ケータイ用語の基礎知識

第786回:デュアルカメラ とは

iPhone 7 Plusのデュアルカメラ

 「デュアルカメラ」とは、一枚の写真を撮るために2つのカメラユニットを使うといった仕組みのカメラを指すワードです。特に、2016年の半ば以降に登場したスマートフォンの中で、デュアルカメラを搭載するモデルが増えてきています。

 たとえば、iPhoneシリーズで大画面モデルである「iPhone 7 Plus」もそのひとつです。Androidでは、auの「isai Beat」や、2017年2月発売予定というNTTドコモの「V20 PRO」、SIMロックフリースマートフォンでファーウェイ製の「P9」「Mate 9」「Honor 8」がデュアルカメラを搭載しています。

 デュアルカメラは、カメラレンズを2つ備えるため「デュアルレンズ」、あるいは「ダブルカメラ」と呼ばれることもあります。

isai Beat
P9

デュアルカメラの使い方はさまざま

 2台のカメラユニットを内蔵して一枚の画像を撮影する「デュアルカメラ」。カメラを2台同時に使うと、さまざまな情報を得ることができます。ただ、そうした情報をどのように使うかは機種によって異なります。またモードによって異なる使い方をしている場合があります。

広角/望遠切り替え

 2台のカメラユニットを使うやり方の中では、もっとも原始的な応用と言えるでしょう。一枚の画像を2つのカメラユニットで作り出すのではなく、1つは広角画像を撮る場合に、もう1つは望遠用にしておき、ユーザーが撮りたい画像によって切り替えるという使い方です。実際に画像を撮影するときにはひとつのユニットのみが光を検知し、写真データを作ります。これはiPhone 7 Plusやisai Beat、isai Beatとベースが同等とされるV20 PROが備えている機能です。

 Mate 9のように画素数の異なるカメラユニットを用意して、ハイブリッドズーム機能を実現しているスマートフォンもあります。

より精細な画像を撮影する

 人間の眼というのは、実は画像を見るときにカメラと同じように情報を認識できているわけではありません。明るさや暗さには非常に敏感ですが、色の変化には比較的鈍感である、という特徴があります。

 つまり、同じ写真を見たときに、色の情報が多少増減していても違いがよくわからないのですが、明るさ/暗さの情報が多くなるとすぐ見分けが付けられるようになり、細かい部分までハッキリと写った良い写真であるように感じられるのです。そこで2つのカメラユニットのうち、一方は色に関する情報を、もう一方は明度の情報を取得することでより精細な画像を記録します。P9では1200万画素のイメージセンサーを持つカメラ2台で、Mate 9では色情報側に1200万画素、明度情報を2000万画素のセンサーを持つカメラユニットで撮影します。これによって非常にディテールの細かい写真を撮ることができるようになるのです。

疑似ワイドアパーチャー

 写真の中でピントを合わせたい物体だけをハッキリ表示し、それ以外のモノをぼやかして表示するようにすると、まるで一眼カメラで撮影したようにボケ味のある画像を作り出すことができます。

 一眼カメラでは絞りによって撮影時の開口部の大きさ(アパーチャー)を調整し、光が多く入るか少なく入るかを調整します。光が多く入るようにした場合、写真のピントはより厳密に設定しなければならなくなります。というのも、ピントが合った部分以外の絵がボケるようになるからです。これを「ワイドアパーチャー」と言います。ワイドアパーチャーのような写真を、スマートフォンではデュアルカメラという、全く違う仕組みで擬似的に作り出します。

P9のワイドアパーチャーによる写真

 具体的には、2台のカメラを使って写真を撮ると、被写体までの距離によって画面のどの位置にその物体が現れるかが変わります。スマートフォンから遠ければそれほど撮影画像上での位置は変わりませんが、近い場合は大きく位置が変わります。これを利用して被写体までの距離が近いか遠いかを記録しておき、被写体と同じ距離にいればピントが合い、そうでない部分はボケるように画像を加工します。この機能はP9やMate9が実現しています。また、iPhone 7 Plusのポートレートカメラも同様な方法で実現していると考えられます。

大和 哲

1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)