iモード版ニコニコ動画モバイルが「ニコニコ生放送」拡充


 ニワンゴは、iモード版「ニコニコ動画モバイル」において、8月3日よりプレミアム会員の利用料がiモードの月額課金で支払えるようにする。また、iモードのプレミアム会員向けに提供されている「ニコニコ生放送」のモバイル版「ニコ生モバイル」では、コメントの投稿が可能になったほか、一般会員でも1日3分間の「おためし再生」が可能になった。

 プレミアム会員の利用料は月額525円。プレミアム会員のアカウントはパソコン版と共通。公式メニューの「コミュニティ/SNS」からアクセスできる。

ニコ生モバイルに一般会員向けの「おためし再生」機能が追加された

 

「ニコニコ動画モバイル」開発担当者にインタビュー

 本誌では、ニコニコ動画モバイルの開発担当者に話を伺う機会を得た。iモード版「ニコニコ動画モバイル」(以下ニコモバ)の機能拡張や、ニコモバ全体の今後の方向性について、ドワンゴ ニコニコ事業本部 副本部長 第二事業推進部 部長 コンテンツ開発部 部長の齋藤光二氏、研究開発部 研究開発セクションの宮本卓氏、ニコニコ事業本部 事業推進部 第二セクション 第二Gの青木美沙氏、ニコニコ事業本部 第二企画開発部の高橋大樹氏の4名に話を聞いた。

左から、ドワンゴ ニコニコ事業本部 副本部長 第二事業推進部 部長 コンテンツ開発部 部長の齋藤光二氏、研究開発部 研究開発セクションの宮本卓氏、ニコニコ事業本部 事業推進部 第二セクション 第二Gの青木美沙氏

 上記のニュースにもあるように、iモード版はこれまで、プレミアム会員の利用料はチケット課金による支払いのみで、マイメニュー登録による月額課金に対応していなかったが、この点が拡充された。加えて、iモードではニコニコ動画のリアルタイム版である「ニコ生モバイル」の視聴に対応している。

 iモード版「ニコ生モバイル」はプレミアム会員向けサービスとなるが、第二企画開発部の高橋氏が「1日3分間までなら、一般会員でも“お試し視聴”としてニコ生モバイルが見られる」と説明するように、一般会員もニコ生モバイルの雰囲気が体験できるような仕組みが用意されている。

 現在、ニコモバは専用のアプリで視聴する形を採用しており、配信する際にはパソコン向けの動画ファイルを携帯向けに変換する工程が加わっている。ニコ生モバイルでも映像部分だけは携帯向けの変換作業が発生するため、パソコン版と比べて30~40秒の遅延が生じてしまうという。一方、コメントの投稿と表示はパソコン・携帯ともに同じタイミングで共有されるため、例えば携帯電話で映像を見ながらちょうどいいタイミングでコメントを投稿しても、パソコン版のユーザーから見れば30~40秒前の映像に対してコメントしたように見えてしまうという。研究開発セクションの宮本氏は、これら携帯向けの変換作業に伴う、生放送における遅延を無くすことは現時点では難しく、検討課題とするものの、「コメントは、モバイルから投稿されたことが分かるような表示になる」としており、「時間差を含めて楽しんでもらえれば」と、ひとまずは前向きにとらえながら対策を講じていく姿勢を示している。

 ニコ生モバイルへの対応はiモード版が先行する形になっているが、各キャリアで動画サービスへのスタンスは異なり、仕様も異なることから、サービス内容を均一化することは難しいというのが動画サービス一般における現状だ。コンテンツ開発部 部長の齋藤氏によれば、auではアプリの通信容量に限界があり、ソフトバンクモバイルでも1回の通信に7分間という制限があるとのこと。ニコニコ生放送なら多くが30分以上、通常のニコニコ動画のコンテンツでもいわゆる“組曲”などでは20分を超えるものが多いなど、現在のキャリアの仕様に対し、ニコニコの動画は「ハードルが高いコンテンツになっているのは確か」と齋藤氏も認める。

 一方で、3キャリアの「公式サービス」化を進めたことで会員数は順調に増加しているとのこと。「入り口は整備されたので、中身もしっかりやっていかないといけない。我々だけでできることには限界もあるが、ユーザーにメリットがあるようなものを検討している」と齋藤氏は語り、「動画を中心としたコミュニケーションや、検索性の向上などを考えている」と今後検討している具体的な施策も明らかにした。

 「ニコニコは独特の色を持ったサービスで、日本が発信する文化」と語る齋藤氏だが、「携帯の動画はまだ始まったばかり」という。「今までは、発信側も視聴者もパソコンの前というインドアな展開だったが、携帯で見られることで受け手はアウトドアになった。iモードのニコ生モバイルでは、皆既日食の生放送はニコ生モバイルで過去最高の入場者数になった。今後も生ならこういう人気が出る可能性はある」と齋藤氏が語るように、モバイルでの動画視聴環境が充実しつつあるのは、最近特に顕著な傾向だ。

 「携帯で撮ってニコニコにアップして、という流れも技術的に検討しており、いつかは実現したい。インパクトは大きいと思う。動画はパソコンで編集してアップするものという感覚ではハードルが高くなる。面白いものを見つけて撮ってアップしたり、編集もなしでニュースのように扱ったりすることもできるだろう」と、同氏はモバイル環境における動画の新たな利用スタイルも積極的に提案していく意向だ。

 しかし社会的な側面から見ると、ユーザーが比較的自由に投稿できる環境は同時に、違法・権利侵害など非社会的な投稿コンテンツを抱えてしまうリスクを生み出すことになる。この点について、事業推進部 第二セクション 第二Gの青木氏は、「携帯ではパソコンとは別の削除基準を設けており、EMAの規定やキャリアの指導もある」と独自の基準の存在を示し、「ニコ生モバイルに対しての対策は既に講じており、生放送のリスクについて、“出会い系”などと利用実態から外れた報道がなされないような予防線も張っている。また、これまでのニコモバでも大きな問題は起きていない」と、継続して、複数の基準を重ねて対応していく方針を示した。

 



(太田 亮三)

2009/8/3 15:20