Googleプレスイベント、最新Android OSなどをデモ


Eric Schmidt氏

 Google(グーグル)は、7月19日、都内でモバイル関連のプレスイベントを開催した。同社のエグゼクティブ チェアマンであるEric Schmidt氏の講演のほか、開発コードネーム「Ice Cream Sandwich」のデモなど、Googleの取り組みが紹介された。

 今回のイベントは「Google mobile revolution」と題し、アジア太平洋地域の報道関係者に対して開かれたもの。このため、イベントには東/東南アジア各国のメディアや、インドやオーストラリアのメディアが参加しており、国際色豊かなイベントとなった。

 Eric Schmidt氏は、欧州が高齢化する中で、30億人が携帯電話を利用するアジア市場について、「将来はアジアにかかっている」と話した。その多くは、従来のフィーチャーフォンからスマートフォンになるとし、アジアの諸外国でも成長著しいことを説明した。

 現在、約410種類のAndroid端末が登場しており、1億3500万台のAndroid端末が出荷されている。Schmidt氏は、NFCについて「財布の替わりに使える。日本ではおサイフケータイの名前ですでに7000万台が利用されており、我々も東京でテストをしている。『自分がどこにいるか(GPS)』だけでなく、NFCによって誰であるかも判別できる」とアピールした。

 Schmidt氏は、「Androidこそアジアのモバイルプラットフォームと言っていいのではないか」と語り、「これほどのスケール、パートナー、ツールを持った端末は他にはない」と続けた。さらに、「しかし、高度な教育を受けた消費者は使っているものの、スマートフォンは高価だ。大量生産をすることで将来的には70ドル程度になるのではないか。従来、情報はエリート、金持ち、西洋人しか持てなかったが、モバイルの革命により全ての人が持てるようになった。60億人の生活が改善することになるだろう」などと話した。

 質疑応答では、Android端末の供給メーカーらが訴訟に巻き込まれていることが指摘された。これにSchmidt氏は、「法的な問題が起こっているのは我々が成功しているから。競合会社は、イノベーションではなく訴訟で対抗していこうと考えている」などとコメントした。さらに成長著しいFacebookの脅威については、「Facebookは素晴らしいが、我々がGoogle+を作ったように今後も複数の選択肢があるだろう。マスコミは1人(1社)の勝者を求めるが、マスコミ自体が1社1人勝ちにならないように、複数の選択肢は今後もある」と話した。

 このほか、NFCについてSchmidt氏は、今後12カ月の間になんらかのアクションがあることを示唆した。

東日本大震災で活躍した「Person Finder」



 Googleのアジア太平洋地域の担当社長であるDaniel Alegre氏は、「Person Finder」という消息情報サービスについて紹介した。東日本大震災では67万件が利用され、ハイチやニュージーランドの震災よりも活用されたという。避難所では消息情報を伝えるたくさんのメモが貼られる。Googleはこの情報を撮影してWebアルバム「Picasa」に記録し、OCR機能で文字を解析したのち、ボランティアの手を借りて14万件の消息情報をテキスト化した。

 モバイルの検索数は過去2年で5倍に拡大しているという。Alegre氏は、「パソコンだけでWebを使う時代は終わった。パソコンと似た操作性をモバイルでも実現していく」と話した。



開発コード「Ice Cream Sandwich」

John Lagerling氏

 続いて、AndroidのグローバルパートナーシップディレクターであるJohn Lagerling氏が最新のAndroidの動向を説明した。アジア市場について同氏は、アジアではパソコンではなく、携帯電話でしかネットにアクセスできないユーザーが多くいると話し、1つのインフラだけで対応できるマーケットではないとした。

 また、現在開発中の「Ice Cream Sandwich」についてもデモンストレーションを行い、タブレットとスマートフォンのどちらにも対応した統合プラットフォームであるとした。現時点では詳細な案内はされておらず、「Ice Cream Sandwich」がAndroid 4になるのかAndroid 5になるのかは不明だが、年内にも発表される予定となっている。

 デモでは、画像関連の機能が紹介された。ディスプレイ側のサブカメラを利用して、目の位置を判別し、さまざまな機能を提供する。たとえば、顔を認識して目や鼻、口などを一部をデフォルメして表示したり、複数の人物をカメラに収めると、話している方にだけズームし、もう一方の人が話すとカメラが切り替わったように見せる機能などが紹介された。

 なお、講演終了後、Lagerling氏に話を伺う機会を得た。「Ice Cream Sandwich」について同氏は、現状ではアプリがどのように通信しているかユーザーからは見えないが、通信の利用状況がわかるような形になるという。

 Android 2.3やAndroid 3.2などを使っているユーザーがバージョンアップできるか? という問いに対しては、ハードウェア次第であるとした。また、日本国内の事情を考慮すれば、メーカーや携帯電話事業者の対応次第という面もあるという。

 Googleでは現在、半年の1度のペースでバージョンアップを行っている。Lagerling氏はアイデアがたくさんあり、どんどんバージョンアップしていきたいと話しており、今後もバージョンアップの頻度は変わらないようだ。Googleではメーカーに対して、18カ月間のバージョンアップ対応をお願いしているという。「メーカーはこれまで、バージョンアップをやりたがらなかったが、わかっているメーカーは、次のバージョンも面倒を見ることの大切さに気づいている。おそらく今後は、バージョンアップに対応するメーカーが増えていくのではないか」と話した。

 Android Marketについては、世界第2位の市場は日本であるとした。コンテンツプロバイダーがスマートフォン対応を活発に行っており、キャリア課金の仕組みにも対応している。数週間前には検索アルゴリズムも大きく変更(順次対応)したという。アプリはフリーミアムのビジネスモデルが増えており、アプリ内課金が活発になってきているという。また、今後アプリケーションにレイティングなども導入される予定。

 このほかLagerling氏は、Androidのウィルスについて「ウィルスの実際の被害は非常に少ないが、脅威を大きく言うことでメリットを得るプレーヤーがいる」と話した。米国では、人気のアプリにマルウェアを混入させて配布されたケースがあり、このときは通信経由で端末をスキャニングし、該当するアプリの利用者に警告を発することでウィルスを削除したという。悪意あるウィルスとはいえ端末を監視されていることになるため、Lagerling氏は「あまり使いたくはない方法」と話す。このときは、ユーザーにとってウィルス入りアプリをセットしておくことが、全くメリットにならないと判断し、ユーザー保護の観点から実施したという。


 プレゼンテーション中のデモ
 太縁のメガネをかけていたせいか、なかなか認識しなかったものの顔を認識した

Googleの音声認識機能

Johan Schalkwyk氏(右)とシニア・ソフトウェア・エンジニアのJosh Estelle氏(左)

 「五感を拡張する(Augmented Humanity)」として講演を行ったのは、Googleのリーサーチサイエンティスト/モバイルスピーチマネージャーのJohan Schalkwyk氏。音声認識技術の研究者であるSchalkwyk氏は、Googleの音声検索機能について説明した。

 Googleの音声認識技術は、クラウド型を採用することで、ユーザーが検索した膨大な音声データを収集し利用することで、認識精度を向上させている。豊富なサンプルと膨大なコンピューターリソースで解析することで、アルゴリズムも開発しやすいという。認識システムは、言語の統計モデルを活用して多言語対応している。同じ英語でも米国英語とオーストラリアの英語では異なるため、違う言語として分析しているという。

 通常の検索では、「天気 東京 今日」といったように単語を羅列する。音声検索機能を提供した当初、「東京の天気は今日どうなんでしょうか」といったように文章で入力するケースを想定していたという。しかし、それは杞憂に終わった。Schalkwyk氏が「Googlish」と呼ぶように、音声であっても単語の羅列で検索するユーザーが多かったという。

 このほか、機械検索機能を利用した言語翻訳のデモや、写真を撮影した対象の情報を収集するデモなどが披露された。Schalkwyk氏は認識技術について、「人間の機能を高める技術」と表現していた。



Googleのスマートフォン調査、利用者は「独身」の傾向

 午後のセッションでは、Googleが実施したスマートフォン関連の調査が紹介された。30カ国3万人から利用意向を調査したもので、8月後半にはWebサイトで公開される予定だ。

 アジアにおけるスマートフォンの普及率は、シンガポールが62%で圧倒的に高い。以降、オーストラリアが37%、香港が35%、中国の都市部が35%と続き、米国のスマートフォン普及率を超えている。こうした中で日本は6%と普及率は小さく、調査したアジア11カ国の中では最も低い普及率といなっている。しかし、普及率自体は急速に上昇しており、繁用率で調査した5項目中3項目はアジア諸国を上回っている。

 国内でスマートフォンへの移行が進まない要因には、高機能なフィーチャーフォンが普及していることにある。GoogleのプロダクトマーケティングマネージャーRyan Hayward氏は、「たくさんの携帯電話でいろいろなことができていたので移行が進まない」と話す。同氏は日本のリーダー的ポジションは変わらないとし、インターネット、メール、モバイル検索においてアジアトップであるとした。動画サイトの利用は韓国について2位となっている。

 アジア各国よりも遅れをとっているのが、SNSの分野だ。日常的な利用はアジアで6番手の27%となる。これは、事業者の施策なども影響しているようだ。東南アジア諸国を中心にFacebookのパッケージプランなどが用意されており、ほかの機能の利用は限定されるがFacebookが安価に使えるプランがあるという。Hayward氏は「やることが限定されているからこその数値。日本は成熟マーケットであり落ち着いている。新興国は、SNSを利用して安価にコミュニケーションする傾向がある」と説明していた。

 このほか、グローバル全体の傾向として、スマートフォンの利用者は「独身」が多いという。


 




(津田 啓夢)

2011/7/19 20:12