本日の一品

300mmズームで全域F2.8という驚異の明るさのコンデジ

 スポーツ観戦で写真を撮るのが趣味、という人は少なくないだろう。家族や友人が出場するアマチュアスポーツの試合で彼らの姿を収めたいという目的もあれば、プロスポーツの試合で迫力あるカットを撮りたいという向きもあるはず。筆者の場合は後者で、プロ野球の観戦に出向き、要所要所でプレーを撮影するのを楽しみにしている。かつてはスマホレベルでも満足していたのが、ズームが欲しくなり、続いて明るいレンズが欲しくなりと、徐々にエスカレートしつつある。

デジタル一眼レフと比べると十分に軽いが、コンデジにしてはやや重く大きいボディ

 そんな筆者が野球観戦用に購入したデジカメが、カシオEXILIM「EX-100」である。野球観戦に適したカメラの要件は、まずは望遠に強いこと。一般的に、300mm相当のズームが可能であれば、内野スタンドの上段からでも、マウンドおよびバッターボックスが画面いっぱいに写る。600mmあれば選手のバストショットを撮ったり、あるいは外野からホーム付近を拡大して撮ることも可能だが、現実的には300mmあれば十分だ。

 もうひとつは、夕暮れ時やナイターなど暗い環境でも、動きがブレなく写ること。そのためには限界までズームした状態でF2.8前後の明るさは欲しい。もちろんデジタル一眼レフに相応のレンズを追加すればいくらでも実現可能だが、筆者の場合はあくまでも趣味としての撮影であり、気が向いた時だけバッグやウェストポーチからサッと取り出して撮影するので、コンデジクラスで気軽に持ち歩けることが条件になる。

電源オン時。レンズキャップは自動開閉式なので、サッと取り出して撮ることができる

 実際に探してみると、この条件がかなり無理難題であることはすぐ分かるのだが、まさにこの条件にジャストフィットなのが、このカシオEX-100である。ズームにこだわらなければソニーのDSC-RX100M3や、明るさにこだわらずズームだけを重視するならニコンのCOOLPIX S9900という選択肢もあるが、28-300mmの全域にわたってF2.8という明るいレンズは、この製品のほかに選択肢がまったくないのが現状だ。

ボディそのものは厚みがあるが、自動開閉式レンズキャップによって奥行きが相殺されるので、携帯性は高い
最近はチルト液晶と銘打っていても上にしか開かない製品も多いが、本製品は上180度、下55度まで可動するので、ローアングルからはもちろんカメラを高く掲げての撮影にも対応する
簡易なスタンドを使っての自画撮りにも対応する
microUSBでの充電にも対応する。ちなみに充電しながらの撮影はできない
後述の連写モードを使うとバッテリーは急速に減るので、予備バッテリーは欠かせない
上面から見たところ。中央ほど厚みがあるように見えるが、これはデザイン的なもので、むしろ左右両側が薄くなっていると解釈したほうがよさそう

 実際の作例について、肖像権の関係でズバリそのものの写真は載せられないのだが、以下のサンプルで雰囲気は掴んでいただけるはずだ。これは内野席の中段付近から撮影したものだが、外野に選手が立っていればじゅうぶんに表情まで捉えることができるし、ホームにカメラを向けると選手の全身が収まらないところまで拡大できる。

 また本製品の連写モードを使えば、バットが始動してボールに当たり、その後のフォロースルーの最後あたりまで、30枚の連続写真に収めることも可能だ。パスト連写機能を使えばシャッターを切る前後の枚数も自在にコントロールできるので「あ、これはスイングするな」と思った瞬間にシャッターを押すだけで、スイングの過程のほぼすべてが収められる。インパクトの瞬間が完全に止まって見えるほどではないが、コンデジに多いF6前後のレンズに比べると、その違いは一目瞭然だ。

内野スタンドの中段、ズームなしの状態で撮影したもの。夕方17時ごろの撮影
上記と同じ座席に座ったまま、ズームすると外野フェンスがここまで撮れる。光学ズームと同等の解像度を保ったまま600mm相当の静止画が撮れるプレミアムズームを使ったもの
こちらも同じ座席に座ったまま、バッターボックスの様子。ボールやバットが完全に止まって写るわけではないが、ナイター照明も入った薄暗い時間帯で、かつコンデジでありながらここまで撮れるのは他にない

 その他の機能についても紹介しておくと、チルト構造の液晶は上だけではなく下にも可動するので、ローアングルからの撮影に加えてカメラを高く掲げて撮影する際も不自由しない。キーの割当もカスタマイズ性が高く、メニューを呼び出すことなく2種類の連写モードと通常の撮影モードを切り替えられるので、試合を観ながら撮り分けるのも容易だ。またテレ側も50cmまで寄れるので、野球観戦のお供のほかに、薄暗い飲食店で料理を撮る用途にも使ったりと、オールマイティに活躍している。

 コンデジにしては総重量約389gとヘビー級なのと、親指の収まりが悪くグリップしにくい本体のデザインなど、マイナスポイントはあるにはあるが、それを補って余りあるスペックであり、満足感は非常に高い。実売6万円前後とやや値は張るが、それだけの価値がある一台だ。筆者のようにプロ野球をはじめとしたスポーツ観戦に使えるカメラを探している人は、候補の一つとしてチェックしてみてほしい。

液晶画面は3.5型と一昔前のスマホ並みの大きさ。ここでは四辺にさまざまな情報を表示するEXファインダーをオンにしているがそれでもじゅうぶんに広い
SETボタンを押すと簡易な調整が可能
メニュー画面。全体のページ数がわかりにくいのと、いったん閉じると表示位置が元に戻るのがネックだが、まあ許容範囲といったところ
深い階層にあるメニューはダイヤルキーなどに割り当てておくとメニューを呼び出す手間がかからない。筆者は連写モードとセルフタイマーの切替に独自のキーを割り当てている
連写モードは、1秒間で30枚を撮る「AF連写」と、シャッターを押している間は連続撮影する「高速連写」の2種類があり、後者はシャッターを押す前、半押しの状態から記録を始めるパスト連射機能が使える
製品名販売元購入価格
EX-100カシオ6万円前後

山口 真弘