第541回:Windows Phone とは

大和 哲
1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我 ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連の Q&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)


 「Windows Phone」は、マイクロソフトが開発したスマートフォン向けのOSです。そのOSを搭載するスマートフォンを指す言葉としても使われます。

 2010年10月末より欧米5言語の市場で発売され、2011年には日本語を含めた各国の言語をサポートした「Windows Phone 7.5」(コードネーム:Mango)を搭載したスマートフォンが各国で販売されました。

 日本では、KDDIからWindows Phone7.5搭載スマートフォン「IS12T」が販売されています。

従来からの互換を全て捨てた新OS

Windows Phone IS12T

 マイクロソフト製のモバイル端末OSでは、今回紹介する「Windows Phone」以前に「Windows Mobile」と呼ばれるシリーズが存在しました。これは、組み込み用コンピュータにも使われる「Windows CE」と呼ばれるプラットフォームを利用し、ユーザーインターフェイス(UI)などを整えたもので、古くからPDAやスマートフォンに利用されてきました。

 しかし最近登場した「Windows Phone」では、これまでのWindows Mobileプラットフォームを踏襲することなく、ゼロベースで開発されました。Windows Mobileとは全く互換性がなく、これまでのソフトは使うことはできません。

 また、アプリケーションのインストールも、従来のように実行ファイルをそのままインターネットやメモリカードに登録できるわけではなく、(開発者向け端末を除いては)マイクロソフトが運営する「Market Place」から配信されたもののみできるようになっています。マイクロソフトによって審査が行われたアプリがこのMarket Placeに登録され、それのみが携帯電話で使えるアプリとなったわけで、これは従来のWindows Mobileとは大きな違いです。

根本的な改良、内部~UIまで

 根本的改良を受けて、UIなどもWindows Phoneでは一新されました。それらの特徴を紹介しましょう。

タイルが並ぶメトロデザイン

新UIデザイン「メトロデザイン」
 スタート画面をはじめとしたUIには「メトロデザイン」が採用されています。これは、マイクロソフトの次期ソフトウェアプラットフォーム「Windows 8」で採用される、タイル型のUIです。その名称やコンセプトは、「地下鉄では行きたい場所へたどり着ける」といったイメージをモチーフにしています。

Peopleハブ
 Windows Mobileからの大きな変更点は、メトロデザインと並んで、この「ハブ」という概念が加わったことでしょう。アドレス帳関連をの「People」、文書を扱う「Office」、画像を扱う「Picture」、ゲーム機能の「Games」、マルチメディアの「Music+Video」、そしてアプリ配信サービスである「Marketplace」と、6つのハブがWindows Phoneの機能の中心となっています。

 ひとつひとつに斬新な機能が盛り込まれており、たとえば、Peopleハブは、アドレス帳の概念を変えてしまうような便利なものとなっています。Windows Mobileやパソコンのアドレス帳と異なり、FacebookやWindows Liveなどの専用アプリを個別に起動することなく、友人や家族などに関するさまざまな情報を一覧で確認できるようになっています。

IE9ベースのブラウザ
 Windows Mobileでは、パソコン版のInternet Explorerより古いバージョンのブラウザをベースにしたMobile Internet Explorerが搭載されていましたが、Windows Phone7.5では、Internet Explorer 9のレンダリングエンジンを搭載し、ブラウザやUI表示にも役立てています。このレンダリングエンジンはHTML5に対応し、CSS3などの標準規格に対応しています。また、レンダリングにスマートフォン内蔵のグラフィック向けハードウェアであるGPUのアクセラレーション機能を利用しており、グラフィック表示速度も全体的に改善されています。

カーブフリック
 Windows Phoneでは日本語入力方法も一新されています。「Mango(Windows Phone7.5)」から日本語に対応したWindows Phoneですが、キータイピングには新しいフリック入力機能が利用されるようになりました。他のOSのフリック入力と異なり、濁音、半濁音、小文字などを入力するときに、複数回タッチすることなく、1回のストローク操作で入力できる「カーブフリック」が採用されています。

 




(大和 哲)

2011/11/22 11:59