DATAで見るケータイ業界

1契約あたり収入の動向でみる、通信キャリアの「通知表」

 通信キャリア各社は、好調な動きをみせるMVNOやサブブランドの影響をどの程度受けているのだろうか。今回は、各社が公表している「1契約あたり収入」数値の比較を通じて、各社の状況を確認していきたい。

各社「1契約あたり収入」の定義概要(各社IR資料をもとにMCA作成)

 数値を比較する前提として、公表数値の定義が各社で異なっている点を指摘したい。NTTドコモとソフトバンクの数値は1契約回線あたりの収入をあらわす「ARPU」(Average Revenue Per User)、KDDIの数値は1契約者あたりの収入をあらわす「ARPA」(Average Revenue per Account)を算出している。

 2つの指標で差が出る一例として、スマートフォンとタブレットの2台持ちをしている場合が挙げられる。ARPUは「収入÷回線数」なので合計収入を2で割ることになるが、ARPAは「収入÷契約者数」なので割り算せずに済む。このような条件のため、一般にARPUよりもARPAの方が高めの結果となる。

 なお、NTTドコモのARPUも、Xi/FOMA契約と同一名義のデータプラン契約者を計算上の分母から除外しているため、純粋に回線数で計算している訳ではない。

 一方、分子にあたる「収入」に含まれる数値も各社で異なる。KDDIとソフトバンクはサービス(コンテンツなど)収入を、NTTドコモは光回線収入を対象に含めている。

 前置きが少々長くなってしまったが、これら前提の上で各社が公表している数値の推移を取りまとめたのが下のグラフだ。

各社IR資料をもとにMCA作成

 直近の動向をみると、NTTドコモとKDDIが順調に1契約あたり収入を伸ばしているのに対し、ソフトバンクが減少トレンドに入ったことが見て取れる。

 ソフトバンクのARPUが下がっている主因は「サブブランドのワイモバイル契約者数の増加」「光回線とのセット割引額の増加」の2点が挙げられる。いずれも現在積極的に拡販しているため、当面はARPUに対してネガティブな影響を与えるとみられる。

 孫正義社長は「通信収入以外のところに成長のチャンスを見出す」としているが、1契約あたりのコンテンツ等収入を示すサービスARPUは2015年7~9月期以降、560円で足踏みが続いており、先行きは不透明な状況だ。

 残る2社が楽観的かと言えばそうでもない。特にKDDIは、サブブランドの「UQ mobile」が好調な動きを示すほどARPA下押し圧力が高まる関係にある。今後も大きな変化が見込まれる各社の1契約あたり収入動向は、当コーナーにて定期的に取りまとめていきたい。

MCA

IT専門の調査・コンサルティング会社として、1993年に設立。「個別プロジェクトの受託」「調査レポート」「コンサルティング」などクオリティの高いサービス提供を行う。