スタパ齋藤の「スタパトロニクスMobile」

笑ってもっとベイビー♪ 「PortraitPro 23」で♪

ちょっとソコのキミ、それ笑い過ぎ

 画像生成AIのMidjourneyを使い始めてから、記事作成がラクになったというか、記事作成の制限が緩和された。それは画像などをより自由に扱えるようになったからだ。

 Midjourneyの場合、生成される画像のクオリティが高く、(目的にもよるが)手軽に記事内で使えるイメージ写真などを作れる。月額US30$からの有料プランを使えば、生成した画像を商用利用可能。なお、現在はMidjourneyの無料トライアルは中断されており、有料プランのみ新規利用が可能という状態になっている。

Midjourneyで猫が喧嘩をしているイメージを生成(Midjourney V5使用)。プロンプトは「The cats are fighting. --ar 20:10」で「--ar 20:10」はアスペクト比(画像の横縦比率)20:10の指定(横方向トリミングを考慮して)。fastモードにて約35秒で生成された。
上の画像の右上の喧嘩シーンが気に入ったので、それのバリエーションを生成(MidjourneyのUI上でV2をクリック)。微妙に異なる画像が生成された。

 こんなふうに、「こういう画像が欲しい」というザックリした要望を叶えられる。ちなみに画像生成AIに伝える「こういう画像」を示す言葉がプロンプト。文章でも単語の羅列でもいいが、英語とすべき場合が多い。Midjourneyで使えるniji・journeyだと日本語でも大丈夫だったりする。

 目的次第で「Midjourneyなどの画像生成AIだと自分がイメージした画像を生成させるのは難しい」と感じるかもしれない。Midjourneyなどの言葉で扱える画像生成AIは、生成させる画像の細部まで思い通りにコントロールするのはタイヘン。

 だが、「ある程度のクオリティのイメージ画像が欲しい」「ちょっとした写真を添えたい」「クリエイティブの叩き台になるイメージを生成したい」という場合は便利。ざっくり言えば「ある程度以上のクオリティで、イメージにそこそこ合う画像」があればいいというケースにおいては強力なツールになる。Midjourneyを「ものすごいスピードで高品質なイメージを激安で生成してくれるツール」として利用できるからだ。

 この便利さの一方で、たぶんこれまでのそういう仕組みが破壊されているとも思う……DTPが出現し、写植業者の多くが廃業に追い込まれたように。その前は写植が活字を淘汰したわけだが。技術革新があり淘汰があり、でもその先に人間による創造もあって、そういうことが繰り返されて現在に至っているわけですな。今回の革新はスゲく速くてその勢いも強いが。

 さておき、Midjourneyという超強力なツールを手にし、毎日使用中の俺。30%が仕事で、70%は趣味って感じだが、どちらでも人間の顔を生成することが多い。そして、生成した人の顔に微妙な違和感を覚えることが多い。

 というのは、なーんか「笑顔が過ぎる」ことが多い気がするのだ。プロンプト内に「微笑んでいる」というような言葉が含まれると、たいてい笑い過ぎの顔が出てくる。「少し微笑んでいる」くらいに指定しても、かなり笑っているのだ。

プロンプト「Japanese girl with black hair. She is smiling. (黒髪の日本人の女の子。彼女は微笑んでいる。)」で生成した画像。それって微笑みでなく笑い(laugh)って感じだが……。
プロンプト「Japanese girl with black hair. She is smiling just a little.」で生成。「ちょっと微笑んでいる」としたが……日本と欧米の「微笑みの概念の差」かもしれない。

 プロンプトに「smile」が含まれると、どうも「歯を見せた笑顔」になっちゃうっぽい。欧米な感じの解釈をするMidjourneyさん。じゃあ笑わない方向にすると?

プロンプト「Japanese girl with black hair. 」
プロンプト「Japanese girl with black hair. Not smiling. 」

 プロンプトに「smile」を入れないと、さすがに歯を見せては笑わない。でも柔らかな表情。また「微笑んでいない」としても、微妙〜に笑みを浮かべている人も。

 何がしたいの? って、結局は「smile」と指示したら、モナリザのような口元の笑み程度で、ほんのり微笑んで欲しい俺なのであった。

 でも、こういう微調整、やはり相当なプロンプト達人じゃないと無理そうである。俺とかプロンプト達人を目指しているわけではないので、AIが生成した人間の顔をホンノリな微笑にする手っ取り早い方法はないかなー、と。

 そこで思いついたのが、今回のネタであるAnthropics Technologyの「PortraitPro」。ポートレイト写真(人物写真)を美化するアプリ

 PortraitProアプリは、人物写真の顔を中心にした「自動・手動での美化」が可能。とても簡単に使える。例えば笑顔化は……。

PortraitProで表情の「スマイル」を調整した様子。右が処理結果だが、スライダーを動かすだけで笑顔の度合いをコントロールできる。

 この機能を使えば「無表情」を「少しだけ微笑んだ表情」にデキるハズ! ということで試した結果、イイ感じにホンノリした微笑みが得られたので、今回は最新版PortraitProこと「PortraitPro 23」をレビューしてゆきたいッ!!!

PortraitPro 23ではナニがデキるか?

 前述のとおり「PortraitPro 23」はポートレイト写真を美化するためのアプリ。人物写真を読み込ませるとAIがその画像を認識し、とりあえず美化してくれる。

PortraitPro 23を起動した様子。左に見えるのは各機能のチュートリアルで、細かく学ぶとより効果的に使える。だが、テキトーに使ってもだいたいどうにかなる「誰にでも扱えるアプリ」とも言えよう。
PortraitPro 23は買い取りタイプのアプリ。原稿執筆時点での価格は、旧バージョンから最新版へのアップグレードで4330円、新規購入で5780円だ。現在は50%オフキャンペーン中のようですな。俺の場合はアップグレード版を購入。
PortraitPro 23を起動したら、そのウィンドウに加工したいポートレイト写真をドラッグ&ドロップする(読み込み操作をしてもいい)。するとAIが人の顔を認識して鼻や口などパーツを区別する。1枚の写真に複数人数の顔があってもそれぞれ認識可能。手動で顔位置やパーツ位置の設定をすることもできる
調整したい顔を選んで作業開始。
PortraitPro 23が顔を認識した時点で、じつは既に顔の各要素が自動的に美化されている。写真はMidjourneyが生成した顔。元々整っていて、どう美化されたかわかりにくいが、ハダのテカりが減らされていたり、血色が少しよくなっていたりする。

 PortraitPro 23では、基本的に、ポートレイト写真をドラッグ&ドロップするだけで、すぐに顔が美化される。ユーザーはそれを見て「ここをもう少し変えたい」などと、顔の形、肌の滑らかさ、照明や色、メイクアップ、目や鼻や口の大きさなど状態、髪の量や色などを変えていける。ただし激変はできず、多くの場合は常識的な範囲でしか変えられない。また、変え方によっては不自然になったりもする。

Midjourneyで生成した顔をPortraitPro 23に読み込ませた。右側メニューで電源ボタンアイコンが青くなっているカテゴリーが、AIが自動判断で美化済みの要素だ。
加えて、形カテゴリーのマスターを増加すると、顔が全体的にふっくらと。健康的な方向で美化されるようだ。
照明効果を変えている様子。元画像はやや逆行気味だが、そこにレフ板を加えたというイメージ。ほかの方向からでも照らせる。レフ板からの光が髪にまで反映されないのは、PortraitPro 23の今後の課題かもしれない。
口紅の色を変えたり、マスカラを塗ったりと、メイクアップもできる。
目の大きさを変えたり、カラーコンタクトレンズを入れたり、目にキャッチライトを入れたりもできる。キャッチライトは左右の目で位置を変えられて、光の強さも調節できる。
髪の色を変えることもできる。
そして笑顔にすることもできる。

 Midjourneyで生成した人物写真を使っているが、実際の人間の人物写真だとPortraitPro 23の効果がもっとよくわかる。テカリも肌荒れもしっかり消えて、チート級の顔美化ができまくりなのであった。トライアル版もあるので、ご興味あればお試しを。

「愛嬌というのはね、自分より強いものを倒す柔らかい武器だよ」by 夏目漱石

 ではPortraitPro 23を使い、Midjourneyで生成した顔を、ちょっとだけ笑顔にしてゆきたい。真顔っぽくなく、かと言って笑い過ぎでもなく、すこーし微笑ませて、愛嬌のある顔に。

 以降に出てくる「PortraitPro 23による人物写真の微笑み化」画像で、PortraitPro 23の設定は、まず人物写真を読み込ませた後に各種美化を全部オフにしている。そして、形カテゴリーの表情内の「スマイル」「驚き」「興味」の3つのパラメーターのみ調節している。

 パラメーターの「スマイル」では、口の口角の上がり方および頬の持ち上がり方をコントロールできる。笑顔化できるわけですな。

 それから「驚き」では眉を上げつつ顎を下に少し下げる(口を閉じたまま歯を上下に開くイメージ)ようにコントロールできる。「興味」では眉だけを上げることができる。「驚き」や「興味」を操作すると眉が少し上がるなどして、表情を和らげる効果がある。

PortraitPro 23は、読み込んだ画像を「とりあえず美化」してしまう。なので、元画像から色味などが変わってしまうことが多い。「スマイル」要素だけ手動でコントロールするため、読み込み後に赤枠の電源ボタンアイコンをすべてオフにしている。複数の顔が認識されている場合、それぞれの顔でこのオフ作業をしている(ほかの顔への色変化などの影響をなくすため)。
コントロールするのは表情カテゴリーの「スマイル」「驚き」「興味」の3つのパラメーターのみとした。

 この設定でいくつかの顔画像を微笑化。以下がそのビフォーアフターだ。

昭和の女優をイメージして生成した人物写真。処理前のクールビューティーな表情もいいが近寄りがたい感じ。処理後の表情には親近感が。
お子さんも。やや不安げな表情がリラックスへと変わった。
新宿のストリートの女性というイメージで生成したが、全員「ナニよアンタ」的な警戒心が垣間見られる。処理後はちょっとフレンドリーに。

 PortraitPro 23では、人物写真をもっと笑顔にすることもできるが、あまり笑顔にすると違和感が出てしまう。ともあれ、わずかに微笑化しただけでも、なんかこー安堵感みたいなものが感じられるようになるモンですな。

「笑顔は女の子ができる最高のメイクよ」by マリリン・モンロー

 Midjourneyで「真顔」を作って、それをPortraitPro 23で微笑化する。笑みのコントロールがしづらい画像生成系AIで、目的の笑顔を得るにはなかないい方法……とかアレコレ試していたら、なんか「怒った顔」をうまく作るプロンプトを見つけたかもしれない。

 それは「not smiling」。Midjourneyで、怒っていないという言葉を含めて日本人の顔を生成すると独特な表情になるような気がする。いわゆる「険しい顔」で、日本人的感覚からすると「黙って静かに怒っている表情」に見える。↓こんなの。

プロンプト「2020s. bust-up photo of a Japanese woman in her 40s. She is facing this way. She is not smiling.(2020年代、40代の日本人女性のバストアップ写真。彼女はこちら側を向いている。笑顔ではない)」で生成した人物写真。左上の人はニュートラルな表情って感じだが、ほかは……こっわ! 怒ってます……よね? あ、あの、ワタシ、なんかしました? 的な。

 完全に余談だったが、こういう顔も笑顔化できるのか? 実際に試してみた。以下、プロンプト「2020s. bust-up photo of a Japanese woman in her 40s. She is facing this way. She is not smiling.」の年齢(40s部分)を40代、30代、20代、10代に変えて各年代の顔画像を生成した。また、年齢に応じて「woman」の部分を「girl」に変えて生成している。それらを笑顔化。それぞれ左が処理前、右がPortraitPro 23で笑顔化後。

40代女性。眉間に皺があっても口角が上がると「怒ってはいない」ように見える。
30代女性。左上のお姉さん、絶対怒ってますよね。でも微笑化すると怒りの感情が消えたように見える。
20代の女の子。全員、緊張がほぐれた表情に。
10代の女の子。これは……手強い。結果は、まあまあだがビミョー。左上はこれで限界であった。

「平和は微笑みから始まる」by マザー・テレサ

 続いて、日本人男性の顔を。たぶん、だが、笑っていないアジア人の顔って、日本人を含め全世界的に怖いような気がする。なんでだろう……って話は置いておいて、これもまた、40代、30代、20代、10代のビフォーアフターを。

 プロンプトは「2020s. bust-up photo of a Japanese man in his 40s. He is facing this way. He is not smiling.」として顔を生成。この「40s」や「man」の年齢や「man/boy」を変更して各年代の顔を生成している。

40代男性。そうそう、軽く口角上げるだけで周囲の空気感が変わるんスよ〜家でもそれやってみるといいスね〜。40代ってより50代に見える画像だが、PortraitPro 23のほかの機能もオンにすると、肌艶もよくなり若返った感じになるのであった。
30代男性。40代っぽいように見えるがさておき、働き盛りのやや疲れ顔も、少し笑顔にすれば話しかけやすくなる感じに。
20代男性。わりと健全なメンタルって感じだが、笑顔が宿るとさらにステキである。でもなんか30代寄りっぽい気がする。
10代の男の子。10代は怒りの世代なのかーッ!? とくに右上は既に笑顔化は無理って感じ。結果そこそこ笑顔化できたが、右上のコは無理であった。

 Midjourneyで生成した男性も女性も、10代を除いては、なーんか+7〜10歳って感じがする。現実は全体的にネオテニーな日本人だと思うが、Midjourneyが学習したのは、よりステレオタイプな像なのかもしれない。

 さておき、ちょっと怒った表情や無表情を、PortraitPro 23で少し笑顔化していると、操作している俺まで少し笑顔になってくるから不思議だ。ツイデに俺のメンタルも和らいだ。笑顔を見ていると笑顔になっちゃうのは、人間の本能的な反応なのかもしれない。

「笑えばいいと思うよ」by 碇シンジ

 最後に、アニメタッチの絵はどうか? Midjourneyのアニメ・マンガバージョンとも言える「niji・journey」で生成した人物画像をPortraitPro 23で少し笑顔化してみた。

40代女性。プロンプトは「2020s. bust-up photo of a Japanese girl in her 40s. She is facing this way. She is not smiling.」だが、niji・journeyの世界ではこれが40代なのかーッ!!! さておき、微笑化はフツーに成功した。
20代女性。これも微笑化は成功。普通の顔と微笑の顔の2枚でGIFアニメを作ると、口を閉じてガムを噛んでいる感じになったりする。とくに横向きだと。
40代男性。クールに微笑んでくれた。
20代男性。これもイイ感じに微笑んだ。

 なお、こういった“ややリアル系”のアニメ絵の場合、PortraitPro 23が自動で顔・パーツ認識しないことが多い。なので、手動で「鼻」と「顎」を指定。するとほかのパーツが自動認識される。

 また、さらにアニメ度が高いっていうか、リアル系から離れたイラスト顔になると、手動で指定しての認識も難しい。目や鼻が強くデフォルメされているからだと思う。しかし髪はどうにか認識し、「PortraitPro 23によるイラスト系アニメの髪色変更」だけはわりと現実的だったりする。

 てな感じのPortraitPro 23。人間の顔を美化してもおもしろいが、AIが生成した顔画像をより好みの表情などにする方向でもシッカリ使える。AIで生成した人物に化粧をしたり表情を変えたりとエディットするためのアプリとしてかなり実用的だと思う。

スタパ齋藤

1964年8月28日デビュー。中学生時代にマイコン野郎と化し、高校時代にコンピュータ野郎と化し、大学時代にコンピュータゲーム野郎となって道を誤る。特技は太股の肉離れや乱文乱筆や電池の液漏れと20時間以上の連続睡眠の自称衝動買い技術者。収入のほとんどをカッコよいしサイバーだしナイスだしジョリーグッドなデバイスにつぎ込みつつライター稼業に勤しむ。