レビュー

初音ミク16周年を祝うドローンショーのリハーサルを見てきた、ドコモが参画するねらいやショーの現場を取材

 NTTドコモとSUGOI、スパークリング、つくもあ、オン・ザ・ラインが参画する“初音ミク Happy 16th Birthday”『Music & Fire Works』実行委員会は、4月26日に山下ふ頭(神奈川県横浜市)で、初音ミクの世界観を音楽と花火、ドローンで演出するイベント「“初音ミク Happy 16th Birthday”『Music & Fire Works』- Time Capsule -」を開催する。

 今回は、イベントに先立ち開催されたドローンショーのリハーサル現場を取材してきた。500機にも及ぶドローンを実際にどのように動かしているのか? また今回のイベントにドコモが参画する意義などを聞いた。

ドコモが参画する理由

左から、ドコモ スマートライフカンパニー エンターテイメントプラットフォーム部 コンテンツ開発事業 コンテンツ第二課 主査の中嶋 大志氏、SUGOI 総合演出プロデューサーの菅 翔大氏、レッドクリフ プロデューサーの相場 和大氏

 今回のイベントで、ドコモはプロモーションやマーケティング、広報関係の役割を担う。実際のドローンショーの構成や演出、企画などはSUGOIが担い、レッドクリフがドローンのオペレーションを担当する。

 SUGOIの総合演出プロデューサーの菅 翔大氏によると、SUGOIとレッドクリフは、これまでにもドローンショーを数多く手がけており、IP(知的財産)コンテンツを取り入れたショーも実施している。今回のイベントでは、初音ミクの世界観を、音とドローン、花火を融合させ、大空を舞台にショーが行われる。

 イベントでは、まずドローンショーで初音ミクの世界観に誘い、その流れで花火と音楽のショーが繰り広げられる。花火を用いた演出は、初音ミクに限らずゲームなどの作品群と非常に親和性が高いという。

 ドコモが参画した理由について、ドコモの中嶋氏は、花火という日本の伝統芸能に、最新テクノロジーを加えたコンテンツと、ドコモのDXなどの取り組みが親和性があるとしたうえで、全国にあるドコモの拠点からドローンショーのような取り組みで地域活性化などが期待できるとコメント。

 ドコモとしては、今回のイベントに限らず、サッカーなどさまざまなイベントに参画しているといい、若年層がドコモに触れられる機会にもつながるとしている。

500機のドローン、どう飛ばしている?

 今回のショーで使用されるドローンの数は500機。レッドクリフの相場氏によると、同社が手がけるドローンショーの中ではそこまで多い数ではなく、中には1000機~1500機のドローンを使ったショーも過去に実施されたという。

 これらのドローンすべての制御は、パソコン1台で行っている。ドローンにショーの実施前に運行パターンのデータを送信しておき、時間を同期させてプログラム通りに飛ばす仕組みを採っている。

実際のドローン(左)と運営を担うパソコン(右)

 たとえば、500機のなかで数台飛ばないとどうなるのか? 筆者の問いかけに相場氏は、画をドットで表現しているため、飛ばないとそこが抜けることになるとコメント。実際に1機~2機程度は飛ばないことはよくあるとする一方、レッドクリフでは99%以上のドローンを飛ばしていると自信を見せる。

コンパスやプロペラの稼働確認はショーの直前まで実施

 500機のドローンを正確に飛ばすための準備は欠かせない。

 今回、話を聞いている裏では、ドローンショーに向けてテストが進められていた。

レッドクリフ 相場氏

 レッドクリフでは、ショーのおよそ4~5時間前から準備を始める。相場氏によると、早く取りかかればいいということではないと話す。たとえば、夏場など炎天下にドローンを長時間おくと、熱によってドローンへの負荷が高まる。レッドクリフでは、ドローンの数にかかわらず同様の時間で準備を行っている。

 先述の通り、ドローンが自律して飛行するため、プロペラの稼働確認や、自身の位置、あるいは方向を確認する機能をチェックする。チェックの結果、調整が必要なものに関しては、ドローンのランプが点灯する。担当者が、そのドローンに行き、調整を施すとランプが消えるため、1機ずつ確認しなくてもエラーが出ているものだけ調整すればよいようになっている。

コンパス機能を調整する様子
実際に飛行して確認する工程も

 調整は、日暮れまで行われ、日が沈むといよいよドローンショーのリハーサルが始まる。

暗闇に浮かぶキャラクター

イベントロゴ

 ドローンショーでは、音楽にあわせてさまざまな絵やキャラクターが夜空に登場する。ドローン1機が1つのドットとなり表現されるだけでなく、ドローンが動くことで、キャラクターが生き生きと表現される。

今回のリハーサルでも調整が行われており、この後も色味や動きなどが調整されて本番が迎えられる

 二次元コードなども表現できる。実際に読み取ることもでき、今回のショーでもイベントサイトへの二次元コードが表現される。

 500機のドローンが一斉に動き、さまざまな表現をした後は、一斉にスタートした場所まで戻っていく。ドローン同士がぶつかることもなく、再び元の位置に戻っていく姿も壮観だが、本番ではすぐに花火の演出が始まるとのことで、これはリハーサルならではの光景となった。

夜空いっぱいに表現される様は圧巻
スタート場所に戻るドローン

レーザーやスモークなど表現方法は今後も拡大

 ドローンショーは、今回の花火や音楽、光以外にも、さまざまな演出要素が加えられそうだという。

 相場氏によると、レーザー光線で演出できるドローンが活躍しつつあるといい、スモークを出せるドローンと組み合わせれば、演出の幅が広がるとコメント。

 また、中嶋氏は「構想や計画があるわけではない」と前置きした上で、ドコモやNTTが持つXRやAR、IOWN技術なども活用すると、たとえば遠隔地などでも楽しめるようなコンテンツも期待できると話す。

ドローンショーが日常になるくらい世界に広げていきたい想い

 SUGOIの菅氏は、今回のような音楽と完全にシンクロした花火とドローンを用いたショーを「新しいエンターテイメント体験になる」とし、これがさらに広がっていければとコメント。

 レッドクリフの相場氏は、ドローンショー自体は注目されているものの、「実際に生で観たことがないという人もかなり多いと思う」と話す。映像でも美しいが、実際に見ると迫力や感動がより伝わるとし、日本や世界各地でさまざまなところでドローンショーが観られるように、ドローンショーが日常にあると言えるようになるほど広げていきたいという。

 ドコモの中嶋氏は、ドコモの強みの一つであるマーケティングソリューションを取り上げ、「花火などイベントを通じて、新しいファンを増やしていったり、コアファンを作っていったりできれば」とコメント。今回のように日本の伝統芸能と新しいテクノロジーを組み合わせた新しいフォーマットとしての展開が期待できるとした。

【訂正】
SUGOIの委員会内での役割について、修正の案内を受けたため、修正しました。