Siriとヘッドセットと独り言

2012年4月9日 06:00
(白根雅彦)

 「Siri」が先日公開されたiOS 5.1でついに日本語対応した。iPhone 4Sのみの機能だが、au版でもソフトバンク版でも利用できる。個人的には、日本語対応がこんなに早いタイミングだとは思わなかった。嬉しい誤算だ。

 Siriは音声認識技術をベースとした、音声コマンドと情報サービスを融合させた機能だ。ホームボタンを長押ししてSiriを起動し、iPhoneのマイクに向かってコマンドを声で発するだけで、インターネット上の専用サーバーで音声処理され、コマンドが実行される(つまり通信が必要になる)。

「新着メールを表示」への答え。件数を音声で答えてくれる

 従来からGoogleなどは、スマホ向けに音声検索サービスを提供しているが、それと異なり、SiriはiPhone上のローカルな機能とも連動する。たとえば「××時にアラームを設定」や「今日の予定は?」、「新着メールを表示」、「××(連絡先に登録している人の名前)って誰?」、「××(世界時計にある都市名)の時刻は?」などのコマンドに対応する。正直に言って、どんなコマンドがあるのか、よくわからないくらい、いろいろなことができる。

 もちろんインターネットと連動した音声コマンドもある。たとえば「今日は傘が必要?」と言えば、いまいる場所の天気を検索し、「今日は雨が降るという予報はありません」とか答えてくれる。「××を検索」からブラウザを立ち上げることも可能だ。

ロケーション情報を聞くと、北米のみだと言われてしまう

 残念ながら、ロケーション情報や計算などの機能は、現在のところ北米での提供のみで、日本では利用できない。とくに英語で提供されている計算機能は、Wolfram Alphaというナレッジエンジンを使っているのだが、関数電卓と理科年表を引っ張り出して行うような計算から百科事典のような情報検索まで、非常に多様な機能を持っている。これが日本語対応していないのがとても残念でならない。

 このSiri、iPhoneに向かって話しかけるだけではなく、iPhoneに接続したマイクに向かって話しかけても利用できる。たとえば純正のマイク・リモコン付きイヤホンであれば、再生ボタンの長押しでSiriが起動する。Bluetoothヘッドセットは、受話ボタンを単押しすれば良い。Siriはスリープ中、ロックを解除しないでも利用できるので、たとえばポケットにiPhoneを入れたまま、時刻や新着メール、天気を聞く、なんていう使い方もできる。

 ただ正直に言うと、ヘッドセットでは独り言っぽくなるので、人前では使いづらい。スロートマイク(咽頭の振動を拾うマイク)でささやくようにして使えないか試したが、ノイズが多すぎるせいか、使い物にならなかった。そしてヘッドセットを使わず、iPhoneを取り出してから使うなら、Siriを使わずに普通に操作した方が手っ取り早い。Siriはなかなか未来を感じさせる面白い技術だが、これを使いこなせるようになるには、まず、街中で音声認識デバイスを使うことがおかしくないような時代が到来しないといけないのかもしれない。