プラスαなUSBサブディスプレイ

スタパ齋藤
1964年8月28日デビュー。中学生時代にマイコン野郎と化し、高校時代にコ ンピュータ野郎と化し、大学時代にコンピュータゲーム野郎となって道を誤る。特技は太股の肉離れや乱文乱筆や電池の液漏れと20時間以上の連続睡眠の自称 衝動買い技術者。収入のほとんどをカッコよいしサイバーだしナイスだしジョリーグッドなデバイスにつぎ込みつつライター稼業に勤しむ。


プラスαなUSBサブディスプレイ

 去年あたりからPCにUSB接続して使えるサブディスプレイが登場してきている。俺もいくつか使ったが、USB接続なのに意外なほど表示レスポンスが良くて実用的だったりする。USBバスパワー駆動だったりもするので、ナニカと使い回しが効いて便利だ。

 そんなUSBサブディスプレイ製品に新機軸な製品が登場。SoundGraph社のFingerVU 706である。

SoundGraph社のFingerVU 706。7型ワイド/USB2.0接続のPC用サブディスプレイで、対応OSはWindows XP/Vista/7となる。ネット通販にて2万4800円で購入した

 早速購入した物好きな拙者なんですけど、興味を持った点はタッチ対応である点、独自のウィジェットを使える点、そしてもちろん、フツー的なUSBサブディスプレイとしても利用できる点だ。

多種多様なウィジェットを利用できる。タッチ対応ディスプレイで、指先などで手軽に操作することができる当然、一般的なUSBサブディスプレイとしても利用できる。ディスプレイにはDisplayLink社のチップセットが使われているディスプレイは回転し、ドライバの設定で縦表示にも対応する。

 で、購入後1週間ほど使っているが、若干わかりにくい部分があるものの、なかなかイイ!! という印象になった。てなわけで以降、このFingerVU 706の使用感などについて書いてみたい。

マトモ感の高いUSBサブディスプレイ

 FingerVU 706は7型のTFT液晶で、解像度は800×480ドット。PCとの接続インターフェースはUSB2.0で、電源はUSBバスパワーを利用している。1つのUSBポートの電力で足りない場合、付属のケーブルを使って2つのUSBポートから電力を得る。

液晶パネルはサムスン製。表示色数約1,677万、応答速度25ms、コントラスト比は400:1、輝度は350cd/平方メートル。コントラストや発色はまずまず良好という印象だ専用台座を装着して使用する。台座はアルミと思わしき金属製。ケーブルをシンプルに取り回せて扱いやすいUSBポートからの電力が足りない場合、付属の二股ケーブルを使って2つのUSBポートから電力を得る

 まず表示だが、なかなかキレイな感じ。発色の偏りとかコントラスト不足なども感じられず、クッキリと鮮やか。フツーに写真を鑑賞できるくらいの表示品位があると思う。

 液晶は7型/解像度800×480ドットだが、文字の読み書きにおける解像度のバランスは良好だと感じる。テキストを書くとか表を扱うとなると一度に表示できる情報量が少ないので微妙に苦しいが、テキストなどの視認性は良いと感じられる。ただ、個人的には800×600ドットだったり、それ以上でありかつワイド表示だったりしたら嬉しかった。

 ほか、表示の設定はDisplayLink Managerで行うが、これも理解しやすく、動作も安定している感じ。USB接続のサブディスプレイとして利用するにおいては、気になる不安定さやクセなどもなく、フツーに安心して使えると思う。

800×480ドットの解像度ではこのくらいの情報量を得られる。7型のディスプレイなので、なかなか良好な視認性がある表示設定などはDisplayLink Managerで行う。他社のDisplayLink社製チップセット搭載ディスプレイと同様、容易に設定を行えるWindowsの[画面の設定]からFingerVU 706の相対的な位置を決められる。なお、この表示では[3]がFingerVU 706となる

 というわけで、USBサブディスプレイとしてはフツーな感じ。ただ、おおよそ同クラス(!?)の製品となるCENTURY plus one LCD-8000Uこんな値段だったりする。FingerVU 706は2万円以上するわけで、単にUSBサブディスプレイとして利用するためだけに買うなら、かなり割高な製品になっちゃいますな。

FingerUIでタッチ操作

 FingerVU 706はタッチ対応のUSBサブディスプレイ。しかし、いわゆるフツー的なタッチ対応ディスプレイとは微妙に違う。一般的にタッチ対応ディスプレイというと、とにかくオモムロに指などで触れれば、そこにマウスポインタが現れ、指先などでソフトウェアユーザーインターフェースを操作できる。

 FingerVU 706の場合、単なるUSBサブディスプレイとして使っている状態ではタッチ対応ではない。専用のFingerUIと呼ばれるタッチアプリケーションが起動している状態でタッチ対応ディスプレイとして機能するのだ。

FingerUIアプリケーションを起動したところ。FingerVU 706画面上に独自のアイコン(ウィジェット)が表示され、これをタッチして操作していけるようになるタッチ(タップ)だけでなく、iPhoneのように指で払ってのスクロール(フリック)操作などにも対応する。レスポンスは良好圧力に反応するディスプレイなので、指のほか爪やペン(スタイラス)などでも操作できる

 ちなみに、FingerUIには「デスクトップ」というウィジェットが含まれており、これを使うと一時的にアイコンが並んだ画面が消え、FingerVU 706上に置かれたほかのWindowsアプリの操作をタッチで行える。

 またこのとき、Direct/Independent Touch Control方式が機能し、FingerVU 706上でタッチ操作をしても、マウスポインタは元あった位置を保つ。タッチ操作をしてもマウスポインタやアクティブウィンドウが保持されるのは、なかなか好都合であり実用的だ。

 さて、タッチ操作時の感触だが、拙者的結論から言えば感触もレスポンスも良好である。ウィジェットはポンとタッチすればすぐ反応/起動するし、画面スクロール(フリック)操作も行いやすい。もしかしたらWindows7のソレよりスムーズ!? とか思ったりもした。

 圧力に反応するタッチスクリーンを採用しているため、指以外でも、たとえばスタイラスなどでも操作できる。これも便利ですな。ただ、スクリーン表面は何となく傷つきやすいような気も。いや、実際には傷ついてナイんだが、iPhoneのように表面がガラス的素材ではないので、スタイラス操作はちょっと気が引けるかも。

ウィジェット専用マシン、みたいな使用感

 FingerVU 706をUSBサブディスプレイとして使ったときは、単なるUSBサブディスプレイ的な使用感である。可もなく不可もなく、みたいな。

 一方、前述のFingerUIを起動しつつFingerVU 706を使った場合、つまりFingerVU 706画面上にウィジェットなどを並べて使ったときの使用感は非常に独特である。具体的には「FingerVU 706+FingerUIが独立した多機能ガジェットとして機能している」ような感覚である。つーか、ぶっちゃけ、iPhoneみたいなインターフェースでPC上のデータを利用できる、といった感じ。

 言ってしまえば「FingerVU 706がウィジェット専用機として動いていて、各機能のランチャ~ブラウザ的に使える」てなことになるが、処理能力もデータ(ファイル)もPCのそれを使っているわけで、なんか不思議な気分。ウィジェットなどに関しての詳細はココで紹介されているが、その一部を見てみよう。

世界の時刻を確認できる世界の天気を知ることができる画面上に直接メモを書くことができる
PC上の写真をブラウズ~スライドショー表示できるPC上の音楽を再生するプレイヤーとしても機能するYouTube動画プレイヤーにもなる。もちろん検索も可能

 これ以外にも多々ウィジェットがあるほか、任意のファイルをウィジェットのアイコンと同様に登録することができる。PC上のファイルをショートカット的にFingerUI上に登録できるってわけですな。

 登録するとどうなるのか? たとえばお気に入りの音楽を登録すれば、FingerVU 706上のアイコンを一発ポンで即再生できる。同様に、YouTube画像なら、やはりアイコンのタッチ一発でFingerVU 706フル画面で動画再生できたりする。「これイイなぁ、じゃあ登録」を繰り返していくと、FingerVU 706上にフェイバリットなファイルへダイレクトにアクセス可能なボタンが増えていくのだ。

 ちなみに、登録できるウィジェット/ファイルなどだが、1画面(1ページ)に25個まで。ページは全部で25ページあるので、25個×25ページ=625個のウィジェット/ファイルなどを登録可能である。また、ウィジェット/ファイルなどはもちろん並べ替えが自由。色や名前も変更可能なので、ユーザーの好みで自由自在に多量のボタンを配置できる。

ワクワクする製品だが、少々の違和感も

 ほかにもFingerVU 706には機能や利便が多々ある。たとえばFingerVU 706をメディアセンター専用ディスプレイとして利用できるiMEDIAN HDがあったり、これを付属リモコンで操作できたり。iMON Managerを使えばリモコンで操作できるPC上のアプリなどを自由に設定することもできる。

 ここまで利用幅があると、普通一般のUSBサブディスプレイとはもはや別モノですな。独自で新たなユーザーインターフェースをソフト/ハードのセットで提供している、という印象に近いかも。

 そういった可能性の面では非常にワクワクするFingerVU 706であり、使い方/アイデア次第でイロイロな新しい使い方も考えられる製品だが、個人的には少々気になったことがある。

 ひとつは、これは拙者の環境だけで起きる問題かもしれないが、ときどきFingerVU 706+FingerUIが不安定に。たとえばFingerVU 706画面上にマウスポインタがあるときにタッチ操作をすると無反応になったり、単にタッチ操作をしている途中で無反応になったり。この場合、USBケーブルの挿抜(FingerVU 706の再起動)で正しく動くようになる。ときどき発生するトラブルって感じなので許せるものの、もうちょい安定性が欲しいところ。

 それから、前述の、25個×25ページ=625個も登録できるウィジェット/ファイルなど。見栄えも良いし登録もわりと簡単。カスタマイズも自由自在。そのあたりはナイスなんだが、アイコンの並べ替えも全てタッチ操作で行わないといけないようだ。

 ページは25ページもあり、位置を変えられるアイコンは一度に1個のようなので、つまり、キッチリとアイコンの並びを整理整頓しようとすると物凄く面倒。こういったカスタマイズは、タッチ操作以外でも、何か専用のソフトウェア&マウス操作で行わせて欲しいと感じる。

 てな感じで、これらのトラブルや違和感、どちらもソフトウェアで解決~改善できるコトだと思うので、ぜひ対処してほしい。

 ともあれそういった細かな違和感があるものの、FingerVU 706、全体的にはかなり新鮮な使用感がある。また使い続けつつカスタマイズしていくと、どんどん自分専用のインターフェイスとなっていく点でも楽しめる製品だと思う。

 ぶっちゃけ、USBサブディスプレイとしての側面のみ考えると高価な製品になる。が、それ以外の独自機能まで含めると、かなり遊べるし、完成度もなかなかのもの。手持ちのPCに新しいユーザーインターフェースを付加して便利にしてみたい、てな人にはオススメできそうだ。また、こういった遊べる系ガジェットに興味津々な人は買っちゃうと愉快かもしんない。

2010/4/26 06:00