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IIJのMVNO回線が200万、来春の「フルMVNO」は予定通り

 IIJ(インターネットイニシアティブ)は、MVNO回線数が203万回線に達したと発表した。これは個人向けのIIJmioと、法人向けサービスをあわせたもの。次なる展開として準備中の、いわゆる「フルMVNO」としての新サービスは予定通り、2018年3月に提供されることがあらためて案内された。

IIJのMVNO回線が200万、来春の「フルMVNO」は予定通り

フルMVNO、まずは法人向けと訪日外国人向け

 「2016年8月にフルMVNO事業の投資を決定して以来、事業の進捗を説明していなかった」と切り出したIIJ MVNO事業部長の矢吹重雄氏は、10月末、NTTドコモとの大型の試験を終えたと説明し、サービスの準備状況はスケジュール通り、2017年度末、2018年3月に第1弾サービスを出す方針とした。

IIJのMVNO回線が200万、来春の「フルMVNO」は予定通り
IIJのMVNO回線が200万、来春の「フルMVNO」は予定通り

 その第1弾は法人向けサービスと、訪日外国人や駐在者の一時帰国利用向けのプリペイド向けサービス、海外ローミングサービスを提供する。法人向けサービスは、現行サービスに加えて、「IIJモバイルサービス/i(仮称)」として新たな役務事業者のラインアップが加わるというイメージ。また、たとえば海外でモバイル通信対応のドライブレコーダーを生産し、現地で通信テストを実施、その後日本で販売されれば、ユーザーの手元に来たときにパッケージを開けてすぐ通信できるようになる、といった流れも実現できるという。矢吹氏は、導入企業のスケジュールによるところもある、としつつ、IIJのサービスを組み込んだ他社の商品が、来年度にはコンシューマーの手元に届き、実際に利用できるようになるのでは、との見通しも示す。

 ローミングについては、従量課金型で、NTTドコモのサービスより割安になることを想定する。将来的には、海外のユーザーが日本へ到着したとき、あるいは日本のユーザーが海外を訪れたときに、SIMカードを入れ替えずに利用できる、といった形の実現も目指す。

 フルMVNOのサービスは法人向け、IoT向けと位置づけられてきたが、個人向けサービスも検討すべき、との声が高まり、ローミングなどを提供することになった。ただし、たとえば現在のIIJmioのサービスが全てフルMVNOの仕組みを使うものへ移行することは難しいとの見解も矢吹氏は示す。これは、IIJmioの主力が音声対応SIMであるためで、データ通信向けとなるフルMVNOサービスではまだ巻き取れない、ということのようだ。

フルMVNO、未来に実現できるサービスは?

 7日の説明会会場には、フルMVNO対応のSIMカードを装着したスマートフォンが展示。画面上にあるアンテナ表示の横には「IIJ」と記されている。これはSIMカードに書き込まれた情報をもとに、IIJと表示するようカスタマイズしたものだという。

 SIMを自社発行できるようになることで、現在のプラスチックカードにICチップをのせた形態のほか、半導体にSIM情報を書き込んだチップSIM、SIMのデータだけをクラウドからダウンロードする仮想的なSIMも実現できる。IIJでは、現在、月次で課金しているところ、日割り、あるいは利用した分だけ課金など柔軟な形態もあり得るのでは、としている。

伸び悩むIIJmio、秘策検討中

 203万回線のうち、個人向けサービスのIIJmioは97.2万回線。前期と比べて6000件増と、成長が鈍化。一方、法人向けサービスは102.1万件(内、MVNEでの提供が68.3万件)で前期から約9万件の増加(MVNEは4.3万件増)だった。203万回線という数値は、MM総研のデータによればシェア22%だとIIJでは説明する。

IIJのMVNO回線が200万、来春の「フルMVNO」は予定通り
IIJのMVNO回線が200万、来春の「フルMVNO」は予定通り
IIJのMVNO回線が200万、来春の「フルMVNO」は予定通り

 2017年度に入ってから、IIJのMVNO事業で獲得した回線数は18.3万件。今期の目標としては、2016年度の実績(62.8万回線)と同等レベルを目指すとしており、その進捗率は思わしくないのでは、という問いに、矢吹氏は競争環境が厳しくなったとの見通しを示し、「IIJmioが鈍っている部分がある」と吐露。さらに「まさに秘策含めて検討しているところ。目標はこれからの展開による」と、詳細は控えつつ、てこ入れする姿勢を示唆する。

IIJのMVNO回線が200万、来春の「フルMVNO」は予定通り
IIJのMVNO回線が200万、来春の「フルMVNO」は予定通り
IIJのMVNO回線が200万、来春の「フルMVNO」は予定通り
IIJのMVNO回線が200万、来春の「フルMVNO」は予定通り

 ただ、IIJ自体は、広告展開などについては積極的ではない。これまでの強みは、個人だけではなく法人でも利用され、通信が発生する時間帯や量が多様で、全体としては平準化され、設備を効率的に利用でき、通信品質を高いレベルで維持できていることになる、としている。矢吹氏は、IoTのように、機器による通信需要が増えているものの、「IIJmioは業界スタンダードとして、我々自身が欲しいサービス、ユーザーの声を聞くといった方針は変えず、連携を強めてマーケットに貢献したい」(矢吹氏)とする。

IIJのMVNO回線が200万、来春の「フルMVNO」は予定通り
IIJのMVNO回線が200万、来春の「フルMVNO」は予定通り

MVNO市場、競争激しく

 決算会見の場で、勝栄二郎社長は「MVNOは700社ほどある。ISP事業を始めたときと同じで、これから競争が激しくなる。IIJがシェアを維持できているのは、安定した高品質なサービスを提供していること、最近ではヨドバシカメラなどでの取り扱いが始まるなど販路が多様化していることなどが挙げられる。また法人向けに提供していることは、利用時間帯などを多様化できることにつながる。テレビCMは実施していないが、他社のCMでMVNOの認知度が上がり、メリットを受けている」と説明する。
 楽天がFREETEL SIM(プラスワン・マーケティング社)を買収したことについては、「FREETELも経営が大変だったのだろうが、楽天もいろんな思惑があるのではないか。とはいえIIJに直接的な影響はない。今後、買収や統合があるかもしれないが、自然な流れではないか」とコメント。

 また他のMVNOを買収する意欲と問われると「ケースバイケース。いろんな要素が絡んでくる」と述べるに留まった。

 ワイモバイルやUQ mobileといった大手キャリアのサブブランドについて、勝氏は「総務省で電気通信市場動向検討会が開催され、そこで検討されると聞いている。そこの動向を見守りたい」とした。