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「プロ用モニターにここまで近いのは初めて」AQUOS R2のDolby Visionを観る

 各キャリアから6月8日に発売されたシャープ製のAndroidスマートフォン「AQUOS R2」は、ユニークなツインカメラのほかにも、ドルビーのHDR規格「Dolby Vision」(ドルビービジョン)と、立体音響の「Dolby Atmos」(ドルビーアトモス)の両方に対応した世界で初めてのスマートフォンになっている。特に「Dolby Vision」への対応は珍しいとあって、シャープとドルビージャパンから特別に解説が行われた。

プロ用モニターと「AQUOS R2」の色再現性を比較した
シャープでスマートフォンのディスプレイ開発を担当する前田健次氏、DOLBY JAPAN映像技術部の真野克己氏

 「AQUOS R2」に搭載されたIGZO液晶ディスプレイは、デジタルシネマ規格「DCI-P3」の色域に対応している。iPhone 7以降が対応したことでも一部で注目を集めた規格で、写真や印刷業界よりも、映像業界によりマッチするディスプレイということになる。

 「Dolby Vision」はドルビーが定めたHDR規格で、制作現場で扱われている非常に高い色域や輝度レンジを、民生用のデバイスでも自然に再現できるよう変換するHDR規格となる。対応コンテンツは今後、配信サービスなどを通じて提供される予定。

 最新の映像規格では、濃い赤や鮮やかな青といった、目に止まりやすい派手な色が注目されがちだが、実際には、“暗い青”など幅広い色を再現するために、輝度レンジも非常に重要とのこと。「Dolby Vision」では色域に輝度を加えた「カラーボリューム」を用いてフレームあるいはシーンごとに最大・最小、平均などのメタデータを生成、このカラーボリュームを圧縮するための情報を、動的に生成していく仕組みになっている。

グレートーンの場合は無理な変換をしない
動的に調整する

 いくつかの数字でみていくと、現実の世界では、自動車のボディの反射が30万nits(輝度の単位、ニッツ、ニット)、裸電球が13万3000nits、コンクリートの地面が1万nits、屋内から見る窓の外の景色や、天井の蛍光灯が6000nits、室内の白い壁が77nits、ダウンライトの下の椅子が15nits、窓際で逆光になったソファの背もたれが1.7nitsといった具合で、非常に大きな輝度の差がある。花に限って見ても、花びらの明るい部分が1万4700nits、花びらの暗い部分が2300nits、雌しべなど中心が188nitsといった具合。

 翻って、現在提供されているディスプレイデバイスは、一般的な民生用テレビで最大200~300nitsとのことで、スマートフォンは屋外で使うためもう少し高くなるが、現実世界の輝度レンジには遠く及ばないことが分かる。プロの映像制作現場で使われるディスプレイも、現在一般的なのは1000nits程度とのこと。

 このため、ドルビーでは4000nitsの液晶ディスプレイを開発し、ハリウッドの映画制作現場にも提供しているという。なお、この輝度の大幅な向上を見込めるのはバックライトを備える液晶とのことで、有機ELは輝度の向上の面では課題が多いとしていた。

 この日の説明会では、ドルビー・ジャパンのスタジオ内にある4000nitsの映像制作用ディスプレイ(マスターモニター/リファレンスモニター)に非圧縮の映像を映し出し、「Dolby Vision」に変換された同じ映像を「AQUOS R2」のシネマモードで表示して比較するというデモが披露された。

ドルビー・ジャパンのスタジオ内にある4000nitsの映像制作用ディスプレイと「AQUOS R2」

 このマスターモニターに表示される映像は、クリエイターの意図を完璧に表現した映像ということになり、4000nitsという超高輝度レンジのディスプレイということもあって、光の表現や明るいシーンは、屋外で物を見ているかのように眩しく感じられた。もちろん色や暗部、階調も完璧に表現されている。

 「AQUOS R2」では、輝度レンジこそ4000nitsのマスターモニターには及ばないものの、赤、緑といった色は階調も含めて、非常にマスターモニターに近い品質で再現されていることが確認できた。実際にドルビーのエンジニアも「リファレンスモニターにここまで近寄ったのは初めて」と驚いていたという。

4000nitsのマスターモニター(上)の表現力は圧倒的だが、下の「AQUOS R2」の遜色のない再現性にも驚かされた。※この写真はDCI-P3よりも色域が狭いsRGBで出力しているため、表示された色をすべて捉えているわけではない

 「AQUOS R2」では、「Dolby Vision」の情報をできる限りカバーできるよう、「DCI-P3」対応パネルが開発された。モバイル端末に必要な省電力性能なども考慮しながら最適なバランスで設計したという。

 シャープが社内にディスプレイデバイスの開発部門を抱えていることも、精度や品質の向上に貢献しており、光学設計や部材選定も部門間で連携しこだわっている。独自の光学調整システムを導入し色と階調特性の精度の向上を図り、部門をまたいで光学測定機器の校正基準を揃えるなど、開発段階の正確性も徹底追求された。またシャープではすでに、量産したパネルの色や階調の特性のバラつきを個体ごとに調整して出荷する仕組みも整えており、実際にユーザーが手にするディスプレイ全体の品質にもこだわっているという。

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