ソフトバンク決算、“本業”好調で過去最高の純利益達成
ソフトバンクの孫氏 |
ソフトバンクは、2011年第1四半期(2011年4月1日~6月30日)の業績を発表した。
第1四半期のソフトバンクグループの連結業績は、売上高が7642億3700万円(前年同期比9.0%増)、営業利益が1758億円2500万円(前年同期比12.3%)、経常利益が1512億3000万円(前年同期比19.2%増)となった結果、当期純利益は過去最高の947億9100万円(前年同期比387.6%増)の大幅な黒字化を達成した。
業績を牽引したのは移動体事業の好調が継続していることにある。同事業単体の第1四半期の業績は、売上高が5140億9000万円(前年同期比16.6%増)、営業利益は1164億9100万円(前年同期比13.5%増)となった。
■純増数、ARPU、解約率、インセンティブ
また、契約者数から解約数を差し引いた純増契約数は、第1四半期に73万件を記録した。このうち、プリペイド式携帯電話や通信機能付きデジタルフォトフレームなどの通信モジュールの契約数は15万8800件となっている。
1契約者あたりの平均収入を意味するARPUは、前年同期から80円減少して4210円となった。基本使用料+音声ARPUは、通話機能のない端末の増加や通信事業者間の接続料金の改定によって、前年同期から260円減少して1780円に、その一方、データARPUは、前年同期190円増の2440円となった。データARPUの増加についてソフトバンクでは、iPhoneの契約者数増によるものとしている。
第1四半期の解約率は、前年同期から0.06ポイント上昇して1.08%となった。解約率が上昇した要因は、法人顧客の解約数増加によるものという。
このほか、販売奨励金やインセンティブなどと呼ばれる、販売代理店に支払われる新規顧客獲得手数料は平均で3万6200円となり、前年同期から1000円減少した。
■データARPUが勝利の鍵
ボーダフォン買収時の会見VTRが紹介された |
業績を説明したソフトバンクの代表取締役社長である孫正義氏は、全ての面で業績が好調であるとし、KDDIの業績結果をグラフ化して営業利益と純利益の面でソフトバンクが上回ったことをアピールした。
さらに、ボーダフォン買収時に2.4兆円まで膨らんだの有利子負債が、5年を経て1.1兆円と半分以下にまで削減した成果を強調。買収時の借り入れも、リファイナンス(借り換え)によって金利が5%から1.4%まで小さくなること、担保制限が外れることでソフトバンク本体に資金を環流できることなどを説明し、「経常利益、純利益が継続的に増大する」などと語った。
また、ARPUについては、データARPUにおいてKDDIを抜いたことをアピールした。孫氏は、「音声ではなくデータARPUを伸ばしたところが勝つ」と述べ、「データARPU比率」(2010年度)というグラフを紹介した。この「データARPU比率」という数値によれば、ソフトバンクが58%で世界No.1になるとした。さらに、通信料売上における「前期比増減率」(2010年度)という数値も示され、そちらもソフトバンクが世界でNo.1とした。CM好感度については引き続き高い人気を維持している。
設備投資額については、すでに2年間で1兆円の資金を投じることを明らかにしている。これは、今後免許割当てが予想される900MHz帯の周波数が獲得できた場合の投資額となる。
■ブロードバンド・インフラ事業
ブロードバンド事業は、引き続き業績が落ち込んでいる。同事業における第1四半期の売上高は440億1900万円(前年同期比10.8%減)、営業利益は102億2100万円(前年同期比12.6%減)となった。
業績不振の要因は、ADSLサービスの課金回線数の減少が続いていることによるもの。第1四半期における「Yahoo! BB 光 with フレッツ」の純増数は17万7000件で、累計の契約数は110万9000件。ADSLと「Yahoo! BB 光 with フレッツ」を合計した累計契約数は411万8000件となる。
■固定通信事業、インターネット・カルチャー事業
固定電話関連の事業は第1四半期、売上高が874億9200万円(前年同期比1.9%増)、営業利益が129億1300万円(前年同期比93.8%増)となった。ソフトバンクの事業部間の内部売上高の増加が増収に寄与している格好だが、「マイライン」といった外部顧客収入は減収となっている。
ヤフーなどのネット事業については、売上高が696億1000万円(前年同期比1.8%増)、営業利益が366億500万円(前年同期比2.9%増)となった。東日本大震災の影響によって広告出稿が減少したが、リスティング広告やゲーム関連サービス、データセンター、ネット通販「Yahoo!ショッピング」の売上げそれをカバーした。
■ソフトバンクの本業
決算説明会の席で孫氏が連呼していたのが、「本業」という言葉だ。東日本大震災以降、孫氏は自然エネルギーを推進し、ソフトバンクとしてまた個人としてさまざまな活動や支援を行っている。決算説明会では、この自然エネルギーへの意気込みを語る一方で、ソフトバンクの事業としては「連結業績の一桁の下の方、1~2%程度」、「財務への影響は限定的」などと話し、あくまで多額の投資が伴わない範囲での活動であることを強調した。
孫氏はソフトバンクの本業について、通信であり、インターネットなどを複合したモバイルインターネットカンパニーであると語る。自然エネルギーへの取り組みについては、「本業ではないが」「本業に加えて」といった言葉を付け加えて説明しており、「本業をしっかりやっていかねばならない」「本業を全うするのは上場会社の社長の使命」とアピールするなど、本業への注力を期待する人々への配慮がうかがえる言動が目立った。
■iPhone好調、専門家は頭を丸めて反省を
好調な販売を続けるiPhoneについては、新規購入者の52%が女性であるとし、「もはやiPhoneは文化になったと感じる」などと話した。なお、ソフトバンクの端末を選ぶ学生のうち、7割がiPhoneを選択しているという。
また孫氏は、「業界の専門家といわれる人ほど、iPhoneが売れないともっともらしく偉そうに言っていた。それはことごとく外れであった。頭を丸めてたまには反省していただきたい」などと語気を強め、予想を上回る好調ぶりをあおった。なお、iPhoneの販売数や契約数をソフトバンクは公表していない。
このほか、iPhoneとiPadを両方使ってこそ使い勝手が増すとして、今後の「iOS 5」や「iCloud」の登場でさらに魅力が増していくことをアピールした。孫氏は、ソフトバンクの主力製品がiPhoneやiPadであることに変更はないとし、責任を伴う約束を意味するコミットメントとして「今後何年か後に4000万ユーザーを突破実現させる」と話した。
■トラフィック増で将来的にパケット定額を見直し
質疑応答ではさまざまな質問がなされた。
スマートフォンの急拡大によって、データトラフィックが急増し、将来的に3Gだけではさばけなることが予想される。各社はデータのオフロード、つまり、渋滞を回避させるためにバイパスを敷設するように、トラフィックをWi-Fiなどを経由して固定回線へ逃がす方策を採り始めている。ソフトバンクはWi-Fiのほか、新たに獲得した1.5GHz帯を利用してデータ通信のトラフィックを逃がしていく方針を示している。しかし同時に、主力商品であるiPhoneが1.5GHz帯をサポートしていないというジレンマも抱えている。
ソフトバンクは3Gの基地局を拡充しており、すでに12万局の基地局が設置されているという。孫氏は9月にもさらに14万局に拡大する予定とした。なお、同社が基地局とするものには、レピーターと呼ばれる中継局も含まれる。孫氏はレピーターについて「電波の到達度合い増すためのもの」と説明した。
また孫氏は、5年で40倍に拡大したトラフィックを無線の周波数だけでカバーするのは難しいとして、将来的にパケット定額料金の見直しが必要になるとの見方を示した。これはスマートフォンが普及する地域での世界的な潮流であるとし、国内の競合もそうなっていくとした。
■復興支援で電波利用料が増税か
このほか、一部で報じられた携帯電話の電波利用料を増税することで復興支援に充てるという、政府筋の増税案について孫氏に聞いた。同氏は、ソフトバンクモバイルの代表であるとともに、電気通信事業者協会(TCA)の会長でもあるためだ。
孫氏は、電波利用料を増税するという話について、現時点では詳しく知らないと前置きした上で、「一番たくさんの電波を使っているのはテレビ局やラジオ局。防災無線や電子タグなどはほとんどユーザーが使っていないのに一部の事業者のために非効率に割りふられている。それはちょっとおかしい。もし電波に税金をかけるなら等しく各業界にかけるべきで、同時に無駄に使われるところも見直していただきたい」と語った。
さらに、900MHz帯の獲得を狙っているためか「特に今後新しく許認可を得るところに税金をかけるというなら、ゴールデン周波数帯を持つドコモやauとイコールフッティング(条件をそろえること)になるまでは、チャレンジャーにだけ不当に負荷がかかることにかかる。疑問を感じる」などとした。
2011/7/28 21:16