NEC携帯部門とカシオ日立が統合、「NECカシオ」設立へ
写真左から、CHモバイル大石氏、NEC大武氏、カシオ高木氏、日立の渡邊氏 |
NECとカシオ計算機、日立製作所の3社は、2010年4月に各社の携帯電話端末事業を統合し、合弁会社「NECカシオ モバイルコミュニケーションズ株式会社」を設立すると発表した。
新会社「NECカシオ モバイルコミュニケーションズ」は、NECの携帯電話事業部門であるモバイルターミナル事業本部と、カシオと日立の携帯端末を開発しているカシオ日立モバイルコミュニケーションズ(CHモバイル)の全事業を統合し、国内外の携帯事業を強化、競争力を確保していく方針。
新会社は、携帯電話の商品企画や開発、生産、販売、保守といった事業を行い、事業統合により、売上げ拡大や、資材や保守などの統合によるシナジーを実現し、技術資産・ノウハウ、リソースの一体活用による開発力強化を図るとしている。基地局などの通信インフラ事業については統合される事業分野には含まれず、従来通り各社が個別に展開する。
合弁会社設立に伴って、NECは2009年12月末までに100%出資子会社を設立する。この子会社が2010年4月の合弁会社設立時にNECの携帯電話事業を吸収し、さらに同日、CHモバイルも吸収合併する予定。なお、CHモバイルはカシオ計算機の連結子会社となっていたが、今回の事業統合によってカシオの株式持ち分は20%となり、持分法適用会社になる予定。
「NECカシオ モバイルコミュニケーションズ」は、NECの携帯電話部門のあるNEC玉川事業場内に置かれる。合弁開始時の資本金は10億円で、出資比率は、NEC66%、カシオ17.34%、日立16.66%となる。さらに、2010年6月にも増資を行い資本金を50億円に拡大する予定で、その際の出資比率はNEC70.74%、カシオ20%、日立9.26%となる予定。
役員は8名(NEC6名、カシオ2名)で構成される予定で、代表取締役はNEC側が指名する。従業員数は約1300名で、NECの端末生産拠点であるNEC埼玉(埼玉日本電気)などの従業員を含めると、連結で約2200名になる。
NECのモバイルターミナル事業本部は、2008年度実績で売上高2314億円、端末出荷数は約510万台。一方のCHモバイルは、、2004年4月にカシオと日立の合弁会社として設立された。売上高1570億円、端末出荷数は380万台。カシオ製端末、日立製端末の開発および設計、製造、調達など担当していた。
■緊急記者会見
14日夕方、今回の合弁会社の設立について都内で緊急記者会見が行われた。NECの取締役 執行役員専務の大武章人氏、CHモバイル代表取締役社長の大石健樹氏、カシオ常務取締役の高木明德氏、日立製作所 コンシューマ業務本部長の渡邊修徳氏がそれぞれ出席し、合併の経緯などを説明した。
NECの大武氏は、国内の携帯電話市場が急速に冷え込んでいる状況を説明。2007年度の年間出荷数5000万台を最後に、2008年は3500万台に急落、さらに2009年も3000万台になると予測した。大武氏は、今後端末出荷数に大きな落ち込みはないとしながら、飛躍的な成長も望めないと語り、年間出荷数は3000万台に落ち着くものとした。
こうした中、世界市場においては3GおよびLTEの市場が堅調に伸びると語り、日本メーカーが技術力を生かせる環境に好転するとした。大武氏は、国内携帯電話メーカーの生き残りをかけた協調は避けられないと話し、CHモバイルとの事業統合は、互いの技術や市場を補完し合い、事業体質強化に繋がると語った。
なお国内では、NECはNTTドコモとソフトバンクに、CHモバイルはauとソフトバンクに端末供給している。海外では、NECは中国などに進出したが撤退しており、CHモバイルは北米市場において、Verizon Wirelessのキャリアブランドで端末を供給、防水タフネス設計、カメラなどが人気を得ている。韓国のLG Telecomにも端末を提供しており、CDMA2000の海外市場では一定のポジションを築いている状況だ。
大武氏は、CHモバイルとの事業統合によって、開発費や部材調達コストなどが削減できるほか、国内での競争力を維持しつつ、海外での事業拡大にも体制を強化できるとする。同氏は新会社が「企画、開発、調達、製造、営業、保守、つまり携帯電話事業全体のバリューチェーンを構築する」と語った。
■国内シェアNo.2、海外事業を拡大
なお、携帯電話事業者から投入される端末は、従来通り「N」「CA」「H」の各メーカー製として投入される新会社は、2008年度実績でメーカーシェアは19%(NEC+CHモバイル)で、シャープに次ぐ国内第2位となる。大武氏は、「早期にシェアNo.1に持っていきたい」と意気込みを語った。
NECカシオは当面、各メーカーのロードマップに沿って端末を提供しつつ、まず開発部門を統合し、段階を踏んで生産拠点なども統合していく方針。NECとCHモバイルは、2008年度の合計で年間890万台の端末を出荷しているが、NECカシオでは、海外端末の比率を増やすことで2012年度に年間出荷数を1200万台に拡大するとしている。国内外の端末比率は国内6に対して海外4、国内で年間700万台、海外で年間500万台を出荷したい考えだ。
ただし、NECの大武氏は年間1200万台という規模について、「世界の1%に過ぎず、価格的にも端末投入能力でも世界には勝てない。我々は技術力を売りに数を伸ばしていく」と話しており、特徴的な端末でまずは北米市場にアピールしていくと説明した。
CHモバイルの大石氏は、G'zOneやEXILIM、Woooなど、ブランド名を聞けば価値がわかるようなプロダクトブランドの構築に注力してきたことを説明。事業統合によって、今後控えているLTEの市場において、LTEとCDMA、LTEとWiMAXとW-CDMAなどデュアル対応の端末展開が可能になるとした。これにより、LTE方式へ完全に移るまでの移行中もあらゆる市場に端末展開できる体制になるとした。
カシオの高木氏は、今回の事業統合について、今後の市場競争を勝ち抜き、LTEで新たなビジネスチャンスを得る施策とした。このほかNECの大武氏は、「国内8社で年間3000万台では、ノキアやサムスン電子などにはなかなか勝てない。国内で8社も生きられるスペースはもはやない。今回の合併は今後チャンスを得るために先手を打った形。シナジーが生まれるのであれば他社の参加も拒まない」などと述べた。
2009/9/14 15:50