インタビュー
ドコモが語る「dカード PLATINUM」登場の背景と今後の展開とは
2024年11月27日 00:00
NTTドコモが新たなクレジットカード「dカード PLATINUM」の提供を開始した。年会費が2万9700円となる一方、ドコモの料金プランの最大20%還元や、4万円相当の特典などが特徴となる。
dカード全体で1809万会員(2024年度上期末)、その半数以上にあたる1100万会員がdカード GOLDとなれば、プラチナカードの登場は必然とも言えそうだが、その背景にはどういった考えがあるのか。
「dカード GOLDだと枠が小さい」という課題
NTTドコモスマートライフカンパニークレジットサービス部長の鈴木貴久彦氏によれば、「dカード PLATINUM」に向けて、2~3年前から考えはじめ検討を進めてきたという。
2006年に登場したdカード GOLDは、1100万会員に達している。そのなかには、当然、dカード GOLDの利用が高額という人も数百万人規模で含まれる。
すると、ユーザーからdカード GOLDの使い勝手について、「ショッピング枠が小さく、違うカードを使わざるを得ない」「もっとステータスが高いカードは出ないのか」「特典を増やしてほしい」という声が寄せられるようになっていた。dポイント会員を事業の基盤とするドコモとしても、dカード全体で1800万会員を超えるなかで、「レギュラーとゴールドだけで、ニーズに応えられるのか」という課題も感じていた。
その声に押されてプラチナカードの検討を進めると、国内のクレジットカードでは、年会費が7~8万円、あるいは10万円クラスのものがある一方で、「オトクさとステータスを同居させるプラチナカードがある」(鈴木氏)ことを学んだ担当チームは、“手の届くプラチナカード”を志向するようになった。
これは、ドコモが手掛ける携帯電話サービスが生活に密着するもの、あるいはより多くの人にサービスを届けたいという考え、ひいてはクレジットカードを利用することで、ユーザーの生活がより豊かになるものを目指すなかでの試行錯誤で行き着いた考えだった。
たとえばマネックス証券でのdカード積立は、入会初年度なら3.1%、それ以降は積立額に応じて最大3.1%の還元となる。これも「dカード PLATINUMを利用することで生活が豊かになる」一環として、「こんな還元があるなら、積立を増やしてみよう」と考えてもらいやすくしたことが背景にある。
dカード PLATINUMならではのバランスと体験
とはいえ、人によってプラチナカードへ求めるものが異なる。たとえば「特典で年会費を回収したいのか」、それよりも「ステータス感」なのか――。
鈴木氏は「いろんな意味で、それぞれのお客様の目線で“手が届きやすい”ことを目指した」と語る。
今回、dカード PLATINUMの特典では、プラチナならではの特典にこだわった。空港ラウンジを利用できる「プライオリティパス」もレストランも使えるようにしたことは、こだわった点のひとつ。ラウンジが混んでしまい、レストランを代替施設に選ぶというユーザーの存在も考慮したのだという。
また、グループになったマネックス証券でのdカード積立の還元もこだわりポイント。dカード自体がドコモ回線ユーザーにとって最もお得なクレジットカードという存在だが、さらにマネックス証券での還元率の高い積立を実現することで「dカード PLATINUMならではの体験」を目指した。
そうした特典として、携帯電話の紛失・全損を補償する「dカードケータイ補償」は最大20万円まで拡大することで、シニア層も含め、安心して携帯電話を利用できる環境を整えた。
dカードとd払いの関係
ドコモとしては、ユーザーが使える決済サービスとして、dカードのほかにコード決済の「d払い」もある。鈴木氏は、dカード担当者からの目線だが、と前置きした上で「d払いにdカードを紐づけて最終的に支払いとするお客さまも多い。ネット決済でもクレジットカード番号を打ち込む場面は多くある。クレジットカードからすると、コード決済は支払時のインターフェイスのひとつと言えます」と説明する。
今後、クレジットカードを財布から出さないまま支払える場面が増えるのでは、と語る鈴木氏は、今回の発表でd払いとの連携がなかった点について「気持ちとしては連携したいが、ほぼ同じタイミングでdポイントクラブのステージ変更があったため、そちらを優先した」という。
料金プランの還元と特典
dカードを持つものの、メインに使う人もいれば、そうではない人もいる。当然のことではあり、ドコモの中の人からすれば、その利用率は向上させたくなるのも道理だ。
そうした狙いの一環、そしてdカード担当チームとして苦労したというのが料金プランからの還元率をどう設定するか、という点だ。
今回登場した「dカード PLATINUM」では、ドコモの利用料に対して初年度20%還元、2年目以降はショッピング利用額に応じて10~20%ポイント還元となっている。「ショッピング利用額に応じて」という点は、「dカード PLATINUM」をメインのクレジットカードにしてほしいという考えの現れだ。
設計段階では10%還元で検討を進めていた。たとえば「年会費を(発表時の2万9700円より)安くして還元率を10%にする」(鈴木氏)といった形だ。これはドコモからすれば、還元を抑える、つまり支出を抑える格好になる。しかし、それが本当にユーザーから支持されるのか。12%はどうか、13%はどうか……でも、それでインパクトを出せるのか。
前田義晃社長が掲げる「お客様の期待を超える」ことから、2万9700円という年会費で、最大20%還元をいかに実現させるかは、担当チーム内で一番思いが込められた点、裏返せば最も苦労した点だと鈴木氏は語る。
また、クレジットカードの競合として見ると、航空会社でマイレージを貯められるカードの存在感は大きい。日々の生活で貯めたマイレージで旅行に行く「夢」(鈴木氏)は大きく、ダイレクトに競い合うよりも、貯まるdポイントをどう活用できるか提案する点は課題だという。
携帯電話の料金プランという関係では、たとえば「ahamo」ユーザーにプレゼントされるボーナスパケットもある。dカードで1GB、dカード GOLDで5GBというところ、dカード PLATINUMはGOLDと同じ5GBのままだが、鈴木氏は「ahamoが30GBになったため据え置きにしました。とはいえ、ご要望があれば今後、考えなければいけないと思います」と語る。ただ、dカード担当としてレギュラー、ゴールド、プラチナとの違いをどう創るか、課題として認識している。
エンターテイメントのチケット購入も
ドコモの映像配信サービス「Lemino」で、ボクシングのタイトルマッチを配信することにあわせ、dカード GOLD会員向けのチケット優待販売が実施された。
こうした取り組みでも、dカード PLATINUMならではの特別な体験を提供すべきと考えていると鈴木氏。
まずはdカード GOLDからのランクアップでdカード PLATINUMを契約する人が大半を占めると見られるものの、獲得会員数の目標値は非公開だ。
ライフラインのひとつとなった携帯電話サービスと、密接に連携するクレジットカードである「dカード」で、プラチナカードがもたらす体験はどう支持されるのか。他社はどう対応するのか。鈴木氏は、たとえば若年層向けのクレジットカードのあり方なども視野に入れる意欲を示しており、携帯電話会社が作り出す経済圏競争を踏まえ、ユーザーとしてどうクレジットカードを選ぶか、今後も注目が集まりそうだ。