みんなのケータイ
SIMロックフリー版iPadの憂鬱
法林岳之
(2014/6/16 06:00)
auのAQUOS PAD SHT22を使いはじめてから、少しずつ出動回数が減ってきていたAT&T版iPad mini RetinaディスプレイとVerizon版iPad Retinaディスプレイ(Verizon版iPad 4)。いよいよNTTドコモからもiPad/iPad miniが発売されることになり、「ドコモのLTEをつかめるのはSIMフリー版iPadだけ!」なんていう優越感(?)もなくなってしまった。そんな中、5月末日、SIMロックフリー版iPadを使うユーザーには、ちょっとした事件が起きてしまった。
5月31日からアップルはiPadのWi-Fi+Cellularモデル向けに、「キャリア設定(キャリアプロファイル)のアップデート」の配信を開始した。キャリアプロファイルは簡単に言ってしまえば、各携帯電話事業者のネットワークに接続するための設定情報をiPadに書き込むためのプロファイルのこと。iPadの設定画面で、[一般]-[情報]の順にタップすると、[キャリア]の欄にキャリア名とバージョン名が記載されている。これまでSIMロックフリー版iPadにNTTドコモのネットワークを利用したMVNO事業者のSIMカードを挿していると、「ドコモ16.0」が設定されていたが、今回のアップデートで「ドコモ16.2」にアップデートされた。
ところが、このアップデートはSIMロックフリー版iPadに、思わぬ制限を生み出してしまった。たとえば、テザリングもそのひとつ。iPadの設定画面には[インターネット共有]という欄があり、これが利用できたわけだけど、キャリアプロファイルを「ドコモ16.2」にアップデートすると、これが使えなくなってしまう。同様の事例はiPhone 5s/5cでも半年ほど前から起きていて、現在、SIMロックフリー版のiPhone 5s/5cにMVNO各社のSIMカードを挿してもテザリングが利用できない。
5月31日、筆者はたまたま、以前から利用していたVerizon版iPad 4を手に取り、キャリアプロファイルのアップデートを促すダイアログが表示され、素直に「アップデート」をタップしてしまった。今年購入したAT&T版iPad mini Retinaディスプレイの方は、幸い、この騒動に気付いた後だったので、アップデートはしなかった。このキャリアプロファイルのアップデートに伴う制限や動作確認の情報は、以前にもこのコーナーで紹介したIIJのエンジニアの方が執筆している「てくろぐ」でも解説されているので、詳しくはそちらを参照していただきたいが、個人的にはちょっとダメージが大きかった。
というのもMVNOのSIMカードをやりくりする関係上、現在、Verizon版iPad 4にはBB.exciteのSIMカードが挿してあったんだけど、IIJmioと違い、同サービスでは自社でAPN構成プロファイルを配布していないため、そのままではAPN設定の「LTE設定(オプション)」の欄に情報を設定することができない。つまり、今回のキャリアプロファイルのアップデートによって、テザリングができないどころか、Verizon版iPad 4ではLTE接続ができなくなってしまったわけ。3GでしかつながらないiPad 4って……。
結局、「てくろぐ」で説明されているように、フルリセットをかけて、キャリア設定アップデートのダイアログが表示されたら、「今はしない」をタップすることで、何とか元の状態に戻すことができたんだけど、今後、iOS 8へのアップデートが実施されると、否応なしにキャリアプロファイルが書き換えられるわけで、そうなると、テザリングはもちろん、ほかの部分も制限ができてしまう可能性があるわけだ。
今回の一件について、ネット上では「NTTドコモ版がiPadを売るから、MVNOを潰しにかかった」なんていうお門違いの書き込みも見かけたけど、MVNO各社はNTTドコモにとって、お客さんなんだし、シェアから考えてもわざわざそんなことをする必要もない。NTTドコモがアップルに情報を提供したという側面はあるものの、キャリアプロファイルを作っているのも配信しているのもアップルなんだし、iOSもiPadもアップルが開発しているのだから、本来、ユーザーが「何とかしてよ!」と言うべき相手はアップルであるはず。本当はもう少しいろんな話もあるんだけど、それはまた別途。
とまあ、そんなわけで、今のところはVerizon版iPad 4もAT&T版iPad mini RetinaディスプレイもLTEで接続され、テザリングが使えているけど、前述のように、今秋、iOS 8が提供されることを考えると、ちょっと憂鬱であることは確か。一方、SIMロックフリーという観点で見れば、AndroidタブレットもWindowsタブレットも3G/LTE対応モデルが少しずつ増えてきているし、アプリやネットサービスも拡がってきているので、iPadは自宅で使うなど、利用スタイルを変える時期に来ているのかもしれません。