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累計1000万台のタフネスモデルを送り出した京セラ、最新モデル「TORQUE G04」の隠れた進化

 auの2019年夏モデルとして、8月下旬に発売予定の「TORQUE G04」は、MIL規格準拠の耐久試験や京セラ独自の落下試験などをクリアしたタフネス性能の高さを特徴とするAndroidスマートフォンだ。

歴代の京セラ製タフネスモデル

 京セラは、この「TORQUE」シリーズや北米などで展開する「DuraForce」シリーズなど、数多くの高耐久モデルを送り出してきた。その出荷台数は、フィーチャーフォン・スマートフォンを合わせると世界で累計1000万台を超える。

 本誌では今回、同社のタフネスモデルの歴史と最新モデル「TORQUE G04」の開発秘話を、商品企画課の三輪智章氏、通信戦略課の本多弘明氏に聞いた。

左から、京セラ 通信機器事業本部 通信技術部 通信戦略課責任者 本多弘明氏、同 商品企画部 商品企画課責任者 三輪智章氏

累計1000万台、京セラのタフネスモデルの歴史

 同社が高耐久端末(ラグ端末)と定義しているモデルの歴史を紐解くと、2007年4月に発売された米Sprint向けの「SCP-7050」(三洋電機)まで遡ることができる。MIL規格準拠の防塵、耐振動、耐衝撃性能を備えたこの機種から、タフネス性能を強みとして打ち出すようになった。

 当時の三洋電機では、SCP-7050の発売以前にも、砂漠から寒冷地まで幅広い利用環境が想定される北米市場にあわせた耐久試験を行っていた。これを製品のアピールポイントとして前面に出す転機となったのがSCP-7050で、京セラが三洋電機の携帯電話事業を承継した後もタフネス路線は受け継がれていった。

タフネス路線へのターニングポイントとなった「SCP-7050」(2007年)
最も売れたシリーズだという「DuraXV/XV+/XA/XTP」(2015年)

 翌年の2008年4月に発売された「PRO-700」では、PTT(プッシュトゥトーク)サービスに対応し、法人需要を取り込んだ。北米市場におけるこの流れはDuraシリーズが登場した2011~2012年モデルで本格化。PTTサービスを特徴としていた「iDEN」の停波に伴う移行先として、ビジネスユーザーを中心に北米市場での地位を築く。

 2013年には、Sprint向けにタフネススマートフォン「TORQUE」が登場。日本にはこれを逆輸入する形で、SIMロックフリーの「TORQUE SKT01」が2014年3月に初上陸した。

初代「TORQUE」の限定カラー(2013年)
「TORQUE G03」のHELLY HANSENコラボモデル(2017年)。300台限定で販売され、申込開始から1分で完売したという

 同年夏にauから「TORQUE G01」が発売され、以降も2019年夏モデルの「TORQUE G04」まで続くシリーズとなっている。また、2018年3月には、日本市場におけるSIMロックフリーモデルの第2弾「DURA FORCE PRO KC-S702」も発売された。

 海外では、ファブレットの「DuraForce XD」(2016年)、大音量スピーカーやエマージェンシーボタンを搭載した業務特化モデル「DuraTR」(2017年)など、高耐久性以外の特徴を加えた発展型も登場している。2015年には欧州、2017年には韓国にもタフネススマートフォンで参入した。

5.7インチ液晶のファブレット「DuraForce XD」(2016年)
日本向けとしては初のタフネスフィーチャーフォン「TORQUE X01」(2017年)

最新モデル「TORQUE G04」の開発秘話

 国内モデル・海外モデルともに、京セラのタフネスモデルは日本を拠点に開発・製造されている。法人需要が中心の海外モデルでは、ユーザーからのフィードバックを反映して使い勝手を磨いていく開発方針をとる。これに対し、アウトドアを楽しむ人など個人ユーザーからも熱い支持を受ける国内モデルでは、スマートフォン全体のトレンドとも違った、ある種自由な物作りができていると三輪氏は話す。

TORQUE G04

 最新モデル「TORQUE G04」の仕上がりに自信をみせた同氏は、G03以前からの知られざる変化として、高い耐久性を実現するための設計のアプローチをがらりと変えたことを明かした。

 従来のタフネスモデルでは剛性を高めるために金属パーツを多用し、他の部分を軽量化することで端末全体が重くなりすぎないようにするという考え方だった。しかし、G04は「金属をできるだけ使わない」という真逆のアプローチで設計された。

 これは将来のスマートフォンの進化を見据えたもので、次世代機以降で大画面化や新たな機能のためのモジュールが加わる可能性を考慮すると、基本構造の重さをほかの部分でカバーする構造から脱却しておく必要があったのだという。

 もちろん、歴代モデルで培われたノウハウやユーザーからのフィードバックは、タフネス性能を高めるために活かされている。高い耐久性を誇る端末であるだけに、それでも破損してしまい戻ってきた端末は「使っていた方本人が大丈夫か心配になるような壊れ方」(三輪氏)をしていることもあると言い、次世代機を設計する上で貴重な資料となっている。

 たとえば、画面が端から割れにくいようにするための工夫や、衝撃を和らげるために四隅に取り付けられているバンパーの材質変更など、スペックには現れない部分でも細かな改良を重ねた。

 また、バンパーの素材が変わったことで黒だけではなく着色できるようになったという副産物があり、G04のカラーバリエーションのうち、ブルーだけはバンパー部分が若干青みがかった色合いとなっている。

 チップセットやメモリなど、スマートフォンとしての基本性能の面でも、G03からG04にかけてスペックアップしている。ターゲットとしてはミドルレンジ相当のスペックとしながらも、「壊れない分だけ長く使うユーザーが多い」ということから、日々の利用でストレスを感じないよう、十分な性能を確保した。

 また、既存のTORQUEユーザーからの声を受けて、カメラ性能の向上にも注力している。約2400万画素の高解像度センサーに変更しただけではなく、実際にTORQUEが活躍する海や山などでテストしながらソフトウェアのチューニングを追い込んでいるという。

SIMフリー版の展開は?

 先述の通り、日本市場における京セラのタフネススマホの初号機は、SIMロックフリーの「TORQUE SKT01」だった。そして、2018年3月にも同じく米国向けモデルを逆輸入する形で「DURA FORCE PRO KC-S702」がSIMロックフリーで発売された。並々ならぬこだわりをもって作り込まれた今回のTORQUEは日本だけ、キャリアモデルだけで留まるのだろうか。

 分離プラン義務化の流れで、auユーザー以外にも手にとってもらえる機会があると良いのではないかという問いかけに、「特に法人ユーザーにとって、キャリアはあまり関係ない。そこは選択肢があった方がいいかなと思う」と本多氏。三輪氏も「そのつもりではいる」と今後の展開に意欲を見せた。