【ARROWS X F-10D】

ARROWS XとiPhone 5を比べてみた

2012年10月22日 06:00
(日沼諭史)

 何かにつけてiPhone 5の話題が飛び交う昨今。もちろん筆者も仕事上auのiPhone 5を使っていて、本当にすばらしい端末だとは感じているのだけれど、それでもARROWS X F-10Dをこれまでと変わることなく使い続ける、と宣言しておきたい。発売当日に購入してから3カ月。まだまだ楽しい盛りだし、メインの携帯電話番号でもあるし、iPhone 5がやって来たところで一線から退くなんてことはありえないのである。

 とは言っても、iPhone 5と比べたとき、F-10Dに不満がないわけではない。操作のスムーズさだとか、バッテリーの持ちだとか、なんとかならないかなあと思う部分はいくつかある。ただ、Androidの場合、その「なんとかならないか」は端末に対する不満であると同時に、「自分でなんとかできるんじゃないか」という期待や希望の意味も混在していたりする。設定なりアプリなりで工夫していくことで、ちょっとずつ快適に使えるように仕上げていくのも、Androidの楽しみの1つなのではないかな、と。いや、何もしなくても不満なく使えるに越したことはないし、ユーザーが頑張ったところでどうにもならないことはあるんだけれども……。

 とにかく、F-10Dがメインであり、iPhone 5も同時に使い続けていくとなれば、いずれは双方の(一方の?)見つけたくないガッカリポイントを見つけてしまうことになる。だったら、今のうちに両方の性能を把握しておいて、それぞれの優れているところ、そうでないところを自分の中で明らかにしておこう。もしかすると2つの端末の効率的な使い分けなんかも見つかるかもしれないじゃないか。などと前向きに考えながらも、なんとなくiPhone 5が圧勝しそうな予感を抱きつつ、ハードウェア性能にどれくらいの違いがあるのか、ベンチマークアプリなどで確かめてみた。全く異なるハードウェアなので比較することにどれだけ意味があるのか、という疑問もあるかもしれないけれど、少なくとも筆者の気持ちの整理はつく。

 まずは演算速度やグラフィック性能を計測するベンチマークを実行してみた。ベンチマークアプリは、Android、iOSの両プラットフォームでリリースされているものを選んでいる。最初の「Geekbench 2」はCPUの演算速度を計測するアプリ。F-10DはiPhone 5の約25%落ちという結果になった。「Peacekeeper」は、WebブラウザーにおけるHTML5のレンダリング速度などを総合的に測るもの。Google Chromeを使用して実行したところ、こちらもiPhone 5の33%落ちという結果に。F-10Dの方がディスプレイ解像度が高いというハンデがあるとはいえ、「GLBenchmark 2.5」に至っては3D CGアニメーションの描画速度でiPhone 5に3倍近く水をあけられてしまった。

「Geekbench 2」
「Peacekeeper」バッテリー残量の変化をグラフ化。40分経過したところで強制終了してしまったので、残り20分弱しか表示できず……
CPU・バッテリー性能のベンチマーク結果
「RBB TODAY SPEED TEST」

 最後のバッテリーテストは、満充電状態から3D CGアニメーションをループ再生し、1時間経過した時点でのバッテリー残量を確認したもの。こちらもF-10Dが劣る結果になってしまったが、わりと健闘しているような印象、というか、3D CGのような負荷の高い処理については、さすがにiPhone 5にとっても厳しいのだろう。ただ、F-10DのフレームレートはiPhone 5よりずっと低く、テストの途中で問題も発生した。端末温度が上昇してディスプレイの明るさが強制的に変更されてしまい、(ディスプレイの明るさを一定にした状態で実行することを前提としているため)ベンチマークアプリが自動でテストを中断してしまったのだ。3Dゲームを長時間プレイするのに向かないのは、3Dグラフィックを得意としているTegra 3搭載のF-10Dとしては矛盾をはらんでいるとも言えるが……。

端末上での通信速度計測結果

 端末の通信速度の計測にあたっては、測定用アプリとして「RBB TODAY SPEED TEST」を使用。LTEは渋谷区内で、3Gは(LTEの電波がない)調布市内で計測した。いずれも室内で、5回計測したうちの最大値と最小値の記録は破棄し、残りの3回分を平均している。F-10Dのダウンロード速度は、LTEではiPhone 5とほぼ互角で、3Gでやや遅く、アップロードは極端に遅い。グラフにはしていないが、室外で測ってみてもアップロードについては大きな差は見られなかった。地域や時間帯によって上下するだろうとはいえ、このアップロード速度の遅さはいかんともしがたい。

テザリングでの通信速度計測結果
iPhone 5があってもArrows Xはまだまだ使い続けます!

 テザリング時の通信速度は、Webサイト「BNR スピードテスト」にMacBook Airからアクセスして計測。実行環境は前述の端末の通信速度計測時と同じだ。このテストでも、F-10Dのアップロード速度の遅さが際立つ。通信回線の差によるものなのか、それともF-10D個体の問題なのかはわからないが、テザリングするのであれば、直近数日間の通信量がauの制限を超えるほど多くならない限り、iPhone 5を使ったほうが快適であることは間違いない。

 こうしてある程度客観的に比較してみると、“クアッドコア”で“ハイスペック”がウリであるはずのF-10Dの(筆者の中での)立場がかなり危うくなってきたような……。たがしかし、OSを含むソフトウェア面ではご存じの通り性格が全く異なる端末で、それぞれで楽しみ方も違う。だから、この結果をもって「iPhone 5しか使わない」なんてことは一切ないし、今までどおりF-10Dで使い倒すつもりだけれども、それにしてもこの差を設定やアプリ、使い方の工夫でどこまでカバーできるものなのだろう。試行錯誤の日々が続きそうだが、せめて充電まで不可能になってしまう端末の温度上昇については、OSのアップデートでなんとかしてくれることを祈りたい。富士通さん、ホントお願いします。