先端サービスを試験提供、「みんなのドコモ研究室」が刷新
NTTドコモは、実験的なサービスや先端的なサービスを提供するWebサイト「みんなのドコモ研究室」をリニューアルした。
■リニューアル概要
「みんなのドコモ研究室」は、ドコモが開発した先端的・実験的な内容のサービス/アプリを提供するサービス。2008年4月にWebサイトがオープンし、これまでに9つのサービス・アプリが提供されてきた。
これまではドコモの会員組織「プレミアクラブ」のプレミアステージ会員(継続利用期間10年以上のユーザーか、年間2500ステージポイント以上のユーザー)向けだったが、刷新後はプレミアクラブに入会している全ユーザーが利用できるようになった。ただし、全ユーザーが同じサービスを利用できるわけではなく、プレミアステージ会員のみ利用できるサービス/アプリが提供される。1st~3rdステージの会員でも同サイトを利用し続けてポイント(みんドコポイント)を貯めていくことで、プレミアステージ会員と同様のサービスを利用できるようになる。なお、プレミアステージ会員が貯めたポイントは、ドコモポイントに変更することもできる。
リニューアル後は、携帯電話向け専用アプリとサイト、パソコン向けサイトが用意される。初回登録を行うと、それ以降、パソコン向けサイトのログインはID/パスワードで行うのではなく、サイト上に表示されるQRコードを携帯電話で読み取るだけとなる。携帯向けアプリには、アバター的なキャラクター「ナカノさん」が登場し、PC向けサイトにログインすると、携帯アプリからPCサイトへ移動する様子がアプリ/サイトの両方で描かれる。
新コーナー「近未来サービス研究室」では、ドコモが開発した最新サービスが利用できる。また「最新技術研究室」という新コーナーでは、「音のバーコード」と呼ばれるコンテンツが用意される。これは、2006年に発表された「音響OFDM」という技術を利用したもの。URLなどの文字列をエンコード用ソフトウェアに入力すると、音データに変換し、それをスマートフォン(Windows Mobile)向け専用デコードアプリで聞き取ると、元のURLを復元できる。このほか「超未来ケータイ開発室」では、ユーザーから欲しい携帯電話のアイデアを募り、人気投票を受け付ける。人気があるアイデアについては、プロトタイプのイメージ図を掲載する。
■開発部門とユーザーがダイレクトに繋がる
「みんなのドコモ研究室」がスタートした2008年春、ドコモでは「新ドコモ宣言」を発表し、顧客満足度向上施策を重点的に展開する方針を掲げた。
その中で「みんなのドコモ研究室」は、“プレミアステージ会員向けサービス”となっていたことが示すように、長期契約者優遇施策の1つと位置付けられた。2008年4月からの約1年5カ月で、のべ参加人数は1万3000人。先端的かつ実験的なサービスを試すということや、「パケ・ホーダイ ダブル」などパケット通信料定額制サービスの利用が必須とあって、携帯電話をよく利用するヘビーユーザー層が多かったと見られる。
ドコモの朝日氏(左)と金子氏(右) |
同社研究開発センターサービス&ソリューション開発部の金子信一郎氏と朝日裕幾氏は、「R&D部門では、ユーザーからの声が社内経由で届く形になっており、直接受けることはなかった。しかし『みんなのドコモ研究室』では、参加者からの声がダイレクトに届く」と述べ、長期契約ユーザーへのプレミアム感を提供するだけではなく、開発部門にとっても良い影響があったと説明する。開発プロセスについても、アイデアを出したスタッフが開発を担当する形で、「やりたい人がそのまま開発というのは、当社内では、他と異なる手法だろう」(金子氏)と、ドコモの中でも一風変わっているようだ。
友人や家族の状況(ステータス)を把握できる待受アプリや、街並みを3Dで描く地図などが提供されてきたが、中でも一番人気となったのは「想い出フレーム」というサービス。8インチディスプレイを搭載する専用端末を使って、メモリカード内の写真を再生したりメールで写真を送ってディスプレイに表示したりできるというもので、これは2009年7月に「お便りフォトサービス」として商用化された。
これまでプレミアステージ会員向けだったが、今回のリニューアルでは、プレミアクラブに入会しているユーザー全員が参加できるようになる。朝日氏は「ユーザーの間口を広げることが大きい。『プレミアステージではないが利用したい』という電話をいただいたこともある。また、これまでは、こちらが開発したものを使っていただく形で、利用期間が終わればアンケートに回答、という決まった流れだったが、リニューアル後は、利用して感想を随時もらえる形にする」と述べ、デザイン上の刷新に加えて、ユーザーとの関わり方もまた一新する方針だ。
通信技術の発達がもたらす未来像は、コンセプトモデルなどで披露されることはあるが、実際に触れられる機会はあまり多くなかった。ところが最近では、「みんなのドコモ研究室」やauの「au one ラボ」など、ユーザーへダイレクトに試験的なサービスを提供することが増えてきている。過去10年で携帯電話は飛躍的に発展したが、通信速度や処理速度の高速化により、インターネットとの連携はさらに進む可能性が高い。「みんなのドコモ研究室」で今後公開されるサービス/アプリから、国内トップシェアを抱えるドコモがいかに時流を感じ、あるいは戸惑い、未来を見据えるのか、同社のビジョンが示されるかもしれない。
2009/9/16 11:03