【ACCESS DAY 2009】
ACCESS、プラットフォーム戦略と海外展開を拡大


ACCESS 代表取締役社長兼共同最高経営責任者の鎌田富久氏。手にしているのは「ELSE INTUITION」

 ACCESSは、携帯電話向けのブラウザ・プラットフォーム「NetFront」や端末プラットフォーム戦略に関するカンファレンスイベント「ACCESS DAY 2009」を開催した。シャープ 代表取締役 副社長執行役員の松本雅史氏が基調講演に登壇したほか、ACCESS 代表取締役社長兼共同最高経営責任者の鎌田富久氏が同社の戦略を解説。4キャリアのキーマンが登壇するパネルディスカッションも開催された。

 カンファレンスイベントに先立ち、記者向けにACCESSの事業戦略説明会が開催された。ACCESSの鎌田氏は、同社の従業員が1500人以上になり、約1000名が海外の事業所に勤務しているとして、「いよいよ海外事業も拡大する基盤ができつつある」と海外展開を本格的に行っていく方針を明らかにした。


国内でさまざまなアプリを提供

 同社の事業は、メディアサービス、アプリ、プラットフォームの3層構造からなるとしており、中心事業として、国内の端末でも多く採用されている、NetFrontなどを含むアプリ事業を紹介した。一方で、さまざまな機能が搭載されていることから、アプリ事業はプラットフォーム事業に移行していくだろうとの見方を示した。

 NetFrontの出荷数については、累計8億台、直近の1年で2億台を出荷したとのことで、「年間2億はWindowsと同じぐらいの数字。ブラウザ搭載携帯の出荷数を考えると大きな数字だ」と多くの機種に搭載されている実績をアピール。ブラウザのみならずワンセグ視聴機能やMMSなどさまざまな機能を提供しているとした。

海外展開、メディア事業、Linuxプラットフォームの3つの戦略

 鎌田氏はアプリケーションのグローバル展開について、北米市場での拡大、中国市場の立ち上がりに言及した。北米ではスマートフォン向けに提供しているほか、Amazonの発売したKindleについては「期待以上に出荷されている」とし、組込機器向けも順調であるとした。中国市場についてはTD-SCDMA、W-CDMA、CDMA2000の3つの方式すべてに対応するアプリを投入しているとのことで、今後5年は出荷台数が毎年倍増するというアナリストの意見を紹介しながら、中国市場にも注力していく姿勢を示した。

 メディア展開では、国内の3キャリア向けに展開している携帯向け電子書籍販売サイト「Booker's」を提供しており、実際の書店と連携した新しいサービスも提供していく方針を明らかにした。同氏は、ビューワーソフトからコンテンツの拡充、出版事業でのノウハウなど、ほかのサイトにはない優位性があるとアピールした。

 Linuxを採用したプラットフォームについては、Access Linux Platform(ALP:アルプ)の進捗を紹介した。現在はVer.3.0となっており、オペレーターパックなど、キャリアの要望を多く盛り込んだ親和性の高さや、LIMOに対応した仕様、先進的な使い勝手を実現する技術を特徴に挙げた。加えて、ユーザーインターフェース(UI)部分をアプリの機能ロジックと分離させた構造を採用することで、「メーカーにとって、UIで差別化しやすくなる」とカスタマイズ性の高さを紹介。表面的な図柄ではなく、すべてのビジュアル部分とUIを入れ替えられるのが「画期的だ」とした。

アプリの海外展開中国市場にも力を入れる
ALP v3.0の概要UIの高いカスタマイズ性も特徴

 

ユニークなUIのイスラエル製端末「ELSE INTUITION」を披露

イスラエルのEmblazeが開発した「ELSE INTUITION」

 鎌田氏はALPを採用した実際の例として、イスラエルのEmblaze Mobileが開発した端末「ELSE INTUITION」を披露した。この携帯電話はWVGA液晶の全面タッチパネルのデザインで、ALP v3.0を採用。Emblaze Mobileが開発したユニークなUIを搭載しているのが特徴で、片手の指一本でさまざまな機能にアクセスできるようUIがデザインされている。指先でなぞって半円状に並んだメインメニューを指定するところまでは一般的だが、実際はカラム式メニューを扇状にならべたような構造となっており、ポイントしたメニューの場所から外周に向かってスライドさせると表示がメニューの第2階層に移る仕組み。これにより、メインメニューから深い階層まで指を離すことなく移動できるようになっている。

 鎌田氏は、「片手だけで操作できるのは日本人向け」と語り、こういったユニークなUIを「日本市場でもやりたい」と、ALPによる柔軟なUIの提供に意気込みを見せた。また、携帯電話のみならず、電子機器のソフトウェアは膨大になりつつあるとして、ALPを携帯電話以外にも幅広く展開していく方針を打ち出した。

 なお、ALP v3.0採用端末の柔軟なUIデザインのデモとして披露された「ELSE INTUITION」だが、実際の発売も検討されているとのことで、すでに欧米の複数のキャリアと話し合いを行っているとのことだった。また、同端末については11月24日に詳しい内容が改めてアナウンスされるとのこと。

実際に発売予定ということで、側面も作り込まれている「ELSE INTUITION」の仕様
UIの動作の様子。写真右側にメインメニューが扇状に並ぶメインメニューをタッチし、外周(写真では左)にスライドすると、画面が第2階層に切り替わる。指を離すことなく次々にメニューの階層を移動できる

 

講演では携帯ブラウザの進化に言及

 鎌田氏は同日開催されたカンファレンスイベント「ACCESS DAY 2009」に講演者として登壇し、同社の戦略などを一般受講者にも解説した。また、ブラウザの進化、クラウドコンピューティングの未来についても語った。

 ブラウザについては、現在提供しているNetFront v3.5の次期バージョンとして、v4.0を2010年にリリースする予定と案内。「一番大きなところは、速くするところ。高速なJavaScriptエンジンを開発してブラウザに組み込み、v3.5と比べてJavaScriptは10~15倍の処理速度になる」と高速化が実現される見通しで、「組み込みブラウザとして世界最速を目指す。すでに近い数値になっている。ハードが固定ならさらに速くできる」と処理速度の速さに自信をみせた。

 そういった進化を遂げるブラウザの存在については、クラウドサービスやJavaScriptが主流になることから、“ブラウザがOS化する”と、進化の方向性を示した。また、DLNAなど家庭内の機器との連携も拡大し、「自宅が手元にあるような環境を作っていきたい」と意気込みも述べた。

 クラウドコンピューティングについては、カメラ、GPSなど周辺機能をいかに連携させていくかが重要になるとする一方、オフライン状態での利用方法など、「ローカル、サーバーをいかにバランス良くするか、そういうソリューションが重要になる」と携帯電話ならではの課題を指摘した。

NetFront v4.0ではJavaScriptを高速に処理ウィジェットなども取り込んでいく
DLNAなど家庭内の機器とも連携を図っていくクラウドコンピューティングで新たな発展が訪れるとした

 



(太田 亮三)

2009/10/22/ 20:51