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15万人が登録したサービスがアプリに、駅や街なかで助けたい、助けてほしいをつなぐ「May ii」

 たとえば、電車の中で妊娠中の女性を見かけたとき、席を譲る勇気が出なかった。道で迷ってしまったけど、話しかけられなかった。一度はそんな経験をしたことがある人はきっと多いだろう。

 そんなあなたの勇気をひと押しするアプリ「May ii(メイアイ)」が大日本印刷からリリースされた。「May ii」は、外出先での「ちょっと困った」を対面で解決できるスマートフォンアプリだ。

May iiとは?

 サポートを求める人は、アプリから自分が困っていることについて投稿すると、付近にいるサポーターが依頼を受諾し、お互いの服装などを確認した後、合流し困りごとを解決してもらえる仕組み。

 初めて来た場所で道に迷ったり、車椅子利用者がエレベーターを見つけられなかったりするときなどさまざまな状況で利用できる。マッチングにはGPSの位置情報が使用される。また、ユーザーのモチベーションアップのために、貢献行動がポイントで表され、ポイントが貯まるにつれてアプリ内のキャラクターが成長し、自分の行動貢献が可視化されるというシステムがある。

 「May ii」は価格無料で会員登録が必要。推奨環境は、Android 6.0以上、iOS 11以上のデバイス。サービスを利用できる時間は、8時~21時まで。対応言語は、日本語、英語、韓国語で、今後は中国語などへの対応を予定している。現在サービスを展開している地域は、北海道(札幌 大通公園)、東京都(市ヶ谷)、福岡県(天神)の3都市で、今後も対応地域は拡大していく予定。

May iiの使い方:サポートを依頼する

 誰もが気軽に助ける側、助けられる側になれるよう、トップ画面のタブを切りかえるだけで「サポーター」と「サポート依頼」の画面に遷移する。

オレンジ色で選択されている範囲のユーザーへリクエストできる

 自分が困りごとを抱えている場合は「サポートを依頼する」のタブを選択後、解決してもらいたい困りごとをメニューから選択する。この場合は「目的地への行き方がわからない」を選択した。

 次いで、自分の困りごとを解決するためにかかるであろう所要時間を予測し入力する。地図上には、自分の周囲には10名のサポーターがいることが表示されている。メニューから5分~30分の範囲で選択できる。

 サポート依頼を完了するためには、「観光客」、「土地勘なし」、「障害」があるなど自分の特徴を入力する必要がある。選択肢には「外国人観光客」もある。

 すべての入力を終えると、サポーター選択画面に遷移する。画像の場合、2人のサポーターが候補に上がっている。介助系の資格を登録するとプロフィール上に表示される。語学レベルは、初級、上級、母国語の3段階での表示となる。

 サポーターと合流するまでに、お互いの服装の色などの特徴を入力する。服装のほかにもスマートフォンの色なども入力できる。また、到着までに相手の状況も尋ねることができる。

 お互いが接近すると、「メイアイカラーカード」を表示するように促される。お互いのスマートフォンに同じ色のカードが表示され、相手を認識しやすくなる。実際に相手と合流できたら、困りごとを解決してもらい、一連の流れは終了となる。

May iiの使い方:サポーターとして利用する

 自分がサポーターとなる場合は、「サポートを待機する」画面へ遷移する。なお、依頼があった場合は、アプリを開いていなくても依頼があったことが通知される。

 サポート依頼が来たら、依頼内容を確認する。ここで、サポーターとして立候補して、相手に選ばれた場合は、サポートがスタートする。なお、この画面で「対応する」を選んだあとでも辞退することができる。

 依頼者と合流する流れは、サポートを依頼する場合と同じ。服装や状況を入力し、接近したら「メイアイカラーカード」を掲げて合流、サポートという流れになる。

 サポート終了後には、利用者の評価アンケートがある。

移動できないから外出できない?

 「May ii」発表会の場には、「May ii」のプロジェクトを立ち上げた中心メンバーである大日本印刷 コミュニケーション開発本部 スマートアクセスサービス開発グループ サービスデザイン・ラボの松尾佳菜子氏が登壇し、「May ii」の開発背景を語った。

松尾佳菜子氏

 松尾氏によると、開発の背景には、移動困難者が抱える課題があったという。文部科学省によると、体に障害を抱える人で、観光旅行や映画館での映画鑑賞など、外出を伴う余暇活動をしていないと答えた割合は50.8%と半数を超える。

助けたいけど助けられない日本人

 「移動時のバリアが原因で、“行けるか不安”、“周囲に迷惑をかけたらどうしよう”と考え、行ってみたいという好奇心よりも移動を諦めてしまう気持ちが勝ってしまう」のだと松尾氏は語る。

 では、そのような人たちを助けてあげればいいのでは? と思うところだが、サポートする側も助けたいけど助けられないジレンマを抱えているという。英国の調査会社が行った「世界寄付指数ランキング」の「見知らぬ人への手助け」のランキングで日本は140カ国中138位だったという。

 その背景には、多くの場合「本当に困っているかわからない」や「声をかけて断られるのが嫌」、「どうやって助けたらいいのかわからない」という心理的な要因で手助けの行動が阻害されていると松尾氏。

May iiが提供できる価値

 この現状を変えるため、「May ii」は2つの価値を提供できると松尾氏はいう。1つは一般市民が困っている人を助けやすくする点。困っているけど言い出しづらい、助けてあげたいけど勇気が出ない人たちの心のマッチングを図る。もう1つは助け合い行動を可視化する点。「他人がやっているから、自分もやってみよう」や「これだけのサポーターがいるなら車椅子でも外出しよう」と人助けや行動のモチベーションアップを促すという。

 こうした活動によって、外出しやすくなり、仕事量が増えたり、外国人観光客もガイドブックの情報だけでなく、寄り道で移動量が増えたり、車椅子であっても、買い物量が増えたりと人・モノ・経済の活性化が期待できると松尾氏。

アプリ化することでより幅広い対応を

 DNPは、「May ii」のリリース以前、LINEなどを使った実証実験を行っていた。実験では、テキストだけでお互いの特徴を把握することなどが難しいという問題があったという。また、視覚障害者ではボイスオーバー機能がないと使いにくい、LINEビーコンでは数十mしか届かないため、人と人とが出会いにくいといった課題があった。ユーザー数が多いLINEというプラットフォームは魅力があったが、前述のような課題を解決するために単体のアプリでのリリースとなったという。

 「人の個性が多様化する中で、誰もが生き生きと活躍できる社会の実現、社会全体の活動総量を増やしたい。気軽に『May I help you』といえる日本人を増やし、健常者、障害者の間の心のバリアがない日本人の増加、一歩踏み出して声をかけるなど行動してみるなど広義の意味でのグローバルマインドの醸成を目指したいと展望を語った。

DNP専務や新宿区 福祉部長も登壇

大日本印刷 専務 蟇田栄氏

蟇田氏
 「LINEを試用した『&Hand』で実証実験を重ねてきた。実証の結果としては15万人が登録、1万4000人以上の一般市民に利用してもらった、高い評価と様々な意見を聞くことができ、このサービスの有用性を認識した。

蟇田栄氏

 このサービスはある社員が社外で多様なメンバーとの共創の中で生み出したアイディア。それに共感するDNP社員が集まり、有志プロジェクトとして実証実験を成功させ、オリジナルのサービス開始までこぎつけたということは非常に感慨深いものがある。

 2020オリンピックのオフィシャルパートナーとして、以降のレガシィになる包括的な社会、持続可能な共生社会に向けた新たなコミュニケーションサービスを展開したい。まだまだ乗り越えなければならない壁はあるが、チャレンジしなければ始まらない。このチャレンジが新しい価値を創造し、より良い社会を作る一歩になってほしい」

新宿区 福祉部長 関原陽子氏

関原氏
 「新宿区には、子供から高齢者、障害者から外国籍の方まで多くの人がいる。1日に350万人が乗降する新宿駅をはじめ、多くの人が行き交う。そんな新宿区はすべての人にとって暮らしやすい、訪れやすい街であるべきだ。

関原陽子氏

 新宿区では基本政策として『暮らしやすさ1番の新宿』をかかげて、障害者が生き生きと暮らせる、また安心できる子育て環境の整備を行っている。

 来年のオリンピックでは、サポートが必要な人への声がけがたくさん生まれ、訪れてよかったと思える街を目指したい。

 『May ii』の活用で多くの方々の支え合いが生まれることを期待している」