世界のケータイ事情

ちょっとスマホを手放せば

 スマートフォンが日本で本格的に普及し始めて約3年。携帯電話という本来の役割はもちろんのこと、SNSやちょっとした調べもの、暇つぶしに至るまで、「スマホがなかった時代は一体どうしてたんだっけ?」と思うほどに、気が付けばスマホに頼り切っている方も多いのではないだろうか。

 確かにスマホはとても便利だし、楽しい。あまりに身近な存在になりすぎて、気が付けばいつもスマホが手の中にある。そんなスマホと離れられない状況を「口寂しくて煙草を吸うのと同じ様に、“手が寂しくて”スマホを触ってしまう」と表している人がいたが、言い得て妙だと思う。

 筆者が先日訪れた中華料理のレストランで隣り合った、恐らく恋人同士と思われる男女のお客さん。男性は無言でスマホを触っていて、女性の方は何もせずに退屈そうな顔。しかもふと見渡せば、そのカップル以外にもスマホ片手の方がちらほら。

 私なら、緊急事態でもない限りスマホはちょっと脇に置いて、その時目の前にいる相手との食事を楽しむ方を選びたい。スマホを触っている間は誰しも、目線も意識も目の前の相手から逸れて、小さな四角い箱に向かっている。そんな相手と一緒にいる立場からすれば、目の前にいながらも別の世界にいってしまったようなもの。せっかくの時間が何だかもったいない気がする。

 このような、四六時中スマホ現象は日本だけのものかと思いきや、地球の裏側ブラジルで、こんな商品を見つけた。

The Offline Glass
http://www.telegraph.co.uk/news/worldnews/southamerica/brazil/10113715/The-beer-glass-that-only-stands-upright-when-balanced-on-your-phone.html

 このグラス、底の部分が平らではなく、段差がついている。当然、グラスを机の上に置いても自立しない。ところが、段差をひっかけるようにスマホの上にグラスを置くと、段差とスマホの厚みが丁度同じくらいのため、グラスが自立するのである。

 「オフライングラス」という名前からハイテクな機器をイメージしたが、スマホを強制的にテーブルに伏せさせて使えない状態(すなわちオフライン)にしてしまうという、大胆な商品である。ただし、防水機能がついていないスマホはうっかりビールをかけて水没事故にあわないように注意が必要だ。

 同じような試みをもう一つ。台湾のデザイナー集団が開発したテーブルだ。

Happy Together
http://www.pegadesign.com/nowandnew/#happytogether

 このテーブルには面白い仕掛けがしてある。テーブル中央の円盤部分にスマホを置くと、軽快なBGMが流れてくるのである。スマホは最大6台まで置けるが、置く台数が増えれば増えるほど、より複雑な音楽が奏でられる。単にスマホを手放させるだけでなく、見返りとして、仲間との楽しい時間を盛り上げるBGMが提供されるのである。

 もっと直球のアイデアも紹介しよう。

Zip it tablecloth
http://www.behance.net/gallery/Zip-It/9558395

 テーブルクロスの裾にジッパー付きのポケットがついていて、そのポケット中にスマホを閉まっておくというもの。それなら鞄にでもスマホをしまっておけばいいじゃないか! という気もするが、テーブルに着席した全員で、「スマホには触らない」というルールを簡単に作れるのがいいのかもしれない。

 SNSなどで頻繁に会えない友人の近況を簡単に知ることができるようになった今でも、実際に会って過ごす時間の楽しさは昔と変わらないだろう。グラスやテーブルに命令されるまでもなく、ちょっとスマホを手放して、たまには自分をオフラインモードにしてみてはいかがだろうか。