スタパ齋藤の「スタパトロニクスMobile」

超ソソる自分撮り用デジタルビデオカメラ「キヤノン iVIS mini」

取材ツールとしてのiVIS mini

 2013年9月2日に、俺の興味を超ソソるブツが発表された。キヤノンのデジタルビデオカメラ「iVIS mini」である。「自分撮り」向けの手のひらサイズカメラですな。

キヤノンのデジタルビデオカメラ「iVIS mini」。「自分撮り」を快適に行なえる新コンセプトのカメラで、超広角レンズを使ったHD動画および静止画を撮影できる。キヤノンオンラインショップ限定販売で、直販価格は2万9980円

 iVIS miniは、たとえば自身の演奏やダンスなどを「自分撮り」して、その動画をYouTubeなどネットの動画共有サービスなどにアップロードすることを想定したビデオカメラだ。またそういうコトをしやすいレンズ画角や液晶パネル、底部台座、スマートフォンなどとの連携機能も備えている。「さぁ、iVIS miniでチャチャッと自分撮りして、手軽にネットにアップしてください♪」てなノリのネット時代のカメラと言えよう。

 だが、俺の場合はそーゆーコンセプトとは違う面で、iVIS miniに大きな魅力を感じた。「このカメラならアレに役立つかも!!」的な。

 興味を持ったのは、ニュースリリースにあった「動画撮影時対角約160度のワイドアングルレンズ」と「高品位ステレオマイク搭載による臨場感あふれる音声記録」てなあたり。向きを前にも後ろにも変えられるバリアングル液晶モニターも良さそう。

 ちなみに「アレに役立つかも!!」の「アレ」とは、「取材」ですな。取材時の動画/音声メモを撮るのにiVIS miniが役立つに違ぇねえ!! と踏んだのであった。

 広い周囲を映像に収められそうだし、音もしっかり録れそうだし、液晶も便利そう。サイズは幅7.6×奥行9.6×高さ2.2cmで、バッテリーやメモリカードを含んだ質量は約180g。スマートフォン未満って感じのサイズなので携帯性も良さそう。「コレはやっぱり取材の動画/音声メモを撮るのに絶対役立つハズ!!」と思い、速攻で予約して購入した。

 てなわけで以降、「取材に使う道具」という切り口でiVIS miniの実使用感をレポートしてみたい。なお、iVIS miniの本来の使い方およびその使用感等々については、AV Watch連載記事「小寺信良の週刊 Electric Zooma!」「発想の大転換、自分撮りに特化した「iVIS mini」」が詳しいので、そちらをゼヒ♪

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取材におけるiVIS mini、いきなり超役立った♪

 で、イキナリなんですけど、iVIS miniをインタビュー取材に使ってみたところ、予想以上に役立った。iVIS mini、今後の取材用主要ウェポンに決定ッ!! ただし、本記事最後に書いた「バッテリー面の工夫を加えて」という条件付きだが。

 取材用途におけるiVIS miniには、いくつも実用的な要素があった。具体的には、超広角レンズ、音質、シンプルな使用感、携帯性である。細かくは後述するとして、まず取材におけるビデオカメラについて少々。

 インタビューをはじめとする取材は、相手が喋ったコトが重要ですな。主張や説明などの発言を記事として書き起こすわけだが、正確を期すために多くのケースでICレコーダーなどを使って発言を録音する。取材後、その録音を聞きつつテキストとして書いていく。

 ここで問題が起きがち。取材時の記憶がちょっと希薄だったりすると、「誰の発言なのか?」「どういうニュアンスでの発言なのか?」「何を指してソレと言っているのか?」といったことが判断しにくい~全然わからなかったりする。

 そういう問題が起きがちなので、取材時に誰が言ったのかメモったり、発言の感情的なニュアンスを書き留めておいたり、ソレとかコレとかアレとかいう指示代名詞が意味する事柄を書いておいたりする。急いで書くのでけっこータイヘン。でもしょうがない。ICレコーダーだけだと、そういった情報までは記録されない。メモるしかない。

 だが、ビデオカメラなら、音とともにその場の様子を動画として記録できる。ので、たとえば3人の発言者がいて交互に発言したりしても、誰が口を動かしているかわかる=発言者を特定できるし、笑顔なのか苦笑なのか目だけ笑ってないのかという微妙なニュアンスもわかるし、発言の含まれる指示代名詞が何を指すのかもわかりやすい。

 というわけで、何度かビデオカメラを持ち込んでの取材を試みたが、イマイチな感じであった。最近のビデオカメラは広角気味のレンズを搭載するようになったが、以前は全然広角ではなかった。ので、複数人数を同時に撮ろうとすると、ワイドコンバージョンレンズが要るわ、高めから狙うための三脚が必要だわで、機材も準備もタイヘン。

たとえばコンパクトなデジタルビデオカメラを取材に使う場合でも、ワイドコンバージョンレンズとミニ三脚くらいは必要。これを向けられると、取材される側もちょっと引いちゃいますな

 機材がタイヘンって以前に、そーゆーふーな大がかり気味なコトをし始めると、取材される側がキンチョーしがち。「ビデオは……ないとダメですかねえ」と難色を示されたりも。じゃあICレコーダーで我慢しよう、あとは頑張ってメモろう、という方向に収束しがちだった。

 ところが、iVIS miniだと、これまでのビデオカメラといろいろ違うのであった。前述のような「取材に置けるビデオカメラの諸問題」の多くが解消される感じ。

 まず、レンズが超広角であること。テーブルの上にiVIS miniを置けば、向こう側に座る人全員が写る。ワイドコンバージョンレンズ不要。レンズの向きを変えたり、テーブルの振動が直接カメラに伝わらないようにするためにミニ三脚くらいは欲しいが、でもまあ機材も少なく準備もササッと行える。

 実際、取材前に「あの~取材後の確認のために音声と画像を録ってもよろしいでしょうか~」的に軽く許可を得ると同時に、机上に小さなiVIS miniを置く程度で準備完了となる。前述のとおり超広角なので、細かくカメラの向きをセットする必要もあまりない。操作も、基本的には録画開始時に画面をタップする程度。全体的に大げさ感が希薄なので、先方もそんなに「引かない」のだ。

 撮れる動画も十分「使える」。動画の解像度はフルHDとなるので、動画メモとして問題ナシのクオリティだと思う。

 音質も良好。雑音が多い屋外だと「不要な雑音まで拾いがちな感度」ではあるが、室内での会話なら小声であってもしっかり録れる感度。スピーチや会話などを撮る音声記録モードもあり、取材用音声メモとしてはバッチリ使えると感じた。

iVIS miniの場合、スマートフォンより小型なので、大げさな感じがしなくて良い。レンズを向けられても威圧感はありませんな。三脚を使わずとも机上の置けてレンズの向きも変えられるが、机面からの雑音防止と手軽にレンズ向きを変えるためにミニ三脚を使用している

 現時点でiVIS miniを2回の取材で使ったが、どちらも好結果となった。1回目は超VIP級の方への取材で、我々取材陣はかな~り緊張。iVIS miniをセットする手が震えたが、しかし、「iVIS miniが取材を丸ごと記録してくれる」という安心感があり、取材そのものに集中することができた。

 2回目は、取材+打ち合わせみたいな感じでの使用。iVIS miniで要点を撮らせてもらったが、先方がiVIS miniそのものに興味を示して「これイイですね!」「こんなに広角なんですね」そして「ボクも買いますよ~」と盛り上がった。

 なお、取材時、iVIS miniでの動画記録と平行して、一応はICレコーダーで音声録音もした。が、結局、後日参照したのはiVIS miniで撮ったフルHD動画だけであった。動画だと早送りして「あっそうそう、この資料出したときの発言」みたいに動画自体をマーカー的に使って見ていけるので、目的の箇所を探すのもわりとラク。う~マジ役立つわiVIS mini、とか思った。

こんな感じの画質と音質

 ここでiVIS miniの画質を少々見てみよう。と言っても撮影環境が異なるとかな~り印象の違う画質/音質となるので、あくまでもご参考までに。

 iVIS miniの画質/音質に関わる設定項目としては、録画モード、フレームレート、撮影モードあたりがある。録画モードは高画質な順から、24Mbps、17Mbps、4Mbpsの3種類から選べる。フレームレートは30Pと24Pから選べる。撮影モードはスポーツ、ビーチ、マクロ、グルメ・ファッション、夜景、スノーといったシーン別撮影モードのほか、オートとプログラムAEがある。

 それから、音質も「オーディオシーン」という項目で設定できる。具体的には、スタンダード、音楽、スピーチ、森と野鳥、ノイズカットから選べる。

 以下のサンプル動画では、録画モードを17Mbps、フレームレートを30P、撮影モードをプログラムAE、音質をスピーチとしている。ハッキリ言って、取材メモとしての動画/音声としてはオーバークオリティかもしれない。だがまあ、大は小を兼ねるの理屈で、iVIS miniなら安心して取材メモを残せるという気分になるのも確かだ。

室内でのテスト撮影

 窓を閉め切った室内でのテスト撮影。取材はこんなような環境で行われることが多く、人の声は良好に録れている。発言者の表情を捉えるのにも十分な画質がある(動画をフルHDで視聴するには、YouTubeのロゴをクリックしてください)。

静止画で撮影した写真

屋外でのテスト撮影

 屋外で撮ってみた。風が強い日だったので雑音も多い。風がマイクに与える影響(ボボボボ音)は案外少ないようだ(動画をフルHDで視聴するには、YouTubeのロゴをクリックしてください)。

静止画で撮影した写真

手持ちで猫を撮影

 手持ちで猫を撮ってみた。動きも音声も良好だが、手ブレ補正機構を持たないので手ブレが……。置いて撮るカメラですな(動画をフルHDで視聴するには、YouTubeのロゴをクリックしてください)。

静止画で撮影した写真

バッテリー持続時間が不安ですぅ~

 iVIS miniはサイズも操作感もなかなかイイ感じのカメラだ。キヤノンオンラインショップ限定販売だが、キヤノンショールームやサービスセンターで実動実機に触れることができるので、ぜひ一度触れてみて欲しい。

 前述のとおり取材メモ用にバッチリ使えるし、自分撮りにも良さそうだし、ほかアイデア次第でイロイロ使えそうなiVIS miniだが、大きな残念点がひとつあると感じた。それはバッテリー持続時間だ。

 iVIS miniの電源は、バッテリーパック(交換可能)とACアダプタ(別売)。で、バッテリーパックであるリチウムイオン充電池の「NB-4L」を使った場合、17Mbpsの設定だと「連続使用時間が約65分/実使用時間約45分」となっている。

 このバッテリー持続時間、取材向きとは全然言えませんな。こんな短時間しか使えないとなると、怖くてiVIS miniを取材メモ用には使えない。自分撮りについても、この程度のバッテリー持続時間だとバッテリーパックの充電ばっかりするハメになりそうな気がする。

 ちなみに、iVIS miniはPCなどとUSB接続できるが、これはデータ転送のためのみに使われているようだ。つまりUSB給電非対応。モバイルバッテリーと組み合わせて使うこともできない。

 じゃあ予備のバッテリーパックを用意するか、ACアダプター使うかになるわけだが、バッテリーパック「NB-4L」はメーカー価格4500円、対応ACアダプター「コンパクトパワーアダプター CA-110」は8000円(!!)もする。バッテリー持続時間を長くしようとすると、な~んだか高くつく感じ。

 ツイデに言えば、取材目的でiVIS miniを使おうとすると、やっぱりACアダプター使用は考えにくい。取材先で電源借りるのもアレだし、コンセントなかったらどうしようってのもあるし、やっぱりバッテリー運用が現実的だと思う。

 ただ、バッテリー運用にしても、1時間弱で要バッテリー交換となるのは煩雑。小さな作業だが、取材中にバッテリー交換をしたら、確実に話の流れを止めてしまうと思う。

 そこで、自己責任下で、一般的なUSB給電対応のモバイルバッテリーをiVIS miniの電源として使ってみた。そうしたのは、対応する「コンパクトパワーアダプター CA-110」の定格出力がDC5.3V/1.5Aだったから。USB給電対応モバイルバッテリーって、出力電圧は5Vで、容量大きめのものなら1.5A流せるので、「iVIS miniにモバイルバッテリーつなげば動くんじゃね?」的に試してみたのだ。

 結果、フツーに動いた。モバイルバッテリーを使うと、ACアダプタより電圧が0.3V低いことになるが、なんか~大丈夫な感じ~♪ ラッキー☆ 的な。

 ちなみに、使ったモバイルバッテリーはパナソニックの「無接点対応USBモバイル電源 QE-PL202」。このバッテリーだけで、iVIS miniを4時間以上も連続駆動させられた。実際に4時間程度連続で撮影してみたが、とくに問題はなかった。

iVIS miniの電源としてパナソニックの「無接点対応USBモバイル電源 QE-PL202」を使用している様子。モバイルバッテリーとiVIS miniのDC INを自作ケーブルでつないでいる

 オススメの方法なのだが、オススメ以前にこの方法を使うとまずメーカーの保証は一切受けられなくなる。要注意。前述のとおり自己責任となる。

 それと、対応「コンパクトパワーアダプター CA-110」のケーブル部分を切断する必要もある。というのは、iVIS miniのDC INジャック(ジャックは凹型コネクタ)およびそこに挿すプラグ(プラグは凸型コネクタ)が特殊形状で、市販されていない。モバイルバッテリーからiVIS miniに電気を送るためのプラグは、対応「コンパクトパワーアダプター CA-110」を流用するしかないわけですな。……プラグを自作しちゃった達人もいらっしゃいますが。

iVIS miniのDC INジャックと対応ACアダプタのプラグは特殊形状。ACアダプタのケーブルを切断し、USBケーブルと合体させ、モバイルバッテリーとiVIS miniがつながるようにした

 ええっ、メーカー価格8000円のACアダプタ壊すのぉ~? てな感じだが、ぶっちゃけた話、互換品だとわりと安価に入手できたりする。ケーブルだけ使うなら互換品でいいかも。

 また、純正の対応「コンパクトパワーアダプター CA-110」のケーブルを切断する場合でも、切断した箇所の処理次第でACアダプタを無駄にせずに済む。ケーブル切断後もACアダプタが使えるように改造するのだ。

 俺の場合、iVIS miniとモバイルバッテリーをつなぐ自作ケーブルの片側を2.1mm標準DCジャックにし、ACアダプターから伸びるケーブルの端を2.1mm標準DCプラグにし、USBケーブルの片側を2.1mm標準DCプラグにした(実際は市販のUSB→DC電源供給ケーブル(プラグ内径2.1mm)を使った)。こうすれば、特殊形状の電源供給プラグ付きケーブルを、モバイルバッテリーにもACアダプタにもつなげられる。メーカー保証は全然受けられないが、ACアダプタの機能は活かせるわけですな。

 なお、特殊形状プラグやUSBバッテリーの極性だが、特殊形状プラグのほうはACアダプタやプラグに刻印がある。また、USBケーブル(モバイルバッテリー)の極性も、検索すればわかると思う。が、一応、工作時にはテスターて極性を確認したほうがいいですな。世の中にはミョーなケーブルとかACアダプタとかありますんで、念のため。また、電源周りの改造は機器の破損や火災を招く恐れもあることをヒトツ忘れずに。

 あらら。話が長くなってしまった。ともかく、こんな感じで電源をどうにか確保できれば、iVIS miniはかな~り強力な取材ツールになると思う。

 てか、キヤノンからiVIS mini用の外部バッテリーとかが発売されればいいんですけどネ。iVIS miniにも使える汎用モバイルバッテリーとかだったら、さらにいいですよネ。てか、iVIS miniとモバイルバッテリーをつなげるケーブルだけでもイイですよネ。もちろんiVIS miniが納得できる価格でネ。ぜひよろしくお願いします~キヤノンさん~。

スタパ齋藤

1964年8月28日デビュー。中学生時代にマイコン野郎と化し、高校時代にコンピュータ野郎と化し、大学時代にコンピュータゲーム野郎となって道を誤る。特技は太股の肉離れや乱文乱筆や電池の液漏れと20時間以上の連続睡眠の自称衝動買い技術者。収入のほとんどをカッコよいしサイバーだしナイスだしジョリーグッドなデバイスにつぎ込みつつライター稼業に勤しむ。