今週のケータイ Watchの読み方 (2012年9月28日)
Nexus 7、日本で発売
米国で6月末に発表された、GoogleのNexusブランドで展開する端末「Nexus 7」が日本でも9月25日から販売が開始された。米国での発表後まもなくして日本の技術基準適合試験(技適)を通過していたことなどから、日本での販売は確実視されていたが、米国での発表から3カ月後の発売となった。
日本において、Nexusブランドの端末は、NTTドコモが「GALAXY NEXUS SC-04D」を販売したが、今回の「Nexus 7」は通信機能がWi-Fiのみということもあり、Google自身が日本で販売する初めての端末になった。購入自体は簡単で、Webサイトから注文すると海外から製品が届く。テレビCMも放映されるほか、10月2日からは大手家電量販店の店頭でも取り扱われるなど、販売拡大にも力が入っている。
機能面では、巧妙に取捨選択され、突出した先進性は感じないものの、大きな不満も感じないモデルだろう。16GBモデルで1万9800円という価格はインパクト十分で、7インチタブレットの選択肢として、いきなり最有力候補に躍り出た雰囲気だ。
サービス面で注目されるのは、「Nexus 7」と同時に発表された電子書籍サービス「Google Play ブックス」だろう。サービス自体はAndroid端末全般に向けたものだが、7インチタブレットを電子書籍に便利な端末として展開したい姿勢が窺える。電子書籍のラインナップ自体はまだまだ少なく、今後の拡充に期待したいところ。折しもAmazonの「Kindle」サービスが日本市場に参入直前とされる時期であり、少なくとも「7インチタブレットで電子書籍」という組み合わせについては、今後さらに注目を集めそうだ。
■Googleが「Nexus 7」国内発売、Google Play ブックスも
■ISP各社、Androidタブレット「Nexus 7」8GBモデルを販売
CEATEC出展内容が明らかに
家電の大型展示会「CEATEC JAPAN 2012」が10月2日~6日に開催される。NTTドコモは9月19日に展示内容を公開したほか、KDDIも26日に展示内容について案内を行っている。
ドコモは「メガネ型ウェアラブル端末」などユニークで実験的な展示が注目を集めるが、「握って操作・視線で操作」など、スマートフォンの普及を受けた取り組みも目立つ。また、冬モデルの発表を控えていることもあり、会場では一部モデルが先行的に展示される予定だ。
KDDIは、「iPhone 5」と同時に開始したLTE通信サービス「4G LTE」の各種の取り組みを紹介するほか、端末ではAndroid搭載のケーブルテレビ用セットトップボックスが登場、参考出展として、持ち運びできる「Stick型Smart TV」の展示も予告されている。
「CEATEC JAPAN 2012」では端末メーカーも出展する予定で、シャープ、NEC、京セラ、パナソニック、富士通、東芝、ソニーなど、大手メーカーのブースにも注目したい。
■視線で操作、握って操作、眼鏡型機器も――ドコモのCEATEC展示
■KDDI、「CEATEC JAPAN 2012」に4G LTEなど展示
販売好調のiPhone 5とマップアプリ騒動
9月21日に発売されたAppleの「iPhone 5」だが、9月25日には「3日間で500万台を販売」と発表された。9月19日より既存端末向けに提供が開始された「iOS 6」については、1億台以上にインストールされたことも合わせて発表されている。
「iOS 6」に搭載された「マップ」の内容をめぐっては、世界中で議論が噴出しており、本誌では9月24日に関連記事を掲載している。海外の一部都市で鳥瞰図のような3D表示がサポートされるなど、先進的な取り組みがなされる一方で、地図は誤った情報が多く、「計算間違いをする電卓アプリ」といった状態だ。Appleのブランド力や製品へのこだわりと、「マップ」アプリの品質の低さとのギャップが大きすぎて、「記念碑的なアプリだ」という声すら聞かれる。
より深刻な問題は、Appleの品質管理体制に、重大な疑問が投げかけられる結果になったことだろう。「iOS 6」のように、OSのメジャーバージョンアップのタイミングは、一気に普及させたいアプリを投入するタイミングとして絶好の機会だ。「マップ」アプリの開発自体は以前より表明されていたが、開発の遅れを鑑みた判断がなされず、強引に「iOS 6」に含めてしまったことが不幸な結果を生んだと考えられる。
Googleのあるソフトウェア開発者は、地図アプリについて「簡単に追いつかれては困る」と苦笑いしていたが、地図アプリの開発は、ノウハウの蓄積や最適化に多くの時間がかかるとされる。Googleは、パソコン向けのみの時代を含めれば、10年以上に渡って世界で地図サービスを提供している。Apple謹製のマップがどのタイミングで投入されても、多かれ少なかれ不満は起こったことだろう。
iPhoneユーザーにとって残念なのは、地図サービスにおいて、現時点でAppleと幸福なビジョンを共有できていないことだろう。これまでの、洗練されたハードウェア・ソフトウェアへの取り組みにおいては、Appleが自らに課すこだわりや、美しさを追求する姿勢が、そのままユーザーにとっての満足に繋がっていた。しかし「マップ」アプリでAppleがまず目論んだ世界は、そうはなっていない。不完全なまま世に放たれ、こだわりだけが残り、ユーザー不在の姿勢を見せてしまった。
一方、Appleが強引に舵を切ったことで、地図サービスの重要性は将来的な展開も含めて、改めて注目されることになった。例えばユーザーが何かを検索した、何かを購入した、といった情報に地図が加わると、どこで何を検索した、どこにいながらネットで何を購入した、という情報に変わり、ユーザーの動向をつかむ情報として格段に価値が高まることになる。日本ではすでに議論が始まっている話題だが、Appleが動いたことで、今後世界レベルで位置情報サービスの加速が予想される。
魅力的で先進的なデザインのハードウェアに、キビキビと動作する綺麗な表示のソフトウェア――Appleが地図サービスを自ら手がけるという行動は、得意分野である「ハード+ソフトウェア」という枠組みから、大きく一歩を踏み出した結果だといえる。スティーブ・ジョブズがこの世を去り、一部では「ハードウェアの魅力で勝負する時代は終わった」という声も聞かれたが、Appleの地図“サービス”への注力は、将来的に、これまでとは異なる市場が主戦場になることを示唆しているのではないだろうか。
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2012/9/28 19:45