発売直前の“ソニーのReader”をイジってみる

スタパ齋藤
1964年8月28日デビュー。中学生時代にマイコン野郎と化し、高校時代にコ ンピュータ野郎と化し、大学時代にコンピュータゲーム野郎となって道を誤る。特技は太股の肉離れや乱文乱筆や電池の液漏れと20時間以上の連続睡眠の自称 衝動買い技術者。収入のほとんどをカッコよいしサイバーだしナイスだしジョリーグッドなデバイスにつぎ込みつつライター稼業に勤しむ。


発売直前の“ソニーのReader”をイジってみる

 このニュースのとおり、ソニーの電子書籍端末こと「Reader」2機種が2010年12月10日っていうか今週金曜日に発売される。ので!! 超越的好奇心を発揮し!! 発売前にサンプル実機をイジらしていただいた!! ゆえ!! そのザックリとした使用感を書いてゆきたいッ!!

ソニーReaderの6型モデル「Reader Touch Edition PRS-650」、5型モデル「Reader Pocket Edition PRS-350」、それにアップルiPhone 4を並べてサイズを比較したところ。Reader端末2機種のサイズ差はほんの少し。両機とも600×800ドットの電子ペーパーを搭載
ソニーの「Reader Touch Edition PRS-650」。6型ディスプレイやメモリカードスロットを搭載したモデルで、カラーはシルバー、レッド、ブラック。ソニーストア価格は2万4800円ソニーの「Reader Pocket Edition PRS-350」。5型ディスプレイを搭載した最もコンパクトなモデルで、カラーはシルバー、ピンク、ブルー。ソニーストア価格は1万9800円

 2機種の主な違いは本体/画面サイズ、一部インターフェイスの違いのみですな。電子書籍端末として対応するファイルは、XMDF、ePub、PDF、テキストとなる。両機とも無線通信機能を持たないので、電子書籍コンテンツはUSB接続したパソコンからの転送となる。

 両機とも電子ペーパーとしてはE-Ink社製電子ペーパーPearlを搭載──解像度は600×800ドット、表示は16階調グレースケールで、指やペンでタッチ操作~ソフトウェアキーボード入力~スタイラスなどによるメモ記入も可能だ。

 6型電子ペーパー搭載の「Reader Touch Edition PRS-650」(以下、Touch)は、SDメモリーカード/メモリースティックPROデュオスロットを搭載し、メモリカード上の音楽/写真/オリジナルコンテンツの再生も可能だ。音楽を聴くためのヘッドホンジャックやボリュームスイッチも備える。5型電子ペーパー搭載の「Reader Pocket Edition PRS-350」(以下、Pocket)にはこういったメモリカードスロットやヘッドホンジャックがない。

Touchにはメモリカードスロットが搭載されているTouchにはヘッドホンジャックやボリュームもある2機種と岩波の文庫本を並べてみたところ

 小さいほうのPocketは岩波の文庫本とほぼ同じサイズだ。大きい方のTouchは文庫本より一回り大きいという感じ。具体的なサイズなどは、Touchが約幅118.8×高さ168×奥行9.6mm/質量約215gで、Pocketが約幅104.3×高さ145×奥行8.5mm/質量約155g。

 以降、ザザザッとその機能や使用感をレポートしたいが、発売前ということでReader Storeを使ってのコンテンツ購入は試すことができなかった点を悪しからずご了承願いたい。ともあれ、早速これらReader端末2機種を見ていこう。

無線通信対応のReader Daily Edition PRS-950はナシ

 本題に入る前にちょいと。前述のTouchもPocketも、既に米国で発売されているが、そのあたりの事情を知ってる方は「え!? あの機種は出ないの?」と思ったのではなかろうか。米国市場では上記TouchやPocketと同等の仕様の2機種のほか、3G/Wi-Fiによる無線通信に対応した「Reader Daily Edition PRS-950」も売られていて、この機種のセールスが非常に好調なんだそうだ。

 たとえばAmazon KindleではWi-Fiや3Gによる無線通信により、Kindle本体のみで電子書籍コンテンツを購入できる。この点がほかの電子書籍端末に対するアドバンテージと言われている。

 で、そのKindleにタメ張り中&よく売れ中のソニー製電子書籍端末が、3G/Wi-Fi対応の「Reader Daily Edition PRS-950」。なのだが、この無線対応モデルがまだ日本では発売される予定がない。ソニーの人によれば「今後のユーザーの反応を見てワイヤレス対応品を検討していきたい」とのこと。

 日本国内の電子書籍ビジネス、けっこー長いこと行われてきているものの、どーもこービッグウェーブが……いや、ちょっとした波もなかなか起きてくれない、というのが現状だと思われる。じつは拙者とかもけっこー以前から電子書籍コンテンツを書いてるんですけど、月間の収入は31円とか62円とか、比較的に好調でも525円と1050円とか。出版社側が「振り込み手数料の関係で○カ月分まとめてお支払いするということで」みたいなコト言ったり。てゅーかここ数年はゼロ円ですな。電子出版してたことさえ忘れてた。

 まあ拙者の書くコンテンツは特殊なのでアレだが、長い目で見てもまだ始まったばかりの市場であり、端末も出ては消え消えては出ての世界。3G/Wi-Fi対応の「Reader Daily Edition PRS-950」が国内でも出ては欲しいんですけど、3G通信料金とかコンテンツ提供のしくみとか、いろいろ現実的に検討するまでには国内電子書籍コンテンツ市場が安定してナイって感じなんでしょうな。

 ただ、実際にTouchやPocketを使ってみると、「あーこういうので本読めたらラクだわ」と思ったりする。同時に「こういう使用感の電子書籍端末がこういう価格で手に入る時代なら、これまで細く長く途切れつつも続いてきた電子書籍市場が大きく活気づくかも!?」とも思ったりして。まあ個人的な思いなんですけども。

 ともあれ、今後もソニーReaderシリーズの動向をぜひジックリ追いかけていきたい。って記事終わんなよ>俺。まだナニも書いてねーだろ>拙者。ズニャニャ。

あら読みやすい♪

 Readerを使ってみてまず感じたのは「読みやすい」ということ。電子ペーパーの快適がすぐに感じられた。

 前述のようにReaderにはE-Ink社の「Pearl」という電子ペーパーが採用されていて、解像度は600×800ドット、表示は16階調グレースケールでなされる。光学(赤外線)式のタッチスクリーンにより、マルチタッチとまでは行かないんですけど、指先や付属スタイラスによる操作も可能だ。

 で、視認性っつーか可読性っつーか、読書時の快適性が高いと感じる。電子ペーパーゆえ書き換えが遅い(ページめくり時などに一瞬画面が明滅するのが気になる)が、読むことに関しては非常に快適&ほとんど問題や違和感はナシ。「やっぱこーゆーデバイスはマジで紙を駆逐するんだろうなぁ」と再認識したりもする。

 具体的には、ディスプレイ表面はノングレアでマットな感じ。強い光を反射するとやや読みにくくなるあたりは紙の本からした違和感があるものの、ほかは紙の本と同じ感覚で読める。たとえばどの角度から見てもだいたい快適に文字を読める。デバイス自体が発光したりしないため目も疲れにくく感じる。ページめくりを指先やスタイラスでフリック(!?)して行える点もスムーズだ。

 以降、Readerの写真を掲載するが、とくに断り書きがない限り、全てTouch(Reader Touch Edition PRS-650)のものを掲載している。

非常に視認性が高い表示。電子ペーパーだと意識しなければ、印刷物と区別しにくい斜めから見ても視認性の高さは変わらないこーんな角度から見てもわりと読めちゃう
画面を指やスタイラスでタッチしたり、ボタンを押すことで操作できる画面に触れつつ指を左から右に動かすとページをめくれるユーザーインターフェイスは平易。シンプルに使えますな

 この表示デバイスの性能自体が日本語文章の読みやすさにつながっているということに加え、より快適な表示設定へと変更できるあたりは電子的な書籍ならではの利便。たとえば表示スタイルや文字サイズなどもわりあい自由に変えられる。

ページモード(表示スタイル)をいろいろ変えられる。が、電子書籍として作られたコンテンツに向くのは[標準]と[余白カット]あたりページモードを[標準]にしたところ。ページの四方に若干の余白があり、フツーの本のような感じページモードを[余白カット]にしたところ。ページの余白がほぼなくなり、画面全体に文字を表示できる(文字が少し大きくなる)
表示文字サイズを最小のXSにしたところ。細かい字だが雑誌の写真のキャプションくらいの大きさ。十分読める表示文字サイズをSにしたところ。今時的文庫本の文字サイズくらいだろうか。快適に読めるサイズですな表示文字サイズをMにしたところ。一般的な書籍より少し大きめで、複雑な文字を判読しやすいサイズかも
表示文字サイズをLにしたところ。老眼鏡必須の人でもメガネを外して読めるくらいのサイズ、かな!?表示文字サイズをXLにしたところ。非常に複雑な文字の細部もしっかり確認できるサイズと言えよう表示文字サイズをXXLにしたところ。有無を言わさぬ視認性の高さだが文章は読みにくい大きさですな

 実際に触れてみて思うのは、電子書籍コンテンツの普及云々とか以前に、「こういう端末なら読むときにメガネとか要らなくなる人多いよな~」的な身近な利便であり、前述のようなラクさや快適さだ。PC用ディスプレイとして、文字を読むための電子ペーパーディスプレイ「文字表示専用USB接続電子ペーパーサブディスプレイ」的なモノがあってもイイかも!! なんて、違う方向のコトを考えてしまったりする。

あら持ちやすい♪

 前述のように文字の視認性が非常に高いReaderだが、「これなら読める」「この端末で読んでみたいな」と“Readerで本を読む気にさせる”のは、端末の軽さが超大きな力になっていると感じまくりの拙者である。小ささまで考慮に入れれば、「これなら電車のなかで読める」「この端末は通勤時に持ち歩きたいな」と思うのではなかろうか。

Touchを片手で持ったところ。約幅118.8×高さ168×奥行9.6mmで質量約215g。軽いが、女性の手にはちょっと大きいかも大きいほうのTouchでも、こんなふうに無理せず指先で持って、その質量を支えることができる左手で持ったときに親指で押せる位置にページ送り戻しボタンがあるので、片手で読書できる
こちらはPocket。約幅104.3×高さ145×奥行8.5mmで質量約155g。ハガキより一回り小さく、軽量なので、持って読むのさらにがラク片手でページを送りつつ読むことも超ラク。親指でボタン付近を押さえつつ読めば、落とす不安もほとんど感じられない薄い文庫本を持ち歩く感覚で使えるPocket。内蔵メモリには約1400冊の本が入るんだから、愉快なモノがありますな

 ぶっちゃけ、TouchやPocket、持って使ってみると、ちょっとワクワクするものがある。

 正直言って、この端末のみで(無線通信により)コンテンツを買えないこと(コンテンツ購入~転送にはパソコンが必要なこと)や、まだ見ぬソニーの本屋さんことReader Storeの電子書籍コンテンツラインナップがどーなるのかなどに、モヤモヤしたものを感じている。

 のだが、Readerのこういう視認性と携帯性と使用感で、実際に本を読めちゃってることが物凄く興味深い。まあ単純に電子書籍コンテンツ読むだけってんなら、手持ちのKindle DXとかiPadでも可能だ。が、そこには単行本をポケットに入れて出かける気楽さっつーモンがナイ。電車でKindle DXやiPadを片手で持ってなんか読んでると恐らく珍しがられてTweetされちゃうが、TouchやPocketならスルーされる気がする。

 などとReaderに実用性的魅力を強く感じつつある拙者ですけど、アクセサリー類もちょっと楽しげですな。単なるカバー類だが、Readerに触れて「う、Reader欲しい」と思った人ホイホイ的な買わざるを得ない感がある。

Pocket用のブックカバー。専用品なので当然ジャストフィットする。セミハードケース的な堅牢さがあるので画面の保護になるブックカバーのノドの部分にあるクリップのような機構で、Pocket本体を挟み込んで固定する。簡素な機構だが外れにくい専用ブックカバーを装着すると、Pocketのホールド感が高まって落としにくくなる感じ。Touchの場合も同様ですな
こちらはPocket用のライト付ブックカバー。ライトを内蔵し、やや正方形に近いカタチになっているブックカバーのノドの部分に見える黒いモノがライト機構。単4形アルカリ電池×1本を電源とした白色LEDライトだこんな感じで電子ペーパー面を照らせる。照射方向はフレキシブルアームで調節でき、明るさは2段階に切りかえられる

 ちなみに、ブックカバー表紙/裏表紙はマグネットによりReaderをピタリと挟んで閉じるようになっている。机上に置いたらカバー部分がフワリと浮いちゃう/開いちゃう、てなことはナイわけですな。「どこにマグネットが入ってんのニャ?」と思って調べたら、まさかのReader側!! Readerの右上下表裏にマグネットが仕込まれているのであった。

テキストやPDFなども読める

 Readerには付加機能も少々ある。たとえばTouchには音楽再生機能があり、MP3やAACなどの音楽ファイル(著作権保護なし音楽)を再生できる。ステレオイヤホンなどを接続しての音楽聴取になるが、電子書籍を読みながら音楽を聴けるあたりはけっこー実用的かも。

 あるいは写真(JPEG/GIF/PNG/BMPファイル)の表示やスライドショーも可能だ。Readerはスリープ時に指定の写真をグレースケール表示することができるが、一応写真類の自由な閲覧もできますよ、という感じのオマケ機能ですな。

 個人的に非常に興味があったのが、テキストファイルやPDFの表示。もちろん早速試してみた。この記事の原稿となるテキストファイルや、以前に自分で作成(つまり自炊)したPDFをTouchに転送して表示させてみた。

本をスキャンして作ったPDFファイルとテキストファイルを、画面の大きいほうのReaderであるTouchに転送してみたパソコン→Readerのファイル転送はeBook Transfer for Readerソフトウェアを使う。使い方は非常にカンタン転送したテキストファイルとPDFはTouch上に書籍として登録されたようだ
「シンセサイザーの全知識」というA5サイズの本をスキャンしてPDF化したものを転送してみた。Touchではギリギリ読めるか読めないかというサイズで表示されたズーム機能を使えば各ページの内容をじっくり読んでいける。指先などでドラッグすれば上下左右へスクロールさせられる。ギリギリ実用的なスクロール速度だ余白を自動的に排除して表示するような機能はないが、ズーム機能のロック機能を使えば、余白を省いて各ページを表示させることもできなくはない
テキストファイルをTouchに転送して表示させてみた。一部の禁則処理が「?」な感じだが、ほかはとくに問題なく表示された。ページめくりなどの挙動も軽快文字サイズを大きくすることもできる。文章ではなく、メモ類を扱うにはReaderでテキストファイルというのも便利かもメモ機能を使えば、テキストファイル上の文字列や文章にマークの類を書き込める。マークなどが入った部分は後に一覧表示させるなどして利用できる

 テキストファイルやPDFの表示は、あ~んまりジックリと使っていないんですけど、結果だけ言うと「テキストファイルならまずまず扱える」という印象になった。テキストで書かれたメッセージをReaderで読むとか、リストを参照するって使い方は十分現実的。文字サイズなんかも自由に変えられるので案外読みやすい。

 一方、スキャンして自作したPDF、つまり自炊した電子書籍コンテンツの場合、ちょっとキツいかな、と。てのは、ページめくりなどの挙動があまり速くなく、表示サイズ変更時に手間がかかり挙動も遅めだった。

 たとえばマンガなどをReaderで読もうとすると「まあ読めなくないんだけどぉ~、iPadに自炊したマンガ入れたほーがサクッと目的果たせるよね~」みたいな。多くのドキュメントをピンチインアウトで自在&快適に読めるiPadは非常に自炊向きのビューワだと思った。というわけで、ま、やはり、Readerは市販の電子書籍コンテンツを買って読むための端末ですな。汎用性はあまり求められない感じ。

 てな感じでソニーのReader両機を駆け足で見てきたが、つまるところ、当然ですけど、最終的には、やっぱり、「Readerだと、どーゆーコンテンツを読めるか」ですな。端末自体はいつでもどこでも軽快に電子書籍コンテンツを読める実用性があるのはわかったので、実際にどんなコンテンツが読めるようになるのかに期待したい!!



2010/12/6 06:00