「VERSION UP!」でひとりひとりにアプローチするドコモの新モデル

法林岳之
1963年神奈川県出身。携帯電話をはじめ、パソコン関連の解説記事や製品試用レポートなどを執筆。「できるWindows Vista」「できるPRO BlackBerry サーバー構築」(インプレスジャパン)、「お父さんのための携帯電話ABC」(NHK出版)など、著書も多数。ホームページはPC用の他、各ケータイに対応。Impress Watch Videoで「法林岳之のケータイしようぜ!!」も配信中。


 11月10日、NTTドコモは、2009年秋冬から2010年春へかけて販売する予定の新モデル20機種を発表した。「STYLE」「PRIME」「SMART」「PRO」という4つのシリーズをスタートさせてから1年。今回は「VERSION UP!」というキーワードとともに、さらに進化を遂げた4シリーズのラインアップが発表された。

 発表会の詳細な内容は、すでに本誌レポートが掲載されているので、そちらを参照していただきたいが、ここでは筆者が発表会そのものやタッチ&トライで試用した端末の印象、シリーズ全体の捉え方などについて、紹介しよう。

「VERSION UP!」した4つのシリーズ

 2008年、NTTドコモは「変革とチャレンジ」を掲げ、新ドコモ宣言とともに新しいコーポレートブランドによる新体制をスタートさせた。その具体的な変革のひとつだったのが昨年11月に発表された「STYLE」「PRIME」「SMART」「PRO」という4つのシリーズによる端末ラインアップだ。それまで、FOMA 90Xi/70Xiシリーズなどによる高機能モデルと個性派モデルというカテゴライズを辞め、ユーザーの価値観やライフスタイルに合わせたモデルが選べるシリーズの展開を発表している。同時に、それまで採用されてきた「○90Xi」や「○70Xi」といったネーミングルールも変更し、新たに「○-01□」というシンプルな商品名が使われることになった。

 あれから1年。発表当時はさまざまな反響が聞かれた4つのシリーズと新しいネーミングルールも少しずつ市場に認知されつつある中、今回は「VERSION UP! ひとりひとりのあなたへ」というキャッチコピーとともに、着実に進化を遂げた19機種の端末ラインアップと「お便りフォトパネル」を合わせた全20機種が発表された。同時に、サービス面ではオートGPS搭載やお預かりデータの拡大を利用したiコンシェルの高度化、ブルーレイディスクレコーダー連携による動画サービスの進化、フェムトセルを利用した「マイエリア」などが発表された。

 また、auの発表会レポートでもお伝えしたように、この2009年秋冬から2010年春へかけての商戦は、NTTドコモをはじめ、各携帯電話事業者にとって、非常に重要なタイミングとされている。ひとつはNTTドコモの「ファミ割MAX」、auの「誰でも割」という2年契約の初期ユーザーが満期を迎えること。もうひとつは2年前に新販売方式導入で好調な売れ行きを記録した905i/705iシリーズのユーザーが買い換えサイクルを迎えるためだ。

 さらに、年明けにはソフトバンクのホワイトプラン開始から2年が経過し、同プランの初期契約者が月月割(新スーパーボーナス)の割賦の支払い完了を迎える。特に、NTTドコモとしては、MNPの開始以来、転出で少しずつユーザーを失っていることもあり、山田隆持社長が頻繁に口にする「お客様の満足度」を向上させ、現在の契約者数を着実に守りつつ、新規のユーザーも取り込みたいという考えだろう。

 では、この大事なシーズンをNTTドコモはどんなラインアップで迎え撃つのだろうか。まずは端末の各シリーズの構成について、見てみよう。4つの新シリーズが発表された2008年冬は、それぞれのシリーズが適度にバランスされたラインアップが構成されていた。しかし、2009年夏、今回の2009年冬と進むに連れ、下の分布を見てもわかるように、少しずつ配分が変わってきている。

シリーズ\発表時期2009年冬2009年夏2008年冬
STYLE1066
PRIME567
SMART234
PRO235

 今回のラインアップの配分で注目されるのは、STYLEシリーズのモデル数が急激に増えていることだ。STYLEシリーズは元々、ファッション性やデザインを重視する20~30代の女性をメインターゲットとするシリーズだが、今回はそこに半分のモデルを割り当てて、その内の半分に相当する5機種でファッションブランドやメディアとのコラボレーションを実現している。市場を見る限り、NTTドコモが女性ユーザーに弱いというわけでもないが、それでもこれだけのモデル数を開発してきたのは、905i/705iシリーズのユーザー構成を考慮して、このときのユーザーを着実に新シリーズに継承したいという目論見だろう。移り気な女性ユーザーのハートを他事業者に奪われまいという狙いもあるのかもしれない(笑)。

 STYLEシリーズが拡充されたのに対し、少しずつモデル数が絞り込まれてきた印象なのがPRIMEシリーズだ。PRIMEシリーズは、ケータイでできることをフルに楽しむエンターテインメントケータイという位置付けで、事実上の主力モデルと見られていたが、今回のラインアップを見てもわかるように、もっともハイスペックで最先端のシリーズではあるものの、販売数を稼ぐのは必ずしもPRIMEシリーズではないという解釈が成立しているようだ。事実、この1年間のNTTドコモの端末の売れ行きを見ていると、発売日直後はPRIMEシリーズの端末が好調な売れ行きを示すものの、しばらくすると、STYLEシリーズの端末が逆転し、その後も機種を入れ替えながら、いくつかのSTYLEシリーズの端末が上位をキープし続けるという状況が続いている。

 SMARTシリーズとPROシリーズは、一部のモデルをのぞき、ある程度の期間、継続して販売されるため、徐々にモデル数を減らしている。特に、PROシリーズは端末プラットフォームのバージョンアップが受けられるケースもあるため、今後も継続販売されるモデルが多くなりそうだ。ちなみに、夏モデルで発表された東芝製端末「T-01A」は、Windows Mobile 6.5 Professionalへのバージョンアップがアナウンスされている。

 次に、メーカー別の分布で見てみると、主要メーカーではシャープが5機種ともっとも多く、これに富士通が4機種、NECとパナソニック モバイルコミュニケーションズが3機種ずつという分布だが、今回はLGエレクトロニクスも3機種を同時に開発し、いよいよ中核を担うポジションに近づいてきたという印象だ。これに加え、今回からサムスンもスマートフォンでの端末供給を開始するが、発表会の質疑応答では先頃発表されたソニー・エリクソン製のAndroid端末「XPERIA X10」を来春導入する方向で検討中であることが明らかにされた。また、NECについては、「N-01B」と「N-02B」で初のオペレータパック採用端末を開発したこともあり、モデル数が絞り込まれたようだ。しかし、その割には既存のプラットフォームを採用したパナソニックはモデル数が少ないことが気になった。

 もうひとつの切り口として、形状別に見てみると、かなり偏った印象も残った。全体で見ると、折りたたみタイプが19機種中11機種ともっとも多いのに対し、これに続くのが二軸回転式の3機種で、残りはスライド(縦)、スライド(横)、Wオープン、ストレート、セパレートが各1機種ずつという構成になっている。これを4つのシリーズと絡めてみると、STYLEシリーズは10機種中9機種が折りたたみ、PRIMEシリーズは5機種中3機種が二軸回転式という構成で、一段と偏りが顕著になる。「ひとりひとりのあなたに」というシリーズコンセプトから考えてもややバリエーションに欠ける印象を持ったのは、筆者だけだろうか。特に、一般的な縦方向のスライド端末がSTYLEシリーズに1機種しかないという状況は、若いユーザー層(特に女性)にスライド端末を好む人が多いと言われる最近のトレンドを考慮すると、やや不思議な気もする。実際には、今年の夏モデルなども年内いっぱい程度は残ることが予想されるため、もう少し選択肢は広くなりそうだ。具体的にはスライド端末として、「P-08A」「L-04A」「N-07A」などがラインアップされている。とは言うものの、どうしてもスライド端末が欲しいといったユーザーは、早めに検討をした方が良さそうだ。

 最後に、ネーミングルールについても少し触れておきたい。おさらいになるが、昨年から始まった新シリーズでは、「N-01A」のように、「メーカー名」「連番」「発表年」の組み合わせで構成されている。この内、連番は必ずしも発売順というわけではなく、NTTドコモが開発メーカーからの提案を受け、製品として採用することを決めた順に基づいているようだ。発表年については、実際の年で区切るのではなく、秋の発表のタイミングを区切りとする。2008年冬が「A」だったので、今回の発表は「B」ということになり、順調に行けば、2010年夏モデルも「B」、2010年秋冬のタイミングの発表で「C」へと進んでいくことになる。昨年からわかっていたことではあるが、実際に型番が割り当てられてみると、どうも「A」から「B」に変わっていくのはグレードが下がったようにも受け取れてしまうため、やや違和感が残った。もちろん、受け取り方はかなり個人差があるので、一概におかしいとは言えないのだが……。

 また、連番と発表年、シリーズなどは、相互に関連性がない。たとえば、2008年11月発表では、「N905iμ」などの流れを受け継ぐNEC製の薄型端末が「N-02A」と名付けられていたが、ほぼ同じデザインを継承する端末が今回の発表では「N-01B」と名付けられている。同様に、QWERTYキーが装備されたPROシリーズのシャープ製端末が昨年は「SH-04A」だったの対し、今回の後継モデルは「SH-03B」となっている。連番はあくまでも単なる続き番号でしかなく、端末の形状やデザインと関連付けられるものではないことはわかっているのだが、逆にそのことが端末をイメージしにくくしており、ユーザーを迷わせることになってしまいそうな印象も残った。

 サービス面については、前述の通り、アプリなどを起動していない状態でも定期的に位置情報を計測できる「オートGPS」の搭載により、iコンシェルのサービス拡充がひとつの目玉となっている。たとえば、移動中でも現在地に合わせ、グルメ情報や天気予報、交通情報、観光情報などがiコンシェルで提供されるというものだが、もう少し具体的に捉えると、東京のユーザーが大阪に出張で出かければ、大阪の交通情報や天気予報が配信され、九州に旅行をすれば、九州の観光情報やグルメ情報が配信されることになる。このしくみはFOMAがまだ『次世代携帯電話』と呼ばれていた頃から何度となく、プレゼンテーションなどで見かけた活用例だが、約10年近くを経て、いよいよ現実的に活用できる状況が整ってきたわけだ。最終的に、どんなコンテンツが配信されるのかは、コンテンツプロバイダ次第だが、これまでのiコンシェルがどちらかと言えば、日常の生活情報を重視したコンテンツで構成されていたのに対し、オートGPS対応で、旅行や出張といった離れた場所でのコンテンツが配信できるようになるため、観光業界との連携などもかなり期待できそうだ。今回はドコモ地図アプリとオートGPSの連動で、東京ディズニーリゾートを楽しむシーンがデモで公開されたが、各地の観光施設などでの活用が広がれば、ケータイを活用するシーンがさらに増えるかもしれない。

 また、ブルーレイディスクレコーダー連携は、夏モデルの「SH-07A」でサポートされていたが、今回、19機種中14機種がサポートし、レコーダーもシャープ製に加え、ソニー製とパナソニック製が対応したことで、いよいよ本格的にケータイとレコーダーの連携が標準機能になりそうな印象だ。auのブルーレイディスクレコーダー連携と違い、異なるメーカー間でも対応機種であれば、再生できるというのもユーザーとしてはうれしいところだ。できれば、Webページなどでブルーレイディスクレコーダー側の対応機種なども順次、アナウンスして欲しいところだ。

「VERSION UP!」した「ひとりひとり」のためのラインアップ

 さて、ここからはいつものように、発表会後のタッチ&トライコーナーで試用した印象と各機種の捉え方について、紹介しよう。ただし、今回も19機種とモデル数が多く、機種ごとに十分な試用時間をとれなかったことをお断りしておく。また、発表会で展示された端末は、いずれも最終的な製品ではないため、実際に発売された端末と差異があるかもしれない点も合わせて、ご了承いただきたい。なお、各機種の詳しい情報については、ぜひ本誌レポートを参照して欲しい。

【STYLEシリーズ】

・F-02B(富士通)

 香りを持ち歩くというコンセプトを打ち出した防水対応モデルで、昨年の「F-02A」、夏モデルのF-08Aの後継モデルに位置付けられる。ケータイの香りというと、「SO703i」でチャレンジされたことがあるが、SO703iがあらかじめ香りが決められていたのに対し、「F-02B」は背面の電池カバー部分に装備された「フレグランスピース」に自分のお気に入りの香水などを付けて、香りを楽しむことができる。フレグランスピースは浄水器のフィルターやろ材などにも採用されることがある多孔質セラミックで、付けた香りを変えたいときは洗うこともできる。フレグランスピースの装着部はやや目立つが、香りを求めないユーザーのために、フラットな電池カバーも同梱される。ボディはトップパネル先端部に装着されたジュエルブロックやイルミネーションで華やかさを演出しており、全体的に女性ユーザーを強く意識したデザインで仕上げられている。Folli Folleとのコラボレーションによるスペシャルパッケージは、パッケージや付属のストラップだけでなく、ボタン部周囲のパネルにロゴをプリントするなど、一段と華やかさの増したデザインとなっている。

・L-01B(LGエレクトロニクス)

 折りたたみボディ内側のボタン部上に「タッチボード」と呼ばれる感圧式のカラーサブディスプレイを装備したユニークなモデルだ。タッチボードには電話帳や機能を呼び出すショートカットが設定できるほか、受信メールの内容を表示したり、デコメールに使える手書きイラストを作成できるなど、利用範囲は広い。もうひとつユニークなのはカメラ部横に装備されたカラーセンサーを利用したカラーリーダー機能だ。しくみとしては、LEDから発光の反射をカラーセンサーが読み取り、それを端末のイルミネーションに反映する。デザインもSTYLEシリーズらしいポップなイメージで仕上げられた端末だ。ダイヤルボタンはややフラットな印象だが、キー中央が盛り上がっており、意外に押しやすい。その半面、方向キーとタッチボードの間隔が狭く、上方向が押しにくいことが気になった。

・L-02B(LGエレクトロニクス)

 コスメをイメージしたデザインでまとめられたシンプルなモデルだ。同じLGエレクトロニクス製端末の「L-01B」や「L-03B」が比較的、ハッキリしたカラーを採用しているのに対し、「L-02B」はいずれも淡い色合いの柔らかいイメージのカラーリングとなっている。特徴的なのは「マルチセレクター」と呼ばれる方向キー部分で、上下左右の押下に加え、マルチセレクターの面を回すようになぞって、スクロールなどの操作ができる。押す強弱によって、スクロールの速さが変わるのだが、若干、レスポンスにクセがある印象が残った。もっとも通常の方向キーとしても操作できるので、必要に応じて、使い分けるようにするのが得策だろう。

・L-03B(LGエレクトロニクス)

 柔らかなイメージの「L-02B」に対し、スクエアなボディでまとめられたシンプルな端末だ。両モデルに共通したアピールポイントだが、どちらも310万画素カメラ、2.8インチQVGA液晶など、スペック的にはやや抑えられており、コストパフォーマンス重視のモデルとして、開発されているようだ。コスト重視とは言うものの、コンパクトなボディにワンセグを搭載し、3G/GSM国際ローミングに対応するなど、必要十分な機能はきちんと揃えている。ダイヤルボタン下の辞書キーやTVキーで、各機能をワンタッチで呼び出せるなど、使い勝手も考慮された端末だ。

・N-01B(NEC)

 「N905iμ」に始まり、「N906iμ」、昨年の「N-02A」、今年の「N-08A」「N-09A」へと継承されてきた人気のNEC製ハイスペックスリム端末だ。初代モデルから着実に進化を遂げてきたが、今回はハードウェア面では810万画素カメラ、NEC製端末でおなじみのニューロポインターなどが目を引く。特に、スリムボディでのニューロポインター装備は操作性が気になるが、会場で試した限り、「N-02B」や従来の「N905i」などと比べても遜色のない操作感だった。

 デザインは世代を追うごとに、女性向けのイメージが強くなり、今回は「フレンチネイルデザイン」と呼ばれるネイルアートのエッセンスを取り込み、N-08Aで人気を集めたキーイルミネーションも一段と華やかさが強化されている。今までのNEC製端末にはなかった[MULTI]キーが装備されているが、これは「N-02B」と並び、オペレータパック対応の新プラットフォームが採用されているためだ。標準モデルのほかに、Samantha Thavasaとのコラボレーションモデルがラインアップされるが、「N-08A」に引き続き、自分だけのケータイが注文できる「マイセレクトモデル」も企画されている。ベースカラーはホワイトに限られるものの、トップパネル先端部の2枚のパネルのうち1つのイルミネーションのサインをカスタマイズできるため、従来よりもバリエーションが一段と拡大している。店頭モデルとは少し発売時期がずれるが、N-02Bの購入を考えているのであれば、店頭モデルを選ぶ前に、一度は検討してみる価値がありそうだ。

・N-03B(NEC)

 NEC初の防水対応モデル。NTTドコモに端末を供給する主要メーカーでは、防水対応モデル開発が後発となったが、防水に加え、長持ち塗装という新しいコンセプトを取り込んできた。「N-03B」はボディの表面側(ディスプレイ部側)に「N-02A」に比べ、5倍の硬度を実現したハードコート処理を施し、ボタン部背面などには日産自動車の技術を応用した「スクラッチシールド」による塗装を採用している。従来の塗装に比べ、やや塗装膜に柔軟性を持たせることで、キズが付きにくく、仮にキズが付いたとしても広がったり、塗膜が剥がれたりといったことが起きにくいという。実機の感触もスクラッチシールドで塗装された面は少し手触りが柔らかい印象だ。ロングライフで使いたいユーザー向けという印象もあるが、実はケータイにキズを付けたくない、きれいに使いたいユーザーにおすすめできる端末と言えそうだ。

・P-02B(パナソニック)

 三菱電機のDシリーズのDNAを受け継ぐスライド端末として、昨年の秋冬モデルに登場した「P-01A」、夏モデルの「P-08A」の後継モデル。8.1MピクセルCMOSカメラ、おまかせiA(インテリジェントオート)などは共通だが、ディスプレイがタッチ操作に対応し、カメラ撮影時のフォーカスやアルバムの写真めくりなどに利用できる。カメラ周りで意外に面白いのが「P-01B」と共通の「ラブシャッター」と「グループシャッター」だ。最近のカメラ付きケータイに多く搭載されている顔認識の技術を応用した機能で、2人の顔の距離に近づくとシャッターが切れたり、あらかじめ設定した1~5人の顔が揃うとシャッターが切れるというもの。撮る楽しみをうまく演出させてくれる機能のひとつだ。

・SH-02B(シャープ)

 クリスタルパネルと呼ばれる透明感のあるパネルをラウンドシェイプのボディに仕上げた端末だ。トップパネル内には13個のLEDが埋め込まれており、さまざまなパターンで浮かび上がるように光らせたり、中央の有機ELディスプレイとの連動で光のアニメーションをさせるなど、かなり豊かな表現で楽しませてくれる。3.4インチ液晶やCCD 800万画素カメラ、Bluetooth、GPS、GSM対応など、STYLEシリーズでありながら、かなりハイスペックであることも見逃せないポイントだ。ラウンドシェイプのボディはコンパクトというより、手になじむ持ちやすいサイズで、ボタンも中央が突起した独立キーで押しやすい。デコメアニメ変換や豊富なデコメール素材など、メール関連の機能も充実しており、若い女性ユーザーを中心に人気の出そうな端末だが、今回のSTYLEシリーズの中では数少ない男性も手を出せる端末とも言えそうだ。

・SH-04B(シャープ)

 アクセサリーブランド「Q-pot.」とのコラボレーションモデル。今夏に話題を集めた「SH-06A NERV」に引き続き、台数限定販売(今回は1万3000台)となるが、こちらは夏モデルの「SH-05A」をベースにする。従来のコラボレーションモデルの多くはボディの塗装や内蔵コンテンツなどを使い、さまざまなブランドの世界観を演出していたが、「SH-04B」はトップパネルにとろけるチョコレートがあしらわれ、背面側もチョコレートを包むアルミ箔のようにブランドロゴが全面にプリントされており、非常に「美味しそうなケータイ」に仕上げられている。発表会のタッチ&トライコーナーでも女性記者を中心にダントツの注目を集めていた。防水対応やCCD 800万画素カメラなどのスペックも充実しており、過去のコラボレーションモデルとは一線を画した仕上がりと言えそうだ。

・SH-05B(シャープ)

 ティーン向けの雑誌「Seventeen」の人気モデルがプロデュースに加わったというティーンの女のコのための端末だ。スペック的には昨年の「SH-02A」をベースにしているが、カラーバリエーションがピンクばかり3色から構成されるのをはじめ、サブディスプレイ横のLEDや背面の内蔵スピーカーの穴にハートマークをあしらうなど、随所に女のコが使うことを意識した作り込みが見られる。「SH-02A」と比較して、インカメラが43万画素に強化されているが、これは女子高生が自分撮りや自分と友だちをいっしょに撮影し、プリクラのようにさまざまな飾り付けをすることを考慮したという。ダイヤルキー下のカメラキーではインカメラが起動したり(通常はアウトカメラが起動)、「ほっそり」や「色白」といったエフェクトを用意するなどの工夫も見られる。かつて、NTTドコモではティーン向けのケータイに取り組んだことがあったが、そのときよりもコンセプトが明確なうえ、機能的にもよく作り込まれており、ティーンエイジャーの反響が十分に期待できそうな端末だ。

【PRIMEシリーズ】

・F-01B(富士通)

 二軸回転式ボディを採用した防水対応モデルだ。昨年の「F-01A」の後継モデルに位置付けられる。「F-01A」が角張ったボディデザインを採用していたのに対し、「F-01B」は角を落とすことで、少し持ちやすい形状に変更されている。防水については、従来のIPX5/IPX7等級に加え、水深1.5mまでの撮影が可能なIPX8等級に対応し、今夏に発売されたらくらくホン6が対応したこともあり、防塵規格のIP5Xにも対応する。タッチパネルも進化を遂げており、富士通独自の手書き認識エンジンで手書きの漢字や絵文字などを認識させる「フリータッチライティング」、写真に手書きのコメントが付けられる「手書きスナップ」などの機能も搭載する。3.4インチのディスプレイでの手書き認識は少し狭い印象もあるが、思いの外、認識率も良い。また、内蔵のジャイロセンサーを利用したアプリによるゴルフスイングの診断をはじめ、運動強度を考慮した測定ができるエクササイズカウンター、らくらくホンにも採用されていたカメラによる脈拍測定ができるパルスチェッカーなど、健康を意識した機能も数多く搭載されている。

・F-04B(富士通)

 昨年のCEATEC JAPAN 2008でコンセプトモデルが公開され、注目を集めたセパレートケータイの市販品モデル。2009年春モデルの「F-03A」や同夏モデルの「F-09A」をベースにしたスライド端末をベースにしており、ディスプレイ部とボタン部を完全に分離することで、セパレートケータイを実現している。コンセプトモデルでは両ユニットを側面をつなぎ合わせるような構造が考えられていたが、「F-04B」ではスライド式ボディの上下を分離するという現実的な手法が採られた。両ユニット間はBluetoothでペアリングされており、分離時はボタン部をワイヤレスキーボードのように使うことができる。両ユニットには電池パックが内蔵されており、RFなどの基本部分はディスプレイ部側に内蔵されている。

 今回、実機も触ることができたが、ユニークな構造には興味を引かれ、実際の活用もなかなか便利そうなのだが、如何せん、約173gという重量はかなりヘビー級なうえ、スライドボディを開くと、どうしてもディスプレイ部側が重くなるため、やや使いづらいという印象も残った。しかし、スマートフォンを持ち歩いていることを考えれば、それほど違和感もないという解釈も成り立つため、ある程度、割り切って、活用できるユーザー向けということになりそうだ。ちなみに、個人的な印象としては、こういう端末こそがPROシリーズにラインアップされるべきではないかという気もした。

・N-02B(NEC)

 昨年、StyleChangeという新しい方向性を打ち出したNEC製端末だが、今回は好調な売れ行きを記録した905iシリーズから2年目ということもあり、「N905i」及び「N906i」で採用された二軸回転式ボディを復活させている。ボディの厚みと全体的なゴツさが気になったN905i/N906iに対し、「N-02B」はヒンジ周りの形状変更や周囲を面取りするようなデザインにすることで、従来よりもスッキリとしたボディに仕上げられている。5.7Mbps対応HSUPA、「N906iL」及び「N-06A」に続くWi-Fi対応など、今回発表されたPRIMEシリーズの中で、もっともハイスペックな仕様となっている。

 カメラも最高スペックの1220万画素カメラを搭載し、起動から撮影、保存までの流れを可能な限り、高速化した『瞬撮』と呼ばれる撮影環境を実現している。実際の操作感もかなり高速だが、より快適に使うには二軸回転式ボディのディスプレイ部を反転して、カメラを起動する操作に慣れるのがおすすめだ。ディスプレイは「N-06A」に続いて、タッチ操作に対応しており、ビューアーでの写真めくりだけでなく、タッチ操作のためのメニュー画面なども用意される。「N-01B」同様、オペレータパックによる新しいプラットフォームを採用しており、今までのNシリーズの端末にはなかった[MULTI]キーなどが装備される。

・P-01B(パナソニック)

 NTTドコモのパナソニック製端末は、2年前の「P905i」以来、Wオープンスタイルを着実に進化させてきたが、今回のP-01Bではヒンジ部分の形状を変更し、横方向にも開きやすく、持ちやすいスッキリWオープンスタイルを実現している。横開きスタイルではヒンジの突起がなくなり、持ちやすくなったが、それ以上にスライド式のロックレバーがなくなったことで、横方向でも開きやすくなったのは大きい。また、ダイヤルボタン部分にはタッチパッドが内蔵されており、ノートパソコンのタッチパッドのように操作ができるため、フルブラウザなども使いやすい。ただ、タッチパッドを内蔵したトレードオフとして、昨年の「P-01A」で搭載され、話題を集めた2WAYキーが廃止されている。

 カメラは今回のPRIMEシリーズでもっともスペックが抑えられた800万画素カメラとなっているが、独自の撮影機能として、ラブシャッターとグループシャッターを搭載している。共にカメラの顔認識機能を応用したもので、ラブシャッターは距離が近づいたときに撮影され、グループシャッターは人数が揃ったときに撮影される。宴会やパーティなどの席で活用できそうな楽しい機能だ。スペック的には他メーカーのPRIMEシリーズに一歩譲るが、ソフトウェアの完成度を高めることで、それをうまくカバーしようという姿勢が見受けられた端末だ。

・SH-01B(シャープ)

 すでに、他事業者向けにも登場しているが、国内最高峰クラスとなるCCD 1210万画素カメラを搭載した端末だ。昨年の「SH-03A」、夏モデルの「SH-06A」などに引き続き、二軸回転式ボディを採用する。外見で特徴的なのは、トップパネルのクリスタルのような処理と周囲のイルミネーションで、着信時や通話中など、いろいろなシーンにおいて、鮮やかに光らせることができる。STYLEシリーズのSH-02Bが多くの点を光らせているのに対し、「SH-01B」はトップパネル周囲を線で光らせることで、より立体的な演出を可能にしている。

 カメラについては、「SH-03A」のCCD 800万画素、SH-06AのCCD 1000万画素に続き、着実に進化させたことになるが、単に画素数を向上させただけでなく、個人検出や3つの手ぶれ補正、シーン自動認識などの撮影機能を充実させると共に、データBOXから撮影した特定の個人を検索して表示できる個人アルバムなど、見るための機能も充実している。ちなみに、このデータBOXから検索する機能は、Windows 7/Vistaなどでも採用されている写真にタグを付けて保存する方法とほぼ似た仕組みを使っているようだ。

【SMARTシリーズ】

・F-03B(富士通)

 昨年の冬モデルとして登場した「F-04A」の後継に位置付けられるモデルだ。「F-04A」はスリムなボディながら、IPX5/IPX7等級の防水仕様となっていたが、F-01B同様、水深1.5mの水中撮影が可能なIPX8等級、防塵仕様のIP5Xにも対応する。SMARTシリーズの端末は、STYLEシリーズの男性向けのようなイメージを持たれることが多いが、「F-03B」は1220万画素カメラやブルーレイレコーダー連携など、PRIMEシリーズの「F-01B」と比較してもほぼ遜色のないハイスペック端末に仕上げられている。ヘアライン加工されたステンレスパネルをはじめ、トップパネルの先端パーツ、方向キー中央の金属調の決定ボタンなど、全体的に非常に質感の高いデザインに仕上げられている。ただ、その分、ボディ周りは指紋が目立つ印象もあり、少しきれいに持ち歩く努力が必要かもしれない。

・P-03B(パナソニック)

 μシリーズから昨年の「P-04A」「P-05A」へと進化を遂げてきたパナソニックのスリム端末の後継モデルだ。かつてのμシリーズもそうだったが、端末がスリムに仕上げられている半面、どうしてもバッテリー容量が小さくなり、連続時間が短くなる傾向にあったが、「P-03B」では960mAhの大容量バッテリーを搭載することで、FOMA最長クラスの連続待受時間を実現している。メインディスプレイにディスプレイに有機ELを採用したこともあり、ボディの厚みは13.4mmに抑えられているが、重量が「P-04A」の約105gに対し、約136gと少し重くなっており、持った印象は通常の折りたたみ端末と変わらないレベルになっている。しかし、ソリッドなボディデザインや金属の素材感の美しさなど、SMARTシリーズが想定するユーザー層に着実に支持されそうな仕上りとなっている。

【PROシリーズ】

・SC-01B(サムスン)

 NTTドコモ向けでは初となるサムスン製端末だ。改めて説明するまでもないが、サムスンはノキアやモトローラなどと並び、世界のトップシェアを争っているメーカーの内の1社だ。今回のSC-01BはWindows Mobile 6.5 Professinalを搭載したスマートフォンで、ストレートタイプのボディにQWERTY配列のキーを備え、ディスプレイ部はタッチパネル対応となっている。一見、ボディはBlackBerry Boldなどに似ているが、もうひと回りコンパクトな仕上がりで、男女を問わず、普通に持てるサイズ感だ。今回はあまり時間がなく、ほとんど試用できなかったが、素直な感想として、本格的なフルキーボードを備えながら、タッチパネル対応である必要がどこまであるのかは、ちょっと疑問に感じられた。

 また、従来のWindows Mobile 6.1と違い、メインのメニューに比較的、大きなアイコンが並ぶWindows Mobile 6.5のユーザーインターフェイスも最初は少し戸惑うユーザーがいるかもしれない。Windows MarketpRace for Mobileも提供されるが、決算会見などでも明らかにされているように、NTTドコモのユーザーのことを考慮すれば、NTTドコモ版のマーケットプレイスもできるだけ早く提供されることを期待したい。

・SH-03B(シャープ)

昨年の冬モデルとして発表され、今年2月から販売された「SH-04A」の後継モデルだ。従来の「SH-04A」が3列のQWERTYキーを採用していたのに対し、「SH-03B」は数字キーを最上段にレイアウトした4列のQWERTYキーを採用する。ディスプレイサイズは3.7インチと大きくなっているが、ボディ幅はわずか2mmしか増えていないうえ、背面を少しラウンドさせたことにより、手に持ったときの印象は「SH-04A」と変わらないか、むしろ、こちらの方が少しコンパクトに感じられるくらいだ。ボディカラーはWhiteとBlackに加え、Magentaがラインアップされているが、これは「SH-04A」が予想以上に女性に支持されたことを意識しているようだ。QWERTYキーを搭載したiモード端末というカテゴリーは、今後も成長が期待できるのかもしれない。

充実の新ラインアップで2009年度冬春商戦に挑むNTTドコモの新ラインアップ

 この1年、日本のケータイ市場はあまり活気がないと言われ、端末の販売台数も前年比で落ち込んでいることなどが伝えられている。徐々に持ち直しの兆しは見えつつあるが、国内の経済状況を見てもわかるように、それほど安心できるような状況にはない。

 しかし、そんな中、NTTドコモは2009年度冬春商戦に向けて、非常に内容の濃い充実したラインアップを展開してきた。なかでもSTYLEシリーズは、他事業者にはないほどの充実ぶりだ。20代から30代の女性をメインターゲットとするシリーズで、これだけのラインアップを揃えられるのは、見事と言えるだろう。

 他のシリーズについては、少し落ち着いたという見方もできるが、それでもセパレートケータイ「F-04B」をはじめ、カメラも12Mカメラ搭載モデルが5機種、8Mカメラ搭載機種が8機種と、かなりハイスペックなモデルがズラリと並んでおり、ブルーレイディスクレコーダー連携やHSUPA対応、オートGPS対応など、大半のモデルがしっかりと注目機能に対応している。昨年のラインアップも非常に質の高いものだったが、今年のモデルも発表会のキーワードにも挙げられていたように、着実に『進化』させ、『VERSION UP!』を感じさせてくれるラインアップを取り揃えたと言えるだろう。

 ただ、これだけの内容が揃っている割に、本稿でも触れたように、型番によって、端末をイメージしにくいなど、ユーザーとしてはやや取っつきにくい面が残されているのも確かだ。それぞれの機種が何をサポートし、どんなことができるのかをもう少し理解しやすくしたり、従来モデルとの前後関係などを把握しやすくするような取り組みも必要ではないだろうか。もっともそんなことを意識させないためのネーミングルールだと言われてしまえば、それまでの話なのだが……。

 今回発表された端末は、今月半ばから来春に掛けて、順次、販売が開始される予定だ。今後、本誌に掲載される予定の開発者インタビューやレビュー記事なども参考にしながら、ぜひ「ひとりひとりの自分」に合った『VERSION UP!』を感じさせてくれる1台を選んで欲しい。

 



(法林岳之)

2009/11/11 20:54