多彩なラインアップで反転攻勢を狙うau

法林岳之
1963年神奈川県出身。携帯電話をはじめ、パソコン関連の解説記事や製品試用レポートなどを執筆。「できるWindows 7」「できるPRO BlackBerry サーバー構築」(インプレスジャパン)、「お父さんのための携帯電話ABC」(NHK出版)など、著書も多数。ホームページはPC用の他、各ケータイに対応。Impress Watch Videoで「法林岳之のケータイしようぜ!!」も配信中。


 10月18日、auは2010年秋冬および2011年春に発売する新ラインアップを発表した。10月4日にシャープとの共同記者会見で発表された「IS03」、発売中の「K006」を合わせると、通常の携帯電話やスマートフォンだけでなく、タブレット端末、電子ブックリーダー、モバイルルーター、モバイル無線LANターミナルと、実に多彩なラインアップが展開されることになった。おそらく、auとしてはこれまででもっとも幅広く充実したラインアップを取り揃えたということになる。発表会の詳細な内容については、本誌のレポート記事を参照していただきたいが、ここではタッチ&トライで試用した印象なども交えながら、全体の概要と捉え方などについて、考えてみよう。

スマートフォンとフィーチャーフォン

 ここ数年、何かと議論されることが多い「スマートフォン」と「フィーチャーフォン」。国内においては、ウィルコムの「W-ZERO3」が先駆け、ソフトバンクが販売する米アップルの「iPhone」の登場によって、「スマートフォン」への流れが明確になった感があったが、全体に占めるパーセンテージからすれば、まだまだ「フィーチャーフォン」のシェアは圧倒的に大きく、携帯電話事業者やメーカーによって、「スマートフォンへシフトすべきか?」「シフトするとしたら、いつか?」「今後、フィーチャーフォンはどうするのか?」など、スマートフォンとフィーチャーフォンの扱う姿勢に違いが見られた。

 たとえば、iPhoneという『ドル箱』を持つソフトバンクは、主力のiPhoneを価格や料金面でも手厚くサポートし、バリエーションのAndroid採用スマートフォンも揃えながら、既存のフィーチャーフォンはハイエンドを絞り込みつつ、普及モデルに注力するといったiPhoneを中心にした布陣を敷いている。

 NTTドコモはiPhoneに対抗する形で、昨年来、Android採用端末やWindows Mobile搭載端末、BlackBerryなど、豊富なスマートフォンのラインアップを相次いで投入してきたが、今年に入ってからはソニー・エリクソン製「Xperia」で攻勢を掛け、9月からspモードの開始により、一気にスマートフォンへのシフトを強めようとしている。

 こうした2社に対し、保守的な姿勢をとってきたのがauだ。当初は会見で「スマートフォンには注目しているが、まだフィーチャーフォンが大勢を占めている」といった慎重な発言をくり返すなど、auのスマートフォンに期待するユーザーをかなりヤキモキさせた。今年3月にようやく発表され、6月から発売されたau初のAndroid採用端末「IS01」は、明確に2台目というコンセプトを打ち出したユニークな端末でありながら、5万台を超える販売数を記録し、市場でも一定の評価を得たが、それでもユーザーからは「期待したスマートフォンではなかった」「もうauには期待できない」といった厳しい声が聞かれたものも事実だ。

 こうしたauの慎重な姿勢に明確な変化が見えてきたのが今年9月のKDDIの社長交代が発表された会見の席だ。それまで、auの会見ではスマートフォンへのアプローチに他社と違いがあることは認めていたものの、どちらかと言えば、「我々は市場を分析し、理解したうえで、こうしたアプローチ(スマートフォンに対する慎重な姿勢)をとっている」という発言をしていた。しかし、この社長交代の会見の席で、次期社長に就任する予定の代表取締役執行役員専務の田中孝司氏は、「auはスマートフォンに対するアクションが遅れた」という出遅れを明確に認める発言をした。もちろん、この段階で田中専務の頭には10月に発表された「IS03」をはじめ、今回発表の2010年秋冬モデル、2011年春モデルのラインアップがあり、それらが順次発表されることを念頭に置いたうえでの発言だったのだろうが、対外的にはこの発言がauのスマートフォンに対する方針転換のターニングポイントだったと言えるのかもしれない。

 こうした経緯があって発表された今回のラインアップだが、2010年秋冬モデルと2011年春モデルを合わせた全23機種(IS03を含む)で見ると、スマートフォンが4機種、フィーチャーフォンが17機種、電子ブックリーダー及びデータ通信端末が各1機種という構成となっている。IS01が発表された当時は、「スマートフォンはIS03のほかに、もう1機種くらいでは?」といった程度の期待しかなかったが、いざフタを開けてみれば、来春までというスパンではあるものの、4機種をラインアップに揃えている。発売されるかどうかは未定だが、10月29日にはiidaのスマートフォンのコンセプトモデルも公開されるという。しかも後述するau独自のアプリを取り揃えるなど、スマートフォン全般に対し、かなり積極的な姿勢を見せている。

 これに対し、フィーチャーフォンも人気のカメラブランドをはじめ、10周年を迎えたG'zOneの新モデルを登場させる一方、2010年夏モデルに続き、全機種防水対応(iidaブランドの2機種を除く)とするなど、幅広いユーザーのニーズを着実に捉えたラインアップを取り揃えている。iidaの2モデルもかなり魅力的であり、全体的に見てもユーザーが迷うほどのラインアップを揃えたという印象だ。まだ他事業者の秋冬モデルが未発表であるため、一概には言えないが、スマートフォンとフィーチャーフォンのどちらにも注力した今回のauのラインアップは、久しぶりにアグレッシブさが感じられる内容と言って差し支えないだろう。

4モデルで構成するスマートフォンのラインアップ

IS03

 個々の機種に触れる前に、少しスマートフォンとフィーチャーフォンのそれぞれのラインアップについて、もう少し補足しておこう。

 まず、スマートフォンのラインアップで、主力に位置付けられるのは、プロモーションの状況を見てもわかるように、すでに発表されているシャープ製「IS03」ということになる。Android 2.1を採用し、IS01から継承したワンセグや赤外線通信、「~@ezweb.ne.jp」のメールサービス、Cメールなどを継承しながら、新たにおサイフケータイに対応したスマートフォンで、明確に1台目の需要を満たすモデルだ。今回の発表でもAndroid版のau oneナビウォークやLISMOに加え、EZニュースEXやじぶん銀行などのアプリも公開されており、こうしたau独自のアプリのリファレンス的な存在になるはずだ。

 これに対し、同じ秋冬モデルとして登場するPantech製「SIRIUSα IS06」は、au独自サービスへの対応はCメール受信のみに限られるものの、最新のAndroid 2.2を採用することで、最先端のプラットフォームを求めるユーザーのニーズに応える構えだ。

 そして、春商戦向けに登場する2モデルの内、東芝製「REGZA Phone IS04」は防水対応や12.2Mカメラ搭載、マルチキャリアRev.A対応などのスペックからもわかるように、IS03に続く、もうひとつの主力モデルに位置付けられることになりそうだ。

 これに対し、いかにも春商戦らしい取り組みとして注目されるのがシャープ製「IS05」だ。こちらはコンパクトなボディやインカメラの搭載、ポップなカラーリングを採用することで、女性のスマートフォンユーザーを狙っている。ちなみに、IS05はSIRIUSα IS06と並び、Android 2.2採用だが、こちらは発売時期が来春であるため、最新版が搭載されるという意味合いが強いようで、SIRIUSα IS06と同じようなユーザー層を狙っているわけではなさそうだ。裏を返せば、このIS05が登場する時期には、他製品もAndroid 2.2に対応するか、何らかのアナウンスがされる可能性が高い。ただ、欲を言うなら、どの機種がどのタイミングでバージョンアップされるのかといった情報をもう少し整理して開示して欲しいところだ。

 ちなみに、IS03やIS04、IS06は、いずれもCPUに米QUALCOMM製SnapDragon(QSD9650)を採用しており、その意味ではOSをはじめとしたソフトウェア周りは、ある程度、共通性があるという見方もできる。つまり、現時点では対応がアナウンスされていないau独自のアプリもこの3機種については、ある程度、共通でサポートされることになるかもしれない。IS05については、CPUが公表されていないが、au向けの端末ということを考えれば、同じ米QUALCOMM製ベースバンドチップを採用しているのは間違いないため、こちらも同じように各種サービスに順次、対応することになりそうだ。

 こうしたスペックやデザインの違いからもわかるように、auはフィーチャーフォンと同じように、Android採用端末においてもユーザーの好みや方向性に合わせたモデルをラインアップするという考えのようだ。さまざまなプラットフォームでスマートフォンのラインアップを揃えているNTTドコモとは、少し考え方が違うと言えるかもしれない。

 一方、フィーチャーフォンはどうだろうか。フィーチャーフォンについては、夏モデルの発表会の記事でも触れたように、2007年秋から展開した「KCP+」が完成期に入り、夏モデルからは米QUALCOMM製SnapDragonを搭載した「KCP3.0」をスタートさせている。夏モデルが発表された段階では、「KCP3.0をLTE時代までのプラットフォームとして、継続的に進化させ、マルチキャリアRev.AもKCP3.0上で実現する」としていた。

 ところが、今回のフィーチャーフォンのラインアップを見ると、意外にKCP3.0が増えておらず、相変わらず、KCP+が継続していることがわかる。具体的には、秋冬モデルでソニー・エリクソン製「BRAVIA Phone S005」、iidaブランドの「X-RAY」の2機種、春モデルでは「Cyber-shotケータイ S006」「T006」「G11」の3機種で、残りは一部の端末を除き、ほぼKCP+採用端末となっている。こうした状況が生まれてきた背景には、ひとつはKCP3.0で採用されるSnapDragonの価格がKCP+で採用されているMSM7500よりも高いことが挙げられるが、その一方で、ハイエンドモデルがスマートフォンにし始めている状況において、フィーチャーフォンで従来のような高機能かつ高付加価値の端末が必要なのかという考えもあるようだ。また、おそらく現在のKCP3.0に搭載されているSnapDragonは65nmプロセスのもののはずだが、SnapDragonには第二世代と呼ばれる45nmプロセスのMSM8655というチップセットがあり、もしかすると、この新しいプロセスのチップの登場、もしくは価格の低廉化を待っているということかもしれない。

 いずれにせよ、今回発表されたフィーチャーフォンで、パフォーマンスを重視するなら、KCP3.0採用端末を選ぶべきなのだが、如何せん、選択肢が限られているのは、ちょっと残念な点だ。

 また、形状別でフィーチャーフォンのラインアップを見ると、秋冬モデルでは二軸回転式が2機種、折りたたみベースのデュアルオープンが1機種、残りはすべて折りたたみデザインということになる。春モデルではスライドが3機種、折りたたみが4機種というラインアップになっており、全体的に見て、やや偏りが見られる印象だ。もちろん、秋冬商戦の段階では夏モデルも残っているため、一部は併売することになるのだろうが、スライドが欲しいユーザーは春商戦待ち、二軸回転式が欲しいユーザーは秋冬モデルで早めにチェックというのがひとつの目安になりそうだ。

気になるSkypeの料金体系

Skype
Jibe

 今回のauの発表で、端末ラインアップとは別に注目を集めたのがソフトウェアだ。ひとつは「禁断のアプリ」として予告されていた「Skype」であり、もうひとつはソーシャルサービスをつなぐ「Jibe」だ。

 Skypeについては、今さら説明するまでもないが、インターネットを利用した電話&メッセージングサービスだ。WindowsやMacなど、さまざまなプラットフォームで動作するアプリケーションを使い、Skypeユーザー同士であれば、無料で通話ができ、一般の固定電話や携帯電話に対しての「SkypeOut」では格安の通話ができるというものだ。なかでも国際電話は非常に割安なため、海外とのコンタクトにSkypeを愛用するユーザーは多い。発表会でも明らかにされたところによれば、国内のユニークユーザーは1600万人を超えるという。

 今回、発表された内容は、KDDIとスカイプ・コミュニケーションズが戦略的包括提携すること、IS01とIS03より、『Skype au』を提供し、以後、販売されるauのAndroidスマートフォンに提供すること、2011年にはBREWにより、auのフィーチャーフォンにも提供を拡大することで、詳しいサービス内容や料金体系については、別途、案内するとのことだ。

 そうなってくると、気になるのが料金体系だ。メッセージングサービスはまず無料で利用できるのは間違いないだろうが、音声通話はSkype同士、海外との通話、国内との通話など、さまざまな組み合わせが考えられるため、すでにSkypeを利用しているユーザーにとっても気になるところだ。

 発表された内容によれば、今回、KDDIが提供するSkype auでは、他のSkypeの環境と違い、回線交換で接続し、auの携帯電話網に接続することにより、既存のSkypeよりも高音質の音声通話を可能にするとしている。この判断は3Gネットワークで接続したとき、通常のパケット通信では遅延が発生するため、品質を考慮して、回線交換での接続を選んだということかもしれない。

 ただ、この「回線交換で接続する」ということは、無線部分は通常の音声通話と同じ通話チャンネルを使うため、当然、そこに何らかの費用が発生してくる。しかし、会見の質疑応答で田中専務は「Skypeは無料サービスが前提。すべて無料ではないが、無料のコンセプトは守る。無料と書いてもらっていい。基本は無料だと理解している」とコメントしている。つまり、基本的には無料で利用できるとしながら、一部が有料になることを示唆しているわけだ。

 このことを考慮すると、最初に考えられる料金体系は、月額課金、もしくは都度課金(利用開始時に一度だけ課金)という手法だ。利用開始時にアクティベーションなどの手続きが義務づければ、プリインストールモデルでも課金しやすそうだが、都度課金の場合は機種変更時や故障による端末交換時にどうするかなど、クリアしなければならない課題が残る。月額課金は月額390円で3カ所まで自由にかけられる「ガンガントーク(指定通話定額)」を提供していることを考えれば、十分、可能性はあるが、「Skypeは無料と書いてもらってかまわない」という前提条件からは少し離れてしまう。

 あるいは、Skype auを既存のSkypeとは切り離し、1つのアプリで2つのサービスが並列するような形で提供されると、Skype本来の無料と有料のサービスを提供しながら、Skype au独自の料金体系を作ることもできそうだ。たとえば、Skype auという1つのアプリを使いながら、auの携帯電話網を経由するときは、通常のauの通話料の料金体系を採用し、既存のSkypeのネットワーク(パケット通信)を使うときは、Skypeの料金体系(Skypeユーザー同士は無料)を採用するという考え方だ。auの携帯電話網を経由するSkype auユーザー同士の通話がどういう料金体系になるのかが気になるが、元々、音声トラフィックは漸減傾向にあり、家族間無料通話やガンガントークなどで、割引サービスの用途として使われることもあるため、田中専務が質疑応答で答えたように、収益やネットワークにはそれほど大きな影響を与えないのかもしれない。

 では、すでにSkypeが導入されている海外の携帯電話事業者はどういう形でサービスを提供しているのかを見てみると、米Verizon Wireless、英Hutchison 3はともに特別な課金をしていないようで、いずれもSkype同士の通話は無料となっている。ただ、各国内の固定電話や携帯電話はそれぞれの事業者の通話レートが採用され、国際電話についても同様の国際電話の料金体系が採用されている。通常のSkypeと同じように、Skype Creditを購入すれば、より割安なレートでSkypeによる国際通話が可能になるようだ。両社ともどのように携帯電話網と接続されているのかがわからないため、Skype auも同じ料金体系になるとは言い切れないが、ユーザーとしてはこの料金体系なら、喜んでSkypeを活用したいということになりそうだ。裏を返せば、別の課金が発生するのであれば、Skype auの魅力が半減してしまうことになり兼ねないわけだ。

 また、今回のSkype auはAndroid採用端末のみで、2011年以降はフィーチャーフォンへの展開を図るとしているが、インタビューでも触れられているように、KDDIは携帯電話、固定回線、ケーブルTVという複数のネットワークを持っており、スカイプ・コミュニケーションズにとっては、それぞれのネットワークに対して、Skypeを展開しやすいというメリットもある。いずれにせよ、Skype auがどういう形で、どんな料金体系で提供されるのかは、今後、かなり注目を集めることになりそうだ。

 もうひとつのアプリである「Jibe」だが、こちらは筆者がタッチ&トライでほとんど試すことができなかったため、使い勝手は紹介できないが、XperiaのTimeScapeやGALAXY SのSNS Browserのように、ソーシャルサービスをひとまとめにするアプリは、各社のスマートフォンに搭載されており、多様なサービスを利用するユーザーにとってはなかなか魅力的だろう。他のソーシャルサービスをひとまとめにするアプリに比べ、カバーするサービスの範囲が広く、SNSやブログだけでなく、Windows LiveメッセンジャーやGoogle Talkなどのメッセンジャー(チャット)サービス、ぐるなびやHotPepperなどのスポット情報サービス、EvernoteやPicasaウェブアルバムなどのストレージサービス、ARサービスのセカイカメラと、非常に多彩なサービスを連携できる。ここに「Skype au」が含まれていないのは、ちょっと不思議な気もするが(いずれ対応するのだろうが)、こうしたアプリをキャリアがプリインストールする形で提供すれば、コンテンツプロバイダもアプリごとに個別の対応を取らなくても済むため、情報を提供しやすいと言えるかもしれない。

スマートフォンやフィーチャーフォンなど、全23機種を公開

 さて、ここからは発表会のタッチ&トライコーナーで試用した印象などについて、お伝えしよう。ただし、今回は過去に例を見ないほど、機種数が多く、ほとんどの機種を十分に触ることができなかったため、あくまでも筆者の持つ印象のみを手短にお伝えする。また、タッチ&トライコーナーで要された端末は最終的な製品ではなく、実際に発売される製品とは仕様や印象に違いがあるかもしれない点はお断りしておく。各端末の詳しいスペックなどについては、本誌の発表会レポート記事も合わせて、ご覧いただきたい。

REGZA Phone IS04(東芝)

 今回発表された端末の中で、もっとも注目度の高かったスマートフォンだ。来春発売のため、今回はワンセグのデモのみとなったが約4.0インチの画面は非常に大きいうえ、防水対応、WIN HIGH SPEED対応など、機能、スペックともにもっともハイエンドのモデルに位置付けられる。ボディサイズはIS03とほぼ同じか、少し大きい程度のまとめられている。ちなみに、上部に3.5φのステレオイヤホンジャックが装備されているが、ジャックに水が入っても本体内部には浸水しない構造になっているため、このままでも防水性能が保持できるという。ソフトウェアも独自の部分があり、日本語入力にはATOK for Androidがプリインストールされる。今春の発売が非常に楽しみな端末だ。

IS05(シャープ)

 IS03に比べ、ひと回りコンパクトなボディを採用したカジュアルなイメージのスマートフォンだ。Eメール(~@ezweb.ne.jp)やCメール、デコレーションメールなどが利用できるほか、ワンセグや赤外線通信、おサイフケータイなどにも対応する。これまでのスマートフォンがどちらかと言えば、ビジネスツール的のデザインが多かったのに対し、ボディカラーにピンクやグリーンを採用するなど、IS03以上にポップなイメージにまとめられている。春商戦向けということを考慮すると、意外に若年層のエントリー向けスマートフォンとして、注目を集めるかもしれない。機能的にはDLNA対応や720pのハイビジョン動画の撮影ができるうえ、AQUOSブルーレイとの連携もサポートするなど、十分な内容となっている。

SIRIUSα IS06(Pantech)

 最新のAndroid 2.2を搭載し、グローバル市場のトレンドをいち早く取り込むことを目指したスマートフォンだ。そのため、ワンセグや赤外線通信、おサイフケータイなどの機能は搭載されていない。発売当初はEメール(~@ezweb.ne.jp)やau one Marketに対応しておらず、Cメールも受信のみとなるが、今後のバージョンアップで、Cメールの送信や他のサービスにも順次、対応する。Pantechは「SIRIUS」というネーミングのスマートフォンをグローバル市場向けに展開しているが、今回のモデルはディスプレイがTFTカラー液晶を採用しているなど、ハードウェア構成は別の製品となっている。年内に登場するスマートフォンでは、唯一のWIN HIGH SPEED対応であり、パフォーマンスとカスタマイズを重視したいユーザー向けと言えそうだ。

G'zOne TYPE-X(カシオ計算機)

 2000年発売の「C303CA」以来、ついに10周年を迎えたG'zOneシリーズの最新モデル。2008年のW62CA、2009年のCA002とスリム路線を追求したが、今回のモデルは原点回帰をテーマに、サブディスプレイにメモリ液晶を採用したマルチサークルディスプレイを搭載し、先端部を保護するプロテクターを装備するなど、かなりゴツさを前面に押し出した力強いデザインで仕上げられている。IPX5/IPX8の防水、IP5Xの防じん対応に加え、米国防総省のMIL規格(MILスペック)準拠の耐衝撃性能を搭載するなど、実力的にも歴代G'zOneシリーズ最強。通常の端末の1.5倍以上に相当する1240mAhの大容量バッテリー搭載による長時間利用も見逃せない魅力。バンパー部分が大きく、重量も179gとかなりヘビー級だが、そんなことはサイズ感を気にも留めない(笑)、力強いユーザーにオススメしたいモデルだ。

EXILIMケータイ CA006(カシオ計算機)

 夏モデルのCA005に続くEXILIMケータイの最新モデル。CMOSセンサーのスペックは同等だが、画像処理エンジンを変更、追加したことにより、有効画素数が1316万画素になり、720pのHDムービーの撮影にも対応した。IPX5/IPX8の防水、IP5Xの防じんに対応し、新たに無線LAN機能が搭載され、Wi-Fi WINに対応する。HDMI端子も備えており、CA006で撮影した動画を薄型テレビに映し出すことが可能。トップパネルはCA005で採用された独特なファブリック仕上げから光沢感のある仕上げに変更されて、全体的にスッキリしたデザインにまとめられた印象だ。ベストセラーを記録したW53CAやW63CAからの買い換えとしても魅力的なモデルと言えそうだ。

AQUOS SHOT SH010(シャープ)

 夏モデルで高い人気を得たAQUOS SHOT SH008の後継モデル。防水やWi-Fi WIN対応は継承しながら、新たに開発したCCD 14.1Mカメラを搭載し、14.1Mの最大サイズのまま、最大5倍まで拡大できるデジタルズーム機能も搭載する。Wi-Fi WINを活かすための機能として、GoogleのオンラインアルバムのPicasaとの連携を実現しており、端末上から写真をアップロードしたり、オンラインアルバムのURLを含んだメールをワンタッチで作成できるなど、カメラと通信の連携を重視した仕様となっている。デザイン的にはSH008のメモリ液晶によるサブディスプレイから有機ELディスプレイに変更され、少しスッキリとしたデザインにまとまった印象だ。

BRAVIA Phone S005(ソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズ)

 夏モデルとして登場したBRAVIA Phone S004の後継モデル。ボディデザインを含め、基本的な仕様はまったく同じで、デザイン的にもロゴの位置変更など、わずかな修正のみだが、WIN HIGH SPEEDに対応しており、秋冬モデルのフィーチャーフォンではもっとも先行した仕様となっている。Wi-Fi WINにも対応するが、S004同様、microSDメモリーカードとの排他利用となっている。SnapDragon搭載による快適な操作感とWIN HIGH SPEEDのパフォーマンスを重視したいユーザーに適したモデルだ。

T005(富士通東芝モバイルコミュニケーションズ)

 ヒンジ部分のボタンを押すことで、ワンタッチで本体を開けられるワンアクション・オープンを採用したモデル。防水対応のため、シートキーを採用するが、ダイヤルボタンは凸感を持たせるなど、押しやすさに一定の配慮をしている。ただ、方向キー周りの操作感は今ひとつクセが残る印象だ。基本的には2009年のT003の仕様を継承しているが、デザイン的には最近のauの端末にあまりないテイストで、どちらかと言えば、URBANOほどではないものの、やや大人向けの端末という印象だ。

SH009(シャープ)

 今年1月に発売されたSH005の流れをくみ、7色のカラーバリエーションを揃えたモデル。防水対応やスリムなボディは継承されているが、7色のカラーバリエーションはカラーごとに、細かい部分でデザインを変更しており、それぞれに特色のあるデザインに仕上げられている。なかでもハニーイエローとフローラルピンクは、トップパネルのLEDのデザインを変えるなど、他のカラーと少し趣を変えている。作成したメールに自動的に絵文字を追加するスマート絵文字、自動的に装飾をするスマートデコレーションなど、メールを楽しむための機能も充実している。カメラはCCD 800万画素を採用し、SH005では防水対応モデルながら、設定がなかった卓上ホルダもオプションで用意される。若年層のユーザーには持ちやすく、楽しみやすいモデルと言えそうだ。

URBANO MOND(ソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズ)

 大人向けを対象にしたURBANOシリーズの第3弾モデル。今年2月に発売されたURBANO BARONEの後継モデルに位置付けられ、新たにIPX5/IPX7相当の防水対応、グローバルパスポートCDMA/GSM対応となった。従来モデルからデザインも一新され、メタルパネルの採用などにより、非常に質感が高いデザインに仕上げられたが、URBANO BARONEで好評だった独立キーはシートキーに変更されている。凸感は持たせているが、従来モデルに比べると、やや押しやすさは変わってしまったかもしれない。812万画素カメラやフルワイドVGA液晶など、スペック的にも申し分のないレベルに仕上がった端末と言えそうだ。

K006カメラなしモデル(京セラ)

 今年9月に発売されたK006をベースにした法人ユーザー向けモデル。カメラや外部メモリーを削除することにより、情報管理に厳しい環境でも導入できるようにしている。IPX5/IPX7相当の防水対応のほか、KDDIの法人向けサービスにも対応し、「遠隔データ消去」「遠隔ロック」などのセキュリティ機能も利用できる。

Cyber-shotケータイ S006(ソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズ)

 2010年夏モデルのCyber-shotケータイ S003の後継モデルに位置付けられる端末。同じスライド式のボディを採用しながら、閉じたときには上筐体と下筐体が一体的になるようにデザインされ、全体的に見ても非常に質感の高い仕上げとなっている。カメラは世界初となるソニー製の1620万画素の裏面照射型CMOSセンサー「Exmor R」を採用する。今回は開発中のものが出品され、撮影などのデモを見ることができたが、春モデルということもあり、その他の機能は試すことができなかった。WIN HIGH SPEED、Wi-Fi WINに対応しており、auの春モデルのラインアップでは、もっともハイスペックのフラッグシップ的なモデルということになる。

T006(富士通東芝モバイルコミュニケーションズ)

 春モデルとして登場する予定の防水対応のスライド端末。Cyber-shotケータイ S006同様、WIN HIGH SPEEDとWi-Fi WINに対応しており、今回、発表されたauのフィーチャーフォンの中では、Cyber-shot S006と並び、もっとも先行したプラットフォームが採用されているモデルのようだ。ただ、他のスライド式端末に比べ、ボディは17.1mmと比較的、厚みがあるのが気になるところだ。

SH011(シャープ)

 春モデルとして登場する予定の防水対応の折りたたみデザイン端末。今回はモックアップのみの展示だったが、SH009と並び、防水対応の普及モデルに位置付けられるようだ。カメラはIS03でも採用されているCCD 9.6Mカメラを採用し、4.8倍デジタルズームも搭載する。

K007(京セラ)

 京セラ製としては初めてKCP+を採用した折りたたみデザインの防水対応端末。特徴的なのはキーイルミネーションと先端部のイルミネーションで、端末の開閉時やアドレス帳に登録した誕生日、季節ごとのイベントなどに応じて、華々しくキーバックライトのイルミネーションで楽しませてくれる。先端部のイルミネーションも独特で、光で楽しむ端末という印象だ。京セラ製のKシリーズの名が冠された端末だが、事業統合したSAシリーズで人気を得ていた時短検索が搭載される一方、Kシリーズで人気の「すぐ文字」も搭載されるなど、両社の端末の売りの機能がうまく統合されている。

簡単ケータイ K008(京セラ)

 auのシニア向け端末「簡単ケータイ」の最新モデルで、今年発売された「簡単ケータイ K005」に続き、防水防じん対応となっている。簡単ケータイが定着してきたこともあり、かんたんモードのみで動作していた音声読み上げや光で操作ナビなどの機能が通常モードで利用できるようになっている。ユーザー層を考慮し、おサイフケータイがないのはいいとして、従来モデルに続いて、ワンセグも省略しているのは少し気になる点だ。

PT002(Pantech)

 シンプルなデザインで、機能的にもかなり絞り込んだ防水対応端末。auでは周波数再編に伴い、CDMA2000 1X対応端末をCDMA 1X WIN対応端末へ交換する施策を進めているが、その施策向けの端末として展開される。機能は絞り込まれているが、押しやすいドームキーや見やすいでか文字が設定できるなど、基本的な仕様についてはしっかりとサポートされている印象だ。

X-RAY(富士通東芝モバイルコミュニケーションズ)

 2007年にau design projectで「MEDIA SKIN」のデザインを担当した吉岡徳仁氏がデザインを手掛けたiidaブランドの最新モデル。これまでのデザイン端末のように、外装パーツをデザインするのではなく、クリア素材「タフロン ネオαシリーズ」で外装パーツを構成し、そこから透けて見える内部の基板やパーツの並びをデザインしたという。基板に並ぶパーツ類もある程度、外部に見えるように並べるなど、細かい部分に工夫が施されている。こうしたクリア素材による『トランスペアレントデザイン』『スケルトンデザイン』は、初代iMac登場時にもかなり流行し、現在でもその名残はいくつかの製品で見えるが、携帯電話では随分と久しぶりという印象だ。しかも透け具合いが従来のトランスペアレントデザインとは趣が異なり、必要以上に見えすぎず、上品なイメージを醸し出している。端末のプラットフォームはKCP3.0を採用しており、WIN HIGH SPEEDに対応する。iidaブランドの端末ではあるが、秋冬モデルの中でもっとも人気が出そうな端末かもしれない。

G11(ソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズ)

 2009年のiidaブランド第1弾として登場した「G9」の後継モデルに位置付けられるで、デザインは同じく岩崎一郎氏が担当する。今回はショーケース内にモックアップが展示されていたのみだったが、従来のG9と比較して、ディスプレイ横にタッチセンサーが内蔵され、スライド幅が60mmまで拡大することで、方向キーはダイヤルボタンと同じ下筐体に一体化されている。2011年春モデルとして登場するため、G9登場からちょうど2年近く経過していることもあり、G9ユーザーのリプレイス用としても期待できる端末だ。スペックとしては、カメラ部分を除き、同じく春モデルで登場するCyber-shotケータイ S006とほぼ同じ構成になっているようだ。

Wi-Fi Walker DATA05(Pantech)

 au初となるモバイルWi-Fiルーター。CDMA2000 1X EV-DO Rev.A対応の通信モジュールを内蔵し、Wi-FiはIEEE802.11b/gに準拠し、セキュリティはWEP/WPA、簡単登録はWPSをサポートする。モバイルWi-Fiルーターとしては最後発ということもあり、有機ELディスプレイとサイドキーを装備し、電波状態や接続状態を確認できるようにしている。カタログスペックではあるが、最大4時間の連続通信が可能。サイズもポータブルオーディオプレーヤー程度のコンパクトサイズで、持ち歩きやすい。関係者によれば、発売時には既存の料金プランを見直すか、新しい料金プランがスタートする可能性もあるそうだ。

NEX-Fi(イデアクロス)

 au端末の外部接続端子に接続するWi-Fiルーター。本体はWi-Fiルーターとしての機能を持つが、3G回線は内蔵しておらず、au端末に接続して、利用する。auが商品ではなく、イデアクロスのメーカーブランド商品として、全国のauショップで扱われる。モバイルデータ通信定額対応機種に接続して利用した場合、上限は1万3650円になるが、Wi-Fi Walker同様、発売時には新しい料金プランが提示される可能性がある。装着すると、ややいびつな印象だが、新たに回線契約をすることなく、手軽にルーター環境が実現できるのは魅力だろう。

SMT-i9100(サムスン電子)

 Wi-Fi機能を搭載したタブレット端末。Android 2.2を採用し、Flashコンテンツを再要請することができる。NTTドコモ向けに供給される「GALAXY Tab」とほぼ同等の製品だが、3G回線が入っておらず、Wi-Fi Walkerなどと併用することになる。メーカーブランドの製品という扱いになるが、ユーザーインターフェイスはIS01などと同じように、Ocean Observation UIが採用されており、フォントもモリサワフォントが使われている。関係者によれば、サムスン電子の対応はかなり迅速で、ユーザーインターフェイスの移植なども短期間で行なわれたという。前回の連載でも触れたが、このサイズのタブレット端末はスマートフォン市場の一部を食ってしまうほどの勢いが出てくるかもしれない。

迷うほどの多彩なラインアップだが……

 IS03の発表以降、auの取り組みが話題になることが増えてきているが、今回の2010年秋冬モデル及び2011年春モデルのラインアップを見ると、その勢いはさらに増すことになりそうだ。他社の発表がこれからになるため、インパクトをどれだけ維持できるのかはまだ未知数だが、それでも硬軟をうまく取り混ぜた4機種のスマートフォンを並べ、フィーチャーフォンも既存の路線を継承しながら、G'zOneやEXILIMケータイ、Cyber-shotケータイ、AQUOS SHOTの人気モデルを取り揃え、久しぶりにユーザーが迷ってしまうほど、多彩なラインアップを構成している。

 ただ、フィーチャーフォンについては、夏モデルの段階で「今後はKCP3.0を拡大していく」としていた目論見が崩れ、KCP+採用端末がラインアップの大半を占めることになった。こうした動きは、やはり、auがフィーチャーフォンからスマートフォンへシフトする中、どこまでフィーチャーフォンを追求するのかを少し迷っていることの表われかもしれない。ワンセグや赤外線通信、携帯電話事業者のメールサービスに加え、おサイフケータイも搭載されたこともあり、いよいよユーザーとしては、本格的にスマートフォンへ行くかどうかを悩むタイミングに来ているが、Skype auの料金体系が未発表など、まだauが背中を押してくれない部分があるようにも見受けられる。春モデルまでの発表だったため、機種数が多いことも『迷い』を増幅させる要因になっているのかもしれない。

 今回発表された端末の内、秋冬モデルの多くは東京・原宿のKDDI DESIGNING STUDIOでタッチ&トライが開始されているそうだ。販売は11月から順次ということになるが、本誌に掲載される予定のインタビュー記事やレビューなどを参考しながら、「スマートフォンに行くか、フィーチャーフォンで待つか」「どのスマートフォンにするか」「どのフィーチャーフォンを選ぶか」など、じっくりと自分だけのベストチョイスを見つけ出していただきたい。

 



(法林岳之)

2010/10/20 13:48