みんなのケータイ

ノキアの復活がうれしかったMobile World Congress 2017

Nokiaロゴの付いたスマートフォンが再び出てくる日がやってきた

 2017年のMobile World Congress(MWC)、筆者が個人的に最も気になっていたのがNokiaの新製品だ。Nokiaは2014年を最後に自社ブランドのスマートフォンの販売は終了し、その後はMicrosoftブランドへと変わっていった。だが、そのNokiaのスマートフォンが2017年に再び戻ってきたのだ。

 すでに中国では1月から「Nokia 6」が発売になり、MWCでは「Nokia 5」と「Nokia 3」が登場。以前のWindows Phoneスマートフォン「Lumiaシリーズ」はカジュアル感の高いイエローやブルーなどカラフルなボディーが大きな特徴だったが、今回登場した数字1桁のAndroid端末のシリーズは、一転して落ち着いた色合いの製品となった。Nokia 6にはiPhoneのJet Blackを思い起こさせる「Arte Black」エディションも登場。また、3モデル共にCopperのボディーカラーを用意しているのが目新しいところかもしれない。

MWC各社ブース、ここまで人が密集していたのはNokia 3310のコーナーだったかもしれない

 MWCのノキアブースは今やすっかりネットワークとソリューションを展示する場所となっていたが、2017年はブースの一角に端末展示コーナーを設置。製品の数は少ないものの、多くの来客で賑わっていた。

 だが、これらのスマートフォンよりも人を集めていたのが、すぐ隣にある「Nokia 3310」の展示ブースだった。Nokia 3310といえば着せ替えボディで外見を自由にカスタマイズでき、片手でも持ちやすい形状の名モデル。2000年に登場後、2001年にマイナーバージョンの「Nokia 3330」が登場。この2つのモデルはGSM 900/1800MHz圏である、アメリカと日本と韓国以外のほとんどの国で「標準ケータイ」とも言えるほど、誰もが使っていた端末だった。

Nokia 3310を触る来客たちはみな楽しそうだ

 MWC2017ではこのNokia 3310をリファインし、デザインの面影を残しながらも最新の技術で薄型化されたNokia 3310の2017年モデルも発表されたのだ。しかし対応周波数は昔と変わらずGSM 2バンドのみで3Gは非対応。新たにカメラが内蔵されたものの200万画素という超低スペック。通話だけでればいいという考えだろうが、これといって大きな特徴のある製品では無い。

 にもかかわらずNokia 3310の展示コーナーは終始来客でごった返しており、みな奪い合うように製品を手に取っていた。もちろん機能は何もないといえるほど少なく、メニュー構成もシンプル。往年の名ゲーム「Snake」のカラー版を延々と操作する人、4色それぞれを手に取ってどれにしようか見比べている人、カメラで写真を撮りながら「この程度の画質だよね」と言いながらも喜ぶ人、などなど、全ての人が楽しそうにNokia 3310を手にしていた。

正統派カラーと言えるDark Blue

 筆者もブースで2017年版のNokia 3310を手に取った瞬間、香港で駐在員をしていたころの昔の記憶がいろいろとよみがえってきた。「そういえば客先と長電話したなあ」「落としてカバーは粉々になったけど本体は無事だったっけ」などなど、端末の外観は昔のモデルとは同じではないものの、手にするだけで過去を思いださせてくれたのだ。おそらくブースでNokia 3310を手にしていた人たちは、みな同じ思いだったに違いない。

 4色の本体カラーのうち、Dark Blueは過去モデルとほぼ同じ色合いだ。昔使っていた人ならなつかしさで思わず涙ぐんでしまうかもしれない。Nokia 3310/3300は純正だけではなくサードパーティー製も合わせると数百以上の着せ替えカバーが販売されたが、Dark Blueはそれらの中でも標準仕様のNokia3310/3330のカラーなのだ。

明るい色合いのWarm Red。全色とも来客が次々と手に取るので、4色まとめての撮影はできなかった

 一方、Warm RedとYellowは光沢のある明るい仕上げで、Nokia 3310を「昔のケータイっぽい、おもしろそうな端末」と思ってくれそうな、若い層をターゲットにしているように思える。低機能なNokia 3310も、こんなカラフルなボディだとついつい欲しくなってしまいそうだ。そしてマット仕上げのGreyはプラスチックボディながらもちょっと上品な色合いに仕上げられている。

 Nokia 3310が3G対応だったらとか、カメラ画質がせめて500万あれば、などと思ってはいけない。通話とメモ取りカメラ(そしてスネークゲーム)という、思い切りシンプルな機能に特化したからこそ、スマートフォンのサブ用途として、通話用にこのNokia 3310を買うという選択肢も生まれるからだ。発売は今年の第2四半期。もしかすると今年の後半は、アジアやヨーロッパの各都市であのノキアの着信音「Nokia Tunes」が多く聞かれるようになっているかもしれない。