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IIJの技術検証で浮き彫りとなった、MVNOと携帯サブブランドの「格差」

 インターネットイニシアティブ(IIJ)は1月に「IIJmio meeting 14」を大阪と東京で開催した。同社による個人向けMVNO「IIJmio」のトークイベントで、当日はIIJの担当者が格安スマホの選び方、SIMロック解除の歴史と今後などを解説した。

携帯サブブランドとMVNOで使えるサービスに「格差」、その理由とは

 また、au網を用いたMVNOサービスが抱える課題もテーマの1つとして取り上げられた。

 登壇した同社の大内宗徳氏によれば、au網がグローバルでみて特殊な構成となっており、さらに4G LTEの「Band 1」上り周波数がPHSの周波数と隣接していることが、au網を用いた同社のMVNOサービスであるIIJmio「タイプA」で使える端末が限定的になっている背景にあるとの解説がなされた。

 一方、au網を貸し出すKDDIのさじ加減でサービス提供がコントロールされるケースも浮き彫りとなった。それがテザリングだ。

 現状「タイプA」を利用した際にテザリングが不可になる場合があり、その原因と対応策が説明された。大内氏によれば「タイプA」は「auキャリア設定」を利用しているが、その設定では、テザリング利用可否をauサーバーで管理する仕組みを使っている。ただし「タイプA」ではそのサーバにアクセスできず、テザリング不可と判定されてしまうという。

「IIJmio meeting 14」発表資料より

 一部のAndroid端末はIIJmio以外のAPN設定を全て削除すればこの問題は回避できるものの、iPhone 6s世代以降のSIMフリーiOS端末に今のところ回避策はない。同じ問題は、au網のMVNOを展開するケイ・オプティコム「mineo」の「auプラン(Aプラン)」でも発生している。

 ただ、KDDIの連結子会社であるUQコミュニケーションズが展開するMVNO「UQ mobile」は「auキャリア設定」ではなくUQ mobile専用の設定が用意されており、その設定ではauサーバーに問い合わせることなくテザリングできるようになっているそうだ。大内氏が説明時に「UQ mobileと、我々のようなau網を利用する他のMVNOとの、取り扱いの差は何なんだろうなぁ」と思わず心境を吐露してしまったのが非常に印象的だ。

 今回のテザリング問題だけでなく、UQコミュニケーションズはMVNOのUQ mobileと親会社のau商品の両方を取り揃える実店舗「UQスポット」の出店もはじめている。KDDI代表取締役社長の田中孝司氏は記者会見で否定していたが、今回の技術検証結果も含め、どうしても自グループのMVNOと他のMVNOには厳然たる格差があるように外からは見えてしまう。携帯サブブランドとMVNOの「格差」があるのかないのか、関係各位からの適切な情報開示が望まれるところだ。

MCA 天野徳明

IT専門の調査・コンサルティング会社として、1993年に設立。「個別プロジェクトの受託」「調査レポート」「コンサルティング」などクオリティの高いサービス提供を行う。