大和ハウスとソニーCSL、家電をゲーム感覚で制御する公開実験
大和ハウス工業とソニーコンピュータサイエンス研究所(ソニーCSL)は、スマートフォンのアプリケーションを利用して、ゲーム感覚で自宅の家電をコントロールできるという公開実験を実施する。7月8日、9日の2日間、東京・水道橋の大和ハウス東京ビルに併設の「D-TEC PALAZA」で開催される。
今回の取り組みは、大和ハウスが「スマートハウス」として研究してきた宅内機器の制御システムを「住宅API」として提供し、ソニーCSLの、エンターテイメントをテーマとした生活空間のコンテンツ開発プラットフォーム「Kadecot」(カデコ)と組み合わせたもの。「Kadecot」は、ストーリーゲームの制作に特化した開発環境になっている。
具体的には、「Kadecot」によって制作されたスマートフォンアプリを使い、エアコンやテレビといった機器を制御できるというもので、アドベンチャーゲームを進めるように楽しみながら家電をコントロールできるほか、オススメの設定が提案されたり、ゲームをしながら節電に取り組むといったことが可能。今回の共同実験では、声優を起用し、家電を擬人化したキャラクターを採用。技術や規格が話題になりがちな家電の遠隔操作を、これまでにない切り口で提案しているのも特徴になっている。
■ギャルゲーで家電を攻略
公開実験に先立つ7日、記者向けに実験内容が公開された。デモンストレーションではAndroidスマートフォンの「Xperia arc」を使用し、アプリと家電が連携する様子を確認できた。まず、玄関に設置されたフォトフレームでは、帰宅したユーザーがアプリを立ち上げると連携を開始し、各家電のログを読み込む。この際、表向きにはキャラクターがしゃべっており、フォトフレームからアプリにキャラが移動するといった演出もある。
リモコンのデモでは、「ギャルゲー」風のゲームを進め、選択肢によって扇風機の風量が変化するといったデモも。扇風機とエアコンを組み合わせると省エネになるといった動作も、ゲームを進める中で利用できるようになる(家電を操作するだけのモードもある)。このほか、不具合でファームウェアの更新が必要な機器(の擬人化されたキャラクター)がアプリ上で「病院に行きたい」と訴え、行くことをすすめると、衣装が追加されて帰ってきた。Blu-rayディスクプレーヤー(の擬人化されたキャラクター)に映画の再生を指示すると、終了後に関連したサウンドトラックの購入をオススメされ、購入するとウォークマンで再生するといった、複数の機器を連携した動作も可能。また、デジタルフォトフレームでは紙芝居のようなミニコンテンツが用意され、アプリ上でデジタルフォトフレームを擬人化したキャラクターが物語を読み上げ、フォトフレームの画像が切り替わるといった動作も行っていた。
ソニーCSLでは、「Kadecot」を利用したスマートフォン用の家電リモコンソフト「萌家電」を製作中で、ソニー製品と連携するアプリとして、秋頃に公開する予定。声優の水瀬いのりが萌家電大使に任命されており、「萌家電」の中でも出演が予定されている。また、公開実験ではBlu-ray役を演じている。
■「ブレイクスルーは“いじれる化”」家電を萌えキャラで擬人化
大和ハウス工業技術本部総合技術研究所の吉田博之氏(左)とソニーCSL アソシエイトリサーチャーの大和田茂氏(右) |
実験の概要を解説した、ソニーCSL アソシエイトリサーチャーの大和田茂氏は、「家電ネットワークのブレイクスルーは“いじれる化”。家電を擬人化し、いじれる化した。ゲームを遊びながら、家電の設定を変更できる。家電は使っていて楽しい、心地いいといった気持ちに訴えかける部分が大きい。差異化を図るためには感情に訴えるのが重要ではないかと考えた。ネット家電は非常に楽しいゲーム機」と経緯や取り組む姿勢を述べた。
家電ネットワークのブレイクスルーは“いじれる化”とした | 家電を擬人化、ギャルゲー感覚で操作できる |
家電はゲーム機と定義 | ネット家電は超楽しいゲーム機とした |
楽しみながら操作できる「いじれる化」が特徴 | ゲームは実際の家電の動作と連動。目標値の変更もできる |
擬人化により、人と機械、メーカーとユーザーの関係が変化するという |
大和ハウス工業 技術本部総合技術研究所の吉田博之氏は、「さまざまな企業やユーザーが利用できるようにしていく。ユーザー参加型の省エネルギー社会を」と、実験のような取り組みを、オープンにしていく姿勢を示す。吉田氏は、「スマートハウスは正直なかなか普及しない。今回で三度目の正直。これまでは規格とかを重視していたが、ユーザーの視点でこれを逆転すべき。実現手段については標準規格を使い、サービスで競争が激化するようにしたい。そのために共通のAPIが必要」とユーザー視点のサービス競争にシフトすべきとする。「最大の課題は、ネットワークに接続できる試作品はたくさんあるが、製品が少ないこと。メーカーは、魅力的なサービス思いつかないという。そこで、ユーザーに欲しいと思ってもらえるようなサービスを開発したらどうかと考えた。スマートハウスの課題は、コストや、ユーザーのモチベーション頼みだったところ。そこにエンターテイメントの切り口を持ち込めないかと考えた。新しいスマートハウスにおける、付加価値の提案を行う」と吉田氏は語り、住宅や家電のネットワークに、新たな切り口で望んでいく姿勢を示した。
両社で開発したプラットフォーム同士は比較的単純な方式で連携する | ユーザー視点のサービス競争が重要とした |
2011/7/7 15:58