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「ZenFone 6」が目指したのは“全方位の利便性”

ASUS担当者インタビュー

 ASUSがフラッグシップモデル「ZenFone 6」を発表した。

 背面のカメラがぐるりと前面を向くフリップカメラが注目を集めそうなモデルだが、そのフリップ機構もただ先端性をアピールするためだけに採用されたのではない。

 ASUSのグローバルテクニカルPRディレクターであるChih-Hao Kung(チーハオ・クン)氏へのインタビューから、「ZenFone 6」が、ありとあらゆる面で利便性の向上を図ったことが見えてきた。

クン氏

発表会はスペイン・バレンシア

――ZenFone 6は、今回、バレンシアという都市で発表会が行われましたね。

クン氏
 例年であればMWC(2月末~3月初旬にスペイン・バルセロナで開催される展示会)で新製品を発表しませんでした。それは準備が整っていなかったためです。

 直近ではComputexという展示会もありましたが、そちらはPCをターゲットにしたイベントですので、スマートフォンではありません。

 今回のZenFone 6では、特別なものにしたかった。自分たち自身で発表会を開催すべきと考えました。

 バルセロナだけではなく、ニューヨーク、パリ、香港など多くのスマートフォンメーカーが、さまざまな都市で発表会を開催していますよね。そうした点でも違いを打ち出したかったのです。

全ての要素をどう盛り込むかが課題だった

――なるほど。振り返ると、2018年の「ZenFone 5」では「Back to 5」と銘打って、原点回帰することをメッセージとして打ち出していましたね。

クン氏
 歴代のZenFoneではひとつひとつの違いがありました。そうした中で、たとえば昨年のZenFone 5Zに対して、ユーザーの満足度は極めて高いことがわかりました。特にCPUへの満足度が高い。

 我々は、パフォーマンスの面でも、オールスクリーンという特徴も、違いを持つスマートフォンを作り出したいと考えました。

 今回、フリップカメラにオールスクリーンとなりましたが、もし他のデザインを選んでいれば何かを妥協しなければなりません。たとえばスライド機構を採用すると5000mAhのバッテリーは搭載できないのですが、今回は重要だと考えました。

 インカメラをポップアップ式にするアイデアを採用すれば、インカメラのセンサーを良いものにはできません。

開発時に検討したというポップアップ型

 フリップカメラにすることも、単にパタパタと動かせるだけではダメで、モーターを組み込んだ小型のユニットを開発し、フリーアングルで撮影できるという特徴を生み出すこともできました。

 そうした段階を経てZenFone 6を開発してきたのですが、たとえば没入感のオールスクリーンを実現したかった。2~3日持つバッテリーライフも目指した。インカメラも高画質にしたかった。

 たとえばディスプレイ組込型の指紋センサーについては、まだまだそのスペックは成熟していないと考え、今回は見送っています。それよりも5000mAhのバッテリーが重要だと。

 このほかにも、3.5mmのイヤホンジャックを引き続き搭載していますし、デュアルSIMもサポートしました。フリップカメラだけでも難しいのに、さらにそうした全ての要素をどう盛り込むかが課題だったのです。

――なるほど、全ての要素を持ち込みたかったのですね。ではプロトタイプで検証したデザインを、今後の機種で採用することはありえますか?

開発時のスケッチ

クン氏
 そうですね……重要なのは、常に研究し続けているということです。その時々のベストの選択がどれになるのか。何が正しく、間違っているわけではなく、そのときに何を選ぶか、ということです。全てのデザインは良いもので、将来的にいずれかを選ぶかもしれません。そのときに何を提供したいのか。

 かつて、当社はZenFone Zoomを提供していましたが、当時、他社はそうした機能を提供していなかったと思います。しかし最近になってまたスマートフォンのカメラで望遠機能がトレンドのひとつになってきていますね。

 何のための機能なのか、プロダクトなのか。全てが進化の過程の中にあるとも言えるわけですが、一日で「これにする!」と決めたわけではなく、解決策を探し続けています。

 「我々は何者か」「ASUSらしさとはどんな製品か」と考え続けています。もしロゴがなくても、これはASUSのスマートフォンだよねと分かってもらえるような、何かしらの違いをいつも提供したいとチャレンジしているのです。

日本での発売は?

――日本での発売は? FeliCa機能に対応しますか?

クン氏
 そうですね、個人的には(日本で発売されると)そう信じています。FeliCaについてはこれから学んでいきます。

――各国での発売時期は?

クン氏
 地域によって異なります。一部の地域ではなるべく早く発売したいですが、規制なども異なります。

 日本市場は過去成功したと捉えていますし、ファンの方々に楽しんでくれることを期待しています。

――フリップカメラはサードパーティのアプリでも活用できますか?

クン氏
 はい、使えます。InstagramやFacebookメッセンジャーなどでも、別途、ボタンが表示されてフリップカメラを操作できます。

5Gへの取り組み

――スマートフォンメーカーの中には、今後、5G対応の機種を提供する方針を明らかにしているところがあります。ASUSはどうしますか?

クン氏
 そうですね。ひとつめは、5Gと4Gが全く異なる取り組みが必要だということです。

 2019年時点で、5Gは、一部の地域・都市・事業者に留まり、まだ準備段階で、時間が必要だと思います。

 5Gはとても複雑で、グローバルの多くの通信事業者において、まだ準備が整っていません。スマートフォンへ搭載するにしても、より大型のバッテリーも必要になります。

 もちろん需要はチェックしています。ただ、今年、ASUSがフォーカスするところはどこなのか。将来、5Gは主流になるでしょうが、現在はまだニッチで小さな市場です。今後もっともっと5Gは変化していくでしょうが、それは来年、再来年でしょう。2019年は5Gの初年度です。

 私たちが考えているのは、エンドユーザーにとっての利便性です。もし今、5Gへ対応すると、何かを妥協することになり、もっとボディが大型化してしまうかもしれません。

――ではフォルダブル(折りたたみ)機構についてはどう考えていますか?

クン氏
 とてもクールなコンセプトだと思います。でもいくつかの課題、問題があります。我々にとっては、今、フォーカスすべきものではないと考えました。みんなが楽しめることに注力したかった。フォルダブルは面白いテクノロジーで、研究はしてしますが、今ではないというところです。

――ありがとうございました。