auが「トライブリッド基地局」を沖縄に導入、実証実験開始


トライブリッド基地局と、その電波を送出するためのアンテナ

 KDDIと沖縄セルラーは、太陽光発電とリチウムイオン電池、深夜電力を使った「トライブリッド基地局」を沖縄に導入し、フィールドトライアルを行うと発表した。合わせて沖縄で、一部の報道陣に向け、この基地局を公開している。トライブリッド基地局は、これまで新潟県に2局、栃木県に1局、茨城県に1局設置されてきたが、今回は台風などの気象条件や、日照時間の違いを検証する目的もあるという。

 このフィールドトライアルで導入する基地局は、沖縄県東村と沖縄県糸満の2カ所に建設。この2箇所の選定には沖縄セルラーが協力しており、「日当たり具合と実施時期を鑑みて、検討してもらった」(KDDI研究所 主任エンジニア 入内嶋洋一氏)という。施工と同時にトライブリッド化することで、価格を圧縮できるそうだ。太陽電池は従来京セラ製だったが、価格の兼ね合いもあり、今回はサンテック製となっている。枚数も従来の経験を踏まえ、減らすようにした。また、蓄電池に携帯電話端末などに使われるリチウムイオンを採用。ラック1つにつき1.5KWh、実際の基地局は2つで3KWhになっている。このリチウムイオン電池は三洋電機製で、「試作段階のものをトライアル用に分けてもらった」(入内嶋氏)とのこと。結果的に、後付でトライブリッド基地局に作り変えるよりも、50%程度導入コストを削減できた。

 3つの方式で電力が供給されるため、運用のコストもダウンする。既に導入済みのトライブリッド基地局は、通常の基地局と比べ、約3割から4割、電気代が下がっているそうだ。夜間の方が電気代が安く、日中は太陽光で電力をまかなえるためである。充電池には、深夜や太陽光発電で余った電気をためておき、太陽光のパワーが足りない時などに利用される。コストダウンだけでなく、深夜電力を活用することで、CO2の削減にもつながっている。CO2排出量の削減率は約30%。

 ただし、くもりの日など、天候によっては太陽発電による電力量が十分ではないことから、入内嶋氏は「気象を予測してソフトウェアを制御することも考えていく。サーバ経由で基地局を制御できるようなソフトを開発している」とした。風力発電に関しては、「メンテナンスする部分が多く、そこを克服できるならやっていきたい。人がいると低周波が出るので、それも調べなければならない」(入内嶋氏)と述べている。

トライブリッド基地局の本体。屋根に当たる部分にはサンテック製のソーラーパネルが取り付けられている基地局は東村の山の上に設置されている
トライブリッド基地局を制御するための装置。中には電力制御用のWi-Fiルーターも取り付けられている。ファンは市販のものを流用基礎工事不要の対候性樹脂製架台も導入。軽量化によるコストダウンも見込めるそうだ
高台で基地局設置に抜群の立地のため、ドコモやソフトバンクも基地局を導入している。ただし、ソフトバンクは実測値から判断する限りHSDPA非対応と思われる

 



(石野 純也)

2010/8/27 18:46