本日の一品

いつでもどこでもゲームができるハンドヘルドWindowsマシン「GPD WIN 2」

GPD WIN 2

 さてこちら、GPD WIN 2というハンドヘルドタイプのWindowsマシンである。そう、スマホやゲーム機ではなく、Windowsマシンなのだ。

 先代モデル「GPD WIN」同様、パソコンゲームにフォーカスしたハンドヘルドパソコンで、アナログスティックやトリガーボタンがフルに揃ったゲームパッドを内蔵している。ちょうどニンテンドーDSシリーズのように、下側筐体を左右の手で掴み、両手の親指と人差し指(人によっては薬指も)で操作するのが基本スタイルだ。

 ゲームパッドだけでなくキーボードも搭載している。キーピッチは狭く、タッチタイピングはほぼ不可能だが、キートップは立体形状で指のかかりがよく、親指タイピングは快適だ。配列はほぼ標準的な英語キーボードのままで、記号なども省略や配置変更されていない。

左右から掴む基本スタイル。この状態でゲームパッドだけでなくキーボードも難なく親指で操作できる

 タッチパッドなどのポインティングデバイスは非搭載だが、ゲームパッドをマウスモードに切り替えると、アナログスティックの左がWASD、右がマウスとして動作するようだ。ゲームパッド非対応のFPSなどもある程度はプレイできるデザインとなっている。

 ディスプレイにはタッチ操作対応の6インチHD解像度(1280×720ドット)を搭載する。いまどきフルHDでもないのか、と思われるかも知れないが、CPU/GPUのスペックが低いので、ゲームをメインに考えると負荷の軽いHDの方が良い。それに6インチだとWindowsのUIはかなり小さく表示され、老眼入りしつつある筆者としては、むしろHD解像度ですら細かすぎると感じてしまう。しかし一方で縦720ピクセルないと表示できないアプリやウィンドウもあるので、HD解像度は最適解といったところだろう。

 重量はカタログスペックで460g。Newニンテンドー3DS LLの約329gやNintendo Switch(コントローラー取り付け時)の約398gよりもやや重たいが、10.5インチiPad Proの469gとほぼ同じである。大きさは162×99×25mm。コミック単行本よりも面積はやや小さく、厚みが増した感じだ。

 実際に手にしてみると、ズシリとは来ないものの、長時間、手だけで支えてると疲れるかも、と感じるくらいの重さがある。しかしそうはいっても500g未満、カバンにねじ込みやすいサイズ感だ。

キーボードはほぼ英語配列のままなので、ゲームのショートカット操作がほぼそのままで使える

 スペックとしては、プロセッサーはCore m3-7Y30、メインメモリーは8GB、ストレージは128GB(M.2 SSD)を搭載する。GPUはIntel HD Graphics 615で、バリバリに3Dゲームができるわけではないが、低スペックパソコンを想定したゲームやちょっと古いゲームなら、そこそこ動いてくれる。

 先代モデルはAtom Z8700/Z8750だったので、それに比べると性能はかなり向上した。ゲーミングパソコンとして見るとどちらも低性能だが、性能向上により、プレイできるゲームの幅が広まった。

 そんなGPD WIN 2に、筆者が毎日のようにプレイしてるMMORPG「FINAL FANTASY XIV」(以下、FF14)のWindows版をインストールしてみた。

 現行のFF14は2013年サービス開始なので、最新ゲームとは言えないが、アップデートを重ね続けていて、グラフィック的にはそこそこリッチなゲームである。しかしグラフィック設定を目一杯に下げると、GPD WIN 2でもそこそこ動作した。フレームレートは20fpsを超えることはなく、場所や設定によっては10fps前後にまで落ち込むが、カクつくような感じもない。むしろ負荷軽減のために15fpsに制限をかけると良いかも知れない。

キーボードはちょっとむかしのハンドヘルド、W-ZERO3シリーズや初期のHTC端末みたいな感じ。ほどよい硬さで押し間違いもおきにくい

 画面サイズがかなり小さいが、FF14はUIカスタマイズの自由度がかなり高いので、必要な情報だけを見やすく配置することでなんとかなる。逆にUIカスタマイズの自由度が低いゲームではちょっと厳しいことがあるかも知れない。

 一方でほんの若干の遅延があり、アクション性の高い戦闘などでは、レスポンスの悪さが足を引っ張る印象を受けた。FF14では試しに赤魔道士でボスバトル(スサノオノーマル)に挑んでみたが、範囲攻撃をかわしきれずに何度か死んでしまった。といっても筆者は普段、キーボード+マウスでプレイしているので、ゲームパッド操作には不慣れだったりする。ここは慣れれば簡単なバトルコンテンツはこなせそうだ。

ボタンの配置はXbox準拠でWindowsゲームは使いやすい。しかし配色はXboxとY(黄色)とA(緑)が逆でやや紛らわしい

 ちなみにFF14のベンチマークソフト(紅蓮のリベレーター版)を走らせると、1280×720ピクセル(仮想フルスクリーン)の標準品質ノートパソコン設定で、スコアはだいたい2500くらいとなった。ややスコアが安定しない傾向が見られたが、そこそこプレイできるレベルである。

 あとゲームプレイ中に限らず、たとえば圧縮ファイルの展開くらいの処理でも、冷却ファンがフル回転し、かなりうるさくなる。ゲーム音が聞こえなくなるほどではないが、遮音性の高いイヤホンでも併用しない限り、聞こえなくなることはない騒音だ。冷却ファンのおかげで、手で掴む底面部分は持てなくなるほど熱くなることはないが、体温以上、だいたい40度くらいまでは暖かくなる。あとスリープ・シャットダウン中に充電すると、コンデンサ鳴きのような高周波音が耳に付くこともあった。

本体側にかなり厚みがあり、重量バランスもほぼ本体側に重さが偏っている。これはこれで持ちやすい

 GPD WIN 2はゲーミングパソコンではあるが、性能はかなり低めなので、1台目のゲーミングパソコンとして選択する製品ではない。デスクトップなど十分なゲーミングパソコン環境を持っている人がモバイルや予備のゲーミングパソコンとして持つべきデバイスだ。

 これまでにないようなさまざまなシーンで、ネットゲームをプレイできる可能性を持っているのがGPD WIN 2ならでは魅力だ。アクション性の高いコンテンツは自宅のメインパソコンでプレイするとして、ちょっとした空き時間にネットゲームのデイリーログインボーナスを消化したり、アイテム製作などのアクション性の低いコンテンツを楽しめる。わからない人にはさっぱりだろうが、ネットゲームにハマっている人なら、このことの重要性はご理解いただけるだろう。

 とくに机がない環境でもパソコンゲームをプレイできるという特長もユニークで、GPD WIN 2の可能性を広げてくれる。公共交通機関での移動中にも使いやすいし、喫茶店や行列の待機スペースなど、さまざまなシーンで使える。ちょっと特殊なシーンとしては、たとえばネットゲームのファンフェスティバルやオフ会に持ち込み、その場でログインしてチャット実況したり、会場で出会った人たちに自分のキャラを自慢したり、あるいはほかにGPD WIN 2を持っている人がいれば、即興で井戸端パーティプレイもできるかも知れない。

ヒンジ側側面。各種インターフェイスがある

 そんなことするヤツいるかい、とおっしゃる方もいるかも知れないが、そりゃそうである、これまではGPD WIN 2は存在しなかったから、誰もそんなことはできなかったのだ。しかしいまはGPD WIN 2がある。もちろん前モデルでも似たようなことはできるわけだが、より高性能になり、プレイできるタイトルが増えたGPD WIN 2なら、いままでにない新しいパソコンゲーミングの楽しみ方を発見できるかも知れない。

 ちなみにGPDにはゲームコントローラーの代わりにタッチタイピングできるキーボードを搭載する「GPD Pocket」というモデルもラインナップされている。ゲームをプレイしないなら、そちらの方も選択肢となる。2018年10月には後継モデル「GPD Pocket 2」が発売される(おそらく最初はクラウドファンディングから)ので、興味がある人はそちらもチェックしておこう。

製品名発売元実売価格
GPD WIN 2GPD8万6184円