iPhoneでも緊急地震速報

2012年2月1日 06:00
(白根雅彦)
緊急地震速報の設定。au版はオンにしても電池消費への影響は少ないらしい

 昨秋、iPhone 4Sと同時期にリリースされたiOS 5では、「緊急地震速報」の機能が加わっている。au版でもソフトバンク版でも利用可能だ。これは、最大震度5弱以上の地震が発生したとき、震度4以上が予測される地域に素早く速報を送信する機能だ。ここ1年で知った人も多いと思うが、震源から十分に離れている地域ならば、大きな揺れが到達する前に通知を受信することができる。

 緊急地震速報は、日本のケータイならば当たり前の機能で、最近はAndroid端末も対応するようになってきた。一応国際規格となっている技術ではあるが、緊急地震速報として運用しているのも日本くらいなので、グローバルでほぼ仕様を統一しているiPhoneが対応したというのは、正直言って予想外だった。2011年の東日本大震災の影響もあるのだろうが、とてもありがたいことだ。

 詳しくはケータイ用語の基礎知識の「緊急地震速報とは」を参照していただきたいが、ここでも簡単に説明しておこう。

 緊急地震速報は「基地局が発する1つの信号を、その基地局圏内のすべての移動機が受信する」という仕組みを採用している。SMSに近い技術でもあるが、1つの信号を1対1でやりとりする普通の通信とは異なり、「1対全」の放送に近い形式なので、遅延の心配がない。

緊急地震速報を受信したときの画面。マナーモードでも独特のサイレンが鳴る

 地震発生時、震源に近い観測装置の観測結果から、どこにどのくらいの揺れが到達するかを計算し、必要な地域の基地局だけが緊急地震速報の信号を発信する。たとえば地震は震源から100km離れていると、強い揺れ(S波)の到達まで30秒くらいかかるので、発生から受信まで処理に20秒かかったとしても、10秒の猶予が与えられることになる。

 この10秒は、とてつもなく大きな10秒だ。調理中であれば、火を消したり包丁を安全な場所に置くことができる。ものが落ちてきそうな棚から離れるのに3秒もかかるまい。家から飛び出すことはできないし、そこまでする必要はないが、命を救うかも知れない、大切な10秒である。

 似たような機能を提供するアプリもあるが、それらは通常のデータ通信網を使うため、キャリアが提供する緊急地震速報に比べると、遅延してしまう可能性が高い。やはり、iPhoneがキャリアの緊急地震速報に対応してくれたのは、非常に大きな進歩だ。

 ただし、緊急地震速報の意味があるのは、遠方の地震だけだ。震源が近いと、揺れの前に速報を受信できない可能性が高い。そして震源が近いほど、揺れも大きく危険性も高い。緊急地震速報が鳴ったときに適切な行動ができることも大切だが、緊急地震速報が鳴らずに大きな揺れが来ても大丈夫なように、日頃から地震への備えを怠らないように心がけよう。