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KDDIのバーチャルイベント舞台裏に潜入、高橋社長も登場
2020年3月25日 00:00
24日、KDDIはスタートアップと大企業の事業共創イベント「MUGENLABO(ムゲンラボ) DAY 2020」を開催した――といっても、参加者が集うのはバーチャル空間だ。
新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえ、開催1カ月半前に急遽、VRヘッドセットやスマートフォンアプリなどから参加できる仮想イベントに変更された。本誌では今回、その舞台裏を取材。登壇した高橋誠代表取締役社長にその意義を聞いた。
バーチャルだからこそどこからでも参加できる、最大5000人収容に
2011年から毎年開催されてきた「MUGENLABO DAY」は、KDDIが進めるスタートアップ企業支援プログラム「KDDI∞Labo」のリアルイベント。2019年にも、参加企業が短い時間でプレゼンテーションして、自社の取り組みをアピールする「ピッチイベント」をバーチャル空間で実施していたが、今回は、そのバーチャル空間もよりリッチになり、本格的なバーチャルイベントとして実施されることになった。
これまでのリアルイベントでは、700~800人という定員の会場だったが、今回はバーチャル空間とあって最大5000人収容できるようになった。さらにリアルイベントであれば東京開催のため参加できる人は地理的な要因でも限られることになるが、バーチャルでは全国どこからでも参加できる。バーチャルイベントのプラットフォームを提供するクラスターのスマートフォンアプリも用意されたことで、VRゴーグルがなくとも、スマートフォンひとつでアバター(分身となるキャラクター)として参加でき、登壇者の話の内容へ、拍手などのリアクションをすることもできる。
なお、今回のイベントにあわせ、スタートアップ支援プログラム「5G for Startups」を発表。KDDIを含むさまざまな大企業の支援をスタートアップ企業が受けられるようにし、5G関連のプロダクト開発を後押しする。
同時に発表された事業共創プログラム「∞の翼」では、「5G×コミュニケーション」「5G×商業施設」「5G×テレビ番組」「5G×スタジアム」の4つのプログラムで、大手企業の取り組みに対してチャレンジするスタートアップを選出、今後、具体化を進める。
高橋社長、いざバーチャル空間へ
イベント開始前、リハーサルに挑む高橋社長。VRゴーグル(HTC VIVE)を装着して一通り操作を確認する。登壇し、プレゼンテーションにかける時間は5分程度だが、今回のイベントではバーチャル空間内のアバターを、登壇者自身で操作することになっておりその操作を知っておく必要があった。
「MUGENLABO DAY」のバーチャルイベント会場は、プレゼンテーションを披露する舞台と客席にあたる場所だけではない。実はアバター用の控え室となる空間もあれば、舞台の上で立ち位置を示す印(バミリ)まで用意されていた。そのため登壇する人はVR用のコントローラーでアバターを動かして、控えの場所から舞台に移動する。
つまり、仮想空間とはいえ、舞台となる場所にパッと高橋氏のアバターが現れるのではなく、舞台の後ろにある控えの場所からバーチャルな舞台に移動する、という操作をすることになったのだ。
リハーサルではVRゴーグルを付けていた高橋氏だが、本番前に急遽、デバイスを変更。額にトラッカーを装着してプレゼンすることになった。
VR空間で滑らかにプレゼン
そして24日17時過ぎ、いよいよイベントがスタート。本番直前にはやや緊張した面持ちだった高橋氏も、プレゼンテーションに入り、「KDDI∞Labo」での取り組みや、23日に発表したばかりの「au 5G」を紹介していくと、いつもの滑らかな語り口を取り戻す。バーチャル空間を通じてイベントに参加する人たちのレスポンスを目にしながら、つつながくプレゼンテーションを終えた。
今回のイベントについて高橋氏は「新型コロナウイルス感染症で、世の中が大変になっている。ただ、ピンチを新たな機会として、新しいイベントとしてバーチャルで実施することは、世の中に元気をもたらすと思った。ただ中止にするのではなく、ちょっと工夫して、お客さまに工夫を伝えることはすごく大事なこと」とその狙いを語る。
具体的な解決手段として、クラスター社のプラットフォームがあるとKDDI社内の若手スタッフから提案があり、それならば、とバーチャルイベントへ切り替えることを決めたという。
「今回初めてチャレンジしたが、結構簡単。しっかり観客も見えて、自分の言葉をしっかり伝えられる空間。こういうイベントはありだと思う」と高橋氏。
ちょうど5Gの開始時期と重なる状況となったことに高橋氏は「auでは、5Gサービスを技術で語るのではなく、新しい体験価値を拡張する、つまりどんな体験ができるのかお伝えしようと思っている。バーチャルイベントを実施したことは、KDDIにとっても良い経験、良いきっかけになったと思う。5Gのサービス開始時期に合う形となり、表現方法としてもよかった」と説明し、手ごたえを感じた様子だった。