【Mobile World Congress 2011】
坂口氏が語るソニー・エリクソンの戦略
ソニー・エリクソン、Executive Vice President兼Chief Creation Offier、坂口立考氏 |
「Xperia PLAY」を筆頭に、一挙3機種の「Xperiaファミリー」を発表したソニー・エリクソン。CESで発表され、日本への導入が決定している「Xperia arc」も含めると、2011年だけですでに4機種のAndroid端末を市場に投入する予定だ。同社はどのような戦略でラインナップを構築しているのか。ソニー・エリクソンでExecutive Vice President兼Chief Creation Offierを務める、坂口立考氏に話を聞いた。
――昨年を振り返るという意味で、まず「Xperia SO-01B」の実績をどのように評価されているのかを教えてください。
坂口氏
本当にたくさんのお客様に買っていただくことができ、ありがたいと思っています。期待はしていましたが、正直思っていた以上でしたね。ドコモさんからも、スマートフォンの立ち上げが早くできたと感謝されています。海外で働いていますが、私も日本人なので、自分たちの作った商品が日本で出てほしいと思っています。今まではなかなか世界の商品を日本に出せず、ドコモさん向けの端末も1回お休みさせていただきました。スマートフォンでようやく戻ってくることができたので、私もうれしいですね。
――その上で、今回発表された端末は、それぞれどのような役割を担うのでしょうか?
坂口氏
オーソドックスな、一番ハイエンドのスマートフォンが、CESで発表した「Xperia arc」です。地域ごとに明確に分かれるわけではありませんが、コンパクトで、どちらかというとヨーロッパ向けなのが「Xperia neo」になります。それにQWERTYキーボードを搭載したのが「Xperia pro」ですね。欧州では必ずしも大きいものがいいわけではなく、片手で操作できる端末も人気があります。
――ただ、去年は「Xperia X10(日本ではXperia SO-01B)」のほかに、「Xperia X10 mini/mini pro」や「Xperia X8」でラインナップを構築していました。今回は、ミドルレンジがよりハイエンドに近づいたような印象を受けます。
坂口氏
今回はXperia PLAYのようなクリエイティブラインがあり、ハイエンドなXperia arcも用意しました。その下にコストパフォーマンスがいいXperia neoと、そのQWERTYキーボード搭載版のXperia proがあるイメージです。Xperia X10 miniやXperia X10 mini proは、その下という位置づけですね。一番下のローエンドには廉価で色とりどりの携帯電話があります。同じようなものをたくさん作っても意味がないので、車のシリーズのようにラインを作って、切れ目なく端末を出しています。
ただ、デザインランゲージという意味では、統一の思想があります。Xperiaでいうと、それは「Human Curvature(人間的な曲線)」です。今回のXperia arcやXperia neoなどには、反りや膨らみを入れ、デザインにも変化をつけています。
――今年はAndroid以外のプラットフォームを採用した端末が発表されませんでした。Androidに完全注力ということでよろしいでしょうか?
坂口氏
そうです。プロプリエタリーな独自OSや、Symbianはやめ、Windows Mobileも現在のところ予定はありません。社内的にはそのような計画はあったのですが、お客様に迷惑がかかってしまうので、突然やめることはできません。ですから、3年越しで徐々にこれらのプラットフォームの端末を減らしていったんですね。1つのことに集中して、プラッフォトフォームのようなベースをやるより、世の中に受け入れられる上のレイヤーに注力していきます。
――外から見ていて、グーグルとの関係がより密になっているようにも感じます。
坂口氏
2011年は、Gingerbreadの端末を揃えて、一番最初に出したいという思いや戦略がありました。Gingerbreadでゲームのキーが使えるのも、我々がコントリビューションしたからです。ゲーム自体もNDKでできていて、Dalvikより深いところで動くようになっています。
また、私自身、4月にはGoogleが近くにあるシリコンバレーで勤務する予定です。Xperia PLAYもシリコンバレーの開発陣が中心になって開発しました。日本のチームを最初のAndroid端末の開発に回しましたが、やはり新しい商品やユニークな商品を作るのは、シリコンバレーを中心にした方がいいんですね。日本はメカニカルなところを作りこむのが得意ですが、一方でアメリカはソフトウェアに強い。FacebookもGoogleもアメリカですからね。ディベロッパーもそうで、エレクトロニックアーツも隣にいます。2007年にオフィスを設立した時は「なんで?」と言われましたが、ようやく成果が出てきました。
――OS標準でのサポートとなると、ほかのゲームプラットが出てくる可能性もあるのではないでしょうか?
坂口氏
それはもちろんありえます。ただ、色々なことができるのも、オープンのメリットです。私たちとしては、Xperia PLAYの上で新しいものを作ってほしいんですね。スマートフォンならボイス入力も使えますし、ゲーム機にはない機能も載っています。私たちが「コミュニケーション・エンターテインメント」とわざわざ言っているのも、コミュニケーション自体に面白さがあるからです。ゲームがコミュニケーションになったり、逆にコミュニケーションがゲームになるように、面白いものにはどんどん出てきてほしいと思います。
――ところで、今回、Xperia PLAYは「PlayStation Suite」に対応する第1弾として発表されました。ただ、スペック的にはほかの端末でも可能性はあるように感じています。
坂口氏
確かに、Xperia PLAYは「PlayStation Certified」を受けた1号機です。もちろん、この認証はオープンなものなので、ほかの端末で取ることもできます。キーパッドがなければいけないわけではないので、色々な商品が出てくるでしょうね。
――XperiaファミリーはNFCに非対応です。搭載の目処は立っているのでしょうか?
坂口氏
今はまだNFCの市場がありませんが、ちゃんとやっていく予定です。2012年ごろには、本格的に展開したいですね。
――では、最後に坂口さんが考える、将来のケータイ像を教えてください。
坂口氏
直近だと、来年までには新しいデザインランゲージを打ち出す予定です。もっと先の話をすると、会話ができるケータイ、ロボットのようなケータイを作りたいですね。自分の一番の友達のように、端末に話しかけると何かをやってくれるもの。ウルトラセブンのウィンダムのように、代わりに戦ってくれるようなイメージですね(笑)。デュアルコア、クアッドコアのようなスペックは、そこまで重視していません。今ロボットと言うとちょっと気持ち悪いかもしれませんが、普通にいいなと思えるユーザーエクスペリエンスが作れると思うんです。
――本日はどうもありがとうございました。
(石野 純也)
2011/2/16 14:24