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伊勢の老舗も導入するIoTスケール「スマートマット」が登場

スマートショッピング社が提供、KDDIもソリューション

 スマートショッピングは、重さを計測・監視し、発注の自動化などを可能にするIoTデバイス「スマートマット」の正式提供を開始した。

シンプルに計量へ特化したスマートマット

 スマートマットは、一見すると平らな板で、体重計のようにも見えるデバイス。ネットに繋がる、いわゆるIoTのはかり(スケール)と言える。

スマートマット

 A3サイズとA4サイズの2製品をラインアップ。A3サイズで100kgまで100g単位。A4サイズで30kgまで10g単位で計測できる。電源に繋げて使えるほか、単3電池4本で1年間連続駆動する。

 本体よりも大きなものも、複数のスマートマットを使い、ソフトウェア上で合算して計量できる。

 ファームウェアは通信経由でアップデートされる。また導入企業向けにサポート対応も整え、万が一の計量ミスにも対応できるようにする。

重さで在庫を判定、自動発注やアラート

 スマートマットを利用する場合、ソフトウェア側の初期設定で、管理対象の品の重さを決めておく。その上で、在庫置き場に設置し、スマートマットの上に品を置く。運用がスタートし、そこから品が持ち出されると重さが減る。

 品ひとつあたりの重さ、あるいは全体のうちの減少幅をパーセンテージで把握しておくことで、一定の重さまで減れば、補充をうながすアラートを出したり、自動的に発注したりする。たとえばパーセンテージは、液体や粉などの管理に適している。

 あるいは第三者のアプリへデータを渡せるようAPIで連携したり、CSVを出力したりすることもできる。

 残量の履歴から、平均的な消費スピードを算出できる。そうなると、急激に減った場合は盗難、ずっと変わらない場合は消費期限のリスクなど、異常が発生した可能性があるため、アラートを発することもできる。

 管理画面では、重さから推測した在庫量、手入力した設置した場所の情報、電池残量や接続状態といった死活管理、最新の発注履歴などが表示される。

 類似のソリューションとして、RFIDやカメラによるAI判定といったものもあるが、スマートマットは重量を量るために在庫の下に置くだけで済むこと、配線が不要なこと、少量からスタートできること、置きっぱなしになることからメンテナンスが削減できることといった特徴を打ち出す。

在庫管理・発注を省力化

 単純な作業ながら、自動化・効率化をはかることには、さまざまなメリットがある。ひとつは勘や経験に基づいていた属人的なスキルである発注量の決定に、人の関わりを極限まで減らし、誤発注を防げることがある。また棚卸しする際にも数え間違いをなくせる。

 さらに在庫を数え、足りなければ発注する、という単純作業が続くことに、人であればモチベーションが低下することもあるが、デバイス任せにすればそうした心配はなくなる。

コピー用紙管理を想定も、それ以上の引き合い

 同社では正式ローンチに先立ち、オフィスのコピー用紙の自動発注を想定して営業活動。ところが数多くの業種で、ニーズがあることがわかってきた。

 たとえばガムテープやねじなど、きちんと数量が管理されていないことが多い間接資材や、冷蔵庫に収納するもの、あるいは一斗缶など、中の量が一見してわからない場面、はたまた、病院介護での洗浄液やおむつの在庫の管理といった具合だ。

 さらに発注だけではなく、ゴミ箱と組み合わせることで、ゴミが貯まってきた場合の対応にも使える。

 在庫量を適切にコントロールできることから、在庫を置く空間を削減することにも繋がる。

伊勢の老舗も導入

 三重県伊勢で約150年にわたり、飲食業を展開する「ゑびや」は、11月より、正式に「スマートマット」を導入する。全ての品の在庫管理に利用する予定だ。

ゑびや代表取締役の小田島 春樹氏
11月から全ての在庫管理にスマートマットを導入する

 過去1年、「ゑびや」では、3台のスマートマットで実験を進めてきた。ひとつは、事務用品の管理・発注。足りなくなければ自動的にAmazonへ注文する形だった。

過去1年の実験

 ふたつめは、地方の農家へ、シイタケを発注する仕掛けに取り入れた。農家側がメールのみ受け付ける形だったが、スマートマットの検知→メール発注という形にした。

 そして、みっつめは、人口3000人程度の場所にある乳牛屋から、サブレを取り寄せるための仕掛け。こちらは在庫が足りなくなれば、FAXを自動送付することになっていた。

 1年間の実験で、何も問題はなかったとのことで、それまで人が手がけていた作業量がゼロになったことから、正式導入に至った。

 今後、ゑびやでは、自動発注と来客予測を組み合わせて運用することを目指す。ゑびやの運営する飲食店舗において翌日、どのメニューがどれくらい発注されるか予測し、その上で在庫量を踏まえて自動的に発注するという形が想定されているという。

月額500円~1000円、レンタルとソフト込み

 初期費用は20万円。なおキャンペーンとして、2019年3月末までであれば5万円で提供される。月額500円~1000円のサービス利用料がかかる。ハードウェアはレンタルで提供され、ソフトウェアの料金が含まれる。直販のほか、パートナー企業とともに提供する形がある。

KDDIもソリューション

 パートナー企業のひとつであるKDDIでは、ソラコムの通信回線とセットで提供する。現在、「スマートマット」の通信機能はWi-Fiのみで、あわせてモバイルルーターとセットで提供できれば、固定回線がない場所でもすぐ導入できる。

KDDIのビジネスIoT企画部長である原田圭吾氏
KDDIのソリューション
提供料金
ソラコム回線で提供
KDDIが千代田区と進めるゴミ箱の実験

今後はデバイスを拡充

 スマートショッピングでは、今後、A5サイズの機種を投入する。これは1g単位で計測できるもので、2019年中に開発する。

 また、折りたたみコンテナや物流パレットと一体になった製品、あるいはIoT通信のLTE Cat-M1モジュールを搭載するものを開発する予定。オプション品として、防水ケース、衝撃吸収シートを近日提供する方針。

今後の商品計画
一般家庭向けにも
4年間で30万台の販売を目指す
林氏

 アマゾンジャパンを経てスマートショッピング社を立ち上げた創業者のひとり、代表取締役の林英俊氏は、消耗品の在庫履歴データを蓄積している企業はこれまで存在しない、と解説する。今後、個人向け製品の提供も含め、4年間で30万台のスマートマットの販売を目指すほか、蓄積するデータをマーケティングに活用する。

 またに最適な在庫量や、安全を持った在庫の基準がどれくらいか、現在は人が決めているところを、学習により自動計算することを目指す。

機械学習を活用