触れずにスキャン!! のSimply Scan

スタパ齋藤
1964年8月28日デビュー。中学生時代にマイコン野郎と化し、高校時代にコ ンピュータ野郎と化し、大学時代にコンピュータゲーム野郎となって道を誤る。特技は太股の肉離れや乱文乱筆や電池の液漏れと20時間以上の連続睡眠の自称 衝動買い技術者。収入のほとんどをカッコよいしサイバーだしナイスだしジョリーグッドなデバイスにつぎ込みつつライター稼業に勤しむ。


触れずにスキャン!! のSimply Scan

 先月、このニュースを見てズニャーン!! ノバックの「Simply Scan」(NV-PS200U)でありスタンド型スキャナの登場である。そそそ、そんな方式が!? てゅーか新発想。しかもUSBバスパワー駆動。これは興味深い!! てなわけで早速使ってみた。

ノバックのスタンド型のスキャナ「Simply Scan」(NV-PS200U)。スキャン対象に物理的に触れずにスキャン可能な新発想スキャナだ。2010年7月現在の実勢価格は1万5000円前後

 これまで、スキャナと言えばフラットベッド式やADF式、あるいはセンサー部を手動で動かしてスキャンするというものが主流だった。これら方式のスキャナだと、構造上、スキャンできるのは紙の表面など平面のみだった。センサー部にCCDを使ったフラットベッド式なら、少々の厚みがある平面に近い立体物くらいまでスキャンできるが、でもまあ、基本は平面をスキャンするための機材である。

 一方このSimply Scanの場合、方式はスキャナというよりもデジカメ。アーム部に内蔵された200万画素のカメラにより、スキャン対象を撮影=スキャンする。スキャン対象に触れることなくスキャンするので、紙質や厚みに関係なくスキャンでき、また書籍などスキャン対象に負荷をかけることもなく、さらに立体物も容易にスキャンできるのだという。

スキャンする様子を上方から見たところ。電気スタンドのように自立し、机上面に置いた対象をスキャン(撮影)するのだ。平面以外にも立体物のスキャンも行えるという

 てコトはつまり、書籍などをデータ化するにあたって、断裁機で本をバラバラの紙状態にしなくてもイイ? 本を開いた状態をそのままスキャン&データ化できる……っぽいような。どうニャのかしら? どうだろう!? てなあたりを興味の中心として、何はともあれ、早速、Simply Scanを使ってみることにした。

その名のとおりシンプルなスキャナ

 まず、Simply Scanの使い方をザッと。てか超カンタンで、パソコンにSimply ScanをUSB接続してスキャン用ソフトをインストールして、机上に付属の原稿専用マットを敷いて(不要なら敷かなくてもよい)、その上にSimply Scanを置けば準備完了。スキャン操作はパソコン上(スキャン用ソフト経由)で行う。

机上にはこのようにセットする。付属の原稿専用マットはリバーシブルで、黒面と白っぽい面を使い分けられる。マットは使用しなくてもよいスキャン用ソフト(NOVACスキャナー)の表示例。スキャン操作などは全てこのソフトから行うSimply Scanは折りたためるスキャナで、わりと細身なので携帯にもまずまず向いている。ただし重さは本体のみで約630g。ちょっとズッシリだ

 単純明快にセットして使えるスキャナですな。ここでSimply Scanの仕様を少々見ておこう。

 スキャン可能な原稿サイズは名刺~ハガキ~A5~B5~A4まで各種。こういったサイズの原稿を内蔵の200万画素カメラで撮影(スキャン)するが、そのときの解像度はdpi値で96dpi。ピクセル数はA4サイズ原稿の場合が1485×1055ピクセルで、名刺サイズだと455×274ピクセルになる。

 ただ、このサイズは専用原稿マットを使って正規の読み取り方法に従った場合(上の写真のような使い方)でのサイズだ。たとえばSimply Scanのセンサーに名刺などを近づければ1485×1055ピクセルなどでスキャンすることもできるし、Simply Scanを机上からさらに高めに設置すればA4サイズより大きな原稿もスキャンできるだろう。このあたり、原稿と非接触であるスキャナの柔軟性かもしれない。

 取り込みフォーマットはJPEG/TIFF/BMPで、動画(AVI)の録画にも対応している。製品としてはスキャナだが、なんかWebカメラっぽいデバイスですな。

デバイスマネージャではSimply Scan(NV-PS200U)はこんなふうに表示されるSkypeからSimply Scanにアクセスしたら、Webカメラとして認識されたもよう動画を録画できるSimply Scanなので、Skypeのビデオチャットも使える!? 使用可能かどうかは試してないので不明っス

 ともあれ、非常に簡単に使い始められるSimply Scan。使用時に必要なスペースは専用マットのフットプリントとなる38×36cm+作業スペースくらい。スキャン対象が小さければより狭いスペースでも問題ないだろう。使用後は上の写真のように折りたためる点も好印象。
 で、さて、実際のスキャン結果はいかに!?

とりあえず文書のスキャンもできるが……

 さぁスキャンですよ~Simply Scanでドキュメントをスキャンして、これがイイ感じならナニカと好都合ですよ~。まずは分厚い本とか断裁しないでスキャンできるだろうしぃ~、手元のペラ1枚書類をサクッとスキャンして即座にメールに添付して送ったりもできるしぃ~、的に、期待を抱きつつトライ!!

 ……トライ、した、の、だが、結果は残念な感じに。俺的結論から言えば、Simply Scanはドキュメントをキレイにスキャンするほどの能力はナイと思われる。てか、実際のスキャン結果を以下に。

スキャン原稿のさらに原本となるPDF原本のPDFをプリンター(ブラザーMyMio MFC-695CDN)で印刷し、それをScanSnap S1500でスキャンしたもの同様のプリントアウトをSimply Scanでスキャンしたもの

 これら画像だが、完璧に条件を揃えてスキャン~記事掲載のために画像を処理しているわけではない。一応、画像サイズを統一して見やすくすべくリサイズしているが、まあご参考画像って感じで。

 大胆に言っちゃうと、Simply Scanは紙書籍/紙書類の電子化を行えるものの、そのクオリティは最低限電子化可能というレベルだと感じた。ぶっちゃけ、ScanSnapとかとは比べものにならない性能差がある。さらに言えば、大切な書類や書籍などをSimply Scanで電子化すると、電子版はそーとーな見栄え劣化版という印象になりがちであろー。

 ツイデに言うと、Simply Scanでのスキャンは、スキャン結果(つまり画像内)にSimply Scan自身の影が出がち。普通の部屋なら上からの照明ですな。Simply Scanはその照明で本体真下にあるスキャン対象を照らして撮影しているため、スキャン対象の一部に本体の影が落ちてしまう。つーか、影って。もうキレイにスキャン云々のレベルの話ではなかったりする。まあ、レフ板などを使えばその影をうまく消すこともできるが、そこまでして……、的な。

 ただ、利用できないわけではない。具体的には「ナニが書いてあるか見えれば十分」という電子化なら活用の場が多々ありそうだ。たとえば本の一部をスキャンして電子的な参考資料にするとか、説明書の一部をスキャンしてiPadで閲覧するとか、ソフトウェアに付属のペラ1枚のシリアル番号をスキャンして保存するとか。

Simply Scanの最大サイズ(1600×1200ピクセル)で書籍をスキャンしたもの。見栄えは悪いが文字はどうにか読める。厚み(奥行き)がある対象だが十分利用できるスキャン結果となったこちらはSimply Scanの説明書の一部をスキャンしたもの。光沢のある紙なので一部が光り気味になってしまうが、内容はちゃんと読めるこれはソフトウェアCD-ROMとそれに付属していたシリアル番号入りの紙をスキャンしたもの。「読めればいい画像メモ」としてなら十分役立つ

 てな感じで、原本の美しさとかが損なわれても内容さえ読めればOKな用途なら、いろいろ使えると思われる。そういう画像メモ的なものを手軽に作れるってのは便利ですな。

 ……って、ソレってデジカメでいいんじゃない、とか思ったりもするが、Simply Scanの場合はスキャナなので、スキャン操作した瞬間に画像データとなってパソコン上に現れているところが、便利、なので、ある。……じゃあ200万画素とかのウェブカメラでいいんじゃない、とか思ったりするが、ウェブカメラだと真下のモノを撮るように固定するのが面倒なので、Simply Scanが便利、なので、ある、ってことにして、次の話行きましょう次。

据え置きブツ撮りカムとして

 フラットベッドスキャナや一連のドキュメントスキャナによる紙文書/紙書籍の電子化を知っている身としては、Simply Scanの対紙書類スキャン能力の残念感は否めない。

 が、なんかミョーに利用価値がありそーに感じられてならないのが、このスキャナが立体物のスキャン(というか撮影)にもけっこーシッカリと対応しちゃう点である。厚みのある本などを撮影しても、けっこーちゃんと文字が読めるレベルのスキャン結果が得られるのは前掲の写真のとおりだが、さらに、ガチな立体物スキャン時の表現力も豊かなのだ。

 具体的には以下のスキャン結果のとおり。なお、以下の画像はSimply Scanにより1600×1200ピクセルでスキャンしたものを800×600ピクセルにリサイズしている。

ガムの入れ物(150g入りとかのヤツ)をスキャン。立体感も含めてスキャンできた。てか、写真ですな手のひらにBlackBerry Bold。一部個人情報を隠す必要がある程度、細部までスキャンできたりするSimply Scanにスキャン対象を近づければ、表示内容を把握できるレベルのスキャン……というか撮影が可能
照明用リモコンをスキャン奥行きがあってもボケないので、モノの形状もちゃんと見えるパンフォーカスデジカメと同様、こんなふうに手前から奥まで大雑把にピントが合う
Simply Scanを机上に据え置きにして使った場合、ペットボトルより一回り大きいくらいの立体物までスキャンできるオートでスキャンしているので、スキャン対象や背景によっては色かぶりなどが起きる。その場合は手動で補正してスキャンすることも可能だラベル部の細かい文字なんかも十分読めるレベルでスキャンできた

 Simply Scan、スキャナではあるが、やや幅のある距離にピントが合うパンフォーカスデジカメとして機能するので、何かをちょっと撮影するには便利だ。ブツ撮りと言えるクオリティではないが、思い立った時点で即座に撮ってその画像をすぐ使うのに向く。撮った時点で画像がパソコン上に存在することは、クイックさにおいてデジカメより秀逸ですな。

 まあ、でも、正直、Simply Scanの多くの利便は、200万画素クラスのWebカメラで得られたりする。たとえば拙者愛用中のLogicool Qcam Orbit AFあたりは、高性能WebカメラでありつつSimply Scanより高画質で静止画も動画も撮れる。

 ただ、Simply Scanが持つ「本体を開いて机上に対象を置いてクリック一発でスキャンする」というクイックさと手軽さはサスガに専用品。「そうそう、置いて、クリック程度でスキャンできれば他はいいんだよオレは」と思う人には向くと思うし、さらにそのクリック&スキャンの頻度が高い人にはよく向くのではないだろうか。

 一方、よりキレイにとか、より本格的にとか、あるいは専用品じゃなくて他の機材でまあ近いことができればいいやという場合、Simply Scanはあまりにもニッチなスキャナに感じられてしまいそうだ。

2010/7/26 09:00