本日の一品

カスタマイズの柔軟性が魅力、ロジクールのハイエンドマウス「MX Master」

 待望の発表となったロジクールのハイエンドマウス「MX Master」ことMX2000。このクラスの新製品が数年にもわたり途絶えていただけに、熱心なユーザーの間で盛り上がるのも当然だろう。従来モデルに相当するM950との比較は今後も多数行われるはずなので、ここでは発売に先駆けて入手した機材をもとに、筆者が現在使用している同社のゲーミングマウスG700と比べた場合の使用感をお伝えしたい。直接の後継モデルではないので、あくまでも乗り換えの一例にすぎないこと、また試用期間が約数日に限られていることを、あらかじめご承知おきいただきたい。

MX Master(MX2000)本体。本体の質感は高く、手にも馴染みやすい。親指を載せる幾何学的な模様の部分のみ柔らかい樹脂で作られている
ホイールはクリック・トゥ・クリックと高速スクロールの自動/手動切り替えが可能。横方向のスクロールは側面のサムホイールが受け持つためチルトには非対応
横スクロールを可能にするサムホイールが側面に搭載されているが、クリックには対応しないのが惜しい。デザイン性を優先したためか、ホイール隣にあるくさび形の2ボタンは形状的にも位置的にもやや押しにくい
プレス用の写真では分かりにくいが、親指を置く平坦なところにサムボタンがある。親指の側面で下方向に押すことになり、個人的には使いづらい

 本体のサイズはほぼ同等。手に握った際のフィーリングはG700とは非常によく似ており、親指を乗せる部分の複雑な凹凸があるおかげで、なんとか別のマウスだと認識できる程度だ。一般的には、やや大柄ながら手にフィットするサイズ、という表現になるだろう。ホイールの感触、クリック感もそっくりで、筆者手元のG700が3年ほど使って若干ヘタっていることを差し引けば、同等と言ってよさそうだ。重量も、G700が151g、本製品が145gで、差はまったく感じない。

ゲーミングマウスG700(右)との比較。サイズはほぼ同じで、手に持った際も違いを感じにくい。ホールド感のよさはさすがの一言
底面の比較。本製品は内蔵リチウムポリマー電池なので、G700のような電池ボックスはない
こうして見ると、左親指を乗せる部分の面積がかなり広いことが分かる。ボタンを内蔵するが故の違いだろう
左側面の比較。ゲーミングマウスとのボタン数の違いがよくわかる。筆者は横スクロールを使う習慣がないため、サムホイールにはブラウザのタブ切り替えを割り当てている

 もっとも、似ているのはそこだけ。ボタンの数は、左右クリックとホイールの3ボタン、ホイール手前の1ボタン、左側面の2ボタン、親指を乗せる部分に内蔵されたサムボタンの合計7ボタンという構成で、M950やM950tから乗り換えるならまだしも、G700の13個のボタンに割り当てたショートカットをそのまま割り振るには、単純に数が足りない。直系の後継製品ではないので当然だが、ショートカットの操作性そのままに、G700およびG700sから乗り換えるのは現実的に不可能といっていい。

 ただし13個全てのボタンをフル活用しているのでなければ、本製品を使うメリットはいくつもあるだけに、検討の余地は十分にある。ひとつはバッテリーの持ちで、1日持つか持たないかのG700と異なり、本製品は内蔵のリチウムポリマー電池により、1回の充電で最大40日もバッテリーが持続する。公称値ベースなので多少割り引く必要はあるが、充電が面倒なせいで実質的に有線利用を強いられていたG700とは大違いだ。

底面に切り替えボタンがあり、3台のデバイスを切り替えられる。いちばん上が電源ボタン。なおこのアングルからは見えないが本体先端に充電用のUSBポートを備える
UnifyingレシーバーのほかBluetoothにも対応する贅沢な仕様。レシーバーの形状は従来とやや異なるが突起のサイズはとくに変わらない

 また底面スイッチの切り替えにより、最大3台のデバイスを切り替えて使えるのも利点だ。これにより、複数のパソコンを所有している際もマウスを使い分ける必要がなく、使用感を統一できる。なぜUnifyingレシーバーがひとつしかないのに3台接続できるかというと、本製品は独自2.4GHz帯のほかBluetoothにも対応しているからだ。将来的にBluetoothに一本化する布石では、と勘ぐることもできるが、ともあれ通常のマウスでは考えられない贅沢な仕様である。

 それゆえ「マウスの買い替えで要求されるのはプラスアルファの機能ではなく、マイナスがないかどうか」という大原則にのっとるならば、ボタン数が多いG700やG700sからの乗り換えは慎重を要するが、例えば本来は横スクロールを受け持つサムホイールに「戻る/進む」や「前のタブ/次のタブ」などのキーストロークを割り当てることでボタン数を節約するなど、カスタマイズ性の高さを生かして工夫する余地はある。ゲーミングマウスでおなじみのマクロ記録のように非対応の機能はフォローしようがないが、マウスとしてのハンドリングはさすがに一級品で、ポインタも狙った位置に的確に動かせるので、その種のストレスの心配は皆無だ。さすがの出来栄え、といってよいのではないかと思う。

専用ユーティリティ「Logicool Option」。各キーへの機能割り当てが行える。多数のコマンドがプリセットされているほか、キーストロークも自由に登録できる。ゲーミングマウスのようにマクロの登録はできない
ホイールに関する挙動が設定できる。ちなみに同社ゲーミングマウス用のユーティリティ「Logicool ゲームソフトウェア」を有効にしたままでは動作しなかった。一時的に同居させる場合は無効にしてやるとよさそうだ

 そんなわけで、筆者の環境では丸一日試行錯誤してほぼ違和感のないキーアサインを終え、現在は快適に利用できているわけだが、唯一有効な使い方を見つけられないままなのが、親指を置く平坦なエリアに設けられたサムボタンだ。デフォルトの役割であるアプリ切り替え以外にも、ほかのボタンとのコンビネーションによるショートカットに使えるのだが、いかんせんクリック感が硬い上に位置的に押しづらいため、利用頻度の高いキーを割り当てる気にならない。もう少し試行錯誤する必要がありそうだ。

製品名販売元購入価格
Logicool MX Masterロジクール12880円

山口 真弘