【CES 2016】

テレパシージャパン、普段使いも意識した新メガネ型デバイスを展示

テレパシージャパンブース

 ヘッドマウントデバイス「Telepathy」シリーズを手がけるテレパシージャパンは、CES会期前日に発表した「Telepathy Walker」を、CES 2016の同社ブースにて展示した。

 今回は同社ブースにおいて、テレパシージャパン代表取締役の鈴木健一氏らに新製品の特徴や製品展開について話を伺うことができた。展示されていた開発中の実機を元に、Telepathy Walkerの詳細をレポートする。

 Telepathy Walkerは片眼・非透過・カラーのディスプレイを搭載し、ヘッドマウント部だけで完結するAndroid搭載のヘッドマウントデバイスだ。各種情報の表示、カメラを組み合わせたARなど、さまざまな用途が想定されている。

Telepathy Walker

 2016年の第2四半期に発売される予定で、価格は699ドル(約8万3000円)とアナウンスされているが、2月ごろにクラウドファンディングを実施し、早期申し込み者向けの割引も予定されている。ヘッドマウントデバイスというと、開発者向けや業務向けとしての大量購入が前提で、1個で買うと10万円以上の価格が付けられるものも多い。既存モデルの「Telepathy Jumper」も18万円だが、それらに比べるとTelepathy Walkerはかなり安く、一般コンシューマーを意識した価格設定と言える。

 既存モデルのTelepathy Jumperはヘッドマウント部だけでは完結せず、コントロールボックスと有線でつながっていたが、Telepathy Walkerは小型化することでヘッドマウント部だけで完結している。「テレパシージャパンが当初、目指していたTelepathy Oneのコンセプトに、より一層近づいたモデル」(鈴木氏)でもある。

Telepathy Walkerを装着した状態

 本体の重量は50g前後で、後頭部に回す専用ヘッドバンドで固定する。今回の展示で用いられていたヘッドバンド部分は、3Dプリンタで出力された試作品だったが、鈴木氏によるとこのヘッドバンドの開発にもかなり力を入れているとのこと。実際にブースで試着したところ、筆者はメガネ着用者だが、装着中にメガネと干渉するような違和感はなく、安定性もあり、着脱も容易だった。

 ヘッドバンドとTelepathy Walker本体はマグネットで固定されている。鈴木氏によると、この固定用マグネットを組み込んだメガネなどの開発も検討しているという。

 Telepathy Walkerは常時装着するのではなく、必要なときに装着して使用するという、スマートフォンなどと近い利用方法が想定されている。

 ケースバイケースだが、連続点灯時間は2時間程度とのことだ。非点灯時もスリープ状態で稼働しており、通知などはできる。

持ち運びやすいように折りたためる

 ヘッドバンドであれば、首にかけるようにしてTelepathy Walkerごと持ち運ぶことができる。マグネットでメガネに固定していた場合は、メガネからTelepathy Walkerを外し、ポケットなどに入れて持ち運ぶ。そのためにTelepathy Walkerは光学部を折りたためるようにデザインされている。

 本体の上面にホームボタンがあるほか、側面がタッチパネル仕様になっており、上下左右のスワイプで操作する。装着していると見えないが位置だが、外した際に確認できる単色有機ELディスプレイも側面に搭載されている。スピーカー内蔵だが、バイブレーターはない。

 メインディスプレイ部はLCOSが使われ、解像度は960×540ドットのフルカラー、非透過型のミラーを使用する。ミラーにつながる部分が空間になっており、視界をなるべく妨げないようになっている。

左がTelepathy Walker、右がTelepathy Jumper

 ディスプレイ部の構造や解像度は、Telepathy JumperとTelepathy Walkerで共通だが、Telepathy Walkerの方がやや画面が大きく、Telepathy Jumperの方は画面が小さいため、歪みがやや小さいという。

 Telepathy Walkerは、OSにAndroid 4.4を採用する。これにより、ゲームコントローラーやBluetooth 4.0 LEによるビーコンもサポートされている。

 アプリはAndroidのapkファイルがそのまま使える。開発環境もAndroidのものがそのまま使えて、Telepathy Walkerに特化したAPIなどはあえて増やさず、Android標準から極力離れないようにしているという。

髪型によってはヘッドバンドはほとんど隠れてしまう

 Google PlayやGmailといったAndroidスマートフォンで標準のGoogle製アプリは利用できない。その代わりにテレパシージャパンがアプリストアを提供する。

 プロセッサはARM Cortex-A7のデュアルコアで、Rockchip製とのこと。台湾のパートナーでシリコンウェハーごと買い、メモリーと一緒にパッケージングしているという。テレパシージャパンはいわゆるスタートアップ企業だが、もともとさまざまな企業に勤務していたベテランが在籍しているため、社員が長年培ってきた技術や人脈が活かされているという。

コントロールボックスのコンセプトモデル

 通信機能としてはWi-FiとBluetoothをサポートする。将来的にはLTE通信に対応したコントロールボックスの開発も検討しているとのことで、ブースにはコンセプトモデルがケース内展示されていた。

 Telepathy WalkerはTelepathy Jumperを完全に置き換える後継機種というわけではない。すでにTelepathy Jumperは工事現場などでテスト的に導入が始まっているが、たとえばある現場では、カメラで現場の様子を常時録画するために、コントロールボックスを腰に装着する大容量バッテリの特別仕様にしているという。

 また、Telepathy Jumperはメカニカルスイッチのコントロールボックスがあるので、グローブ着用時にも操作でき、ヘッドマウント部もTelepathy Walkerより軽量だ。

新仕様の「Telepathy Jumper C」

 このように、Telepathy Jumperの方が有利な用途では、引き続きTelepathy Jumperが提供される見込みで、ヘッドマウント部とコントロールボックス部の間を柔らかいケーブルに変更した新仕様の「Telepathy Jumper C」も新規に開発され、ブース内で展示されていた。

 ブースではTelepathy Walkerの動作する実機が多数、触れる形で展示されており、来場者がディスプレイの見え方やアプリのデモを体験できるようになっていた。デモはカメラでARマーカーを読み取り、そこに3Dモデルを表示させるというもの。

デモイメージ。表示部がコンパクトで視界を遮らない

 実際に装着し試してみると、Telepathy Walkerのディスプレイはそれほど大きいものではないので、映像コンテンツを楽しむといった用途にはあまり向かないと感じられたが、見ていても疲れにくいと感じた。細かい文字の判読は難しそうで、専用ホーム画面UIも大きめのアイコンが使われている。処理速度などに不満を感じる場面はなかった。

 約8万円という価格は、モバイルデバイスとして安い価格とは言えないが、業務用が多いヘッドマウントデバイスの中では、かなり安い部類に入る。それでいて装着感や持ち運びやすさど、実用上の大切な部分がしっかり作り込まれているので、あとはアプリ次第で、スマホのように日常デバイスとして使えるようになりそうだと感じられた。

ブリリアントサービスでのデモのイメージ。ARゴーグルを装着し、手を使って操作する

 テレパシージャパンのブースでは、ARゴーグルとソフトウェアを開発しているブリリアントサービスも共同で出展していた。

 ブリリアントサービス側は、ARのユーザーインターフェイスの体験デモを実施していた。内容は透過表示型のARゴーグルを装着し、ブリリアントサービスが開発したハンドジェスチャーUIを試すというもの。表示されたUIに対して人差し指でポイントしたり、手のひらでスワイプしたり、バーコードを読み取らせたりといった操作が体験できた。

テレパシージャパンの代表取締役の鈴木氏とブリリアントサービスサービス代表取締役の杉本氏(右)

 このデモではVuzixのARゴーグルが使われていた。ブリリアントサービスとしては、使えるものであれば他社製品も積極的に利用する方針で、テレパシージャパンとの協力関係も、そうしたスタンスによるという。

miramaのモックアップ

 一方でブリリアントサービス自身も、「mirama」というARゴーグルを開発中である。こちらは動作する実機の展示はなかったが、普通のメガネに近い形状を目指しているという。光学系は他社から購入する予定で、採用に適した技術の開発待ちという段階だが、2017年の製品化を目指しているとのことだ。コンシューマー向け製品ではないため、価格は高めになる見込みだ。

白根 雅彦