の)キャリアビジネスに関しては、チリ大手のエンテルさんや、アメリカモービルさんと組んでビジネスをすることができました。

――日本ではFREETELというと、SIMフリーやMVNOとしてのイメージが強いのですが、なぜキャリアビジネスをしているのでしょうか。

吉岡氏
 まず、私たちは、製品(携帯電話端末)がコアであるという共通認識で動いています。社長の増田も言っていますが、メーカーとして、2025年までには世界1位になりたい。ですから、端末ビジネスを海外に広げるのは、宿命のようなものです。

 キャリアビジネスをしているのは、マーケットシェアが高いからで、(南米に)リーチができたのも、それがあったからです。

――海外では、どのようなモデルを出しているのでしょうか。

吉岡氏
 発表済みのモデルでは、「ICE2」という端末があります。また、この端末の5.5インチ版や、一部にはフィーチャーフォンもあります。フィーチャーフォンは、Simpleの開発技術を応用して、各マーケットに特化したモデルになります。ただし、単価は圧倒的に低いですね。

海外向けに特化した「ICE2」(日本では未発売)

 一方で、オープンマーケットは状況が異なり、こちらはどちらかと言えば、日本と同じフルラインナップ戦略です。これはなぜかと言うと、端末を多く出すことで、店舗の面を取ることにフォーカスしているからで、ベトナムなどでは「MUSASHI」や「REI」のような高価格モデルも展開しています。

――キャリアビジネスをしている南米では、売れ行きもいいと聞きます。ポイントはどこにあるのでしょうか。

吉岡氏
 日本品質の端末を低価格で持ってくることができたのが大前提ですが、その中でもローエンドスマートフォンにはいくつかの特徴があります。2つ心がけたことがあり、1つがスクリーンサイズです。ICE2も4インチと小さいのですが、ローエンド端末は3インチ台が主流で、その中では大きなものなります。2つ目がデザインをちょっとだけトガらせたことです。背面のカバーの上部にカーブを入れ、特徴を出しています。

本体背面上部にカーブをつけ、デザインのアクセントに

 また、(週間の販売ランキングで1位になるほど)大ヒットしたのは、ICE2の兄弟機で5.5インチのモデルです。これは5.5インチですがローエンドの端末になります。5.5インチになると、ハイエンドで価格が高いのが一般的ですが、これに関しては通信機能をあえて3Gに落とし、代わりにHDディスプレイをキープしました。

 これはスマートフォン業界全体にある傾向ですが、スクリーンサイズと端末のレベルが連動していて、メインストリームは5インチ、よりハイエンドだと5.5インチ以上という考え方が強い。こうした端末は最低でも300ドルを超えてきます。その中で、FREETELは、5.5インチを100ドル程度で提供しました。

 ある意味ニッチな商品でしたが、大きな画面は使いたいが予算がないという人に刺さりました。もう1つの要因としては現地にいるセールスが優秀ということもあります。ノキアやモトローラで経験を積んだ人間がいて、キャリアとの交渉だけでなく、その先までしっかりやっているのが大きいですね。

――なるほど。しかし、単価はもっと上げた方が儲かるのではないでしょうか。

吉岡氏
 そうですね(笑)。ただ、日本でもPrioriから出し、Nico、MIYABIと徐々にレンジを広げ、さまざまなユーザーに受け入れられるようになりました。海外でもそれは踏襲していて、まずはそのマーケットに合った端末を投入し、そこからKIWAMIやMIYABIなどに広げていければと考えています。

――こうした海外ビジネスで培ったノウハウは、日本の端末事業にも生かされるのでしょうか。

吉岡氏
 はい。海外ビジネスは、コスト削減やソフトウェア開発などで、さまざまなノウハウがたまります。それを次の端末に生かすことはできると思います。特に海外では、キャリアビジネスをしているので、ソフトウェア開発の要求水準が高い。これは我々としても本腰を入れなければマズいということで、力を入れてきました。そのリソースを使うことで、FREETEL UIなどを出せています。

――やはり海外でもキャリア(の要求)は厳しいですか。

吉岡氏
 厳密なプロセスと開発工程が定められていて、それを守りながら進めていく必要があります。それもあって、開発だけでなく、プロジェクトマネージメントの能力も高まりました。

――海外ではVoLTEもやられています。これも、日本で期待できそうでしょうか。

吉岡氏
 具体的には言えませんが、ノウハウはついていますね。

――今年の目標を教えてください。

吉岡氏
 2017年は国外だけで300~400万台を目標しています。

――本日は、ありがとうございました。