ARM、モバイル向けGPU戦略を解説


英ARM メディア・プロセッシング部門上級副社長兼ジェネラルマネージャーのランス・ハワース氏

 アーム(ARM)は、同社のGPU戦略を解説する説明会を開催した。英ARM メディア・プロセッシング部門上級副社長兼ジェネラルマネージャーのランス・ハワース氏が来日し、モバイル端末向けを中心としたGPUの戦略について語った。

 ハワース氏は、「この5年でコンシューマーユーザーの期待は大きく変わってきた」と切り出し、iPhone、iPadの登場以降にスムースで直感的な操作が求められるようになったとしたほか、「あらゆるデバイスにGPUが採用されている」とグラフィックス処理能力が向上し、拡大している様子を語る。

 同社は「Mali」(マリ)と名付けたGPUを展開しているが、同社GPUの第3世代にあたるクアッドコアGPU「Mali-400MP」が「GALAXY S II」に搭載されている。同氏はいくつかの公開されているベンチマークテストの結果を示し、グラフィックス処理能力が優れている様子を紹介。ライバルにあたるNVIDIAのTegra 2、TIのOMAP4などよりも優れているとした。また、「GALAXY S II」では、電力管理の観点から約60%の性能で駆動しているとのことで、GPU自体には余力があることもアピール。「GPUのリーダーシップについて、GALAXY S IIはよく表している」と自信を見せた。なお、「GALAXY S II」においてGPUの「Mali-400MP」は主にユーザーインターフェイス(UI)の高速化に用いられているとのことで、ブラウザやFlashの処理には利用されていない。

ARMのGPU「Mali-400MP」を搭載した「GALAXY S II」のベンチマーク結果ライバルよりも優れているとした
「GALAXY S II」を手にするハワース氏

 

ARMのGPUロードマップ

 今後の戦略については、画面解像度の高解像度化、コンテンツの複雑化の2つが大きなポイントであるとし、それぞれ20倍以上の性能向上を果たすと、合計でGPUに求められる性能は500倍にもなると解説、その上で消費電力をこれまでと同じレベルに抑えることが重要とした。

 同氏はまた、GPUをグラフィックス処理以外にも用いる「GPUコンピューティング」技術を、「NVIDIAの取り組みが起源」と他社発祥の技術とするものの、トレンドとして今後重要になると予測。例えば、画像処理、AR(拡張現実)、暗号化処理、物理演算や人工知能などの処理でGPUの高速な処理能力を利用できるようになり、「コンシューマデバイスの体験、使いかたが大きく変わる」とする。

 ARM製GPUのロードマップについては、「Mali-400」シリーズ以降として、2011年内に「Mali-T600」シリーズをサンプル出荷する予定。最終製品は2012年下期に登場する見込みという。「Mali-T604」は、OpenGL ES 2.0、次期OpenGL ES(Halti)に加えて、Windows 8での利用をターゲットとして、マイクロソフトのDirectX 11をサポート。前述のGPUコンピューティングの利用もサポートされる。最大でクアッドコアの構成が可能で、メモリマネジメントユニット、L2キャッシュを搭載。2ギガピクセルまでの画像を処理でき、GPUの処理能力は68GFLOPSになるという。「メモリバスの帯域幅が電力の上がる要因」とし、マルチコアの各コアで独立して電力をオフにできる電力管理機能も用意される。

 ハワース氏はこのほか、Androidのエコシステムにも言及。CPU、GPUのいずれにおいてもGoogleと一緒にAndroidへの最適化を進めているとした上で、すでに「毎日、50万台以上のARM搭載Android端末がアクティベートされている」とARM端末が拡大している様子を解説。開発者向けのフォーラムなども設置して「Maliを中心として、活気のあるエコシステムを醸成していく」とAndroid市場に積極的に取り組んでいく姿勢を示した。

 ハワース氏は最後に、「GPUは将来的に大きな鍵を握ると考えている」とし、次世代のMaliなどで市場に優位性を示していく考えを明らかにした。

解像度、コンテンツの双方が高度化すると、GPUに求められる能力は一段と高まる今後はGPUコンピューティングが重要になるとし、「Mali-T600」シリーズから対応する
「Mali-T600」シリーズの概要Androidのエコシステムに貢献していくことにも言及された

 




(太田 亮三)

2011/7/25 18:41